口下手ボーダー隊員の日記   作:金匙

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日記 ⑥

 

 ボーダー日記.30

 

 

 この前の防衛任務で影浦先輩という攻撃手の中でもトップクラスの使い手を目にした影響か、今日のランク戦では攻撃手相手に自分の思い描いてた以上の動きが出来たと思う。

 流石に自分と同じくらいのポイントの相手と影浦先輩を比べるのは酷だと思ったが、いざ脳裏に残る影浦先輩と対戦相手の動きを比較しながら戦ってると相手の隙の多さがかなり目立ってて、どう攻めれば自分が有利な状況に持ち込めるか、どんな動きをすれば相手が嫌がるのか、そんなことを考えていられるくらいの余裕を持って戦うことが出来た。

 お陰でレイガストのポイントがもうすぐ5000点に乗りそうだし、ハウンドやスラスターも今では違和感なく使えるようになれた。

 相変わらずシールドを手で張る癖はメインでレイガストを使ってる影響か全然治らないが……、そこは追々直していこう。

 安定して勝てるようになってポイントが6000点に乗ったらそろそろ他のトリガーを取り入れてみてもいいかもしれない。

 個人的に少し気になるトリガーを寺島さんから教えてもらったので、それを使ってみようと考えてる。

 

 

 

 ボーダー日記.31

 

 

 荒船先輩から、自分がB級の間で有名になってるという話をされた。

 有名になるような行動をした覚えはなかったので、どういうことですか? と詳細を聞いてみると、B級に上がりたての新人でとんでもないレイガスト使いがいる、という噂が流れてるらしい。

 実際に自分の名前を聞いたわけではないと語る荒船先輩だが、新人でメイントリガーにレイガストつけてるヤツお前以外いないだろ? ということで、この噂の正体が自分だと確信したらしく、何をやらかしたのか気になって話を聞きにきたとのこと。

 確かに新人でレイガスト使いなんて自分以外に見たことはないが、……だからと言って自分たちが知らないだけという可能性もあるので、自分だと断定するのは些か早急ではないだろうか。

 そんな返答をしたら、相変わらず鈍いヤツだなお前、と何故か呆れられた。

 そして続けざまに荒船先輩から、村上先輩やその他の同期が目立ち過ぎて霞んでいるが自分も充分天才の一人なんだからそれを自覚しろ、と指摘された。

 豊富なトリオン量、天性のサイドエフェクト、そしてそれらを活かす高い身体能力が自分にはあるのだと。

 正直、正式入隊日の大型近界民の討伐タイムが印象的過ぎてあまりそうは思わないが……寺島さんからトリオン能力が高いというだけでそれは才能の一つと聞いたことがあるので、そこは素直にお礼を言っておくことにした。

 話が逸れたが、結局荒船先輩の自分は何をやらかしたのか、という問いには答えられなかった。

 何故なら思い返す限り自分はいつも通りランク戦をしていただけだし、目立つようなことは何もしてないのだから仕方ない。

 ただその答えに納得いかなかったのか荒船先輩からは終始疑うような目で見られたが……、一体自分のことを問題児か何かと勘違いしているんだろうか?

 

 

 

 ボーダー日記.32

 

 

 ボーダーには本部以外にも支部と呼ばれる拠点が幾つかあるらしい。

 ランク戦の後、昼食の席で村上先輩からボーダーの支部について教えてもらった。

 その話を聞いて、そう言えば入隊試験の面接で希望する配属先を聞かれたのを思い出し、その時はどこでも構いませんと言ったことも思い出した。

 自分は結果的に本部所属の隊員になったが、どうやら自分と同じことを言った村上先輩は本部ではなくその支部──正確には鈴鳴支部という場所に配属されることになったとのこと。

 鈴鳴支部はまだ出来て間もない支部らしく、自分を含めて正隊員が4人しかいないかなり小規模な支部だと村上先輩は言っていた。

 支部所属の隊員が平均でどれくらいいるのかは自分には分からないが、確かに正隊員が4人は少ないなと思う。

 しかし村上先輩曰く、優しい先輩と面白い後輩がいる楽しい支部だとのことで、今度暇があったら遊びに来るといいと言われた。

 村上先輩がそう言うからには心配することはないのだろうが、如何せん心の準備がまったく出来てないのでしばらくは遊びに行くことは無理だと思う。

 というか、普段村上先輩をランク戦のロビー以外の場所で見かけないのは、基本的に本部ではなく支部にいるからということが理由だったのか。

 それを考えたら、度々ランク戦しませんかと連絡してわざわざ本部まで足を運んで貰ってる村上先輩には悪いことをしてしまったかもしれない。

 まぁ村上先輩はそんなこと気にしないと言うだろうが、それでも今後は村上先輩の事情を考えて言葉を選んで連絡してみようと思う。

 

 ……今考えたら、あの面接官の人の気持ち一つで、もしかしたら自分と村上先輩の立場は逆になってたのかもしれないのか。

 そうなったら多分自分は村上先輩や荒船先輩、それに影浦先輩たちとも交流を持てなかったと思うので、配属先をどこでもいいと言った自分を本部所属にしてくれたあの面接官の人には感謝しなければ。

 

 

 

 ボーダー日記.33

 

 

 部隊ランク戦見たかったな……。

 昼の部はランク戦に熱中してて見逃してしまったが、夜の部もあると聞いてランク戦のブースを抜けて駆け足で向かったのだが……間が悪いことに、家の用事で母から急な呼び出しを受け帰宅する羽目に。

 結局、ランク戦を見ることは出来なかった。

 影浦先輩の部隊が出るというから楽しみにしてたが……村上先輩たちから影浦先輩たちが勝ったと聞いてしまっただけに、それならば余計見たかったと思ってしまう。

 まぁ昼の部を見逃したのは完全に自己責任だし、ボーダーと日常生活を両立すると約束した手前母にも逆らえないから、仕方なかったと諦めて次からはこんなことがないように注意しよう。

 

 そう言えば村上先輩から聞いて分かったのだが、荒船先輩が弧月で7000点に乗ったらしい。

 6000点以降は相手のレベルが今までと比べてかなり上がってると聞いたし、その中で勝ち上がってポイントを上げ続けてる荒船先輩は凄いと思う。

 村上先輩も着々とポイントを上げているようだし、自分も先輩たちに負けないよう頑張ろう。

 

 

 

 ボーダー日記.34

 

 

 自分は木虎さんに嫌われているのだろうか?

 今日の防衛任務で正式入隊日でもお世話になった嵐山隊の皆さんと臨むことになったのだが……そこで嵐山隊に入隊していた木虎さんと初めて会ったから、よろしくお願いします、と挨拶したものの返ってきた答えは、足は引っ張らないで、という辛辣な返答。

 最初は伯父と同じ厳格な人なのかと思ったが、警戒区域の巡回中や近界民との戦闘など、事ある毎に嵐山隊の人たちとは明らかに差がある冷たい対応をされて、自分はもしかして無意識の内に木虎さんの気に障ることをしてしまったのかと防衛任務中気が気でなかった。

 特に木虎さんが仕留め損ねた近界民をハウンドで止めをさした時なんかは、嵐山先輩や時枝先輩がそうした時は、すみません助かりました、と頭を下げるのに自分には、邪魔しないで、の一点張り。

 その度に先輩たちがフォローして気を使ってくれるので、申し訳なさというか罪悪感が半端じゃなかった。

 戦闘で足を引っ張る場面は多分なかったと思うが、それ以外の面で要らない苦労をかけさせてしまった先輩たちには今度会ったら改めて謝っておこうと思う。

 それと木虎さんが一緒にいたので聞けなかったが、その時は嵐山先輩たちに自分がどうして嫌われてるのか木虎さんのいない時にそれとなく聞いてみようと思う。

 

 ただ、戦闘面に関して言えば木虎さんは噂通りの凄い人だった。

 メインで使う拳銃の腕は正確に近界民のモノアイを撃ち抜いていたし、その高い機動力を活かしたスコーピオンでの近接戦も影浦先輩に近しいものを感じた。

 もし仲良くなれたら、是非ともランク戦か模擬戦で手合わせをしたいものだ。

 

 ……あの様子では多分無理だと思うが。

 

 

 

 ボーダー日記.35

 

 

 学校の課題をやってたら気づけば夕方になっていた。

 夕方からボーダーに行っても殆どの隊員はいないだろうし、そもそも母がそれを許すとは思えないので、今日のランク戦は仕方なく諦めることにした。

 しかし携帯を開くと先輩たちからの連絡がぎっしりと画面に詰め込まれていて、その全てがランク戦か模擬戦やるぞというお誘いだった。

 相変わらずバトルジャンキーな先輩たちに苦笑しつつ、今日は学校の課題を終わらせていたので行けませんでした、と返信するとやはり先輩たちも学生という身分だからか、それなら仕方ないな、と皆して共感して来て少しだけ笑ってしまった。

 後どれくらい課題残ってるんだ? と聞かれたので、読書感想文と自由研究です、と答えたら、二大巨頭じゃねぇか、と指摘され夏休み中に終わるのかと心配されたが、どちらも夏休みに入る前に感想文用の本を読んだり、ある程度研究の構想を練ってたりしていたので問題はない。

 というか、この際だし明日明後日で課題を全て終わらせてしまおうと考え、先輩たちに二、三日ボーダーに顔を出せない旨を先ほど伝えておいた。

 本当はコツコツやって夏休みが明ける一週間前くらいに全ての課題を終わらせようと思っていたが、後顧の憂いなくランク戦でポイントを上げるためにも、終わらせられる時に終わらせておく方が良いだろう。

 明日から少し忙しくなると思うが、そこさえ乗り切れば自由な夏休みを謳歌出来るので頑張ろう。

 

 

 

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