風鳴訃堂が“美少女”になって護国のために頑張るお話 作:焼きめし
タイトルは内容とほとんど関係ありません。先に謝罪をします。
「めんご、めんごー。ちょーっと、あたしのファンに絡まれちゃってさ。いやいや、有名人は辛いわ」
「聞いてるわ。交戦したって、ファンを撒くのに“ファウストローブ”まで使わないでしょ」
あたしが遅れた理由を誤魔化そうとすると、翼はあたしが既に交戦した情報を得ていた。さすがに“ファウストローブ”の起動はアウフヴァッヘン波形で分かるから誤魔化せないか。
「ありゃ、バレちったか。ちょびっと強い子が相手でね。長く戦ってたらヤバかったかも」
「あなたが? そこまでの相手なの?」
あたしが危ない相手だったと口にすると翼は少しだけ驚いた顔を見せる。まぁ、“ノイズ”には苦戦したことないからなぁ。
「あー、響ちゃんだー! 響ちゃんって、翼ちゃんの大ファンなんだって。ほら、こっちおいで」
「――ちょっと、美羽。私は――」
あたしは翼の質問には答えずに、彼女の手を引いて響の元に向かった。まさか、ここで彼女に再会するとは思わなかった。
「つ、翼さんに続けて美羽さんまで。一体、何なんですか?」
「うーん。説明はめんどいから、他の人に聞いちゃって。とりあえず、翼ちゃん。あたし、響ちゃんと翼ちゃんのサインを貰って来る約束したから、ちゃちゃっと書いちゃってよ」
現状を説明しようとすると二課の事とか色々と話さなきゃいけないので、響の質問はスルーして翼に響へのサインを書くように促す。
「美羽、今はそれどころじゃ……」
「あのう! つ、翼さんに助けてもらったのこれで2回目なんです!」
翼がサインを拒否してあたしたちから背を向けようとすると、響が翼に2回助けられたと口にする。何やら意味深な感じじゃないの。
「2回目……?」
「へぇ、いきなり二人だけの秘密の関係があるってわけ? 教えなさいよー」
あたしは当たり前だけど、気になったから響にどういうことなのか質問した。
「えへっ、それはですね。2年前に翼さんが――」
「話してるところ悪いけど、特異災害対策機動部二課にご同行願います」
「あら、手錠までしなくてもいいのに。容赦ないわね」
しかし、響からどんな話なのか語られることはなく、翼は淡々と彼女を二課まで連行しようとする。
手錠ってやり過ぎじゃないかしら。仕方ないんだろうけどさ。
そして、あたしたちはリディアン音楽院の遥か地下にある特異災害対策機動部二課に響を連れて行った。彼女はあまりの急展開に困ったような笑みを浮かべていた。
「あっ!? キャロルちゃんだ! どうしてここに!?」
「おい、美羽……。なんで、立花がここに居るんだ……! 嫌な名前に歓迎とか書いてあるから、同姓同名を願っていたんだぞ!」
特異災害対策機動部二課で響の歓迎会が開かれ、半分騙されて連れてこられたキャロルが口を尖らせながら響を指差す。響はクラスメイトを目にして少しだけ緊張が解れたみたいだ。
「あれ? 了子
「こいつがシンフォギアを? 冗談だろ? そうと言ってくれ……」
あたしがキャロルに響が連れてこられた理由を教えると、彼女は愕然とした表情でそんなことを言う。
キャロルと響――二人の波長は合うと思ったんだけど……。
「しんふぉぎあ?」
「こらこら、美羽ちゃんもキャロルちゃんもネタバレ禁止。物には順序が有るんだから」
響の頭に疑問符が浮かんだところで、了子が弦十郎と共にこちらにやって来る。
まぁ、“シンフォギア”とか言われても分かんないわよね。あたしも未だによく分かんないし。
「ここに響くんの知り合いが多くて良かった。緊張も解れたところで改めて自己紹介だ。俺は風鳴弦十郎。ここの責任者をしている」
「デキる女と評判の櫻井了子よ。よろしくね」
「は、はい。よろしくお願いします」
弦十郎と了子が自己紹介すると、響がペコリと頭を下げた。
これから二人がいろいろと説明をするのだろう。
「おい、オレたちはこの辺で帰らせてもらうぞ。関係ないからな。行くぞ、美羽」
するとキャロルがあたしと一緒に帰ろうと口にした。
多分、彼女は面倒に巻き込まれそうだと察したのだろう。
「あら、キャロルちゃんには手伝ってもらうわよ〜。響ちゃんを脱がすの」
「えっ?」
「はぁ?」
しかし、了子はキャロルが帰ろうとすることを許さない。おそらく響のメディカルチェックに付き合わせるつもりだろう。
メディカルチェックなど了子だけで出来るはずなんだけど――おそらく暇つぶしでキャロルを誘ったのね。
「響ちゃんの体には興味あるけどさ。あたしは用事があるから――。キャロルちゃん、ガンバ!」
「お、おい! 美羽、お前ズルいぞ!」
あたしがキャロルの肩を叩いて、先に帰ろうと足を踏み出す。放っとけない子がいるから……。
「ちょうどいいからクラスメイトと親睦を深めたら良いじゃない」
「へぇ、キャロルちゃんと響ちゃんクラスメイトなんだー。だったらお姉さんに任せなさい! 仲良しになれるように、一肌脱いであげるわよ!」
あたしが去り際にキャロルが響とクラスメイトということを了子に伝えると、彼女は妙にハッスルして響とキャロルの仲を取り持つと意気込んだ。
そして、あたしは翼の元に向かった。
「――翼、あなたどうしたの? さっきからずーっと変な感じよ」
「そうか? 特に変わりないと思うが」
あたしは翼の響に対する態度について言及するが、翼はしらばっくれる。
わかりやすい態度を取ってることに気付いてないのね……。
「奏さんのこと、思い出したんでしょう? 響ちゃんのガングニールは――」
「あれは奏の物だ! ――はっ!? み、美羽……、私は……」
あたしが奏の名前を出すと翼は感情を顕にして初めて動揺を顔に出す。
「よしよし。素直な翼ちゃんは好きだゾ。良いじゃん。割り切れなくても。腹に抱えるよりも、吐き出しなさい」
あたしは翼の肩を抱いて、頭を撫でながら自分の胸の内を話すように促した。
ガングニールは翼にとって特別なのだ……。
「堪らなく嫌だったんだ。奏のギアを纏った立花を見たとき……。私の中の何かが消えてしまうみたいで……」
翼は悲しそうに俯きながら自分の気持ちを吐露する。
「そりゃあそうよ。翼ちゃんがそれだけ大事に奏さんを想っていたんだもん。何も感じないわけないし。普通だから、そんなの」
あたしは奏と面識はないけど、翼にとってどれだけ大きな存在だったかは分かっている。
翼が自分を研ぎ澄ますことを怠らないのも彼女を失った事が大きく関係している……。
「美羽、私はどうすればいい? 立花がもし私たちと戦う道を選んだら……、私はそれを素直に受け止める自信がない」
翼は響がガングニールのシンフォギア装者として仲間になる選択をしたとしても、それを受け入れられないかもしれないと悩んでいるみたいだ。
「そうね〜。嫌なら嫌って本音をぶつけても良いんじゃないかしら? 変に取り繕うよりも、やっぱり人間、お互いを知るにはぶつかり合ってこそでしょう?」
あたしは翼に悩むよりもその気持ちを素直に伝える方が良いとアドバイスする。
響だって翼のことを知らないだろうし、翼だって響のことを勿論知らない。
まずは翼が先輩としてありのままの自分を曝け出した方が良いとあたしは考えたのだ。
「そうか……。確かに美羽ともぶつかり合って初めて軽率で頭が悪くて考えなしで動いているだけの馬鹿者ではないと分かった」
「えっと、泣いていいかしら?」
あたしは翼から初対面のときに随分な印象を与えていたことを知って、ちょっと悲しかった。
「承知した……。それなら私は立花響に全力でぶつかる――」
「その意気よ、翼ちゃん! 頑張って!」
あたしは翼にエールを送った。これで二人が少しでも仲良くなれれば良いんだけどなぁ。
明日からあたしはイメージビデオの撮影で沖縄に1週間くらい行かなきゃいけないから、その前に翼に話せて良かった……。
良かったで、思い出したけど、この前表紙になったヤ○マガが書店から謎の売り切れ続出で特別にもう一週表紙を飾れるようになった。
ソロでの仕事も増えてきて嬉しい限りだわ。
まぁ、あたしの私生活は絶好調だから、あとはやっぱり翼と響の問題よね。まぁ、翼が素直に感情を吐き出すと言っていたから前進することは間違いないでしょ。
そして、沖縄での撮影が終わって帰ってきたその日――。
「美羽……、君は翼に変なアドバイスをしたそうだな?」
「へっ?」
あたしは唐突に記憶にないことを弦十郎に問い詰められて、変な声が出る。変なアドバイスって何よ……。
「立花に翼がギアを向けた。出力最大でな……。残念ながら、弦十郎が止めに入ったから立花は無傷らしいが……。まったく、余計なことを……」
「おいおい……。キャロルくんは立花くんが嫌いなのか?」
キャロルが残念そうな感じで響が翼にギアを向けられた話をすると、弦十郎はそれにツッコミを入れる。
まさか、あたしの言葉を受け取って決闘を挑むとは――。
「肯定だ。あいつ、オレを見つけるといつも犬猫みたいに抱き締めやがって……」
キャロルは露骨に子供扱いしてくる響に参っているみたいだ。
「それはいいとして、翼に戦えなんてアドバイスを何故?」
「いやいや、あたしは本音でぶつかり合えって言っただけよ。響ちゃん締めろなんて言うはずないじゃない」
あたしは翼に物理的にぶつかれなんて言ったつもりはない。
しかし、思い返してみれば口下手な翼が本音を言いあいをするなんてハードルが高いかもしれない。
「ふーむ。それを聞いて……、実際に戦ってその心を知ろうとしたか。翼らしいといえばらしいが……。――しかもその後、翼が響くんの頬に張り手をしてな……、正直言って雰囲気が悪い」
「へぇ、翼ちゃんが響ちゃんに平手を……」
あたしは弦十郎の言葉を聞いて、翼の大きな怒りを感じ取った。
「あの頭が空っぽそうな女のことだ、翼の地雷を踏みに行ったに違いない。覚悟がないなら、ここで辞めたほうがヤツのためだろう」
「なんだかんだ言っても優しいんだー。キャロルちゃんは」
あたしはキャロルの辞めたほうがいいという言葉に対して感想を述べる。
「もう一人頭が空の女が居たか。何をどう聞けばそうなる?」
「だって、響ちゃんが危険な目に遭わないように心配してるんでしょう?」
「――なっ!? おめでたい頭をしているな。オレが立花の心配などするはずがないだろ!」
キャロルは素直ではないが内面は優しくて繊細な子だ。
なんだかんだ言って素直に好意を寄せる響のことが気になっているのだろう。
「はいはい。じゃ、翼ちゃんにはもう一回あたしがちゃんと言い聞かせるから、心配しないで」
そう言ってみたものの、翼ったらあたしの話も聞かなくなって、仕事の話を最低限にしかしてくれなくなった。
これじゃ、会ったばかりに逆戻りじゃない……。
それから、しばらくして――“ノイズ”が大量発生してあたしたち3人が出撃をした日……。
あたしたちはあの子と会う。そして、あたしはあの人と再会する。
「ネフシュタンの鎧……!?」
「へぇ、あんたこの鎧の出自を知ってるんだ」
翼は“ネフシュタンの鎧”という聖遺物を身に着けている女の子に対して警戒心を示す。
“ネフシュタンの鎧”は翼と奏のライブ中に“ノイズ”の襲撃を受けた際に何者かに盗まれた物らしい。
「それにあなたはこの前の変態イケメン錬金術師!」
「光栄だね。覚えてもらえるなんて。君のような美しいお嬢さんに」
独特の倒置法で話す男、パヴァリア光明結社のアダムが帽子を触りながらキザな笑いを浮かべる。
「おい! お前! あたしのアダムの悪口は許さねぇぞ!」
「待ちたまえ。分かってるだろ? 君の役目は」
ネフシュタンの女の子が変態と口にしたあたしに怒りの視線を向けて殺気を放つと、アダムは手で彼女を制す。
ふーん。あの女の子は変態イケメンに惚れてるわけね……。
錬金術師たちの恐るべき計画が実行されようとしていることにあたしたちはまだ気が付いていなかった――。
アダム✕クリスみたいな構図は誰得なんだろう。
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