女の子になったけど、俺達は元気です。 作:リュア
女の子に……なりたいですね。
はい、ということでやって来ますた。昼休憩の時間。諸事情により、四時間目はカットです。仕方ないね。
さあ、今から例の場所……屋上に向かうとしよう。滅多に人が来ない、俺達ののんびりスペースの一つだ。
あの三人とは一緒じゃないのかって? 達也と晴斗は先に屋上に向かって、勝幸は購買に向かって一直線に光が如く突っ走っていきましたよ。余程カレーパン欲しいんでしょうね。あいつの教室を出るときの一瞬の姿……俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
「すいません、ちょっと通りますよ~」
「あっ、ごめんね〜」
「渚先輩今日もとっても可愛いですね! 憧れちゃいます〜!」
「きょ、今日も可愛い……? あ、ありがとう……ほ、褒めてもなんもでねえぞ~? このやろ~」
「う〜! そういう所も可愛い〜!」
「こ、こら〜!」
「ねえ渚ちゃん。今から私たちとお昼一緒に食べない?」
「えっ、今からですか……。朱莉先輩すいません、今から友達と一緒にランチパーリーするんですよ」
「あっそっか。ごめんね」
「いや、こちらこそすいません。代わりにどこか一日丸々空けるんで、なんか付き合いますよ」
「……土曜日に服を買う予定なんだけど、それに付き合ってくれるなら許してあげる!」
「はい、あ、じゃあそれでお願いします。あ、それじゃあ俺そろそろ行きますね」
教室から出て、相変わらず俺を見てもなんとも思わず、話しかけたり誉めてくる先輩後輩達ばっかりで正直対応に困った。しかも女子率の高さに脱帽ものですよ。女の時の俺よ、一体どんな関係築いてたのだ。こんなに人気とか聞いてないぞ!
なんとかその巨大な荒波を潜り抜け、屋上へ向かう階段に到着した。
一段一段上り、なんか知らないけど緊張した為軽く深呼吸をする。この先にあるのは、天国か地獄か、あるいは……考えるのはやめだ。よし、オッケー……開けるぞ。
「よ、よお~。いるか~?」
ちょっと遠慮気味に声を出してみる。入る前から若干話し声が聞こえたからいると思うんだが。
「お、来たか。まあ適当に座ってくれ」
屋上には、達也が胡座をかいていた。おう、なんというか……クール系女子が堂々と胡座って意外と威圧感あるな。ん? てか一人足りないような……。
「なあ達也。晴斗はどうしたんだ? お前と一緒にいたろ?」
「ああ晴斗か。晴斗なら……ほら」
「?」
俺の質問に達也は、俺の背後に苦笑いをしながら視線を向けた。達也の見ている後ろへ振り向こうとしたとき、奴は現れた。
「な・ぎ・さ・ちゃ~ん!」
「わあぁあああ!?」
俺の名前を呼ぶと同時に、俺の上半身にある宝玉を奴の両手がガッチリ掴んだ。思わず叫び声をあげ、宝玉に触れる無礼者を自分の体から遠ざけようとジタバタと暴れる。
「ふふ~ん。その程度で振りほどかれるほど、晴斗くんは弱くないですぞ~」
「おま、晴斗……やめろってぇ……ぁ! んんっ!」
だが、奴……晴斗には通用しなかった。その手は離れるどころか、むしろ逆に掴むというかやらしい手つきに変わっていった。
「げへ、げへへへ」
「おい晴斗、それぐらいにしておけ。渚の体が持たん」
「あ、そっか~。いやごめんね渚ちゃ~ん。あまりにも揉みたくなるような魅力的なお胸を持っていらしたのでつい~」
「きゅ〜……」
なんか、自分で触った時とは何か違う感じがした。てか、元男の野郎に胸を揉みしだかれるなんて……ないわ。
「婿に行けない……」
「その姿で言うんだったら、『お嫁に行けない』じゃな〜い?」
「はーるーと〜!?」
「うわ、やべっ」
逃げようとする晴斗の頭を瞬時に掴み、とりあえず罰としてグリグリすることにした。
「可憐な女の子のお胸を揉むいけない子は誰かしら!? んん〜!?」
「痛、痛いよ〜渚ちゃ〜ん。いだだだだ〜」
十秒ぐらい頭グリグリの刑を遂行して、そろそろこっちの手が痛くなったのでやめておこう。そんな事より、聞きたいことが山ほどあるのだ。
「それで、聞きたいことがあるんだg」
「なあ、誰か一人忘れちゃあいませんか?」
「……っ、誰だ!」
「ふっふっふ……」
ここに一人足りない状態だが、待ってるのも面倒だし話を始めようとしたら、後ろから扉が開く音と共にまた別の女の子の声が聞こえた。
「白銀の疾風三嶋……ここに見参」
その手に溢れんばかりのカレーパンを持ち、ポーズを決めているその女の子、名を三嶋勝幸という。なんというか、ポーズくそダサッ。
「誰かと思えば、勝幸っぽい奴じゃないか」
「勝幸っぽいってなんだよ、俺は勝幸そのものだよ!」
「ええー本当にー? うっそー信じられなーい」
「棒読みするなよ!」
正直にわかには信じられない話だが、自分も完全に同じ状態になっている為、信じるしかなかった。
「まあ全員揃ったし丁度いい。お前達に聞きたい事があったんだ。いいか?」
「いいよ〜、晴斗ちゃんなんでも答えちゃう〜」
「まず、お前らは三嶋勝幸、朝垣達也、小原晴斗で間違い無いんだよな?」
「もちのろん! なんなら、俺達と渚しか知らない渚の秘密を一つ暴露してやってもいいんだぜ?」
「ふ、ふ〜ん? や、やれるもんならやってみれば?」
あれ、俺こいつらになんか秘密教えたっけ? 覚えがなさすぎて不安で声と体が震えて、めっちゃ緊張しはじめたんですが。
「それじゃあここは俺が代表して言おう。これは渚のお息子さんについての事なんだが、最近どんどん小s」
「疑って申し訳ありません貴方達がいつものやつらだって事は分かりましたので、その辺でやめていただいてもよろしいでしょうか達也様」
達也の口から発せられた言葉は、確かに俺達しか知らない情報だった。とにかく口を閉ざしてやろうそうしよう。そうでもしないと恥ずかしさで爆死しそう。
「え? 全部言わなくていいのか?」
言っちゃいけねえんだよ達也ァ! そんなん全部話して一体何になるってんだ、もうちょっと別のジャンルで来ると思っていたのにあまり予想外だぜこん畜生!
「息子がショートサイズに……つまり渚が女の子になるのは、前兆があった……?」
「んなわけねえだろいい加減にしろ!」
「うんうん、ツッコミの言い方……完全に渚だ〜」
「……信じてもらって嬉しい限りですよー」
「渚ちゃんかーわいっ」
「は?」
全く、ツッコミなんてあんま慣れてねえのにこんなにやらせるとか、こいつら天使の皮をかぶった悪魔かよ。心の中で舌打ちをする。
「てか、今日お前ら遅れるって送ってきたけど、何してたんだよ」
「そいつぁ簡単なこった。女子用の制服なんて俺達は持っていないからな。それを大忙しで買いにいっていたのさ」
「逆に俺達からすれば、女になっても制服があった渚に驚いていたんだが」
達也達が何をしていたのかがわかってやっとスッキリした。俺の制服について簡単に説明すると、あ〜とハモりながら納得していた。
「あっ、てか……渚」
「ん? どうした?」
「全然関係ない話なんだけど……俺さっき、カレーパン買ってる時に後輩に名前で呼ばれたんだけど……さ」
さっきまで明るい顔をしていた勝幸が、急に暗い顔をして話し始めた。なんか、いや〜な感じが勝幸の周りに漂っている。
「俺の名前って……勝幸だよな?」
「何言ってんだ、お前は三嶋勝幸だろ?」
「……んだよ」
「え?」
「
「……え”っ」
俯いてた勝幸が急に顔を上げ、俺の肩を掴んで大きな声で言い放った。
……うせやろ? まさか名前まで変えちまってんのか、この世界の認識は。ちょ、ちょっと待てよ? も、もしかして……。
「お、俺も」
「……ん?」
「実は晴斗くんも〜」
「……マジかよ」
おいおい……嫌な予感的中ときましたか。まさかとは思っていたが、達也と晴斗も名前が変わっていたか。なんか……驚きすぎてなんかこの感じに耐性がつきそう。絶対に嫌だが。
「で、因みになんて呼ばれたんだ?」
「俺は先輩に美穂って呼ばれたぞ」
「晴斗くんは〜咲夜ちゃんだって〜。きゃ〜かわいい〜」
「うん、達也の美穂はわかる。イメージと合ってる。でも、晴斗が咲夜〜? イメージが湧かなすぎなんですがこれは」
勝幸が雪乃と呼ばれたのもまだわかる。雪のように白く綺麗な髪と肉体を持っているから〜とか理由とかイメージがあるから。だが晴斗の場合、目に見えてわかる怠そうな顔と口調からは安易に想像できない。
「え〜そんなことないよ〜。晴斗くんだってちょっと本気出せば〜……」
そう言いながら、晴斗は顔を静かに下に向けた。
「その名前にふさわしい者になる事なんて容易いわ」
顔をあげるやいなや、スイッチが入ったのか先程の晴斗が嘘のような口調と顔つきに変わった。
うわっ、なんだこいつカッコイイ。これは咲夜さんふさわしいですわ。
「申し訳ございません、先程の言葉、撤回させていただきます」
「大丈夫よ、別に気にしてないから」
「なんと御心の広い……」
腕を組み佇む晴……咲夜様の前で膝をつき、謝罪の言葉を呟く。
「ほら、また始まった!」
「ふふ……相変わらずだな」
ついつい茶番をしてしまった。だが、この茶番のおかげで安心していた俺がいた。
「なんか、変わんねえな。俺ら」
「確かに。激かわ女子高生になっても、いつも通りだね〜!」
「……確かにそうだな。てか勝幸、自分の事激かわ女子高生って言うのか」
「やっぱり俺達〜永遠のベストフレンド〜」
そうだ、女の子になったからってなんだ。俺らの中身が変わらないのならば男の頃となんら変わりはない。
つまりはこれ勝ちフラグなのでは?(フラグ)
「そんじゃ、違和感のないように俺ら以外の人がいる前ではその女の名前で呼び合うぞ?」
「マジか〜あの呼び方に慣れとかないとな〜」
「まあ、あくまでそれだけだ。それ以外は普段の俺たちでいいだろう」
「おお〜いつも通りですか〜、先輩後輩が離れていくのが目に見える〜」
「あとは、元の姿に戻れる方法を探さなきゃな」
「確かに」
とはいっても元に戻れる方法は今の所、何一つ情報がない。何か色々試したりなんなりしていくことになるだろう。
いつ戻れるかはわからない。なら、それまでに俺たちがやる事は決まっている。
「いつか、元に姿に戻れるその日まで……この女の子生活でも満喫してやろうじゃねえか!」
『おおー!』
よし、今ので気合は入った。よっしゃ、これから頑張るぞー!
「ねぇ、休憩時間終わるしさ〜……最後に一回揉ませてくれない〜?」
「誰が触らせるか、この変態!」
「じゃあ雪乃〜、揉ませて〜」
「……ちょっとだけならいいよ」
ここにいる絶対胸揉むガールのせいで頑張れる気が一気に無くなったんですが、誰か助けてください!
次回から本編スタートです。(ここまでがクソ長前置き)