風鳴訃堂が“美少女”になって護国のために頑張るお話   作:焼きめし

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ここからは美羽視点でストーリーが展開します。


護国の鬼、女の子になる

 あたしには記憶がない。気付いたとき、あたしは病室のベッドの上で体中に器具を取り付けられて寝かされていた。

 

 何か大きな病気になっていたのかと、考えたけれど、どうやら違うみたい。

 唯一、頭の中に残っている人物……、風鳴八紘と風鳴弦十郎……。

 結構イケてるオジサン二人の話によれば、あたしは風鳴訃堂っていう100歳を超えたお爺ちゃんなんだって。

 そして、オジサンたちはあたしの息子らしい。

 

 嘘みたいな話でしょ? オジサンたちは真面目な顔をしていたけどあたしは信じられなかった。

 だって、鏡の中のあたしの姿はどう見たって可愛い女の子だし、とても男だったなんて信じられない。

 

 でも、あたしの首にかけられていたこの不思議なネックレスから感じるのは――国の為に力を尽くせという暗くて低い男の人の声――。

 その声は確かに聞き覚えがあって、お年寄りの声にも聞こえ……、そして何故かあたしは有無を言わずに、その声に従わなくてはならないという気分にさせられる……。

 

 頭に残っている僅かな記憶によれば、あたしには“ノイズ”とかいう化物と戦う力があるみたい。

 このネックレスはそのための武器らしい。

 

 面倒なことになりそうだなーって思っていたら、赤い髪のツンツン頭の弦十郎オジサンが自分と一緒に来いと言ってきて、あたしはどうすることも出来ないからそれに従うことにした。

 

 だけどあたしはその前に、どうしても現状に納得出来ないから、せめて名前だけでも女の子らしい名前にしてほしいと二人にお願いする。

 

 そして今日から、あたしの名前は――。

 

「紹介しよう、風鳴美羽だ」

 

「「…………」」

 

 弦十郎に連れて来られたのはアニメのスーパーヒーローでも居そうな施設。特殊災害対策機動部二課という組織らしい。

 そして、弦十郎はそこで1番偉いのだとか。もっとびっくりなのはこの組織を立ち上げて初代司令官だったのがあたしなんだってさ。

 

 司令室とやらに集められた人たちは、弦十郎からあたしが紹介されると黙ってジィーっとあたしのことを観察していた。

 

「う、嘘でしょ!? 弦十郎くんって子供が居たの!?」

 

 そんな中、髪を後ろに束ねている白衣でメガネをかけた女性が驚いたような声を出す。

 どうやら、あたしのことを弦十郎の娘だと勘違いしたみたいだ。まぁ、無理もないわね……。

 

 この人は櫻井了子って名前ですんごい研究者なんだって。“ノイズ”に対抗する唯一の手段である“シンフォギア”とかいう兵器を開発したんだそうだ。

 

「了子くん、勘違いしないでくれ。俺は独り身だ。この子は……、俺の妹だ。腹違いだがな……」

 

 弦十郎はあたしのことを自分の妹だと説明する。

 さすがに自分の記憶を失った父親だという荒唐無稽は話せないらしく、一部の者を除いてあたしの正体は風鳴訃堂の隠し子として通すらしい。

 そして、訃堂自身は絶対安静の状態で長期療養中としてしばらく様子を見ることにしたようだ。

 

 しばらくって、あたしの記憶が戻るまでなのかな? それって、お爺ちゃんだった時の記憶が全部戻るってことでしょ? 

 何それ? 怖いんだけど……。

 

「「い、妹!?」」

 

 何人かが“妹”という言葉に驚いて声を出す。そりゃ、弦十郎とあたしじゃ見た目で言えば親子くらいは年齢が離れてるから無理もない。

 

「――まぁ、あり得なくもないか……」

 

「そうね。ない話じゃないわね。びっくりだけど……」

 

 しかし、この組織の人たちは妙に落ち着いているのか、すぐにあたしが弦十郎の妹であることを受け入れる。

 そ、そんなに簡単に受け入れられるものかしら? あたしはまだ何も受け入れられていないのに……。

 

「年齢は16歳、翼よりも1つ下だ。仲良くしてやってくれ……」

 

 弦十郎はあたしの年齢を16歳ということにした。つまり学年で言うと高校1年生くらいだ。

 翼って子の1つ下ってことは彼女は17歳ってことか。

 弦十郎の言う翼はすぐに誰のことかわかった。青髪であたしと似た顔をしている若い女性が目の前に居たからだ。

 

「あはっ! なんだ、若い子もいるじゃない。よろしくね。翼ちゃん!」

 

 あたしは翼に近付いて、出来るだけ愛想良く笑いながら翼に手を差し出した。

 

「――あ、ああ。よろしく」

 

 しかし、翼はというと差し出した手を握ろうとはしてくれない。

 ええーっ!? 普通は手を握る流れでしょ。手がプラプラしてんだけど。

 

「なあに? 暗い子ねぇ。ほら、笑って笑って」

 

 あたしは翼のほっぺたを両手でむにっとして、笑顔を作ろうとした。

 うん、やっぱり可愛いじゃない。あたしに似て!

 

「にゃ、にゃにをする!」

 

 翼はむにっとされたのが気に入らなかったのか、あたしを突き飛ばそうと手を伸ばす。

 あらあら、怒らせちゃったみたいね……。あたしは翼の腕を躱してそのまま後ろに回り込んだ。

 

「――っ!? い、いつの間に……? 私が背後を取られた?」

「もぉ、乱暴じゃない。駄目だぞ、女の子が簡単に暴力を振るったら」

 

 あたしは翼を背後から抱きしめながら、彼女に注意をする。

 すぐに手を出すなんて冗談が通じない子なのかしら?

 

「今の身のこなし……。司令……、この子は一体……」

 

 すると黒スーツを着た茶髪のイケメンくんがあたしの動きを見て、弦十郎に何者なのか尋ねる。

 いや、あたしもびっくりしたわ。アホみたいにスムーズに体が動くんだもん。

 やだ、あたしったらスーパーマンになっちゃったの? いや、スーパーウーマンかな?

 

 で、弦十郎に質問して知ったんだけど、イケメンくんは緒川慎二って名前の二課のエージェントなんだって。

 忍術とか使う凄い人らしい。今の時代に忍者っているんだね〜。今度デートに誘ってみようっと。

 

「美羽は“ノイズ”に対抗するために秘密裏に訓練を受けていた。“ファウストローブ”という、錬金術とやらを用いて開発された特殊な武装により、彼女は“ノイズ”を倒すことが出来るとのことだ」

 

 それを受けて弦十郎はあたしについての説明をする。

 ていうか、マジであたしにそんな化物と戦う力があるんだろうか? 正直言って不安しか無いんだけど……。

 

「へぇ、私以外にそんな物を作れる人が居たんだ……。この櫻井了子の開発したシンフォギアとどちらが優秀なのか楽しみね」

 

 了子は不敵に笑い、舐めるような視線をあたしに送った。

 楽しみにしてもらえて嬉しいんだけど、あたしはキチンと期待に応えられるのだろうか?

 

「これからは翼と美羽が連携して……」

 

「わ、私は一人で十分です……! 仲間など、剣を鈍らせるだけですから……、必要ありません!」

 

 弦十郎の言葉に翼は反発する。仲間なんて必要ないと……。何それ? ロンリーウルフってやつ?

 

「およ、翼ちゃんって、そういうクール系なタイプってわけ? もう、そんなに怖い顔しないで。あたしは友達が居ないから、翼ちゃんとお友達になりたいなっ!」

 

 あたしは翼と何とか上手く付き合おうと考えて、彼女と友人なろうと提案する。

 自分には友人はいない。居たのかもしれないけど、おそらくヨボヨボのお爺だろうし……。

 だから、彼女の友達になりたいという言葉は本音だった。

 

「友達……!? 私には必要ない! それに、私が友と呼ぶのは――ただ一人だけだ……! いつまで、そうしてるつもり? 離して!」

 

 しかし、翼はご機嫌斜めみたいであたしを振り解いて、どこかに行ってしまった。

 どうやら、コミュニケーションの取り方を失敗したみたいね。怒られちゃったわ……。

 

「あらら、ねぇ弦ちゃん。あの子大丈夫なの? なーんか、闇が深そうよ……」

 

 でも、あの感じはあたしが悪いだけじゃない。多分、翼は大きな闇を抱えている。

 

「げ、弦ちゃんって……」

 

 青いスーツを着た男性が苦笑いしながら、弦十郎の顔を見る。

 彼は藤尭朔也って名前のオペレーター。なんか、難しい計算とかするのが仕事なんだって。

 

「美羽、その弦ちゃんというのは止めてくれ……」

 

 すると、弦十郎は困った顔をして頭を掻きながら、“弦ちゃん”という呼び方を止めるように言ってくる。

 

「えーっ! 弦ちゃんってさ。見かけが少しばかり厳ついじゃない。こうやって、呼び名だけでも可愛くしてあげたんだけどな。それとも弦兄様とかの方が良かったりする?」

 

「――いや、弦ちゃんでいい……。やれやれ……」

 

 しかし、あたしが別の呼び方を提案すると弦十郎は諦めたような顔をして“弦ちゃん”呼びにオッケーを出した。

 

「ぷっ……、さすがの司令も可愛い妹さんには敵わないみたいね……」

 

 そんなやり取りを見ていて吹き出してしまっている青いスーツを着た女性。

 彼女は友里あおいという名前で藤尭と同じくオペレーターなのだそうだ。彼女が淹れてくれたコーヒーは美味しかった。

 

「司令の困った顔久しぶりに見たな」

 

 藤尭も楽しそうな顔をして弦十郎の表情を眺めていた。

 

「ごほん! 俺の呼び方など、どうでもいい。そんなことより、翼の心には大きな傷があるんだ……」

 

「大きな傷……?」

 

 弦十郎の呼び方の話が一段落付いたあと、彼は翼の心には大きな傷があると話す。

 心の傷ってことは……、トラウマを抱えているってことかしら?

 

「君も知っておく必要があるかもしれないな。翼は――」

 

 そして、弦十郎は翼の身の上話を始めた。

 彼女はシンフォギアの適合者とやらで、長い間“ノイズ”と戦っていること。

 その戦いの中で友人となり、パートナーとなった天羽奏という少女が亡くなったことを……。

 

 翼と奏はツヴァイウィングというボーカルユニットを組んで活動をしていたらしい。

 そして二人のライブ中に“ノイズ”が襲撃をして奏は亡くなった。

 それ以来、翼は心を閉ざして一振りの剣になることに徹しているのだそうだ……。

 

 

「ぐすん……、翼ぢゃん……、な゛んでげなげだど……、ぐすっ……」

 

「おやおや、随分と涙もろいのですね。美羽さんは」

 

 あたしは盛大に泣いてしまった。そして、緒川はそんなあたしにハンカチを渡してくれた。

 やはりこの人は紳士だなぁ……。

 

「だっで、酷い話じゃない……。あたしだったら、そんな事があったら戦うなんて出来ないわ……」

 

 あたしが涙を拭いていると、けたたましいアラームの音が部屋中で鳴り響いた。

 何が起きたって言うのよ……!?

 

「司令! “ノイズ”の反応が多数! こ、これは! この一年で最大規模です」

 

「くっ……、まだ“ファウストローブ”の試運転すらしていないのに! 美羽! 出られるか!?」

 

 どうやら“ノイズ”が出現したみたいで、弦十郎はあたしに戦えるかどうか質問をする。

 そんなの是非もないでしょう。まったく、あたしの人生これからどうなるか分からないけど、これだけは決まった。

 

「もちろんよ……! あたしが翼を一人にはさせない! “ノイズ”と戦うわ……!」

 

 翼に孤独を感じさせない。彼女の隣に立って今日から戦おう。

 あたしは“ファウストローブ”のネックレスを握りしめて、そう誓った。

 そうせねばならないと本能がそれを感じたからだ――。

 

 

 そして、あたしと翼はヘリコプターに乗せられて、現場へと向かう――。

 

「来なくて良かったのよ……」

 

「もう、翼ちゃんったらつれないんだから」

 

 翼からあたしへの印象は最悪みたいで、目も合わせてくれない。

 仕方ないか。馴れ馴れしくしすぎちゃったし……。

 

「Imyuteus amenohabakiri tron……」

 

 翼が“聖詠”という歌を歌って、シンフォギアを纏う。なんでも、“フォニックゲイン”という歌の力が聖遺物とやらの力を呼び覚まして、シンフォギアが発動するらしい。

 そして、それが出来る人間が“適合者”と呼ばれる。奏が居ない今、翼はただ一人のシンフォギアの“適合者”だ。

 

「へぇ、すごーい。そうやって変身するんだ。おっし、あたしも……!」

 

 あたしは首にかけているネックレスに意識を集中させる。

 

 そして――。

 

「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!」

 

 両手を合わせて九字を切ると、ネックレスは赤く発光して、気が付くとあたしは侍の着物みたいな衣装を身につけていた。

 色も黒くて地味だし、腰に刀が付いているけど……。はっきり言って可愛くない……。

 

「――それが、ファウストローブ……。しかし、実戦の経験が無いと司令より聞いているわ。お願いだから離れてなさい」

 

「ええーっ! あたしは翼ちゃんの隣が良いんだけどな。――って、ちょっと! 待ちなさい!」

 

 翼は相変わらず冷たい感じで、あたしを一瞥すると、さっさとヘリコプターから飛び降りてしまう。

 あたしは慌てて彼女を追って飛び降りた。

 あれ? こんな高いところからパラシュートも付けなくてダイブして大丈夫なのかしら?

 

 そんなことを考えていたけど、自分の身体能力は思った以上に人間離れしているみたいで、何事もなく着地に成功する。

 

 目の前には様々な形とサイズの“ノイズ”の群れがいた。

 

「うわぁ……。なんか、“ノイズ”って生で見ると気持ち悪い……」

 

 あたしは若干“ノイズ”の形状に引いていたが、戦う意志みたいなものはファウストローブを身に着けてからというもの妙に向上しており、気付いたら刀を抜いて構えていた。

 

 なんだろう。血が騒ぐというか……。刀が“ノイズ”を斬りたがっているというか……。

 あたしの身体は自然と“ノイズ”に向かっていた――。

 

「本当に、邪魔だから。素人が戦場に来ても怪我するだけよ。いや、怪我じゃ済まないかも……」

 

「――えっ? 何? なんか言った?」

 

 翼が何か話しかけてきていたが、よく聞こえない。

 血が沸騰するくらい熱くなり、あたしは刀を目の前のナメクジみたいな“ノイズ”に振り下ろした。

 するとどうだろう。“ノイズ”はあっけなく黒い炭になり砕け散る。なによ……、随分と簡単じゃない……。

 あたしは、本能の赴くままに刀を振るい――“ノイズ”を駆逐していく。

 一度、刀を振れば一体、二度振れば二体――ならば……!!

 

「絶技――“百鬼八光”ッ!」

 

 秒間に100回剣を振り、剣圧を八方向に同時に飛ばす技をあたしは使ってみた。

 こんなこと出来るなんて、さっきまで知らなかったけど――。

 

「――っ!? なんてスピード……!? ファウストローブとは、シンフォギア以上の出力があるとでも言うの?」

 

果敢無(はかな)いわね……。刀を振れば何もかも塵芥に消えてしまう……」

 

 “ノイズ”は思った以上に脆い。あたしが刀を少しばかり力を入れて振れば、その剣圧でビルくらいの大きさの“ノイズ”も一刀両断されていた。

 体が勝手に動く。どのように刀を扱えばいいのか大昔から知っていたように――。

 

「――そして、まるで数十年間、研磨を重ねた剣豪のように熟練された技……! あ、あなたは一体……!?」

 

 100体以上の“ノイズ”を葬ったあたしは翼の前に立つ。

 彼女は口を開けて驚愕した表情をしている。

 こりゃあ、ドン引きさせちゃったみたいね……。何とかしなきゃ……。

 

「あたしはあなたのパートナーよ。ほら、改めて、よろしく。翼ちゃん」

 

 あたしはもう一度ニコリと笑顔を作って、翼に手を差し出した――。

 

 しかし、彼女は相変わらず手を握ってはくれない――。

 やっぱり、そんなに簡単には仲良くなれないみたいだ……。

 

『果敢無き(かな)――真の防人たる者に情などは不要の産物也――』

 

「――っ!? 何!? 今の声!?」

「……?」

 

 低く威圧的な声があたしの脳細胞を刺激する。しかし、翼は何も気付いていない……。空耳ってこと?

 

 しかし、“防人”という言葉はずしりと重く――あたしに何かを強制させようとする力が働いている様だった。

 

 あたしはこのとき何も知らない。自分という存在が彼女にとってどんな存在なのか……。

 

 ただ、この日からしばらくの間……、少しずつ彼女に歩み寄る。それだけに尽力する日々が続いた――。

 翼を何かから護らねば――あたしの本能がそう働いていた――。

 いや、それすらもあたしの知らない()()()の指示かもしれない……。




美羽のファウストローブはBLEACHの死装束みたいなイメージでお願いします。
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