花言葉:「清浄」「尊厳」「純潔」「堂々たる美」「汚れのない心」「生気の抜けた死」
金盞花(マリーゴールド)
花言葉:「慈愛」「静かな想い」「暗い悲しみ」「 乙女の美しい姿 」「失望」 「初恋」「悲嘆」
『きっかけ』という物は理不尽だ。
それは時、場所、内容、望む望まないに関わらず、急に突き付けてくるからだ。
あまつさえ『きっかけ』という物は気付かぬうちに忍び寄っている。
ふとした行動……そうだね、極論言えば手をブラブラしたり、道端に落ちているものを拾ったりするだけで、簡単な動作でもきっかけを進めてしまうという事だ。ひょっとすると何もしていなくてもガラリと人生が変わってしまう事だってある。
そこには「もしもあんなことをしなかったら」「あの時、別の事をしていれば」なんていう
たとえ望んでいたとしても、願ったとしても。
人生をやり直すなんて事は天地がひっくり返っても出来ないという事だ。
楽しい未来も、悲しい未来も表裏一体。
どんな未来が訪れるかは、運とその人の選択次第なのだ。
――この話はチャンピオンになれなかったあたし『マリィ』と、チャンピオンに
§ § §
『えっと……ネズです。スパイクタウンは残念ながらダイマックスできないのですが、ある意味ポケモン勝負本来の姿でもあるんで、そこをアッピールしたいです』
5年くらい前のこの時の事は今でも鮮明に覚えている。
TVの中のアニキがいつも以上に真面目な口調で、かつ少し震えながらアナウンサーに話しかけていたのが凄く特徴的だった。
今と比べればファッション性なんて欠片もなく、どこにでもいそうな背伸びしてオシャレした一青年で、見目が立ってる訳でもなく、お世辞にも格好いいとは言えないトレーナー。でもあたしはそんなアニキを見て大いに泣いていた。
嬉しくて、嬉しくて、ぼろぼろ涙を流して泣いていた。
それは街中の人も同じであった。
小さく狭い料理店の中にぎゅうぎゅうになる程みんなで集まって、壁に備え付けられたモニタを眺めて、
アニキ。心優しいアニキ。
この寂れた町と歌をこよなく愛する、真面目だけど少し
あたし達はそんなアニキがこの街のため、そして自分達のために日々どれだけの汗をかき、どれだけの涙を流して特訓をしていたかを知っている。
だからこそ、アニキの努力が実を結んだのが瞬間が見れたのが心の底から嬉しくて、誇らしくて。そして頑張った自分ではなく私達の街の事をアピールしてくれたいじらしさが、何よりも格好いいと思えたものだった。
『あと妹がいて……おれより素質があるんですけど、彼女が大きくなってジムリーダーになるまでは、歌ったりしながらみんなで街を盛り上げていきます!』
……しぇからしか。
今はアニキが主役でしょ、なのになんでアタシの話を出すのさ。
いいから今はただただアニキを祝えばいいものを、周りのみんなもアニキのコメントに共感するように「そうだぞ!」「応援してるぞお嬢!」なんて声ばかけてきたけどさ、流石に気が早すぎるよね。
――でも。あたしはその時、思ったんだ。
他でもないアニキが認めてくれたのなら、本当に私もなれるのかなって。
自信も実力もない、泣き虫なあたしでも。
アニキのような格好いいジムリーダーになれるのかなって。
「……ね、モルペコ。あたしでもなれるかな?」
「うら?」
丁度この頃、アニキがくれたあたし初めてのポケモン……膝の上の
「うらら!」
「うん……うん。ありがとうね」
あたしはモルペコをちょっと強めに抱きしめながら、その時誓ったんだ。
いつかこの街のジムリーダーに。
ううん。アニキを超えるトレーナーになってみせるって。
これがあたしの人生で初めての大きな転機。
――そして、今。
「キョロキョロしちゃって」
「え?」
エンジンシティ。ジムチャレンジ開催直前。
意欲を燃やす挑戦者達がひしめきあう中で一際挙動不審な少女とあたしは出会った。
腰に二個のモンスターボールをひっさげ、ぽややんとした、恐らく同年代のその子は、真新しいジムセンターに似つかわぬ……なんて言うたらよかと? 田舎く……じゃない、純朴さが目に見えていた。
「あんた田舎から来たんでしょ、だってあたしもそうだし」
「……うえっ!? わ、私そんなにキョロキョロしてました……?」
「うん。大分ね。傍目でもおのぼりさんだーって分かるくらいには」
「うぅ……っ!」
……今思えば失礼極まりない発言だと思う。
お互い田舎同士だとしたらなおさら上から目線の発言なんて出来やしないというのに……多分、あたしも緊張してたんだろうな。
そんな子に声をかけてしまったのは、自分よりも駆け出しも駆け出しといった如何にもな風体、その雰囲気に共感できるモノがあったのと、自らを落ち着かせるためだったのかも。
「あはは、ちょ、ちょっと舞い上がりすぎてたかも……」
「そげんことなかばい。誰だってここ来るの初めてならそんなもんでしょ」
「そげ……実は二回目なんだけどね、それもずっと前に親と来ただけだけど」
その子はあたしの指摘に気を悪くする事もなく、ただ慌て、恥ずかしそうにしてたけど、やがて照れくさそうに頭ばかいて微笑み、見た目以上の純朴さを見せ付けてきた。
この時点であたしはこの子の事が気に入りかけていたけど……その反面、今後この子と会うことは無いのかもしれない、なんて侮りを胸に抱いていた。
「勝手に話しかけてゴメンね。それじゃ、お互い頑張ろうよ」
「う、うんっ……ありがとう。そっちこそねっ」
――これがあたしの人生で二度目に大きな転機。
『ユウリ』という少女との初めての出会いであった。
§ § §
私達の住まう土地、ガラル地方。
ここでは一年に一回行われる、若手から経験豊富なトレーナーが参加する、『ジムチャレンジ』――8人のジムリーダーを倒し、そして現チャンピオンを打倒することを目指す――という催しが開かれ、例に漏れずあたしはこの競技に参加していた。
ジムチャレンジに参加するのはあたしの子供の頃からの夢。
地元スパイクタウンでアニキや街の人達と何度も何度も訓練を積んで、ようやくアニキから参加権となる推薦状を貰う事が出来たのだ。
開催地となるエンジンシティに立っているのだと考えると……夢のための一歩をようやく踏み出す事が出来たのだと思うと、どうしても高ぶる心を抑えられなかった。
くだんの『ユウリ』と出会ったのは開催式直後のことだ。
その時は長い付き合いになるとは到底考えておらず(当たり前か)
また、その場を別れたあたしだけど、ユウリとの再開は意外にもそのすぐ後の事だった。
ジムチャレンジャーとして登録し、宿泊先に指定されたスボミーインで休もうとした矢先……ホテルロビーに先ほどの女の子(と男の子)を見かけた。
……まあ見かけたのはその子らだけでなくてうちの
なんでロビーでポケモンバトルするハメになるん。なんで選手達の宿泊ば邪魔しとるん。理由は大体あたしの為だってのはわかっとるけど……熱くなりすぎ。ルールを守って勝ち抜かないと意味ないじゃん。
「「「マリィ!? いや、あの、ちょっと……」」」
「「……マリィ?」」
「あんたたちがジムチャレンジャーを気にするのはわかるけど、ちょっとばかり手荒すぎるって」
ほら帰って帰って! って言ってやったらみんな見て分かるほどしゅんとして下がっていった。
ジグザグマより分かりやすい凹み様やね……みんな悪い人じゃないし、気持ちは嬉しいけど、こればかりはね。
「あたしの応援に夢中で他のジムチャレンジャーにはとげとげしい態度になってるの。不愉快な思いさせたらゴメンね」
「え、あ、ううん! 大丈夫だよ、気にしてない!」
あたしが謝罪しても女の子は気にしてないと言わんばかりに頭を振っていた。
さっきのぽややんとした感じはそのままだけど、エール団の二人を事もなく倒せるその実力はちょっぴり見直した。なかなかやるじゃん。
「オマエもジムチャレンジャーか! エール団だっけ? さっそくファンがいるなんてすごいぞ!」
その子と同行してるウールーみたいなもこもこ天パの男の子が言ってきたけど、あたしは苦笑いしか出来ない。だってファンというよりかは、親戚みたいな身内だもん。
それにしても、二人は幼馴染かなんかなのかな?
さっきのダブルバトルも息があってたし、中々いいコンビなのかもね。
でもね、如何に二人がいいコンビだろうとあたしには負けられない理由がある。
「いよいよジムチャレンジね……悪いけど勝つのはあたしだから」
あたしがそう啖呵を切ると、二人は臆すことなく力強く頷き返してくれた。
うん。そうこなくっちゃね。
――その後も、私とその二人組はちょくちょく顔を合わせた。
時は少し過ぎ、草タイプのヤローさん、水タイプのルリナさんと2つのジムトレーナー戦を経て、いずれのジムバッジも勝ち取ったあたしは、いよいよ最初の関門とも言われる炎タイプのジムリーダー、カブさんを相手取る形となった。
カブさんの拠点であるエンジンシティに辿りつき、スボミーインで食事とお風呂を頂いた後、まだ時間もあるし散歩でもしようかな、なんてロビーでうろついていたら、ばったりと
「えーっとユウリ選手だっけ、おそくまでがんばっとーねー」
「え? あ。あの時の――」
おぼろげだったけど、どうやら名前はあってたみたいだ。
隣にいたウールー髪の子が「ユウリ、ユウリ」って楽しげに話しかけてたからね。
「――マリィちゃん!」
「……うちの名前覚えとーと?」
「うん。えっと、エール団、だっけ? あの人達がそう言ってたから……」
……まあうん。覚えるよねそれは。
迷惑集団の長みたいなもんだし、嫌な感じのイメージがついちゃったかなぁ。
なんて思ってたら顔に出てしまったのか、慌ててその子は訂正してきた。
「あ、べ、別にあの時のことは全然根に持ってないからね!? むしろ、マリィちゃんは応援団がついちゃうくらい可愛いってのはよく分かるし……」
「そ? ありがとね」
いつも耳がタコになるほど地元では言われてきたけど、邪気のない表情で言われると悪い気はしないかな。
だからだろうか、本当はこの時は他愛もない話で終わらせるつもりだったけど……なんだろう、ふと魔がさしたと言うか興が乗ったというか……この子と無性に戦ってみたくなったのだ。
「そうだ。あんたちょいと付きあってよ。あたしがジムチャレンジで勝てるか試しておきたいし」
「えぇっ?」
嘘だ。本当はこの子よりあたしの方が強いって事を確認したくて戦いを仕掛けたに過ぎない。
夜遅く、それもホテルロビーでお願いするなんて、あたしもエール団の事を言えないくらい行儀が悪かんね……だけど、
「うん。望む所だよマリィちゃん!」
「おぉ! やる気やなぁ!」
だけど、この子は戦いを快諾してくれた。
その表情は何よりもあたしとの対戦、いやポケモンと一緒に戦える事にワクワクしているように思えた。ま、折角乗ってくれたっていうなら、この機会をありがたく活かさないとね。
「負けると不機嫌になるからね……ま、あたしが負ける訳ないけど!」
「えぇっ……う、うーんでもこっちこそ負けないからね!」
腰につがえたポケモンボールを手に、私はユウリと初めての勝負に挑んだ!
………。
……。
…。
「やったぁ! お疲れ様
「きゃーうっ♪」
結論から言えば……あたしは負けてしまった。
途中まではあたしが場を制していたと思う、だけど彼女の
「マリィに勝つなんて……あんたちょっとはやるじゃん」
「えへへ……ありがとうねマリィちゃん、こっちもちょっとハラハラしちゃった」
この時以上に自身の表情が
格の差を見せつけるつもりで挑んだのに、蓋を返せば接戦とも言えない大敗……なんてザマなのだろうか。悔しさに少し拳を握りしめながらも、あたしは顔色に出ないように努める他なく。
「あの」
「明日に備えて寝るか……じゃああんたもお休み」
「うらら!」
ユウリは対戦に勝てた事が嬉しいのか話かけようとしたけれども、今のあたしに返事をする余裕はない。唯一出来た事は、何でもないのだと装いながらも足早にその場を去る事だけだった。本当、格好悪いし……最悪だね。あたし。
「……うらら」
「……ごめんねモルペコ、みんな。全部あたしが油断してたせいだ」
モルペコもシュンとしてるけど、モルペコは悪くない。悪いのは油断してたあたしだ。みくびった結果負けるなんて……一番サイテーな結果だ。アニキもあたしを叱るだろうな。
あたしはそのまま部屋に出戻ると、着の身着のままベッドにポスンと飛び込み、早くこの嫌な気持ちが退いてくれる事を祈り続けたのだった。
その翌朝。あたしはホテルのロビーで相手を待っていた。
お目当ては昨日あたしを打ち負かした『ユウリ』という女の子だった。
「おはよ」
「あれ、マリィちゃん? おはよう」
ユウリは明らかに声ばかけてきたあたしを不思議に思っているようだった。
まあ……そりゃそうだよね。でも昨日の今日で再戦なんて言うつもりはないから安心して。ただ単にあんたに用事が出来ただけだからさ。
「あんたの友達、もうジムチャレンジに行ったよ。カブさんのリーグカードでばっちり対策したとか言ってさ」
「ホ、ホップったら……ごめんね、わざわざそれを伝えに?」
「それもあるけど、一番はコレ。なんか沢山くれたからあんたにも分けてあげるよ」
「わ、と、カブさんのリーグカード? こんなに?」
「うん。あたしもびっくりしたよ」
そのホップとやらはユウリと同じ快活な少年ではあるが、何というかユウリよりも猪突猛進で思い立ったらすぐ行動っていう熱血漢。会って二度目だと言うのにホテルであたしと目が合った瞬間、色々
「なんか、その色々迷惑かけてごめんね……」
……疲れた表情ばしとる。日頃から振り回されとるんやろーねー。
「ううん。あたしも昨日いきなり勝負仕掛けちゃったし、こっちこそごめん。そう言えば二人は幼馴染なんだっけ?」
「そんなそんな! いい経験になったよ、ありがとね! ……うん、お隣さん。昔っからホップはダンデさん……チャンピオンに憧れてて、それであたしも一緒に~ってほとんど強引に誘われちゃって……」
「へぇ。じゃあジムチャレンジもその子がきっかけで?」
「そうだよ~。最初はチャンピオンとか別にそんなに、って感じだったけど……ポケモン達と一緒に過ごしたり、触れ合ったり、あと一緒に旅をしていったら楽しくて楽しくて……」
うん。本当にイキイキしとるね。
話を聞くにヒバニーとはまだ出会って間もないのに息もぴったりだったし、あたしを負かす実力もある。何だかんだで警戒しなきゃ駄目かもね……。
「あ、そうそう……昨夜の勝負のお礼」
「やけどなおし……いいのマリィちゃん?」
「敵に塩を送られるんはいい気分がしない?」
「て、敵って……そんな事はないよ、嬉しいよ!」
「あはは。ま、そう気構えないでよ。ただのお礼だからさ」
敵と言われておろおろしてるユウリば見ると、何だか拗ねてたあたしが馬鹿らしく思えてきて、自然と昨日のわだかまりは無くなっていた。
「あたしに打ち勝つ実力もあるんだし、あんたなら燃える男、カブさんにも勝てるんじゃない?」
「……うん。勝ってみせるよ! ありがとうマリィちゃん!」
この笑顔、やる気に満ちあふれて眩しいくらいだ。
この時点であたしは間違いなくこの子がジムチャレンジを勝ち続けるのだと本能的に悟っていた。……だったらあたしもこの子に負けなくらい実力をつけて、次こそは一糸報いてやらんとね。
「うら!」
主人のやる気を感じ取ったモルペコが元気よく返事をしたのを皮切りに、あたしも先のジムへと急ぐのだった。
……それにしても、マリィちゃんは恥ずかしか。
次会う機会があるなら呼び方を変えて貰おうか、うん。
§ § §
次にユウリに会ったのはアラベスクタウン。
大樹をくりぬいた場所に作ったと言われる、なんかファンシーな場所だった。
ここのジムは今までのジムバトルとは違って……何だろう、凄い個性的だった。
何というかチャレンジっていうか面接っていうか……? ジムリーダー後継者のオーディションも兼ねてた感じだった。
ジムリーダーであるポプラさんっていうお婆さんにはどうにか勝てたけど、『ピンクが少し足りないね、チャレンジは合格。オーディションは残念だけど不合格だよ』って言われて、折角の勝利もなんだか釈然としぇんかった……。
それでもどうにかして仲間たちと5つ目のバッジを手に入れたんだ。浮かれるのも程々に次のタウンに進もうとした――その矢先。あたしはまたもユウリと出会えた。
「おっ、ユウリ選手」
「あ、マリィちゃん!」
何だかんだでいつか会えるとは思ってたけど、存外早い遭遇だ。
あたしを見つけたユウリは嬉しそうにこちらに近づいてきた。
「ジムチャレンジしてきた所? どうだった?」
「何でんなか。当然勝って来た所だよ。個性的なジムやった……」
「流石マリィちゃん……!」
「そういうそっちこそ、ここまで来たってことはジムバッジ4コでしょ? あんた要注意だね」
「そんなそんな~、警戒するほどじゃないよ~」
なんて照れながらも
「そう? ほらモルペコだって警戒してる……ってモルペコ、あんたもしかしてユウリを気にいっちゃった? もう! ジムチャレンジャー同士真剣に戦うこともあるのに」
「うらら♪」
「モルペコ本当? えへへ、嬉しいな。仲良くしようね~」
「ユウリ、あんたもあんまりうちの子と……まあ、もう、いいけどさ……」
かなり珍しい事だと思う。モルペコはあの愛嬌たっぷりの表情と裏腹にかなり人見知りするのに、数回会っただけのユウリにあれだけ懐くなんて。
視線を合わせるようにしゃがんで、小さなお手々を取りあって楽しげにしてる様子ば見るとモルペコだけでなくあたしもどんどん毒気が抜かれてく気がしてならなかった。
……この子、リラックス出来て、自然に触れ合えるような空気を作るんが上手いからこそ、短期間でポケモン達とあんなに息のあったプレイが出来るのかもしれんね。
「ほら、もうおしまいだよモルペコ、ユウリ。言っとくけどあたしを負かせた事は忘れとらんけんね」
「あ、あははは……ごめんなさいマリィちゃん」
「謝らんでよか、あん時はあたしが油断してたせいだもん。……ま、今ではそう簡単に倒せるなんて思って欲しくないけどさ。あたしもみんなもいーっぱい特訓したんだからね」
「……! うん。私達も、あの時より格段に強くなってるからね!」
「知ってる。デイリーガラルでも放映されとったけん。なー? ダンデさん推薦のチャレンジャーさん?」
デイリーガラルはガラル地方の国営放送だ。
ジムチャレンジの時期は毎日状況や様々な見どころあるトレーナーを紹介してくれるんだけど……まさか、ね。この子とあのホップって子がチャンピオン直々の推薦を受けてたなんて、思いもしてなかった。
「う。そ、そんな大層なプレイヤーでもないよぉ……たまたま推薦してくれた人がダンデさんなだけで……!」
「どーだか。でもユウリも、ホップって子もダンデさんの目に狂いはなさそうじゃん?」
「っ、私はともかくホップは……うん。あの子なら間違いなく勝ち進むよ! きっと!」
「そこで何で自分を推さないのさ。自信があるのかないのか、さっぱり分からないよ」
「あははは……」
うん……? 今ホップって子の名前を出した途端、なんだか妙な間があったように感じたけど……何か喧嘩でもしたんだろうか……まあいいか。
「仕方ないなぁ……あたしのリーグカードあげておくか」
「え!? いいの!?」
「いいのも何も、あたし達なら遅かれ早かれ交換する事になるでしょ。だって、あたしは、あんたの事はもうライバルって認めてるからね」
恐らく……いや、確実にあたし達はトーナメントの場で再び出逢うのだろう。
あたしにはとにかく負けられない理由がある。
前回のような無様な真似は決して見せられない、見せたくない。
このリーグカードの意味は自ら全てを晒した上で勝ちたいという宣戦布告に他ならなかった。
「……マリィちゃん」
その時、あいつはほんの少しだけ迷ったかのように、どこか思いつめた表情を見せたけど……すぐに何かを振り払うかのように顔を振って、応えてくれた。
「ん、ごめんね。……じゃあマリィちゃん、これが私のリーグカードだよ」
あいつはにっこり笑顔。あたしは恐らく小さく微笑みを見せてカードを交換しあう。
……うん。これであたし達はもう逃げられない。
「数少ないジムチャレンジャーの生き残りだもんな。絶対決勝に進もうよ」
「分かったよマリィ、そうなったら私も絶対に決勝まで進めるように強くなって見せる!」
あいつの宣言はあたしの心に良く響いて、もっと頑張ろうという気持ちにさせてくれた。
あたしはその言葉を胸に噛み締めてジムを後にするのだった。
思えばこの時。あたしは狂い始めていた『ユウリ』の人生に、大きな
あたしという『きっかけ』で、ユウリはもう目の前の道を進むしかなくなっていたのだ。
マリィ「うーん、何かユウリって前見た時よりオシャレになっとるんね……ブティック行くの好きなん? あ。ちゃん付けやめろって言うん忘れてた……」
ユウリ「ぶふっ……! ま、マリィちゃんのリーグカード、証明写真みたい……っ! 真面目っ……か、可愛い……!」