↓☆↑ まえがき ↑◎↓
中編(第2話)です。
残酷・グロテスク(猟奇的)な表現があります。
サーバル 「初心者は、ふとももと、おしりがおすすめだよ!」
バサッ! と、サーバルが、カラカルのスカートを思いっきりめくった。*1
キュルル 「わああ!!」
キュルルが顔を覆って横を向いた。
カラカル 「なにすんのよサーバル!」
カラカルが起き上がろうとした。
はかせ 「死体は動いちゃだめなのです」
助 手 「ちょっとかたそうな肉ですね」*2
カラカル 「かたくないわ! ぷりっとしてておいしいわよ?
……ほらキュルル、ちゃんと見なさい」
キュルル 「……うぅ……」
キュルルは、顔を赤くして、ゆっくりとカラカルの足に視線を戻した。
サーバル 「はずかしいの? いつも見てるのに」
キュルル 「見てないよ! 見えちゃったことはあるけど……」
カラカル 「それは見たっていうのよ!」
かばん 「ふふふ……」
かばんは、3人をながめて、やさしい笑顔になった。
はかせ 「かばんがおばさんっぽいのです」
かばん 「うええ!」
助 手 「子供を見てほほえましく感じるのが、大人なのです」
かばん 「……うれしいような、かなしいような……」*3
カラカル 「あのねぇキュルル、はずかしい、とか、かわいそう、なんて思って食べなかったら、
生きていけないわよ?」
サーバル 「おなかのお肉もやわらかくておいしいよ!」
サーバルは、スカートがめくれて見えていたカラカルのおなかを、ぐにゅぐにゅっと揉んだ。
相変わらず無邪気で楽しそうだった。
カラカル 「やめてくすぐったい! そっちは上級者向けよ。おへそのあたりを切ると……」
助 手 「内臓が……」
はかせ 「腸がぶちゅっと出るです」
キュルル 「ひっ!」
サーバル 「内臓、おいしいけど苦いところもあるし……」
サーバルは、カラカルのおなかを眺めながら言った。
カラカル 「変なところ食べるとおなかこわすから、上級者向けね」
カラカルの声は明るかった。
かばん 「全然ほほえましくないよ……」
かばんは若干引きつつ、暗い顔になった。
カラカル 「かんぞう、だっけ? レバーならキュルルでも食べられるんじゃない?」
キュルル 「レバー?」
キュルルが不安そうな顔をした。
サーバル 「このあたりかな?」
サーバルが、少しスカートを戻して、カラカルのみぞおちあたりをさわった。
サーバル 「黒っぽい赤で、ぷるぷるした大きめの内臓だよ」
キュルル 「ぷるぷる……」
サーバル 「ふしぎなあじだけど、一度食べたらやみつきになっちゃうよー」
サーバルは、キュルルをからかうように言った。
キュルル 「……やめ……たべないよう……」
キュルルは再び泣きそうな顔をした。
かばん 「あーもう……この子たちは……」
かばんは、あきれと困惑が混じった様子だった。
カラカル 「レバー食べるのはいいけど、となりのふくろは押さないでよ!
ぜったいに押さないでよ!」
サーバル 「えいっ!」
サーバルは楽しそうに、カラカルのおなかを思いっきり押した。*4
カラカル 「うっぷ……」
カラカルが両手で口をおさえた。
カラカル 「は……ジャパリまん出そうになったじゃない!」
助 手 「胃から下は、腸につなが
カラカル 「うわあぁ!! やめなさい!! もっとあぶないのが出ちゃう!!」
カラカルが真剣な顔になり、穏やかに言った。
カラカル 「そうだ、下の方に、キュルルに食べてほしいものがあるわ……」
カラカルが、スカートを再び大きくたくし上げて、自分のへその下をさわった。*7
キュルル 「ぅえ?」
カラカル 「かばんさん、ヒトの……たまごはどこにあるの?」
カラカルは、子供が親に質問するように言った。
キュルル 「たまご?」
かばんが、カラカルのへその下を、人差し指でさわった。
かばん 「ここが赤ちゃんのお部屋……そして……」*8
かばんは、両手の人差し指を、『赤ちゃんのお部屋』から左右へすべらせた。
かばん 「このあたりだね」
骨盤のかどより少し内側で、指が止まった。
カラカル 「キュルル、ヒトにもたまごがあるのよ。そうでしょ、かばんさん」
かばん 「そうだよ。正確には、卵巣……新しいいのちのもと、かな」
サーバル 「たまごは、すっごくおいしいんだよ。からだの中で、いちばんかもね」
サーバルは明るく言った。だが今までの無邪気な感じとは違い、穏やかだった。
かばん 「サーバル! そんなこと言っちゃだめだよ」
かばんは少し困惑して、注意した。
カラカル 「おいしくてあたりまえね。新しいいのちのもとなんだから。
……あたしの、たからもの……ちいさな、あたしの子供たち……」
カラカルは、いとおしそうに、かばんが指差したあたりを両手でさすった。
キュルル 「カラカルの、こども?」
カラカル 「キュルル、あたしを食べるってことは、あたしから産まれるはずだった子供も
食べちゃう、ってことなのよ?」
キュルル 「そんな……」
かばん 「まだ子供とは呼べないと思うけど……正しい、かな……」
かばんは言葉をにごした。
はかせ 「つぎの世代が消えるのはたしかなのです」
助 手 「それまでに産んだ子がいなければ、ここでおしまいなのです」
かばん 「女の子のフレンズだけじゃ、新しいいのちは生まれないんだけどね」
キュルル 「どういうこと?」
かばん 「それは……まだキュルルちゃんには早いかな?」
かばんが、キュルルを見て微笑んだ。
はかせ 「早くないのです」
助 手 「十分なのです」
カラカル 「なんだかふしぎな気分ね……いのちをあげるって……」
カラカルが、感慨深げに目を閉じた。
キュルル 「カラカル?」
カラカルが目を開けて、キュルルを見た。やさしい、自信に満ちた表情だった。
カラカル 「キュルル……いのちのつくりかた、あたしが教えてあげるわ」
キュルル 「え?」
カラカル 「あとで、ふたりきりでね」
カラカルは、やさしく穏やかに言って、微笑んだ。
かばん 「ええ!」
はかせ 「ふたりの補習授業なのです……」
助 手 「カラダで教えるのです……」
はかせと助手は引いていた。
サーバル 「やったね! キュルルちゃん!」
キュルル 「……は……よくわかんないけど、ドキッとした……」
キュルルは、驚いた顔で、自分の胸に手をあてた。
カラカル 「へんなことしないわよ! 教えるだけよ!」
かばん 「まじめな話、これはとっても大切なことだよ。新しいいのちをつくる」
助 手 「キュルルが、カラカルを殺したのとは逆に……」
はかせ 「ふたりで、新しいいのちをつくることもできるのです」
サーバル 「おめでとー! ふたりとも!」
サーバルは満面の笑みで祝福した。
カラカル 「サーバルは先走りすぎ!」
かばんが、カラカルの耳元でささやいた。
かばん 「カラカル、キュルルちゃんに教えるときは、わたしもいっしょにね」
カラカル 「え? やぁ、ふたりにしてよ……」
カラカルは、しょんぼりとして、弱く反対した。
かばん 「気持ちはわかるけど、間違いが起きたら困るから。カラカルの知っていることは、
けもののカラカルのことで、ヒトとは違うんだ。知識にかたよりがあるんだよ」
カラカル 「なんかこわい……」
かばん 「たのしくお話しするだけだよ。ふたりは、これからがすっごくたのしいから。
苦しくなるくらいに、ね……。ちょっと、うらやましいな……」
かばんは、サーバルをチラッと見て、寂しそうに笑った。
サーバル 「?」
サーバルは不思議そうな顔をした。
はかせ 「またかばんがおばさんっぽいのです」
助 手 「おせっかいなのです」
かばん 「自覚あるから言わないで」
キュルル 「ぼくは……カラカルのたまご、食べるよ。食べたってことにする」
キュルルは、弱い感じだったが、はっきりと言った。
カラカル 「キュルル……」
カラカルは、悲しさとうれしさが半々、という表情だった。
サーバル 「ほかも食べる? カラカルの足でおなかいっぱいかな?」
カラカル 「ヒトって、無駄に足が長いからねー」*9
カラカルは自分の足を見た。
カラカル 「でもキュルル、あたしの足だけは、なるべく早く食べなさい」
カラカルは強く言った。命令ではなく、警告だった。
キュルル 「どうして?」
カラカル 「まわりを見てみなさい。あんたは食べるのに夢中で気付かなかったけど……」
はかせ 「獲物を横取りしようとする子たちが集まってきたのです」
キュルルはまわりを見回した。そこはサバンナではなく研究室だったが、サバンナの景色が重なって見えた。そこに現れた、フレンズとも元の動物ともつかないけものたちが、にじり寄って来るのが見えた。
助 手 「追い払うのです」
キュルル 「えっと、どうすれば……」
カラカル 「ダメね……あんたじゃかんたんに取られちゃうわ」
かばん 「ものを投げる、とか?」
キュルル 「石とか、木の枝とか……バッグとか……」
キュルルは、自分が物を投げているところを想像した。けものたち中の何匹かは逃げていった。
はかせ 「投げるものがなくなったのです」
キュルル 「ぅええ!」
かばん 「いじわるだね……」
サーバル 「わけてあげようよ」
キュルル 「え?」
カラカル 「……あたしのしっぽを切って、投げるといいわ」
キュルル 「!」
キュルルがはっとした。
カラカルが、少し体を傾け、しっぽを大きく振った。
カラカル 「それで足りなければ、うでもあげちゃって」
カラカルは、自分の腕を上げて見せた。
サーバル 「骨付き肉だね! みんな喜ぶよ!」
キュルル 「そんなことできないよ! たいせつな、カラカルの体……ぼくのものなのに……」
キュルルは、カラカルの腕を見つめた。少し怒ったようだった。
カラカル 「あんたねぇ……こんな大きな獲物をひとりじめするつもり?」
はかせ 「キュルルひとりでは食べきれないのです」
サーバル 「ほら、食べなよっ!」
サーバルが、カラカルのしっぽを投げるまねをした。
キュルル 「あ……」
カラカルのしっぽは、研究室から、想像の中のサバンナへ飛んだ。3匹のけものが集まり、しっぽを引きちぎって食べ始めた。一匹が大きな部分を持ち去っていった。
助 手 「あと2匹」
キュルルが、カラカルの手首をつかみ上げて、“超絶切れ味のいいはさみ”を、カラカルの腕に近づけた。そこで、止まった。
カラカル 「なにやってるの? あたし、ほかの子に取られちゃうわよ?」
カラカルは、少し冷たい口調だった。
キュルル 「……カラカル……ごめん!」
キュルルは、はさみでカラカルの腕を切るまねをした。
キュルル 「えいっ!」
そして、切り落とした腕を、想像の中のサバンナへ投げた。2匹のけものがそれを奪い合い、勝った一匹が持ち去っていった。もう一匹は、ちぎれた指を食べた。
サーバル 「おなかいっぱい食べたら、あとは残して、その場を去るんだよ」
姉が弟に教えるように、サーバルは、キュルルに言った。
キュルル 「残しちゃうの?」
サーバル 「まってる子がたくさんいるから」
かばん 「順番があるんだ。残ったものを、別の子が食べるんだよ」
助 手 「一匹の大きなけものが死ぬと、たくさんの生き物が、順番にそれを食べるのです」
はかせ 「カラカルは、自分のいのちを、たくさんの生き物に分けあたえるのです」
かばん 「食べるのは、肉食のけものだけじゃないよ。虫や微生物、植物まで……」
サーバル 「カラカルは、サバンナなら、三日もたたずに骨だけになるね」
カラカル 「骨をかじるもの好きもいるわね……」
サーバル 「フレンズによって、好きな部位は違うから」
カラカル 「残ったお肉は、腐ってうじ虫がわいちゃうから、新鮮なうちにきれいに食べなさい」
サーバル 「腐っちゃうと、においがひどいんだよね……」
サーバルは眉をひそめた。
かばん 「でも、そのにおいは、たくさんの生き物を引き寄せるんだ。
ここに食べ物がある、って」
サーバル 「腐ったお肉が好きな子もいるからね」
カラカル 「まあ、キュルルじゃ、骨のまわりまで、きれいに食べられないかもね」
キュルル 「そうなの、かなぁ……」
キュルルは少し暗い感じで言った。想像がつかない様子だった。
サーバル 「キュルルちゃん、カラカルの舌、ざらざらしてるよね。なんでかわかる?」*10
キュルル 「え? えっと……」
キュルルは、素直にそのまま答えようとした。
カラカル 「キュルルはざらざらしてるとか知らないでしょ!」
サーバル 「カラカル、キュルルちゃんをぺろぺろしてたじゃない」
サーバルは、ごく当たり前のこと、という感じで言った。*11
キュルル 「うわあ!!」
カラカル 「見てたの!」
後編へ続く
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読んでいただきありがとうございます。
カラカルとキュルルは、想像以上になかよしでした。ざらざらの理由とは……。