星輝子のSSは投稿していなかったので初投稿です
レインコート
雨の日
こんな時は憂鬱になる
買い物中だったため、メモを見ながら今日買った食材を確認する
「よし、忘れ物なし....と」
買い物バッグを肩に引っ掛けて傘を広げる。天気予報よりも自分の鼻の方が信用できるのはこんな時だ(今日は降水確率30%)
近くまで歩くと店の前の花壇に1人の女の子?が背中を向けてしゃがみこんでいる
「あの〜....」
「ヒィ!?」
ヒィって....そんなに怖い顔してたかな....
「あの....驚かせてすみません....」
「だ、大丈夫だ....うん。トモダチ....見ていたから....」
そう言って彼女の指先を見るとそこには花壇の隅っこによく分からないきのこ?が生えていた
この人今きのこを『友達』って言わなかったか....?????
「えっと....ここだと寒いですし中入りませんか?」
「お、おしゃれなお店は、ぼっちにはハードルたkクシュン....」
鼻水がたらーっと垂れる
「入ってください」
「....はい」
☆★☆★☆★☆★
「お待たせしました。簡単なものですが」
テーブルに紅茶とシフォンケーキを数切れ程出す。風邪をひいてはいけないので女の子には既に毛布を渡し、店内をヒーターで暖めた
「ここの店員さんだったんだな....」
「まあ店員というか居候というか....」
先程はレインコートを着ていたためよく分からなかったがその中はすごく薄着だった。どれ位かって言うと真夏の暑さでぐーたらしている田舎の少年少女並である。そんなきのこさん(仮名)が両手でハムスターのようにもぐもぐ食べていると奥から人が来る
「お、なんだ翔ちゃん、もう帰ってたのか」
「その呼び方は止めてくれ、マスター」
「はっはっはっ、孫のことくらい好きに呼ばせてくれ....っと、お客さんがいたのね、ごめんごめん」
細く長身、白髪が似合うこの人が自分の祖父(御年66歳)だ。なんていうかステッキを持ってシルクハットを身につけても違和感のない人だ。数学教授とか似合いそう
「どうも、本日は喫茶フジにお越しいただいたきありがとうございます」
「あ、えっと....お、お邪魔してます...はい」
「おいおい翔ちゃ〜ん?この子どこから連れてきたんだい?」
肘でツンツンしながら耳打ちしてくる
我ながら元気なじいちゃんだよほんと
「店先で座り込んでいたからな、風邪ひきそうだったから店に入れたんだよ」
「やっさし〜」
「うるせっ!」
こんなことをしている間もきのこさん(仮名)は両手でもぐもぐと食べている。あと紅茶を飲んだ時熱かったらしく舌を少しペロッと出していた
突然店内にハードな音楽(ロック?メタル?)が流れる。じいちゃんにそんな趣味は無いし俺もそんなに音楽は聴く方ではない。とすると....
「は、はい....あ、親友....」
きのこさんだった
えっ?この見た目であんな曲聴くの?人は見た目によらないと初めて実感したわ
「うん....うん....えっと、喫茶フジってところ。うん、ありがとう....」
電話を切るとはっとした顔できのこさん(仮名)がこちらを向く
「えっと、今日お金持って....ないです」
「いいって、俺が無理に店に入れたんだし、お代はいらないよ。それとさっきのは親御さんの迎えとかかな?」
「あ、はい....そんな感じ」
お皿を見るともうシフォンケーキが無くなっていた。意外と気に入ってくれたのかな
しばらく待つとスーツ姿の男性が入ってきた。保護者にしてはあまりにも似ていないがきのこさんは彼を親友と呼んでいたからまた大丈夫....かな?
その後喫茶フジは特に客がたくさん入ることもなく、部屋には紅茶とコーヒーの香りが漂っていた
「....これ忘れ物じゃん」
店内の掃除中に気がついたが席にはきのこさんが身につけていたレインコートが置いてあった
え、どうしようこれ....てか普通着ていたもの忘れるか?まあこんな大きなもの今まで気が付かなかった俺も大概だけどさ....
「持って行ってやんなよ」
「いや俺さっきの人のこと知らないんだけど....」
「えっ?知らない人連れ込んだの?ワシに似たのかね」
じいちゃんも昔知らない女の子を連れ込んでコーヒーや紅茶を振舞ったことがあるらしい。それが今の祖母だ(存命)
「さて、どうしたものかね....」
黄色のレインコートはとりあえずハンガーにかけて乾かしておいた
レインコートだし紅茶とかコーヒーの匂いは染み付いてない....はず
「そういや店手伝ってくれるのはありがたいけど今お客さんもいないし宿題済ませてもいいんだぞ?」
「宿題ならとっくに終わってるよ」
そう、俺は学生だ。17歳の高校2年。誕生日も早くて(4月6日)学年上がる=年齢が1つ増えるって感覚だった
幸いなことに転勤族とかそういうものではないので話す程度の知り合いならちらほらと....いればいいなって感じだ
「んじゃあ今日は学校の準備してさっさと寝るか。いつも遅くまで店の仕込みの手伝いとかメニュー考案とかしてくれるからたまには早く寝なきゃな」
「はいはい。そんなことより自分の体の心配しなよ」
「はっはっはっ!若いもんにはまだまだ負けんよ!」
「って言っておきながらこの間腰やったのじいちゃんじゃないか」
「まぁ....それは....そうだが....」
時間を確認するともう19時を過ぎていた。
お客さんもいないし店を早めに閉め、夕食をとった