いのち   作:くにむらせいじ

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 ↑△↓◎↑ まえがき ↑☆↓◎↑

 後編(第3話)です。

 残酷・グロテスク(猟奇的)な表現があります。
 


いのち 後編

 

サーバル 「カラカル、キュルルちゃんをぺろぺろしてたじゃない」

 サーバルは、ごく当たり前のこと、という感じで言った。

 

キュルル 「うわあ!!」

カラカル 「見てたの!」

 

かばん  「ありゃー……」

 かばんが苦笑いした。

はかせ  「痛そうなのです」

キュルル 「カラカルはやさしいから痛くないよ!」*1

カラカル 「ちょっとキュルル!」

 カラカルはあわてた。

サーバル 「ちゅっちゅもしてたよね」

カラカル 「あれは! えと、くちうつしで……」

 カラカルの声が小さくなっていった。

キュルル 「ざらざらがおいしいんだよ!」

 キュルルは混乱気味だった。

カラカル 「なーに言ってんのよキュルルー!!」

 カラカルは顔を赤くして叫んだ。

助 手  「なかよく墓穴を掘っているのです」

サーバル 「舌を食べるなんてマニアックだね!」

 

カラカル&キュルル 「たべない(わよ)(よ)!!」

 ふたりが見事にシンクロした。

 

かばん  「ストップストップ! ちょっとおちついてねー」

 カラカルとキュルルは、素直に落ち着いた。

かばん  「ネコ科の舌がざらざらなのは、骨に付いた肉をなめとるためなんだ」

カラカル 「身だしなみのためでもあるわ。それに、つばをつけて毛をなめると、ひんやり

      するのよ。この体じゃ毛づくろいできないけどね」*2

 カラカルは、べーっと舌を出して見せた。

キュルル 「さいごまで食べるためなんだね……」

サーバル 「きれいに食べてあげなきゃ、死んだ子がかわいそうでしょ」

 サーバルは明るく言った。姉が弟に教えるように。

カラカル 「あたしも……きれいに食べてほしい。みんなで……」

 カラカルは穏やかに言った。神様にお願いするように。

 

カラカル 「そうだキュルル」

 カラカルは、何かを思いだしたように言った。

キュルル 「なに?」

 

カラカル 「あたしが食べられていく “途中の” 姿は、想像しないほうがいいわ」

 カラカルは素っ気なかった。

 

キュルル 「へ?」

サーバル 「それはさすがにやめたほうがいいよー」

 サーバルが眉をひそめた。

助 手  「かなりぐちゃぐちゃなのです」

はかせ  「でもまだフレンズのかたちが残っているのです」

 

かばん  「絶対に想像しちゃだめだよキュルルちゃん」*3

 

 ―――― 自主規制により削除されました。 ―――― *4

 

キュルル 「……う、う……うああああーーー!!」

 キュルルは頭を抱えて叫んだ。

 

かばん  「これは……トラウマにならないか心配だね……」

 かばんは若干引きつつ、苦笑いした。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

助 手  「こうして……」

はかせ  「カラカルは骨になったのです」

 

かばん  「食べられずに残った肉や、地面にしみこんだ血は、虫や微生物によって分解されて、

      草木の養分になるんだ」

キュルル 「どこにも無駄がない……」

かばん  「そう、なにも無駄にならない。残った骨だって、だんだん砕けて、植物の成長を

      助けるんだよ」*5

助 手  「むだにならない養分といえば……」

はかせ  「食べたら出るもの……」

サーバル 「うんこー!」

 サーバルは、正解が分かった子供のように、うれしそうに言った。

かばん  「サーバル、せめてフンって言ってね……」

 かばんが苦笑いした。

カラカル 「あたし、そこまでいっちゃったのね……」

 カラカルも苦笑いした。

かばん  「その養分で育った草を、虫や草食の子が食べて、虫や草食の子を、肉食の子が

      食べて、たくさんの動物がフンをして……」

カラカル 「うん……フンを食べるけものだっているのよ」

キュルル 「ぐるぐる回ってるんだ……」

かばん  「とても大切なことに気がついたね。“いのちはめぐる”」

キュルル 「いのちはめぐる……」

かばん  「こんな図を見たことがあるかな?」

 かばんは、ホワイトボードに三角形を描いた。そしてそこに階層を書き込んでいった。

かばん  「食物連鎖のピラミッドだよ」

キュルル 「見たことあるよ。下の生き物を、上の生き物が食べる……」

 カラカルが体を起こして、ホワイトボードを見た。

カラカル 「あたしとサーバルは、いちばん上にいるわね」

かばん  「この図は大事な線が抜けているよ。なんだと思う?」

キュルル 「えっと、こうかな?」

 キュルルが、ピラミッドの頂点から、底辺へ向かう矢印を描いた。

かばん  「よくわかったね」

キュルル 「たしかに、ぐるぐる回ってるね。いのちの輪っかだ」

かばん  「細かく見ていくと、とっても複雑にからみ合っていて、単純な輪にはならない

      けどね。全体が、絶妙なバランスで成り立っているんだ」

 

サーバル 「もっと大事なのが抜けてない?」

 

キュルル 「ぅえ?」

かばん  「抜けてる?」

サーバル 「ほら、キュルルちゃんとカラカルがつくったやつだよ!」

助 手  「新しいいのち、ですね」

カラカル 「つくってないわよ!」

サーバル 「ごめんごめん、これからつくるんだったね」

 サーバルがカラカルを見て微笑んだ。

カラカル 「そうよ! じゃなくて、つくらないわよ!」

かばん  「それはまた別の図で描かないと……。いや、この中に含まれているとも言えるね。

      ……いのちの線……流れ……。うーん、さらに複雑になるね……」

 かばんは、ホワイトボードに図を描き足そうとしたが、手が止まった。

カラカル 「そんな難しく考えなくていいのよ。ぜんぶでひとつのかたまりでしょ?」

はかせ  「カラカルは単純すぎるのです」

キュルル 「あれ? そのかたまりって、もしかして……」

 

助 手  「余談ですが、このバランスを壊すけものがいるのです」

かばん  「う……」

 かばんが固まった。

はかせ  「ここにふたりいるのです」

キュルル 「ふたり?」

はかせ  「この三角のどこかが減りすぎたり、増えすぎたりすると、バランスが崩れて、

      全体に影響が出るのです。たくさんのいきものが絶滅するです。ヒトも含めて」

かばん  「……謝っても許してもらえないよね……」

はかせ  「安心するです。いのちは、ヒトごときに消されるほど弱くないのです」

助 手  「壊滅的状況になっても、やがてもとに戻るのです」

かばん  「復元……じゃなくて、再構築だね。絶滅した生き物は、帰ってこないから……。

      そう、極端な話、恐竜が絶滅した時みたいに、生き物の姿が変わるんだ」*6

助 手  「いのちは再構築されるのです。ヒトがいなくなれば」

はかせ  「いのちは、本来の形に戻るのです。ヒトがいなくなれば」

キュルル 「……ぼくたち……だからいなくなったんだ……」

 キュルルは、少しうつむいて、暗い顔になった。

サーバル 「ヒトをそんな悪く言わないでよ。ヒトは、いいこともたくさんしてくれたよ?」

 サーバルが抗議した。

カラカル 「ジャパリまんは、ヒトのやさしさね」

 カラカルは明るく言った。

かばん  「ゆがんだやさしさだけどね」

 かばんは困ったように、サーバルとカラカルに笑いかけた。

かばん  「ジャパリまんは、いのちの輪っかを無視したものだから」

はかせ  「そういう不器用なところがヒトの長所であり、短所でもあるのです」

キュルル 「どこかで聞いたようなセリフだね……」

助 手  「ゆがんだやさしさ……フレンズ自体、自然の摂理から外れたいのちなのです」

 助手は、少しだけ憂いを見せた。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

かばん  「キュルルちゃん、もう一度きくよ。いのちって、なんだと思う?」

 

 キュルルは考えこんだ。

キュルル 「…………わからない……」

 

はかせ  「だから言ったのです」

助 手  「答えのない問いだと」

 

かばん  「じゃあ、いのちって、きれいだと思う?」

 

キュルル 「いのちは、サンドスターみたいにキラキラしてない。むしろ逆なんだね……」

かばん  「どろどろしてるよね。……それにわたしは……今までヒトがしてきたことを思うと、

      恥ずかしくて、“命は美しい”なんて言えない」

キュルル 「……それでも、それでもぼくは、きれいだって思いたい……」

かばん  「よく言えたね。荒っぽいやり方だったけど、勉強になったかな?」

キュルル 「わからないけど……今まで知らなかったのがはずかしい、って思った」

 

カラカル 「ヒトって、そんなこと考えるほどヒマなのね……」

 カラカルが、テーブルから上体を起こしながら、あきれたように言った。

サーバル 「いろんなこと知っていて、考えられるのは、ヒトのいいところだと思うけどなー」

 

カラカル 「キュルル、あたしのむねに耳をあてて」

 キュルルが、カラカルの胸に再び耳をあてた。

 とくん、とくん、とくん、と、先ほどより落ちついた鼓動が聞こえた。

キュルル 「いきてる……カラカルが生きてる……いきてる……」

 キュルルが、カラカルを抱きしめて、胸に顔をうずめた。

カラカル 「やだ、また泣いてるの?」

 カラカルは、キュルルの頭をやさしくなでた。

キュルル 「だって、だって生きてるんだよ? すごい……」

 

カラカル 「いのちってなに? なんて、考えなくていいの」

 カラカルが顔を上げ、かばんを見た。

カラカル 「“あたしたちは、生きてる”、それだけよ」

サーバル 「うん! みんながんばって生きてるんだよ! みんながいのち!」

 

助 手  「まったく、このにゃんこ共は……」

はかせ  「答えになってないのです」

かばん  「カラカルとサーバルはすごいね……。その通りだよ。わたしは……

      わたしたちは、難しく考えすぎていたのかもしれない」

 

 キュルルが体を起こし、カラカルの目をまっすぐに見た。至近距離だった。

カラカル 「な、なによ」

 カラカルは少しうろたえた。

 

 カラカルの瞳、かすかに野生が残るその先に、一瞬だけ、カラカルの本来の姿が見えた。

 

キュルル 「すっごくきれいだねー……」

 キュルルは、初めてサンドスターを見た時よりもずっと強く感嘆した。驚き、喜び、陶酔……。

 世界一美しい宝石を見つけたようだった。

 

カラカル 「え……」

 カラカルがはっとした。そして少し頬を赤くして、放心したようにキュルルの目を見つめた。

 

キュルル 「……カラカル」

 

 カラカルの目がうるんできた。

 

キュルル 「わわ! ちがうちがう! カラカルはきれいじゃなくて、いのちが!」

 キュルルは、あせって言いかえた。

カラカル 「あたしがきれいじゃないって?」

 カラカルは、涙があふれそうな目でキュルルをにらんで、少し重い感じで言った。

キュルル 「うわぁ! えと、カラカルはきれいというより、かわいい方だと思うよ!

      すっごくかわいい!」

カラカル 「ぁう……」

キュルル 「……あれ?」

カラカル 「……あんたってまだまだ子供ねぇ……」

 カラカルはそっぽを向いて、目をこすって、さらに顔を赤くした。

キュルル 「うぅ……」

 キュルルもうつむいて、顔を赤くした。

サーバル 「あはは! やっぱりなかよしだね!」

 

かばん  「サーバルちゃんもきれいでかわいいよっ!」

 かばんは、カラカルとキュルルに向けて抗議し、がしっとサーバルの肩を抱いた。妙に勢いがあった。そしてナチュラルに“ちゃん付け”だった。

 

サーバル 「ええ! 急になに言いだすのかばんちゃん!」

助 手  「なにを対抗しているのです?」

はかせ  「こっちもまだまだ子供なのです」

 

 

 

 おわり

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:
 唾液でぬらして、舌先を使ってやさしく舐めれば痛くないようです。

*2:
 舌のざらざらは、水飲みにも役立っているようです。食事、身だしなみ(抜け毛取り)、体温調節、水飲み……ぺろぺろちゅっちゅ……。マルチツールです。

*3:
 とどめを刺すかばんさん。

*4:
 ここは、40行くらいありました。各キャラが、カラカルがどうなっていくのかを、たたみかけるように詳細に説明する、という内容でした。本当にトラウマになりそうな内容だったため、カットしました。

*5:
 毛と骨は最後まで残る……はずですが、骨の成分の多くは、時間をかけて分解されます。それでも残った部分は風化します。土や泥に埋もれて形が残り、長い長い時間をかけて、成分が別のものに置き替わると、化石になります。

*6:
 ヒトには、恐竜を絶滅させた隕石ほどの力はありません。ヒトが引き起こした環境破壊は迷惑行為ですが、地球の歴史の中では小さなものです。少し時間が経てば、破壊された環境に適応する生物が生まれるでしょう。




 ◎ あとがき ◎

 読んでいただきありがとうございます。

 ごく当たり前のことを書いていたら、言いたいことがたくさん出てきて、どんどん長くなり、こうなりました。足し算で書いてしまうのは、私の悪い癖です。もっと削りたいんですが……。
 書いていいのかこれ、って思うところもありましたが、ちょっとキツめにした方がいいかな、と思って書きました。
 もっと残酷に、もっとグロテスクにもできるんですが、長くなるのでこのくらいにしました。あと、やりすぎるとR-18になってしまいます。すでに自主規制が入ってますし……。

 明るいおはなしにしたつもりですが、私は、(筆者と登場人物の両方が)悪ノリして遊んでいただけにも思えて、嫌な感じがします。
 決して、カニバリズム(食人)を肯定するわけではありません。

 このおはなし、実は仮想現実(VR)なんです。ゴーグルなどのデバイスを使用しない、想像するだけの仮想現実です。(今回の場合、カラカルの体を使ったARかも)

 本作のサーバル、無邪気にすごいこと言ってるんですよね……。ちょっと怖いキャラになってしまいました。でも、パークでぬくぬくと育ったのではなく、本当のサバンナで野生動物として生きてきて、フレンズ化してもその感覚が残っているなら、こんなものだと思うんです。

 R-15にしましたが、本当は全年齢にしたかったです。

 臓器の描写や食物連鎖の話などは、間違いがあるかもしれません。

 私は、原作とは逆の方向の、ひどいものばっかり書いています。認めたくないですが、私はこういうのが好きみたいです。嫌いだけど書いてしまうのかもしれません。本当は、ほのぼのとした甘いおはなしが書きたいんですが……。


 カラカルとキュルルがなかよしなのは、筆者の趣味です。
 私は、カラカルとキュルルをくっつけたうえで、2期のサーバルとかばん(大人)をいちゃいちゃさせたい、と思っています(最近私の中でブーム)。そのうち書きたいです。ネタの鮮度が低いですし、原作のファンの方々から嫌われそうな展開ですが……。

 加えて、私は……
 カラカルとキュルル間にできた子と、イエイヌが友達になって、その子は、イエイヌの“ごしゅじん”になる。そして4人(親子3人とペット一匹)はしあわせな家族に……(もちろん、サーバル&かばんもくっついている)。
 ……という無茶苦茶な妄想をしています。設定とか物語の流れとか破壊しまくりですが、強引にでも、甘いハッピーエンドにしたいんです。今までつらかったみんなに、ごほうびがあってもいいんじゃないかと。

 キュルルは、両親がいない(親という概念すら忘れている?)子供、という悲劇のキャラクター、と解釈することもできます。子供にとって、親の存在は大切なのに……。
 制作者という親に恵まれず、間に合わせで作られたキャラクターだから、設定もいい加減、とも言えます。そしてファンにも嫌われてしまう……。かわいそうです。
 だからキュルルは家族を持って、しあわせになってほしいんです。無知や経験不足は、まわりのフレンズたち(特にかばんさん)がフォローしてくれるはずです。

 とか言いつつ、私は自分の作品でキュルルをいじめまくっています。


 クリスマスにこんなものを投稿した理由は、半分は皮肉であり、もう半分は“むしろこういうものがクリスマスにふさわしいのではないか?”と、本気で思ったためです。
 ( 2019/12/25 00:00 後編投稿 )

 このあとに、『おまけ〈 はずかしさ 〉』を投稿します。

 
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