屋根の下で(中断中)   作:神無月 フラット

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まさかのブライダルSR2週目でまゆPとしての私は放心状態でした



雨に始まり雨で繋がる

今日の授業を終えた私は図書室で今日の課題に取り組む。寮に戻ってからだとみんなとおしゃべりしちゃうからな....

図書室は自分の部屋以下、教室以上の安心感がある。静かだしな....それに疲れたらキノコの本もある。まあほとんどが図鑑だけど、それでもやっぱり見ていて楽しい

 

課題を終えた後はいつもなら自主レッスンしたりするけども今日は休憩の日だ....親友からも『たまには休まないとダメだぞ』って言われているからな....お気に入りの喫茶店で一息だ

 

ドアを開けるとカランコロンと子気味いい鈴の音が響く。もう時間も夕方だからなのかお客さんは見当たらなかった

出迎えてくれたのはこの店のマスターさんだ

 

「いらっしゃい。おや星ちゃん、よく来てくれたね」

 

「ふひ....こ、こんにちは」

 

アンティーク調で落ち着いた雰囲気のこのお店に問題があるとするならカウンターのイスが自分には少し高く、足がふらふらすることくらいだ

と、ここでいつもなら聞こえる声が無いことに気づく

 

「あれ?大野さんは....?」

 

出会ったのはたった2ヵ月ほど前、だがご飯を食べたり雨に降られてお泊まりしたりケンカ?したり....まるでアイドルになった時と同じくらい濃く楽しい時間だった

 

「あぁ翔ちゃんね、一人暮らしさせているんだ」

 

「ひ、一人暮らし....!?」

 

あの日の夜のことを思い出す

 

『嫌だ....どこにも行かないで....』

 

ギュッと握りしめられたその感触もはっきりと、この目で見た涙も覚えている

お祝いも兼ねて家に行くのもいいかもしれないな....なんか遊びに行くなんてリ、リア充っぽいけど....

 

「翔ちゃんのこと、お願いね。あの子丈夫そうに見えて無理している時とかあるから」

 

 

そして現在、女子寮前

 

 

寮の前では大野さんと奈緒さんが1つの傘の下でとても楽しそうに話している。その姿を見て胸がきゅっと痛くなった。少し前までは私と仲良く話していたのに気がつけばその隣には人が増え、私だけじゃなくいろんな人と話すようになった。マスター....大野さんのおじいさんはダメそうって言っていたけどとても元気そうにしか見えない

 

「や、やあ大野さん、奈緒さん」

 

「あっ星さん、久しぶり」

 

「じゃああたしは部屋に戻るからな!じゃあ!」

 

奈緒さんはその場から全力疾走で寮に戻ってしまった

よく見ると大野さんが傘を持っていない方の手はぎゅっと握りしめられていて傘を持つ方のでも固く握っていた

 

「お、大野さん....あの....大丈夫なのか....?一人暮らしって聞いたけど」

 

「大丈夫大丈夫、俺が家事とか得意なの知っているだろ?それに」

 

「じゃなくて....1人で....寂しくないのかなって」

 

サーッと雨の音が強くなる。少し俯いたあと、顔を上げてこちらを見る

 

「泊めてもらった時....凄く寂しそうで、震えていたんだ」

 

「そっか....なんか恥ずかしいところ見られちゃったか」

 

恥ずかしそうに手を頭の後ろに回し、ポリポリと首の後ろをかく

 

 

──────────

 

 

そっかあ....あの時

よくよく考えたら....というか考えなくても分かる。男が女と1つ屋根の下で寝泊まりしたあの日、たしかあの時は激しい雨の夜で....いつもなら自室だし枕とかを握りしめるだけだったのがソファーで寝ていたから落ち着かなかった、と

 

「実はさ、俺には親がいないんだ」

 

いっその事話してしまおう。普段誰かといたとしてもこういうことは絶対に話さなかったのに不思議と星さんといると話せる。そういう気持ちになることが多かった

 

「あの時もこんな雨の夜だったんだ....運転席に父親、助手席には母親、俺は後部座席に座っていたんだ」

 

指先が少しずつ震えていくのがわかる。その度にゆっくりと深呼吸をして落ち着かせる

 

「それでスピードをつけすぎた車が突撃してきてさ、後ろにいた俺は助かったけど父親も母親もその時に....な。それ以降はじいちゃんばあちゃんが育ててくれたんだ」

 

「そうだったんだな....」

 

話の途中から少しずつ雨は弱くなっていき今ではぽたぽたと、屋根から雨水が垂れてくる程度になっていた

何言ってるんだろうな....俺は

 

 

 

日付が変わって6月5日、全国の人間は明日の休日を渇望し今日の活動にあたっているだろう。俺も明日は休みだからと今日は頑張るぞと少し気合を入れていた

 

「おはよう大野、そういやなに渡すのかもう決めてるのか?」

 

少し楽しそうな顔で神谷さんが寄ってくる。あの時星さんと2人にしたの少し根に持ってるからな?

 

「渡す?なにを?ホワイトデーはとっくに過ぎてるぞ?」

 

「えっ....輝子の誕生日の事なんだけど....」

 

驚いた様子の神谷さんから話を聞くとどうやら明日は星さんの誕生日らしい

誕生日....誕生日!?しかも明日!?

 

「まって何それ聞いてない....」

 

「まあまあ今日決めてもいいんじゃないか?」

 

「あの....今日お願いしても....?」

 

「まあ、そうなると思ったよ....でも今回は大野が『これつけて欲しい』って思うものを買っていった方がいいと思うんだ」

 

「えっ、好みとかどういうのがいいとかそういうアドバイスは....」

 

「そんなことより似合いそうなもの考えたりとこれつけて欲しいって心の込めたプレゼントの方がいいんだよ!」

 

「そういうものなのか?」

 

「そういうものだ」

 

とりあえず放課後はプレゼントを買いに行くことに決めた。昨日あの後にうちに遊びに来る話にはなったから明日誘ってみようかな....だとしたらプレゼント以外にも少し用意しておかないとな




読んでいただきありがとうございます
今日は6月4日ですね、早いものです
よくよく考えたら投稿してからもう半年、飽き性な私もここまで書けたのかと少し驚いています
1話自体は短く、まだまだ稚拙な文章ではありますが読んでいただいている方々、評価を付けてくださる方々には本当に感謝しています。本当にありがとうございます
これからも少しずつではありますが書き続けていきますので応援などしていただけたのなら幸いです

それはそうと6月のデレステのイベントには星輝子が来ます。これは真実です

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