ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン 作:すすすのすー
第8話『蒼炎の剣』
(花冠の節 二日)
“漆黒のオーディン”の朝は早い。
今日も日の登らないうちに訓練所へ向かう。
さすがにこの時間には、ガルグ=マク大修道院にも、門番や巡回の兵士くらいしかいない。
「やあ、オーディンくん。またこんな時間に訓練所ですか? 精が出ますね」
「門番さんも、こんな時間までご苦労さまです。何も変わりないですか?」
「本日も異常無しであります! もうすぐ交代も来ます、やっと休めますよ」
正門付近を通る時に顔見知りの門番さんに挨拶をしておく。
門番にも色々な性格の人がいるが、この人は仕事に真面目だけど気さくな人で、生徒や修道院の人間にも良く声をかけている。
訓練所に行き、篝火をつける。
今日は、まだフレンは来ていないようだ。
以前、訓練所で会って以来、フレンは週に一度か二度は現れる様になった。
……しかし、入り口に人の気配がするな……フレンが来たのかな?
姿を現したのは、暗闇の中でも淡く光る白銀の髪を持つ小柄な体躯の美少女……こ、コイツは!?
アドラステア帝国第4皇女にして、皇位継承権第一位のアドラステア次期皇帝……エーデルガルト=フォン=フレスベルグ!
「……ありゃ、エーデルガルトか? こんな時間に珍しいな」
「貴方がこんな時間に訓練所に行くのを見かけて……でもその様子、もしかして、誰かと逢い引きでもするのかしら?」
エーデルガルトがちょっとからかう様に聞いてきた。
まあ、男と女が会ってるのだから逢い引きといえば逢い引きだが……俺とフレンの関係はそんなものではない。
俺たちは、選ばれし闇の同胞として鍛練し、互いに闇の力を高めあっているのだ。
この前、フレンが名付けた新必殺技【アウェイキング・ホーリー】は秀逸すぎる出来だった。
俺の【アウェイキング・ヴァンダー】を参考にしたと言っていたが……胸をえぐるような次世代のセンスを感じた。
「フレンかと思ったんだが……」
「……フレン……!?」
「修道院に住んでいるらしいが見たことないか? 緑の髪をくるくる巻いた……」
「……ええ、見かけるし、よく知っているわ」
エーデルガルトもフレンのことは知ってるらしい。
まあ、修道院の中をだいたいの時間うろうろしてるからな。
金鹿の学級でも「あの可愛い女の子は何者だ」とよく話題になっている。
年齢的にあと何年かしたら士官学校に入学するのかもしれない。
「……フレンとこんな時間に何をしているの?」
「フッ、必殺技の開発をしているのだ……フレンの奴なかなか筋が良い……」
「……ああ、そういえば昨日もそういうことをしていたわね」
見てたのか?
昨日は午後の講義の後にやっていたから、いろいろな奴が見ていたのだろう。
いつも訓練所にいる、無愛想な剣使いの生徒なんかは「チッ、騒がしい奴らだ」なんて言って出ていってたが、他の遠巻きで見ていた人たちの中にいたのかな。
しかし昨日は、大盛り上がりだったな。
みんなで必殺技を使いながら訓練をして、クロードは「おいおい、ついていけないぜ」と呆れてたし、ラズワルドは「オーディンがみんなに
友情が深まっていく、あの一体感……この士官学校に入ってよかった。
これが……絆か。
「あっ、そうだ。エーデルガルトも必殺技の名前を付けてみるか? 楽しいぞ」
「……そうね。まずは貴方の必殺技とやらを見てみたいわね……参考として」
おおー、エーデルガルトはこういうことに興味が無さそうな奴にみえるが、意外に乗ってきたな。
フォドラ大陸の人間は異名を付けるのが好きみたいだし、あまり抵抗がないのかもな……
……クッ、なんだか元の世界に帰るのが名残惜しくなってきたぞ……ここは、居心地が良すぎるっ!
気合いを入れて見せてやらないとな……ここは剣で行くか。
いつも通り構えて……剣を鞘から滑らせ放つ!!
「蒼炎剣ブルーフレイムソードっ!!」
……決まったな。
相変わらず素晴らしい完成度だな……この【蒼炎剣】はメイン必殺技の一つにしよう。
エーデルガルトも目を丸くして見ている。
「……なかなかの技ね」
「ほう、『なかなか』か……さては、気づいたな?」
「……?」
「実はこの技は、未完成なんだ。……ある部分が足りていない」
「……何が足りないの?」
何かが足りないとは感じたようだが……何が足りないかは気づかない様子だな。
だが、気づいたことは素晴らしい。
いい眼を持っているな。
「本来、この技は剣に青い炎を纏わせて使う剣技なんだ……」
「……青い……炎……」
「もちろん、炎と言っても熱くないやつだ。青い炎の幻影と言ってもいい」
「そう……青い炎ね。もし、それができたら、さぞ派手な技になるでしょうね」
エーデルガルトも同意してくれた。
やっぱり必殺技は派手じゃないとな!
「だが、俺の呪術を持ってしても……まだ実現していない……クソッ! ……俺に理学の才能が無いからだというのかっ!?」
ずっと呪術を使って幻影の炎を纏わせようと練習しているが、上手くいっていない。
幻影の呪術は覚えているのだが、制御が難しく、魔法の技術も使ってなんとかしようとしているのだが……
俺は理学が不得意で黒魔法もまだ一つも覚えていないのだ。
俺はどうも、術式や計算式に当て嵌めて魔法を使うのが苦手みたいだ。
白魔法や呪術はそういうものを使わなくていいから得意なんだが……
ずっと理学の勉強を先生としてるんだけどな~
「……っ! 諦めては駄目よ、オーディン。その技は完成させるべきよ」
「そう言ってくれるか、エーデルガルト。しかし、幻影の炎を纏わせて意味があるのか、と言ってくる者いる……もっと別の技の開発に力を注ぐべきではないのだろうか」
「その者は何も解っていないわ。貴方がその技を使えば、きっと味方を鼓舞させ、敵の多くは畏怖するでしょう……それほどの力が貴方の技に有る」
「本当か……エーデルガルト、慰めで言っているのではないのか……?」
「アドラステア帝国皇女エーデルガルト=フォン=フレスベルグとして保証するわ。貴方の……その必殺技の力を……」
エーデルガルトっ! お前というやつは……こんなところに同志がいたとは……俺の必殺技のことをここまで理解してくれたのは、お前が初めてだ。
俺の必殺技の原点は、そういう自分や味方を鼓舞する目的からなんだ……
それをエーデルガルトが理解しているとは……アドラステア帝国の繁栄は約束されたも同然だな!
「……貴方の技を見て、私も少し試して見たくなったわ。私の、私だけの、必殺技を……」
エーデルガルトも必殺技の名前を思いついたらしい。
早いな……もう考えついたのか。
エーデルガルトが斧を構える。
真剣な表情には一切遊びは感じさせない。
「ストライク・ゼステューラ!!」
斧を一閃、その華奢な細腕からは想像できないほどの速さと力強さだ。
斧を二度、血を払う様にカッコよく振り回しポーズをとる。
………………。
「……ねえ、オーディンどうかしら?」
ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク
「オーディン……? そんなに震えてどうしたの?」
震えが止まらない。
「今、俺は一人の天才の誕生に立ち会ってしまったのかもしれない」
「て、天才……?」
エーデルガルトが出した技は斧戦技〈スマッシュ〉が原型だろう。
「……まずは出す前の構えの段階から、一切の隙を感じさせない佇まい。……技を使った時の斧とは思えないような振りの速さ、だが確実に威力を含んだ一撃。……出した後の血を振り払うような見栄えと実用性を両立したポーズ。……何より【ストライク・ゼステューラ】という名前の響きのカッコよさ……」
なんてことだ……なんてことだ。
感動と同時に沸き上がってくるものの名は……敗北感!
なんだ、この敗北感は……この劣等感は……
「……俺は今、怒涛の劣等感に苛まれている」
「……劣等感?」
「そうだ。俺は子どもの頃から必殺技やその名前を開発してきた。それを、たった一度の閃きで越えてきた者が現れた……俺が今まで積み重ねてきたものは……」
……今日はもう帰って寝よう、まだ日も明けてない朝だけど。
「今日はもう帰るぞ……人目のない暗い天幕の隅でうずくまっていたい……」
「待ちなさい、オーディン」
「止めるなエーデルガルト。お前の【ストライク・ゼステューラ】に比べれば、俺の必殺技など児戯に等しい……」
「貴方に言いたいことがあるわ……」
エーデルガルトに引き止められる。
……そっとしておいて欲しい、何を言われてもこの敗北感と劣等感は消えることがないだろう。
「貴方が積み重ねてきたものが有るように、私にも積み重ねてきたものが有るわ。……それは、アドラステア帝国の皇女としての培ってきた武技や所作、今まで学んできたフォドラの言語からくる語彙……」
「エーデルガルトの積み重ねてきたもの……それがあの技だというのか……」
「決してただの閃きだけで生まれた技ではないわ」
……そうか、人には誰しも今まで積み重ねてきたものが有る。
その積み重ねてきたものから産まれた技があの【ストライク・ゼステューラ】だったということか。
「それにこの技は貴方の強い情熱に感化されて、産み出されたものなのよ。……そう言っても貴方の中にまだ劣等感は残っているかしら」
「俺の情熱に感化されてか……不思議と俺の中の劣等感が消えてゆく、明るい道が開けた気分だ」
よしっ! また、活力が湧いてきた。
新しい必殺技も考えなければっ!
「それに私の【ストライク・ゼステューラ】はまだ未完成……足りないものがあるわ」
「足りないもの……? 立派に完成しているように見えたが……」
「この技は炎を纏って使う必殺技なのよ……幻影の炎を……」
「!!!」
エーデルガルト……やはり天才か。
幻影の炎を纏い【ストライク・ゼステューラ】を使う姿を思い描く。
……カッコ良すぎる! まるで物語の英雄のようだ。
「オーディン、幻影の炎を纏う魔法が完成したら、私にも教えてくれないかしら……」
「もちろんだ! 完成したらすぐに教えてやるよ」
「ふふふ、私には赤い炎と黒い炎、どちらが似合うかしら……」
「おいおい、この“漆黒のオーディン”の代名詞、黒き炎を纏うことは、いくらエーデルガルトであっても許されないぞ」
「
「……フッフッフッ……」
「……ふふふふ……」
「クククッ、我が
(本人たちは)真面目な話です
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黒鷲の学級のみんな、私には赤い炎と黒い炎どちらが似合うと思う?
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我らが帝国の象徴色である赤い炎だ!
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ククッ、我が主には黒い炎がお似合いですよ
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わかんねぇよ!緑でいいんじゃねぇか?
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どっちでもいいですよ、そんなこと