風鳴訃堂が“美少女”になって護国のために頑張るお話   作:焼きめし

9 / 9
護国の鬼、バラドルを目指す

 

 

「はぁー。朝からハード過ぎますよー」

 

「結構絞られたみたいね。大丈夫?」

 

「ううっ……、へいきへっちゃらです……」

 

「とても、そうは見えないけど……。弦ちゃん、加減してあげなよ」 

 

「頼んだぞ、明日のチャンピオン」

 

「駄目だこりゃ……」 

 

 早朝の特訓を終えて、魂の抜けかけた顔をしている響。しかし、この前、彼女と組手をしているとわかったんだけど、彼女は恐ろしく強くなっている。きっとギアを纏うとさらに強くなるわね――。

 

「はい、ご苦労様。」

 

「あはっ、すいません! ――んっ、ぷはっー」

 

 響は友里に渡されたドリンクを一気に飲み干す。相当喉が渇いていたのね……。

 

「あのー、自分でやると決めたのに申し訳ないのですが。何もうら若き女子高生とかに頼まなくてもノイズを戦える武器って他に無いんですか?  外国とか」

 

 響は散々ノイズと戦っておいて、今さらなことを言ってきた。それが可能ならあたしだって翼だって戦ってないんだなー。

 

「公式にはないな。日本だってシンフォギアやファウストローブは最重要機密事項として完全非公開だ」

 

 そう、あたしや翼の力は国家機密として守られている。特にあたしなんか素性がアレだから、八紘が目をギンギンにしてトップシークレットにしている。まぁ、それでも諸外国も死にものぐるいで調査はしているらしいけど。

 

「ええっー。私、あまり気にしないで結構派手にやらかしてるかも」

 

 響はそんな心配をしているけど、戦いなんだからあたしも翼も細かいこと気にしてない。

 

「情報封鎖も二課の仕事だから」

 

「だけど、時々無理を通すから――。今や我々のことをよく思ってない閣僚や省庁だらけだ。特異対策機動部二課を縮め、“特機部二(とっきぶつ)”って揶揄されてる」

 

「情報の秘匿は政府上層部の指示だってのにね。やりきれない……」

 

 友里と藤尭は国防のための無茶の責任まで押し付けられて不満のようだ。まったく、上は勝手よね。八紘に今度、何とかならないか聞いてみよっと。

 何とかしないと、高校卒業したらヌード写真集でも出しちゃうぞって。

 

「どっちにしろ、政府は特にシンフォギアを有利な外交カードにしようと目論んでいるみたいよ。EUや米国はいつも開展の機会を伺っているの。シンフォギアの開発は既知の系統とは全く異なるところから突然発生した、理論と技術によって成り立っているの。日本以外の他の国では到底真似出来ないから、欲しくて仕方がないのよ」

 

 あたしは諸外国の動きについて響に話した。

 

「おおっ、美羽さんが難しい話をしてる!」

 

「ちょっと、響ちゃんそれどーいう意味?」

 

「えへへっ……」

 

 響がちょっと失礼なことを言ってきたので、あたしは頬を膨らます。

 あたしって、そんなに頭が悪そうなのかしら?

 

「でも、美羽さんの着物みたいなあれって、シンフォギアと違うんですよね? ファウストローブでしたっけ?」

 

「あたしのファウストローブは情報不足過ぎてそれほど知られてないの。だから、大したカードにはならないみたいよ」

 

 大体、あたしがこんな事になっていることを知っている人間が少ない。ファウストローブは錬金術の中でもかなり高等な技術が使われているらしく、了子やキャロルですら完全に構造が理解できていない部分もある。

 

 だから、外交のカードにするにはリスクが高すぎるみたいだ。

 

「ふーん。そうなんだぁ。――あれ?  師匠、そういえば了子さんは?」

 

「永田町さ――」

 

 響は了子がいないことに疑問をもって弦十郎に所在を尋ねる。

 

「永田町?」

 

「政府のお偉いさんに呼び出されてね、本部の安全性、及び防衛システムについて関係閣僚に対して説明義務を果たしに行っている。 仕方のないことさ」

 

 響の疑問に弦十郎は了子が防衛システムの説明に向かったと教える。あの人はこういうことは全部把握してるから凄いわよねー。

 できる女って、マジで尊敬するわ。

 

「ホント、何もかもがややこしいんですねー」

 

「ルールをややこしくするのはいつも責任を取らずに立ち回りたい連中なんだが……。その点、広木防衛大臣は……。――ん? 了子くんの戻りが遅れているようだな……」

 

「そうね、確かに遅すぎるわ……。結構出て行って時間が経つもの」

 

 了子の戻りが遅いことを不審に思ったあたしたちのもとに、広木防衛大臣が何者かに殺害されたという報告が届いたのは、このあとすぐのことだった。

 

 

◆◇◆ 

 

 

「大変長らくおまたせしましたー!」

 

 了子はヘラヘラした表情で呑気そうな声を出しながら帰還した。

 

「了子くん!」

 

 そんな彼女の元に弦十郎が駆け寄る。弦十郎って、了子と良い仲だと思っているんだけど、中々進展しないのよね〜。

 

「何よ?  そんなにさみしくさせちゃった?」

 

「了子姉さん、それが大変なのよ〜。広木防衛大臣が殺害されたの」

 

「えぇっ?  本当?」

 

 あたしが了子に広木防衛大臣の殺害を伝えると、彼女はオーバーなリアクションをとる。

 そりゃ、驚くわよね……。

 

「複数の革命グループから犯行声明が出されている詳しいことは把握出来ていない。目下全力で捜査中だ」

 

「了子さん、連絡も取れないから皆心配してたんです!」

 

「え? あっ、ほらほら、これ。壊れてるみたいねー」

 

 弦十郎と響の言葉を聞いた彼女はゴソゴソとカバンを漁り、スマホが壊れていると言い放った。

 ありゃ、それは通信が繋がらなくて当然だったみたいね……。

 

「あははっ……」 

 

「でも心配してくれてありがとう」

 

 苦笑いする響に微笑みかける了子。彼女は何だか心配されて嬉しそうにしていた。

 

「そして、政府から受領した機密司令は無事よ。任務遂行こそ、広木防衛大臣の弔いだわ」

 

 アタッシュケースを置いて彼女は真剣な顔つきになった。

 

 いよいよ、あの任務を遂行するのか。翼がいないから、あたしが頑張らないとね。

 

 それから、程なくして、特異災害対策機動部二課は政府より任務を与えられた。

 

 完全聖遺物である、デュランダルという名の剣。これを永田町地下の特別電算室。通称記憶の遺跡まで移送する任務が我々二課に課せられたのだ。

 なぜなら、政府がノイズの発生が頻繁しているのは、我々の本部の地下にあるデュランダルを狙ったものだと結論づけたからである。

 

 そして、響とあたしは襲撃が来ることが予測されたので護衛として同行する仕事を預かった。

 

「あたたかいものをどうぞ」

 

 いつもの爽やかな笑顔で緒川が缶コーヒーを差し出してきた。

 

「ありがとう。慎ちゃん。ちょうどコーヒーが飲みたかったの」

 

「気が利かなくてすみません。ちょうど、美羽さんは自分でコーヒーを買ったところでしたか……」

 

「あたしは慎ちゃんが買ってくれたコーヒーが飲みたかったの。だから、これは――慎ちゃんにあげるわ」

 

 あたしは緒川と自分たちの持っているコーヒーを交換する。

 

「――翼さんですが、一番危険な状態から脱しました」

 

 笑顔で翼の容態が良くなったという知らせを緒川はあたしに伝えた。

 

「そう、良かったわ……。翼のこと、よろしく頼むわね」

 

 あたしは缶コーヒーに口をつけてから、緒川に翼のことを頼んだ。なんだかんだ言って、彼女が一番気を許しているのは彼だからだ。

 

「もう少ししたらお見舞いに行ってあげてください。翼さん、美羽さんのことを1番信頼しているみたいですから」

 

「慎ちゃんより……?」

 

「もちろんです。妹のような姉のような存在だと言ってました」

 

 そっか。翼がそこまであたしのことを……。

 なんか、嬉しいな。元気になったら、お祝いにケーキでも焼いてあげようかしら。

 

「それで、慎ちゃん。あなたが密かに翼をバラエティ番組に出演させてそのうち、マルチタレントにしようとしている計画は順調かしら?」

 

「なんで、それを美羽さんが知っているんです?」

 

「ふふっ、あたしは何でも知ってるの。秘密の連絡網があるんだから」

 

「驚きました。何重にもフェイクをしてバレないように進めてましたのに」

 

「あたしも一緒に出してよ〜。アイドルだらけの水泳大会」

 

「も、もちろんです。よろしくお願いします」

 

 しばらく緒川と雑談したあと、彼は響にも翼の容態を告げると言って、どこかに行ってしまった。

 

 そっか、翼もそろそろ戻ってくるのか……。

 

 

 

◆◇◆

 

 いよいよデュランダルの移送が始まった。 

 響は了子と同じ車両に乗ってデュランダルを護衛する。

 車より早く動けるあたしは外から身を隠しつつ、護衛にあたっている。

 

『防衛大臣殺害犯を検挙する名目で検問を配備! 記憶の遺跡まで一気に駆け抜ける!』

 

『名付けて、天下の往来独り占め作戦』

 

 弦十郎が作戦内容を話して、了子は格好いい作戦名をつける。

 

 了子の車を中心に護衛の車両が4両。了子の車の後部座席に、デュランダルを置いて出発する。

 上空からヘリコプターで弦十郎は指示を出す形をとっている。

 

 予想通りというか、予想以上の早さでノイズの襲撃は起こった。

 橋が壊されたり、マンホールから水が吹き出したりして、護衛の車は次々と離脱していった。しかし、やけにピンポイントで狙うわね。

 

『さっきから護衛車を的確に狙い撃ちされているのは、ノイズがデュランダルを損壊させないよう制御されていると思われる! 狙いがデュランダルなら、敢えて危険な地域に滑り込み攻め手を封じるって算段だ!』

 

 弦十郎はデュランダルがこちらにある以上、逆に危険なところに行けば攻撃の手が緩むと読んで指示を出した。それって、結構無茶じゃない?

 

『勝算は?』

 

『思いつきを数字で語れるものかよ! 美羽! そして、キャロルくん! ノイズを操っている者は見つかりそうか?』

 

「うーん。発生場所からいくつか割り出して潰してるわ。そこまで時間はかからないと思うけど……」

 

『オレの計算は絶対だ。あと数分で割り出せる』

 

 あたしとキャロルはタッグを組んでノイズを操っている者の捜索を任されていた。キャロルがオペレーターとして最速で予測されるポイントを演算をして、あたしが車以上のスピードでそれをしらみ潰しにしていく。いわゆるローラー作戦だ。

 

 そんな中、大きな爆発が起きて響たちは煙の中に姿を消して安否が一時確認できなくなる。

 

 今の響ならこれくらい大丈夫よね。信じてるわ。

 あたしとキャロルはノイズの発生源をさらに捜索することにした――。

 

 そのあとすぐに吉報が届いた。響は無事でシンフォギアを纏い戦いを始めたようだ。

 

 しかも、今までとは違う力強さでノイズを圧倒しているみたい。

 

「さて、キャロルちゃん。あたしたちも頑張るわよ。響ちゃんの頑張りを無駄にしないために!」

 

「立花のことはどうでもいいが、オレにもプライドがある。次のポイントは――」

 

 あたしはキャロルのナビゲーションに従って悪者を探し出した。

 

 そして、ついに――。

 

 

「こいつ――戦えるようになっているのか?」

 

「あら、高みの見物とはいい身分じゃない。その杖みたいなものがノイズを操るのね……。クリスちゃん、だったかしら」

 

 あたしは響を観察しているネフシュタンの鎧を装備したクリスの背後に立った。

 

「おっお前は、この前のクソッタレ女!? どうやってここを!」

 

 クリスは問答無用で杖ようなものからノイズを繰り出してきた。完全聖遺物の装備に、ノイズを操る力か少しは楽しませてくれるかしら……。

 

「――絶技……、“百鬼八光”ッ!」

 

「はぁ? な、何をしやがった? ノイズが一瞬で……」

 

 クリスはあたしが剣を抜いた瞬間にノイズたちが四散したのを見てあ然としている。

 今のが見えないのなら、勝負は決まったわね……。

 

「クソッ! クソッ! お前のせいでアダムは!! ――なっ! 消えた……!?」

 

「遅すぎるわ。アダムってやつに聞かなかったの? あたしってめちゃめちゃ強いんだから……」

 

「――っ!?」

 

 あたしはクリスちゃんの背後から喉元に刀を当てて優しく話しかけた。

 ふぅ、とりあえず、この子を捕まえればノイズの件はどうにかなりそうね――。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。