GSG‐9、作戦行動に移…らない。   作:御簾

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間を置きすぎた馬鹿野郎が通りますよっと。




ランナーズハイ(運転手が)

「…おい、動くなよ。」

 

動揺は一瞬、すぐさま立ち上がったイェーガーはその手に握るアサルトライフルを鉄血の人形に突き付けた。動けない416から拝借したものだ。

対する鉄血人形の反応は一瞬だった。

 

「「「「サー、イエッサー。」」」」

「早っ。」

 

互いに顔を見合わせ、示し合わせたかのように両手を上げる。一糸乱れぬその動きに毒気を抜かれるイェーガーだが、それとは裏腹に手早く四人を拘束していく。

運転席に押し込め合いながら…と言う訳でもなく、前後2列に並んだ座席に分かれて座っていたようだ。

周辺へしきりに目を向ける人形達に荷台に隠れるよう指示し、イェーガーは運転席から引きずり下ろした鉄血兵に銃を突きつける。

 

「いくつか質問に答えてもらおう。無抵抗な相手を撃つような真似はさせないでくれ。」

 

「まず一つ。お前達の目的は何だ?」

 

「35654444362番が応答。:正直知らないんですよねー。私達下っ端には何も言ってくれませんでしたしー。」

 

シリアルナンバーらしき番号を唱えたと思いきや突然饒舌になったJaeger型の一機。驚いたように身を震わせるイェーガーだったが、驚きはそれだけでは終わらない。

 

「30486695864番が叱責。:こら!初対面の人に対してそんな対応したらダメでしょ!…すみません妹が…」

「42737220234番が反論。:初対面であっても砕けた口調というものは存在する。」

「43618135246番が補足。:…何も知らないのは事実。」

 

矢継ぎ早に繰り出される口撃に頭がオーバーヒートしそうになりながらも、イェーガーは敵意がない事だけは確認する。

幸いなことに誰も敵対するような素振りは見せていない。

少し安心しながら、彼は次の行動を開始する。目的はもちろん、味方との合流。手早くハンドルを握り、エンジンをかけ、アクセルを踏み込もう…とした矢先。

 

「35654444362番が懇願。:ちょっと待ってくださいよ!置いてかないで!」

「え、お前ら鉄血だろう?」

「35654444362番が肯定、そして懇願。:そうですけど!乗せて行ってくださいお願いします何でもしますから!」

「ん?今何でもするって…」

「35654444362番が肯定、そして説明。:言いました言いましたから!私達ネットワークから切り離されたんで!害のない綺麗な人形ですから!」

「…本当に?」

 

答えの代わりに飛んできたのは鉛玉だった。

イェーガーの頭を掠めたものと、3565(ry番の足元に弾痕を残したものの二つ。

二人は無言で顔を見合わせ、銃弾の飛来した方向へギギギ、と音でも立てんばかりにゆっくりと振り向いた。

そこに立っていたのはサブマシンガンを構えt「逃げるぞ!全員乗れ!」

 

「35654444362番が肯定。:了解しました!ほら全員乗っt …乗ってる!?早いね!?」

「よし乗ったな行くぞ!」

 

今度は本当にアクセルを踏み込んだ。トラックとは思えないほどの加速性能を発揮し、イェーガー達を乗せたトラックは道を爆走する。メーターが示す数字は、時速120キロ。もはやトラックという名のナニカである。軽い気持ちでアクセルを踏み込んだが最後、壁に衝突して爆発四散するモンスターマシンだ。

そんな暴れ馬をイェーガーは冷や汗を流しながらも何とか制御し続けていた。後ろの荷台では幌の中から楽しげな笑い声が聞こえてくる。お前らいい加減にしろ。

 

今まで感じた恐怖とは別物の緊張感を持ちながらイェーガーはトラックを制御していた。が、曲がり角から勢いよく飛び出した先には鉄血の人形達が防衛線を組んで待ち構えていた。先回りしていたらしく、ミニガンを持った個体まで参戦している。後ろからも銃声、前には鉄血兵。鍛えられた状況判断能力を遺憾なく発揮したイェーガーは、さらにアクセルを踏み込んだ。そして彼は、メーターを見る事をやめた。

 

「突っ込むぞ!全員掴まれ!」

『きゃああああああ!?』

 

ズガガガガガガガミシミシベキバキと聞こえてはいけない音を置き去りにして、トラックは防衛線を強引に突破した。

迫る後方の敵は健在だが、彼らはもう街を脱出した。後は基地までまっしぐらだ。

 

「…さて、無事だろうか。」

 

イェーガーは言いようのない不安感を抱いていた。ついでにガソリンについても。

 

 

 

____________________

 

 

 

 

「被害状況!知らせ!」

「皆無事、とは言えないわ。EMP攻撃がかなり強力だったみたい。」

「動ける者からトラックに乗せろ。基地に戻るぞ。…いいな、ルクス。」

「…そうね。今は皆を逃がさなきゃ。幸い、トラックは生きてるから…」

「よし。行くぞ。一刻も早く撤退しなければ…」

 

ブウウウウウウウウウン…

 

「…今、ナニカが通り過ぎたような気がするのだけれど。しかも運転席にはマリウスが座っていたように見えたわ。」

「奇遇だなルクス。俺もだよ。」

「「…………」」

 

 

 

 

『全員!あの車を追えええええええ!!!』

 

 

 

____________________

 

 

 

「…ん?今何か聞こえたような…」

 

そんな事はつゆ知らず。イェーガーはトラックを爆走させ、R06基地へと向かっていた。ちなみにガス欠寸前である。

道端に見えるはずのガソリンスタンドを探して走行中。たった今通り過ぎたのが何なのか、彼は気付く事はなかった。

荷台ではガールズトークが繰り広げられているのだが、それにも彼は気づかない、

 

「ま、いいか!」

 

この男、いつにも増して頭のネジが吹き飛んでいた。理由は簡単。今乗っているトラックがとんでもないモンスターマシンであり、最高速度がちょっとしたレーシングカー並みだからだ。誰もいない直線の一本道で最高速度までぶっちぎり、ここまでやってきたと考えてもらおう。彼が変なテンションで運転している理由が分からないでもないだろう。

 

「よーしおじさんちょっと張り切ってスピード上げちゃうぞー!」

 

ちなみに言うが、今の彼の肉体年齢は20代である。

 

「アクセル全開!ヒャッハアアアア!」

 

もう一度言おう。いつにも増して頭のネジが吹き飛んでいた。

だから、こんな事になっても仕方ないのである。

 

「あれ、ガス欠?」

 

現実は、そう甘くはなかった。

この後、彼らを追いかけてきたルクス達に見つかるまで、あと三時間ーー






体調が芳しくないです。でも書きたいんです。

気付いたら午後ずっと寝てるんです。

おのれ偏頭痛。

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