ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン 作:すすすのすー
俺は“漆黒のウード”。
絶望に満ちた未来の世界から、遥か悠久の時を越え過去に戻り、滅びし
かつて、“漆黒のウード”こと俺と選ばれし戦士たちがいた世界は、復活した邪竜ギムレーの力によって滅亡の危機に追い込まれていた。
滅亡の瀬戸際に立たされていた俺たちは最後の手段として神竜ナーガの力によって時間
戻った世界で、選ばれし戦士たちのリーダーであるイーリス聖王国王女ルキナと、その父である聖王クロム、そして過去の英雄たち──俺たち選ばれし戦士の親でもある英雄たち──と共に邪竜ギムレーと戦い、激戦の末に討ち果たした。世界に平和が訪れた。
過去を改変した俺たち選ばれし戦士は各地へ散り、それぞれの日常へ戻っていった。
“漆黒のウード”こと俺は、秘められた力の暴走を抑えるため、旅に出ようと準備していたところ……妙な依頼が舞い込んできた。
たまたま一緒にいた、選ばれし戦士仲間の“蒼穹のアズール”ことアズールとセレナと共に依頼を受けると、なんと依頼者は異世界の女神様だった。
彼女曰く、自らの世界は滅亡の危機に瀕しており、その世界を救ってほしいという。
俺たち三人に声をかけた理由は、女神様の力では三人しか異世界に送ることができないので、
良さそうな人材を探していたところ、たまたま三人揃っていた俺たちが、秘められた力も含めて最も強い戦力だったらしい。
女神様の力により、新たな姿と力、そして名前を得た“漆黒のオーディン”こと俺と、“蒼穹のラズワルド”、そしてルーナの三人は
「ラズワルド! ルーナ! 準備はいいか? 新たなる世界で使命を全うするぞ!」
俺の気合いのこもった声にラズワルドとルーナが答える。
「新しい世界では、かわいい女の子に会えるかな?」
「オーディン、なんでアンタが仕切ってるのよ!」
……フッ、この二人は相変わらずの調子だな。
光が渦を巻きながら、俺たち三人を包み始めた。
この光の先には、俺に救われたがってる世界があるのか。
……血が騒ぐぜっ!
「なんだ? お前らどこから出てきた!?」
いきなり、厳つい顔の男に声をかけられた。
光の渦の先で出会ったのは、声をかけてきた強面の男と若い美女、それに武装した集団……!
こいつら山賊か! 全員かなり強そうだ……
だがこの程度の死線いつも越えてきた……!
覚悟しろ悪党共! お前らの好きにはさせねぇ!
俺たちの戦いはこれからだ……!
──魂が躍動する……!!
◆◆◆
俺たちの異世界での第一遭遇者ジェラルトさんは普通に良い人でしたー!
ジェラルト傭兵団を率いるジェラルトさんは、急に目の前に現れた俺たち相手に武器を抜くことはせず、普通に話しかけてきた。
俺たちがこの世界にきた事情を伏せ、この辺りの出身ではなく、土地勘もないことを説明すると、渋い顔をしながらも「何も知らないガキどもを見捨てるのは寝覚めが悪い」と傭兵団に下働きとして置いてもらえることになった。
俺たち三人が実力を示すと、正式に傭兵団へ入団したんだけど。
──フッ、邪竜を討ちし選ばれし者たちの力を示せばこのようなことは造作もない……
ジェラルト傭兵団の主な仕事は盗賊や魔獣の討伐、隊商や軍の輸送隊の護衛で、略奪などは一切行わない、まさに正義の傭兵団だ。
正直、いきなり彼らの前に現れて傭兵団に入団できたのは、俺たちにとって都合が良すぎる展開なので、たぶん女神様が、俺たちを助けてくれそうな人のところへ転移させてくれたんだと思う。
ジェラルトさんはこの大陸、フォドラ大陸の傭兵の間では知る人ぞ知る伝説の傭兵らしく、“壊刃ジェラルト”の異名を持つ人物だった。
とある国の歴代最強の騎士団長だった、1万人の敵兵を一人で倒した、某国の殺戮魔導兵器の開発を一人で阻止した、強すぎて神格化されはじめセイロス教団に追われている……などなど、伝説や逸話には事欠かない人物だった。
ジェラルトさん自身は、多くの傷がある強面の顔と、数々の伝説が示す印象に違わぬ、口数が少なくぶっきらぼうな話し方、堂々とした佇まいを持つ偉丈夫だ。
ただ、顔に似合わず優しいところとか(特に一人娘のベレスに甘い)、よく酒場で呑んだくれている(しかもツケ)等お茶目なところもある。
そしてジェラルトさんの一人娘ベレスは腕利き揃いのジェラルト傭兵団でナンバー2の実力者で、無表情で敵を倒していく姿から“灰色の悪魔”の異名で怖れられている。
普段のベレスは、ぼーっとしている寡黙でマイペースな人なのだが、戦場ではキリッと凛々しく指揮を執ってくれる。
どこか幼さを残した美貌とルーナが歯噛みをして羨ましがるスタイルを持っていて、団長の一人娘という立場だけではなく、その実力と人柄によって古参新参問わず団員から慕われている。
ジェラルト傭兵団の実質副団長だ。
“壊刃”だの“灰色の悪魔”だの、かっこよすぎるだろ──!
まあ、このフォドラ大陸の人々は異名をつけるのが好きらしく、ジェラルトさんとベレスには他にも“酒飲みジェラルト”、“二日酔いのジェラルト”、“伝説の飲んだくれ”、“パイ色の悪魔”、“双丘の悪魔”、“エロタイツ”等の異名がある。
ちなみに俺もすでに仲間の傭兵たちから“まったく黒くないオーディン”だの“血が騒ぎすぎる男”だの異名がつけられている……
……そんなのじゃなくて、もっとかっこいい異名をつけてくれよ~。
“狂気の天才”とか“
しかしベレスも俺たちとそう変わらない年齢で、せいぜい1歳か2歳くらい年上だと思うが、その年齢でかなり腕が立つ。
負けず嫌いのルーナが得意の剣で挑んで敗れ、ラズワルドも俺も打ち負かされた時は本当に衝撃を受けた。
ベレスいわく「三人とも強かった、ギリギリだった」「オーディンが一番弱かった」らしいけどな。
俺がこの三人の中で一番弱いのは事実だけど、わざわざ言わないでいいから!
正直なところその辺の傭兵や正規兵、騎士には負けないし、剣には自信があったんだけどな。
でもベレスには、俺たちが負けても不思議ではないと思わせるような、妙な雰囲気とか謎の力とかを感じる。
──まさか奴は俺と同じ闇の戦士なのか……!
あと一緒にいると安心感というか、親近感が湧く感じ……この感覚、誰かと似ているような……
頭を捻って考えているとルーナとラズワルドが声をかけてきた。
「何、難しそうな顔で首捻ってんのよ? また武器の変な名前でも考えてるの?」
ルーナが即座に俺をバカにしてくる。
変な名前とはなんだ! かっこいい名前と言えよ!
「どうせオーディンの考えてることなんてろくなことじゃないよ。また変な必殺技でも考えてるんでしょ」
ラズワルドも同調してきた。
お前だって女の子と話すことしか頭にないだろー!
ルーナとラズワルドは俺とともにこの世界に来た仲間たちだ。
物心つく前からの付き合いで、ともに絶望の未来から世界を救うために、時間軸を越えて戦ってきた戦友だけど、気が合うというわけではない。
ラズワルドとはよく言い争ったりするし、ルーナは俺に対する物言いが凄くキツい。
いわゆる幼なじみとか腐れ縁とかそういうやつだ。
ラズワルドは一見爽やかそうな美少年だが、女好きのナンパ野郎。
ルーナは赤髪のツインテール、顔は可愛い部類だが勝ち気で自分が一番じゃないと納得しない性格なのでトラブルをよく起こす。
まったく人が真剣に考えてるのにコイツらときたら……
「ちげぇよ! ベレスのことについて考えてるんだよ。誰かに似てるな~って思い出そうとしてたところなんだよ」
「ああ、そういうことね。あたしもずっと『あの人』に似てるって思ってたんだよねー」
「ああ~! 僕もミステリアスな雰囲気とか、謎が多いところとか、冷徹なようで実はすごい仲間想いのところとか『あの人』に似てるよねって、思ってたところさ」
思い出した! 『あの人』か!
かつて俺たちを率いた英雄クロムの相棒にして、最強の軍師。
そして、俺の一番憧れの存在。
なんで思い出せなかったんだ~
「なんの話?」
三人で話してるとベレスがやってきて、俺たちの会話に加わった。
「ベレスがあたしたちの知り合いに似てるなーって話してたのよ」
「性別も容姿も違うんだけどね、なんとなく雰囲気が似てるんだよね」
そのままルーナとラズワルドは『あの人』の思い出話をし始めて、ベレスは黙って聴き始める。
ベレスも最初に会った頃は、こちらから話しかけないと会話しようとしなかったけど、最近は俺たちの会話に混ざってきてくれるようになったな。
表情の微妙な変化もわかるようになったし、実は冗談が好きでおもしろい人だってこともわかった。
あと傭兵としての生活が長いせいか、フォドラ大陸の国や歴史なんかには詳しくないが、地理や戦術に詳しいから色々教えてもらっている。
フォドラ大陸の情勢はジェラルトさんから教えてもらった。
フォドラ大陸は現在、様々な勢力の思惑が渦巻き、国同士や領主間での小競り合い、治安の悪化による反乱や賊の出現がそこかしこで起こっており、傭兵の仕事には事欠かないらしい。
世界の破滅や崩壊に向かうようなことは、まだ起きていないが、ラズワルドやルーナ、ジェラルトさん、ベレスたちが一緒ならきっと世界の危機を乗り越えられるはずだ……!
行くぞ“漆黒のオーディン”とその仲間たち!
──運命を共に……!!
三人組は覚醒世界から風花雪月世界に来たので、if世界の知識はありません。
処女作です。
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