口下手ボーダー隊員の日記   作:金匙

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日記 ④

 

 ボーダー日記.19

 

 

 以前訪れたお好み焼きのお店の、村上先輩や荒船先輩の知り合いだというあの目つきの鋭い店員さん──…、何とボーダー隊員で、しかもB級上位の部隊の隊長という凄い人だった。

 影浦 雅人だ、と自己紹介して貰ってので自分も自己紹介して、影浦先輩と呼ばせてもらうことになった。

 影浦先輩は2年くらい前にボーダーに入隊したようで、荒船先輩曰くスコーピオンを扱う技術はボーダーでもトップクラスとのことらしく、ポイントは10000点を超えてるという話を聞いた時は思わず水を噴出しそうになった。

 やはりB級上位にもなるとポイントが五桁になるのか……、と現状の自分のポイントを考えて改めてA級は遠い道のりだと実感した。

 それから先輩方の会話を聞いている内に影浦先輩から、メイントリガーは何使うんだ? という定番の質問をされたので、レイガストを使ってます、と答えたら楽しそうに笑って、今度ランク戦やるぞと誘われてしまった。

 流石に影浦先輩相手に今の自分では勝ち目は皆無だと思ったので断ろうと考えたが、自分の目指すA級の実力を知るにはこれ以上ない機会だとも思ったので、胸をお借りしますと承諾させて貰った。

 ただ、影浦先輩的には冗談で言っていたのか、自分がまさか本当に受けるとは思っていなかったようで……、お前面白ぇヤツだなと笑われてしまった。

 荒船先輩や村上先輩もそんな自分を見てやれやれと肩をすくめながら笑っていたので、もう凄い恥ずかしかった。

 

 

 

 ボーダー日記.20

 

 

 寺島さんのところに行って、銃手か射手用のトリガーを使ってみたいという話をしたら凄い嫌そうな顔をされた。

 何でもレイガストを作った理由は、当時強化され流行った弾トリガーに対抗するために作ったものらしく、弾トリガーには並々ならぬ感情があるのか、君には弾トリガーを使ってほしくない、とまで言われてしまった。

 そうは言っても、レイガストを使う上で中・遠距離の対策はどうしても必要なので、そこをどうにかお願いします、と頭を下げて1時間の説得の末ようやく使うことを許してもらった。

 何で自分が寺島さんにそんなことをしなければならなかったのか今になって考えれば疑問が尽きないが、他の隊員の人たちより目をかけて貰っていることを考えたら別段苦にはならないので特に気にしないことにした。

 ……そんなこんなで、射手用トリガーのハウンドをサブトリガーにセットしてみてはどうかという話になった。

 何で射手なのか、寺島さんが銃手用のトリガーよりマシだから選んだ、……という訳ではなく、単純に銃型のトリガーだとレイガストをメインで使う時に両手が塞がってしまい、より機動力の低下を招くことになるからだと寺島さんは言っていた。

 射手用のトリガーは扱うのにセンスが必要で、扱いに慣れるまで時間を要することが難点だが、相手を自動で追尾するハウンドなら他の射手用トリガーと比べ使いやすく小回りもきくからレイガストを使うなら取っておいて損はないとのこと。

 

 ということで、取り合えずメインにレイガストとスラスター、サブにハウンドとシールドを入れることにした。

 他にも使ってみたいトリガーは色々あったが、あまり詳しくないトリガーを入れ過ぎても実戦で使いこなせないと思うので、一先ずはスラスターとハウンドをある程度使いこなせるようになってから別のトリガーには着手して行きたいと思う。

 

 

 

 ボーダー日記.21

 

 

 ハウンドはトリオンを追う探知誘導と視線でより正確に追う視線誘導の二種類の機能があると学んだ。

 訓練場である程度使ってみたが……、探知誘導はトリオンを追うだけなので、バッグワームというトリガーでトリオン体の反応を隠している時はこの探知誘導は機能しないから、ハウンドを使う時はなるべく視線誘導で使ったほうがいいのかもしれない。

 まぁ基本的にハウンドを使う時は相手との距離を詰める時なので、そうなったら相手がバッグワームを起動していない可能性の方が高いので一概には言えないが、視線で追うだけならさして苦労もないし、訓練室でハウンドの練習をしてた時もそれなりに扱えてるとは思ったので、ハウンドの方は今の方針でしばらく使っていこうと思う。

 

 シールドは今までずっとレイガストを使ってたからか、必要ない動作だと分かっていても相手の攻撃に合わせて反射的に手を出して張ってしまう癖を直したほうがいいだろう。

 後はレイガストの盾モードよりも耐久力は低いので、レイガストの盾モードのように立ち回るのではなく、レイガストの盾モードで防ぐのが難しい攻撃、もしくはレイガストを攻撃に用いているときの隙をカバーするような使い方が自分には合ってると感じた。

 

 そして最後にスラスターだが──…、自分の思った通り、サイドエフェクトとの相性は良好だった。

 トリオンを噴出させブレードを加速させる、という力がどれだけのものなのか不安ではあったが、あれくらいならまだまだ制御できる範囲だし空中で使っても特に問題はなかった。

 これなら寺島さんの言っていたレイガスト二刀流も現実味を帯びてくるかもしれない、……まぁそれが良いことなのか悪いことなのかは実際に試してみないことにはどうにも言えないのだが。

 トリガーセットには一応枠が開いてるので、やはり考えておく程度に留めておこう。

 

 今日は訓練室でトリガーの性能を確認したので、明日からは実際にランク戦で使ってみて、自分にとってこのトリガーセットが使い易いか否かを判断していこうと思う。

 

 

 

 ボーダー日記.22

 

 

 14勝6敗、──…まずまずの出来だと思う。

 今日ランク戦をした相手は10戦は自分と同じくらいのポイントの相手で、もう10戦は500ポイントほど上の相手との試合だったのだが……前者には1敗、後者には5敗と、トリガーの熟練度という面がかなり勝敗に響いたランク戦だなと感じた。

 訓練生の時のランク戦は互いに使えるトリガーが一つだけなので、ランク戦を始める前には相手がどんなトリガーを使うのか予め分かっていたから始まる前に対策を立てることが出来た。

 しかしB級になってからは相手のトリガーセットがメインのトリガー以外判断できないので、C級の頃のように対策を立てて距離を取られないように詰めて戦うという動き方よりは、シールドやハウンドを上手く使って時間をかけてもいいから相手の戦い方を見極めて、その隙をついて戦っていくという方法のがいいかもしれない。

 レイガストの盾モードは他の追随を許さない耐久力という長所を最大限に活かして、盾の裏でじっくり相手の動きを観察、その思考や癖を見抜いて戦う──…、うん、多分これが自分に一番合ってる戦い方だろう。

 後は自分が相手を見極める前にやられてしまっては意味がないので、その弱点に注意しながら立ち回るのも大事になってくると思う。

 

 一先ずトリガーセットは今のままでいいから、場数を積んで色んな状況や戦い方を経験するのが最優先だな。

 

 

 

 ボーダー日記.23

 

 

 荒船先輩と10本勝負のランク戦をした。

 以前B級に上がったら一戦やろうという約束をしていたので、いつかはやると思っていたがまさかこんなに早くやることになるとは思ってもいなかった。

 荒船先輩のメイントリガーは弧月で、そのポイントは6000に迫るほどなので今の自分とのポイント差を考えたら間違いなく格上の相手だった。

 基本的にはハウンドで牽制しながら、頃合いを見てレイガストとスラスターを使って距離を詰めながら戦っていたのだが……、やはりそこは先輩の威厳と言うか貫禄と言うか、1勝8敗1分と完敗だった。

 弧月の錬度は勿論だが、瞬時の状況判断とそれに応じたトリガーの切り替えがやはり自分とは比べ物にならず、とても学ぶことが多い試合だった。

 荒船先輩に唯一勝った試合はスラスターを使った空中からのレイガストの強襲だったのだが、それも二回目からはすぐに対応してきたし最後の1分も荒船先輩の気の緩みから強引にもぎ取ったようなものなので、まだまだ自分の実力は場数を踏んだ正隊員には及ばないことを痛感した。

 試合を見てた村上先輩はいい試合だったと言ってくれたし、荒船先輩もついこの前までC級だったヤツの動きとは思えなかった、と褒めてくれたが、……それでも負けは負け。

 次に荒船先輩とランク戦をする時は勝ち越せるように精進しなければ。

 

 

 

 ボーダー日記.24

 

 

 村上先輩からレイガストの使い方を教えてほしいと頼まれた。

 てっきりランク戦か模擬戦の誘いかと思ってただけに、あまりに予想外の言葉にしばらく言葉が出なかった。

 自分的にはレイガストの使い方を教えるのは一向に構わないのだが……自分はまだまだレイガストを扱いきれてないので、教えることなんてそんなにないと思いますけどそれでも良ければ、と言ったら迷いなく大丈夫だと返答された。

 というかどうしてレイガストなんだろう? 他にも村上先輩にあいそうなトリガーはたくさんあると思うのだが……、そう聞いたらこの前の荒船先輩と自分のランク戦を見て何やら思うところがあったらしく、それが切っ掛けらしい。

 正直よく分からなかったが、自分も村上先輩に教えることで新しい発見や技術の向上に繋がるかもしれないので、悪い話ではないと思ったのでそれならと話を引き受けることにした。

 代わりに何か教えてほしいことはあるか? と村上先輩に聞かれたけど、村上先輩は射手の経験がある訳じゃないし弧月も今は使おうと考えてないので、代わりに模擬戦やトリガーの練習に付き合ってほしい、と言ったら、それくらいならお安い御用だ、と快く引き受けてくれた。

 

 というわけで、これからしばらく村上先輩にレイガストを教えることになった。

 

 

 

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