女の子になったけど、俺達は元気です。 作:リュア
「あらあら~。渚ちゃんも随分可愛くなったわね~」
「いや、驚いたりしないのかよ母さん!?」
つい先ほど覚悟を決め、母さんの前に出たのだが、大して驚くことなく逆に褒められて今困惑中です。
「驚いたりはしないわ~。こんなに可愛いんだもの、突き放す方がおかしいわよ~」
さ、流石俺を産んだ母。伊達に修羅の世界を生き延びただけあるっ!(適当)
あ、ていうかひとつ問題が浮かんだ。ご飯をささっと食べ終わりご馳走さまと言って、その問題を母さんと椿に伝える。
「なあ、ひとつ思ったんだが……俺制服どうしたらいいと思う?」
そう、これだ。今の俺は、前と比べて身長が十センチぐらい縮んでしまったため、男用の制服が着れないのだ。仮に着れてもブカブカしそうだし、もし男用制服でいったらなんか言われそうってのもある。
「私の制服って言っても……今私中学生だからな~」
「あっ、確かに」
忘れていた、椿は中学生だった。高校に中学制服でいくとか先生らに馬鹿にしているのかと思われてしまいそうだ。
あれ、つまり俺……ヤバくね? 嫌な汗が俺の頬を伝った。
「あ、それなら安心して~。お母さんの昔着ていた制服ならあるわよ~。捨てないでおいてよかったわ~」
「ほ、本当に!?」
なんという奇跡だ。これほどのミラクルがあるのだろうか。今回ばかりは母さんに感謝しなくては。マジ女神。伊達に修羅の世界を(以下略
「あっでも~ただで貸すのもな~」
「……うぇ?」
思わず母さんの言葉に変な声で反応してしまった。
あれれ~っ? 女神が化けの皮が剥がれて悪魔になりかけてるぞ~?
「渚ちゃ~ん? 服を貸す代わりに、お母さんの頼みを聞いてくれるかしら~?」
いつも見ているはずの母さんの笑顔が、今だけは何故か恐怖を感じた。なんか、寒気が半端ないのですが。
「あ、ハイ」
恐怖からか、自然と口が動きそう言っていた。
「ふふっ、ありがとう~。それじゃ、行きましょうか~」
「えっちょ、な、何をするおつもりなのでしょうか母上?」
「決まっているわ、お着替えよ♪ 椿はどうする~?」
「うーん……時間はまだまだあるし、面白そうだから付いていく~!」
あっ……俺死んだわ(確信)
母さんに俺は引っ張られながら、覚悟を決める。今から母さんの部屋でお着替えという地獄へ行くのだ。
手を振りほどいて逃げようとしても、次に何をされるか考えても、肉体的にも精神的にも死にそうだったので考えることをやめた。
「わーっ! お兄ちゃんかっわいい~!」
「うん、やっぱり似合うと思っていたわ~最高よ渚ちゃ~ん」
「く……っ! 殺せっ……!」
はい、というわけで制服に着替えさせられました。うん、すっごくスースーしてますよ、下が、特に下が!
恥ずかしいって感情が溜まりすぎて今すぐにでも爆発してしまいそうだ。現に今敗北した女騎士みたいな事喋ってるし。
てか母よ、下着がないからって自分のを差し出すのはどうかと思いますよー? 思いっきりレディーの履きそうな黒でしたし。しかも一番驚いたのがサイズがほぼフィットしたってことですハイ。
「あ、あんまり撮らないで……」
おい、母と妹よ。そんなにパシャパシャと音を連続でたてながら写真を撮るんじゃない。
「いや~恥ずかしがってるお兄ちゃん、良いね!」
良くねえよ。どこに需要あるんだよ恥ずかしがってる俺とか。中身バリバリの男ぞ。
「自信をもって渚ちゃ~ん! 私と椿が認めるほどあなたは可愛いのよ~!」
母さんと椿に可愛いといわれても、なんともいえない感じしか思わんわ! くそぅ、ここにずっといたら、精神がいくらあっても足りない……てか、そろそろ学校いかねえと!
「もう……それじゃあ俺はもう行くよ?椿だってほら、早くしないと遅刻しちゃうぞ」
「……はっ。ちょ、ちょっと待っててお兄ちゃん~!」
「あら、もうそんな時間なの? もっと撮っていたかったわ~」
「帰った後にいくらでも撮らせてあげるから……」
その言葉に母さんは、本当? と言いながら、明らかに嬉しそうな顔をした。いや、どんだけ撮りたいんすか我が母よ……。
はぁ~、とため息をつきながら椿が来るのを待っていると、スカートのポケットに入っているスマホが振動した。
「ん……なんだ?」
スマホを取って通知を確認してみると、俺の同級生三人から『今日学校行くの遅れる』と共通のメッセージだった。
珍しい、素直にそう思った。
俺はこの三人が体調を崩した時や寝坊したというケースをあまり見たことがない。もしあったとしても、誰か一人だったら分かるが……。
まあ、こんなこと考えても仕方がないか。ここはあえて追求はしない方が望ましいだろう。『了解』と返して、スマホをポケットにいれる。
「お兄ちゃ~ん、準備できたよー!」
お、これはこれはタイミングが良い。流石我が妹よ。
「それじゃあ母さん、行ってくるね」
「行ってきます!」
「ええ、頑張ってね~」
大丈夫だ俺、妹と母さんを納得させたんだ、脅威となるものは存在しないッ!
あれ、でも俺これから同級生とか先生にも説明しなくちゃなんないんじゃね? えぇ……。うちの高校何人いんだっけ……ああ、考えるだけで頭が噴火しちまいそうだ。
妹と母さん以上の脅威は外の世界にたくさんいることに、ため息を吐きながら玄関のドアを開けるのだった。