風鳴訃堂が“美少女”になって護国のために頑張るお話 作:焼きめし
お久しぶりです。そして遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
「さて、見せてもらおうか。君の実力を」
「また、全裸にならないことだけ約束してくれる? 目のやり場に困ったのよ」
「て、てめェ! アダムの裸を見やがったのか! あたしだって――」
あたしがアダムに全裸にならないように忠告すると、ネフシュタンの女は激怒しだした。
なによ、好きな人の裸見られて怒ってるってわけ? こっちは見たくもないもん見せられたってのに。
「人聞きが悪いわね。あの人が勝手に――」
「許せねぇ! こいつでお前をぶっ倒す!」
「の、“ノイズ”が召喚された?」
「あの杖みたいなのが……」
ネフシュタンの女が銀色の杖のような物から光を照射すると、そこから“ノイズ”が出現する。あたしと響はその様子に驚いた声を漏らした。
「あの、クソったれ女! 絶対に許せねぇ!」
「ダメだよ、クリス。任務を忘れては……。怒るのは結構だが。仕方ない子だね。君は……」
ネフシュタンの女が興奮気味だったが、アダムに“クリス”と呼ばれて窘められる。任務って何をしに来たっていうの?
「――う、うん。わかった。ごめんなさい……」
アダムに忠告されたクリスはしおらしくなり、彼に頭を下げて一歩下がった。見たところ、クリスはアダムには逆らえないみたいね……。
「翼、あの男はただ者じゃない。あたしが何とかするから……、あなたは……」
あたしはアダムは翼の手に負えないと判断して彼とはあたしが戦うと口にする。これは“ノイズ”と戦うより面倒なことになりそうだ。
「ああ、“ノイズ”と“ネフシュタンの鎧”は私に任せろ!」
「あ、あの。美羽さん、翼さん、同じ人間が相手です。何とか話し合うことは……」
臨戦態勢を整えるあたしと翼に対して響は話し合いで何とかならないかと提案する。優しい子なんだから……。それが出来たら1番良いわよね……。
「響ちゃん――」
「足手まといは下がっていろ……! 半端者には、この戦いは荷が重い……! 戦場で甘言は許さん!」
「ちょっと、翼ちゃん!」
しかし翼は響のセリフを甘言だと切って捨てる。それは言いすぎでしょ。最近、余裕がないような気がするわ……。
「なんだ、ちったぁ話せるヤツがいるじゃねぇか」
「推して参る!」
そして、翼はクリスの方に向かっていき、彼女と戦闘を始めた。まぁ、言葉でなんとかなりそうにはないか……。
「――行かせてもらうよ。僕もそろそろ……」
「確かに響ちゃんの言うとおり人間相手だと――萎えるわねっと!」
アダムが何やら火球のようなものを作り出して飛ばそうとしてきたので、あたしは彼との間合いを急速に縮めて刀を振り下ろす。
「強烈だね。君の攻撃は――。頷けるよ。あの方が嫌がるのも」
アダムがフワリと浮き上がり、あたしの斬撃を躱した。地面は剣圧によって地割れを起こしたが、彼は無傷だ。スピードも速いし、空が飛べるというのは面倒ね……。
「今日は消極的なのね。ていうか、何が目的なのよ!」
「救済さ。僕の目的は。創るんだよ。人々が争わない理想の世界を」
あたしは全力でジャンプしながら、アダムに連撃を加えつつ彼に目的を問うた。彼は質問に対して理想郷を作ることが目的だと答える。
ふーん。理想の世界ね……。
「あら、素敵! で、それがキャロルちゃんを殺そうとした理由なの!?」
「うーん。そうなんじゃないかな? 多分……。基本的に指示待ち人間なんだ。僕は。従っているのさ。あの方のご意向に」
「何よそれ、あなたには自分の意志ってもんが無いのかしら?」
「さあ、どうだろう。少なくともやりたいようにはしているよ。“作られた人格”の君よりは」
アダムは“あの方”とかいう人の指示で動いているとしながらも、自分の意志はあると口にした。そして、あたしが“作られた人格”ということを何故か知っていた。
「――っ!? あなたはあたしの事を!?」
「調べさせてもらったまでさ。知っているからね。君と同じタイプの身体の持ち主を」
アダムはあたしのことを調べていたらしい。さらに同じような身体を持つ人間も知っているみたいだ。やはり、あたしの身体はパヴァリア光明結社とやらが絡んでいたのか……。
アダムとあたしの攻防は一進一退であった。身体能力はあたしの方が上だと思うが、彼は空を飛べる上に錬金術とやらはかなり強力で、なかなか上手く攻めさせてくれない。
あー、焦れったいわ……。決定打を浴びせようとすると必ず空中高くにエスケープするし……。
「さて、果たさせてもらおうか。目的を」
「眩しい! 何をしたの!?」
しばらく戦った後にアダムはあたしに対して強烈な光を浴びせる。特に身体に痛みは感じなかったが、目が眩んで何も見えなくなってしまった。
「クリス。掛かり過ぎだよ。時間がね……」
「分かってる! ちょうど、終わらせるところだ! くっ、体が急に動かなく……」
アダムは翼に手こずるクリスに忠告をしていたみたいだ。
あたしが薄目をあけて何とか状況を確認すると、響は粘着性のある糸を吐き出すノイズに拘束され、翼はクリスに追い詰められていたが、忍術である“影縫い”という技でクリスを動けなくしているみたいだった。
「美羽……、あとのことは頼んだ! 立花……、防人の覚悟をあなたに見せてあげる!」
「まさか、翼……。“絶唱”とかいうのを……! それって、確か――。早まらないで、あたしが全部倒すから!」
あたしが目をようやく全開に出来たとき、翼は覚悟を決めた顔つきをしていた。
彼女が何をしようとしているのか、私には察しがついた。彼女は“絶唱”というシンフォギア装者が命を燃やして歌うことで莫大なエネルギーを放出できる技を使おうとしている。
天羽奏はそれを使って命を落としたと聞いていたので、あたしはそれだけは使わせないように今まで気を配っていた。
「行かせないよ! 君をここから先へ!」
あたしは翼の方に急いで向かおうとしたが、アダムが立ちふさがる。
「退きなさい! 退けっつってるでしょうがぁぁぁぁ!」
「――がハッ」
邪魔をしてくる彼が鬱陶しい。あたしは力任せに彼の腹を蹴飛ばす。体格からは考えられないくらい重く感じたが、彼は10メートルほど吹き飛ばされた。
「アダム! 畜生! てめぇは絶対に――」
「私を相手にしながら、他に気を取られるとは――」
アダムが蹴飛ばされた光景を見たクリスはあたしに怒りの視線を送るが、その間に翼に間合いを詰められる。まずい、本当に絶唱を使うつもりだ……。
「つ、翼ちゃん! そんなことしなくても、あたしが! くっ、しつこい!」
あたしが彼女を止めるために動き出すが、アダムは後ろから錬金術によって邪魔をしようとする。彼は嫌がらせが好きなのかしら? くそっ、間に合わない……。
「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl……」
翼が絶唱を歌う。彼女から生み出される強烈なエネルギーはノイズを消し去り、クリスのネフシュタンの鎧に亀裂を走らせて彼女を吹き飛ばす。
そして、翼は身体中の至るところから血を流して半死人のように力なく立っていた……。
あたしと響はそんな翼の姿を見て、言葉を詰まらせる。
「おやおや、大変なことをしてるね。君の仲間は。良いのかい? 助けなくても」
「翼ちゃん! 早く病院に!」
アダムの言葉にハッとしたあたしは翼に駆け寄った。まだ生きている。病院に行けば助かるかもしれない。
「あ、アダム……、あたしはまだ……」
「撤退しよう。クリス。大事なんだよ、君の身体の方が。任務なんかよりも、何よりも」
「それじゃ、アダムが責任を!?」
アダムは倒れているクリスを抱き上げて優しく撤退しようとクリスに声をかけている。クリスはアダムが責任を取らされることが不満みたいだ。
「後で考えたらいいさ。言い訳なんかいくらでも」
「――あなたはいつだってあたしの為に……。くっ、次は必ず……」
しかし、アダムは撤退を決めた。クリスはそんなアダムを力いっぱい抱き締めながら、涙目であたしを睨んできた。あたしは翼に害が及ばないように、その殺気に警戒したが、彼らそのまま何処かへと言ってしまった。
「美羽! つ、翼は……!」
「ごめん。弦ちゃん……、翼ちゃんを守れなかった……」
そして、間もなく弦十郎と了子が乗った車が現れる。あたしは翼を守れなかったことを彼に謝り、彼らとともに病院に向かった。
幸い、搬送された病院で翼の命に別状がないことを伝えられる。しかし、あたしも響も自分の不甲斐なさに気落ちしていた……。
◇ ◇
「パヴァリア光明結社の情報か? いや、私も調べることはしてみたが、なかなか尻尾を掴めていない」
あたしは家に戻って八紘に電話した。盗聴などの対策がしてある超機密回線を使って。
パヴァリア光明結社の動きが活発になってきたからだ。
「あら、さすがの八っくんもお手上げ? 連中はあたしの事もある程度は知ってたみたいよ」
「何?」
「そのうちバレるかもしれないってこと。あなたのパパがあたしってことが……」
八紘は何も情報を掴めていなかったので、あたしは逆にこちらの情報が向こうに渡っていることを彼に伝えた。八紘はあたしの正体が漏洩することを恐れている。だから、この事態はあまり良いとは言えないだろう。
「――っ!? パヴァリア光明結社は私が必ず叩き潰そう。どんな手を使っても……」
彼は思った以上に気合を入れる。その言葉からパヴァリア光明結社への明確な殺意が湧いていることが伝わってくる。
「いや〜ん。そんなに嫌なのぉ? あたしが八っくんのパパっていうのが」
「嫌とかそんな次元は既に超えている。私とて胃薬を手放して生活したいのだ」
どうやら八紘は何があってもあたしの正体が漏洩することは阻止したいらしい。
胃薬なんて飲んでいるんだ。あたしを心配して……。優しいのね……。
「翼ちゃん。絶対安静なんだって、意識が回復したらお見舞いに行ってあげなよ」
「その必要はない。私など居らんほうがマシだ」
何故か八紘は娘である翼を突き放している。その理由は弦十郎に聞いても決して教えてもらえなかったが……。おそらく訃堂が何かしらこの件に絡んでいるのだろう。
「ふーん。――あとパヴァリアは響ちゃんを狙ってたみたい。これってさ、二課にスパイがいるってことと繋がらないかな?」
「確かにそれは考えられるな。弦も当然気付いてるだろうが」
響の情報はトップシークレットである。というかシンフォギアの情報が大きな機密になっている。
だから、敵がそれを知っているということは、誰かが漏らしたということになる。それは即ち、二課の中に内通者がいることを証明している。
「そんなわけだから、何か分かったら教えて」
「うむ。わかった」
「あと、今日からあたしがフルーチュエのCMに出るから、見てね♡ レオタードなんて初めて着ちゃった。可愛いのよぉ♡」
「ぶっ――! ごほっ、ごほっ……」
あたしが最後に自分が出演しているCMの情報を八紘に話すと、彼はものすごく咳き込んでいた。めちゃめちゃ可愛いCMなんだけどなー。
そして次の日の早朝――。
「たのもぉぉぉ!」
「なんだ、いきなり?」
「なぜ、こんな朝早くに立花が……。悪夢だ……」
「響ちゃん、おはよう! 覚悟を決めたのね!」
響はあたしにもっと強くなりたいと懇願してきた。だから、あたしは今日の朝にここに来るように伝えた。弦十郎に特訓をつけてもらうように提案したのだ。
「私に戦い方を教えてください!」
「この俺が、君に?」
「はい! 美羽さんに武術の技を教えたのは弦十郎さんだって、聞きました。だから、私にも教えてほしいんです!」
あたしは自分が強い理由を響に尋ねられたとき、つい面倒で弦十郎から習ったと言ってしまった。だから、響は弦十郎に素手での戦い方を習いたいと口にしているのだ。
あたしは剣術の方が得意だし、弦十郎に任せた方が響には合ってるだろう。
「ふむ……。美羽、君はちゃんと伝えたのか?」
「えっ、何をかしら?」
「俺のやり方は厳しいってことだ。響くん、付いてこれるか?」
「はい!」
弦十郎は響に稽古をつけることを承諾した。ちょっとでも強くなれるといいんだけど……。
「バカバカしい。立花、お前……、授業はどうするんだ?」
「お、お休みする……」
「ただでさえ、脳みそが足りてないお前が授業をサボったら確実に課題が山積みになるぞ。オレにはどうでもいいことだが……」
弦十郎の元で特訓することとなった響に対して、キャロルは彼女の学校の心配をする。授業に出なかったら課題に押し潰されると。
確かに、ノイズを倒すだけでもオーバーワーク気味なのに特訓までしちゃうと大変よね。
というか、響に対して悪態はつくけど、なんだかんだ言って彼女のこと気にかけているのね。
「キャロルちゃん。私の心配をしてくれているの?」
「なんだかんだで、優しいのね。大丈夫。キャロルちゃんのノートってすっごく丁寧で解りやすいから、それをコピーしてもらえば何とかなるよ」
あたしはキャロルが錬金術師としての性なのか、超几帳面に授業のノートを取っていることを知っている。板書だけでなく、先生の話していたことや、自分なりに要点をまとめてポイントを別のページに記入してたりする。
「はぁ? なぜ、オレがそこまでしてやらなきゃならんのだ!? 小日向に見せてもらえばいいだろうが」
「あはっ! ありがとう! キャロルちゃん!」
「知らん! お前など知らん! 美羽、さっさと支度しろ! 学校に行くぞ……」
キャロルは響に手を握られると、顔を赤くしてそっぽを向き、あたしに学校に行くと声をかける。
あたしとキャロルは準備をして学校に向かい、響は弦十郎と特訓を開始した。
この日から響はシンフォギア装者として爆発的に成長することとなる――。
そして、あたしたちは再び相対する。パヴァリア光明結社と……。
完全聖遺物、“デュランダル”の護送を巡って――。
アダムとクリスを書いてたら、なんか更にやべー関係なってしまった。
無印編は原作の流れに沿いながら、ラストの方はかなり変わった感じになりそうです。
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