ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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第100話『「I」~為』

 

 

 俺は“漆黒のオーディン”。

 

 絶望に満ちた未来の世界から、遥か悠久の時を越え過去に戻り、滅びし運命(さだめ)を変えるため戦った、選ばれし闇の戦士だ。

 

 “全てを終わらせるもの”神祖ソティス。

 かつて彼女は、俺たち三人を召喚した時、自身のことを“はじまりのもの”と名乗り、フォドラの守護者を自称していた。

 ……今、目の前にいる巨竜は“全てを終わらせるもの”、俺たちを召喚した女神ソティス様は全て分かっていたのか。

 

 

「さあ、デカブツに近づいてきたわ……注意して」

 

「オーディンの言う通り、巨竜の首元に敵兵の集団がいるね」

 

「あれは……幻影兵か」

 

 

 ルーナのグリフォンにラズワルドと相乗りして近づいていると“全てを終わらせるもの”の首元近くに幻影兵が集まっているのがわかる。

 そして、幻影兵が守るようにしている中央の人物。

 

 緑の長い髪を持つ超人然とした女性。

 俺たちを召喚した女神ソティス様が成長したような姿。

 

 〈神祖〉ソティス。

 

 俺の〈神軍師〉の能力でハッキリとわかる。

 

 

『あれは……お母様!』

 

 

 “白きもの”……竜化状態のレア様が〈神祖〉ソティスの姿を見て驚きの声をあげた。

 

 

『……目覚めた先に懐かしきものたちの気配があると思っていたら、わしの眷属たちではないか……』

 

 

 〈神祖〉ソティスがこちらに手を向ける。

 ソティスの手から魔法の奔流が放たれた。

 

 ソティスはなんの躊躇いもなく、こちらに攻撃してきた。

 

 

「……危ない! みんな、避けて!」

 

 

 先生の号令で、飛行兵たちは辛うじて回避した。

 

 このままでは危険なので、聖獣様、ペガサス、ドラゴンに乗っていた兵士たちが次々と“全てを終わらせるもの”の背中へと降りていく。

 

 

『また、小さきものどもを集めて、邪魔をしにきよったのか……鬱陶しい奴らめ』

 

『お母様……! なぜこのようなことを』

 

『なぜ……? 知れたことを、わしは“はじまりのもの”であり“おわらせるもの”……この地を終わりにして、また新たに始めるのじゃ……』

 

 

 〈神祖〉ソティスがレア様の言葉に答える。

 この地を終わりにして、また新たに始める……つまり、世界を滅ぼして、また作りなおす……この神はそう言っているのだ。

 

 

「……ソティス。教えてほしい……何故世界を終わりにする必要があるの?」

 

『ほう……お主はわしの器か? 眷属どもも珍しいものを準備したな……わしの器なら理解はできておらぬのか?』

 

「……?」

 

 

 先生が〈神祖〉ソティスに問いかける。

 

 

『わしは、草木を創った、鳥獣を創り、最後に人を創った。……わしは思ったのじゃ……貴様ら小さきもの、人を創ったのは失敗じゃったとな』

 

「!!」

 

『考えてみよ……貴様ら小さきものは、常に争い幾度も血の雨を降らせ、大地は泣かせておる。小さきものどうしで醜く争い、誰かを傷つけねば生きられぬほどに、苦しみの淵に立って勝手に泣いておる。……こんなことをわしは望んでいなかった』

 

 

 〈神祖〉ソティスの言う理屈は分かった。

 前の世界で戦った邪竜ギムレーのように、邪悪な意志を持って人類を滅ぼそうとしているわけではないようだが……結果、やろうとしていることは同じだ。

 

 

「神祖様、言いたいことはわかった」

 

『ほう?』

 

「しかし、俺は貴女を止める」

 

『まあ、そうなるよのう……小さきものは、いつの世もわしに逆らってきた』

 

 

 〈神祖〉ソティスは勘違いしている。

 これは、反逆ではない。

 

 俺は右手の封魔剣エクスブレード(ファルシオン)を握りしめる。

 前の世界の救世主の剣、俺の持つイーリスの聖痕に反応し、光り始める。

 

 

「……違うな、これは人の反逆ではなく、貴女の意思だ」

 

『何っ?』

 

「俺は“漆黒のオーディン”。女神ソティスによって……貴女の力によって、世界の滅びを止めるためにこの世界に現れた、選ばれし闇の戦士だ」

 

『わしが……お主をこの世界に?』

 

「正確には、僕たち三人をだね」

 

「あんたによく似たソティスって名乗る女神様から召喚されて、あたしたち三人はフォドラに来たのよ」

 

 

 そう、この俺“漆黒のオーディン”、ラズワルド、ルーナの三人は女神ソティスにより『世界の破滅を止めるために』この世界に召喚された存在だ。

 

 

『フン、知らぬな……それに、貴様ら如き三匹の小さきものに何ができる!』

 

「何ができるって? 答えは簡単だね」

 

「あんたをぶっ倒せるのよ!」

 

「『フォドラの夜明け』! 巨竜の背に蔓延る刺客たちを殲滅せよ!」

 

 

 号令と共に、フォドラ大陸最強の部隊『フォドラの夜明け』が動き出す。

 

 同時に敵の精強な幻影兵たちも動き出した。

 

 

「絶対負けない!」

 

「踊らせてあげる!」

 

 

 ルーナの紅蓮隊が空から、ラズワルドの蒼穹隊が竜の背中である地面を蹴って幻影兵の集団へと斬り込んでいく。

 この二人の率いる紅蓮隊と蒼穹隊の二部隊は、この五年間の戦いで常に先陣を切ってきた。

 

 

「見ろっ! オデの筋肉っ!!」

 

「フォドラの未来のためです!」

 

「負けられないんだ!」

 

「借金返済!」

 

「死の舞踊ってあげるわ!」

 

「覚悟は良いかしら〜?」

 

「乙女心が躍動しますわっ!」

 

 

 ラファエルの黄昏隊、イグナーツの翠緑隊、アッシュの紺碧隊、レオニーの橘橙隊、ドロテアの朱殷隊、メルセデスの紫苑隊、フレンの純白隊が連動して動く。

 

 敵の幻影兵がいくら精強でも関係ない。

 俺たち『フォドラの夜明け』は常にフォドラ最強の部隊だった。

 

 〈神祖〉ソティスを守る幻影兵が次々と討たれ消えていく。

 

 ──だが……

 

 ソティスは煩わしそうに手を翳すと、消えていった幻影兵たちは、まるで時間が巻き戻ったように復活した。

 

 

「……な、なんだ?」

 

 

 新たに幻影兵を召喚したのなら、まだわかる。

 だが、〈神祖〉ソティスは時間を巻き戻したように見えた。

 

 

「……天刻の拍動」

 

「先生、知っているのか?」

 

「時間を巻き戻せる力……〈神祖〉ソティスはそれが使える」

 

 

 まるで神のような力……いや、女神様だったか。

 そんな力を何度も使われたら、流石に敵わないが……。

 

 

「たぶん十回以上はできる」

 

「えっ? 十回以上も時間を巻き戻せるなんて……ギムレーでも、そんなめちゃくちゃな力持ってなかったぞ! そんなのズルじゃないか!」

 

「ごめん」

 

 

 なんで先生が謝ってるんだ? 

 

 時を巻き戻せる力なんて最強能力すぎる。

 

 そんな能力があれば指揮に失敗して味方を死なせてしまっても無かったことにできるじゃないか! 

 

 いや……そういえば、俺が直接指揮した部隊で味方を死なせたことはなかったな。

 

 

「時を巻き戻す力を持つ者を倒す方法はある」

 

「……ほう、それはどんな方法なんだ?」

 

「経験を積んで(レベルを上げて)、実力(ステータス)で殴ればいい」

 

 

 なるほど、凄い方法だ……だが、それは方法と呼べるのか? 

 ……いや、しかしそれは、俺たちがいつもやってきたことだった。

 

 

「みんな戦える……それは、オーディンが用意してくれた」

 

「……そうだな。選ばれし闇の神軍師である俺ならば、造作もない」

 

 

 俺たちは、強い一人に入れ込み過ぎて、まわりの戦士がヘナチョコばかりなんてことは一切ない。

 

 それは『フォドラの夜明け』以外の部隊にも言えることだ。

 

 

「〈神祖〉だろうが関係ないよ! レア様の敵はアタシの敵だっ!」

 

「まさか竜の背が戦場になるとはな……フォドラに残ってみるもんだな」

 

「神祖には心底失望した。……いや、そういうわけではないが! とにかく戦うぞー!」

 

「今、吾輩たちは紋章学の歴史に残る戦いを経験している! 格別の刺激だっ!」

 

「奇跡の歌姫が巨大な竜の背で舞い踊る……! 最後の舞台としては完璧ねっ!」

 

 

 教会軍のカトリーヌさん、シャミアさん、アロイスさん、ハンネマン先生、マヌエラ先生。

 

 

「こう見えて俺は敬虔な信徒なんだけどなっ!」

 

「俺もそうだぜユーリス! だが、もう相手が女神だろうが邪神だろうが関係ないぜっ! 勝った方が全てを決める!」

 

「はああ……あっ、竜の背中でも魔獣は召喚されるんだね」

 

「おーっほっほっほ! 灰狼の学級(ヴォルフクラッセ)の実力を見せてやるのですわ!」

 

 

 ユーリス、バルタザール、ハピ、コンスタンツェたちの灰狼の学級(ヴォルフクラッセ)の生徒たち。

 

 

「我が名はフェルディナント=フォン=エーギル!!」

 

「ククッ……地獄へ送りましょう〈ゲーティア〉!」

 

「さあ! 喧嘩だ喧嘩! どんなに巻き戻っても殴り倒してやる!」

 

「この現象は面白いね……神祖は時間を操る力を持っているという伝承は本当だったのか」

 

「フォドラの巨竜、倒し、私、ブリギットに伝えます。私、伝説、作ります!」

 

「もうヤケクソですよおおお!! これで勝ったら一生分引き籠ってやるううう!!」

 

 

 フェルディナント、ヒューベルト、カスパル、リンハルト、ペトラ、ベルナデッタたちアドラステア帝国軍の黒鷲遊撃軍(シュヴァルツァアドラーヴェーア)の面々。

 

 

「歌って! 踊って! 応援するよー! 頑張れー!」(力・速さ・魔防+4、移動+1)

 

「陛下の道は俺が切り拓く!」

 

「来い! 何度でも斬り倒してやるっ!」

 

「トライアングルアタック!! ……どうです、シルヴァン、これが私の必殺技『ひとりトライアングルアタック』です!」

 

「イングリット。お前、それ……もしかして、必殺技とか考えて練習してたのか?」

 

 

 アネット、ドゥドゥー、フェリクス、イングリット、シルヴァンたちのファーガス神聖王国軍。

 

 

「今日は血が騒ぎますっ……!」

 

「魂が躍動するっー! ……なんだか、楽しくなってきちゃったね、マリアンヌちゃん」

 

「〈スライム〉! 〈イル〉! 〈ルイン〉! 〈ゲーティア〉!! 見ました、ローレンツ? 私の闇魔法の力」

 

「リシテアさん……僕のテュルソスの杖は、この戦いが終わったら必ず返してほしい。グロスタール家の家宝なんだ」

 

 

 マリアンヌ、ヒルダ、リシテア、ローレンツたちレスター諸侯同盟軍。

 

 

「レア様を泣かせる人はたとえ女神様でも許さない」

 

「さあ、最終決戦、儲けるわよー!」

 

「……逸楽をっ!!」

 

「児戯か! ……しかし、何故私はここに……?」

 

「ケェヘッヘッヘ! グチャグチャにしてやるぜ!」

 

「元帝国軍第1軍団長ランドルフ! 参る!」

 

「兄さん! 無茶しないでねっ!」

 

「まさか、因縁の灰色の悪魔の指揮下で戦うなんてね」

 

 

 ツィリル、アンナさん、イエリッツァ先生、ギルベルトさん……後はとりあえず強かった(レベルが高かった)から集められた先生直属の灰色隊の面々。

 

 

『お母様……私は人の世を終わらせたりはしません!!』

 

「私は決めたのだ! 人と共に生きると!」

 

『我らはこれでも千年以上小さきものたちと過ごしてきたのでな! 良いところも悪いところも知っておる!』

 

『気に食わないことがあればリセットするとか、そんなことは許されないぞ!』

 

 

 女神の眷属であるレア様、セテスさん、マクイル、インデッハが〈神祖〉ソティスに呼びかける。

 

 

『わしの眷属のくせに、わしに逆らう失敗作どもめ! お主らなど作らなければよかった!』

 

 

 ソティスは不快そうに顔を歪め叫び返した。

 

 フォドラ大陸連合軍と女神の眷属たちが幻影兵たちを薙ぎ倒す。

 どれほど、時間を巻き戻そうとも決定的な実力(ステータス)差は覆すことは出来ない。

 

 

『もうよい! 全て我が力によって滅ぼしてくれる!』

 

 

 〈神祖〉ソティスが姿を変える。

 

 巨大な角と翼。

 

 灰色の巨体。

 

 今、俺たち連合軍が背中に乗って戦っている戦場である“全てを終わらせるもの”を小さくしたような姿。

 

 その名も“はじまりのもの”。

 

 これが〈神祖〉ソティスの真の姿だった。

 

 

『塵となれ!』

 

 

 “はじまりのもの”から……そして、“全てを終わらせるもの”の背から強大な魔力の奔流が発生する。

 

 立っていられないほどの衝撃波。

 

 フォドラ大陸連合軍の精鋭たちがなす術なく倒れていく。

 

 

「〈リザーブ〉ですわ! みなさん、聖獣様たちの元へ! 竜鱗障壁が守ってくれますわ!」

 

「マクイル! インデッハ!」

 

『小さきものどもよ、我らの元へ!』

 

『引き籠もり作戦じゃ!』

 

 

 フレン……いや、セスリーンが上級回復魔法を発動し、倒れた仲間たちを救出する。

 

 セテスさん(キッホル)の言葉に、“風を呼ぶもの”(マクイル)と“動かざる重きもの”(インデッハ)が俺たちを守るように盾となった。

 

 

『私が盾となり、お母様への道を作ります! 私の後に続いてください!』

 

 

 “白きもの”のレア様(セイロス)の後に、俺が率いる『フォドラの夜明け』と先生の灰色隊、エーデルガルトの覇鎧隊、ディミトリの獅子王隊、クロードの不死隊が続く。

 

 “白きもの”の竜鱗障壁は魔力の奔流に削られながらも、確実に“はじまりのもの”へと近づいている。

 

 

「風花雪月! これで終わらせてやる!」

 

「正義を貫く!」

 

「勝利を描く!」

 

 

 ──〈ブレイクショット〉。

 ──〈ウィークショット〉。

 ──〈封魔の矢〉。

 

 レオニーの尽きざるもの、アッシュのタスラムの弓、イグナーツの白銀の弓、『フォドラの夜明け』の誇る弓の達人たちより弓戦技が放たれる。

 

 ひとつひとつのダメージは少ないが、弱体化効果により、“はじまりのもの”の動きに僅かに隙が生まれる。

 

 

「食っちまうぞぉ! どっせいぃ!!」

 

 

 ──〈魔物崩し〉。

 

 ラファエルのドラゴンクローによる格闘戦技で、灰色の巨体が揺らぐ。

 

 

「〈リザーブ〉! 私の力役に立てて!」

 

「今の私の舞台はこの戦場! 歌を響かせるわ!」

 

 

 メルセデスの上級光魔法〈リザーブ〉と彼女の個人スキル効果により、周囲の全員が回復し祝福が付与される。

 

 〈歌姫〉ドロテアの歌により、攻撃を終えた『フォドラの夜明け』の精鋭たちが再び行動する。

 

 ──もう時を巻き戻す隙すら与えない。

 

 

「あの、小さくて可愛い女神様に戻りなさいよ!」

 

「どんなに辛くても、笑顔で乗り越えてきたんだ!」

 

 

 ──〈風薙ぎ〉。

 

 ルーナの鋭剣とラズワルドの舞踏剣ミスティックソードが反撃不能の剣戦技を放つ。

 

 これで、“はじまりのもの”の神竜鱗障壁の全てに罅が入った。

 

 ベレス先生と目が合う。

 先生の胸の緑の宝玉から、小さな女神が姿を現した。

 

 そういえば、俺が元の世界に戻るために貰った宝玉に何故か小さな女神様の意志が宿っていたのだった。

 ……最終決戦ですっかり忘れていた。

 

 

「女神様!」

 

『あれは、おそらく別の世界のわしの姿……人の世に絶望し、終わらせることしか考えられなくなったのじゃろう』

 

「じゃあ、俺たちをこの世界に呼んだのは……?」

 

『あのわしを止めるためじゃ……もう、“おわらせて”やってくれ』

 

 

 小さな女神ソティス様と話す。

 この女神様の姿は俺とベレス先生しか見えていない。

 

 気になっていた疑問が全て繋がって答えになった。

 

 もう、迷う必要はない。

 

 

「これで終わりだ!」

 

 

 ──〈烈光〉。

 

 俺の専用職〈神軍師〉を極めた先に手に入れた、剣戦技。

 封魔剣エクスブレード(ファルシオン)が光を放ち、斬りつけた箇所から魔力の残光が拡散される。

 

 “はじまりのもの”の神竜鱗障壁が、罅を起点に全て砕け散った。

 

 

「神祖ソティス。永遠にご退場を」

 

 

 ──〈風神〉。

 

 クロードのパルティアから〈バルバロッサ〉を極めた者のみが使える弓戦技が放たれる。

 

 神竜鱗障壁を失った“はじまりのもの”の翼を貫いた。

 

 

「人が自ら立ち、支え合うこの世界に、神の居場所はない!」

 

 

 ──〈閃花〉。

 

 アドラステア帝国皇帝専用の重装鎧〈カイゼリン〉、その斧戦技。

 オートクレールを振り翳し、エーデルガルトが“はじまりのもの”へと振り下ろす。

 

 その一撃で反撃をしようとしていた“はじまりのもの”の動きが止まる。

 

 

『お母様……貴女に救済を!』

 

 

 ──〈霜雪〉。

 

 “白きもの”レア様(セイロス)の猛撃。

 “はじまりのもの”の頭上に浮かんだ魔法陣から、光魔法が振り注いだ。

 

 味方を回復し、敵にはダメージを与える効果を持つ技のようだが……“はじまりのもの”の体力がみるみる削れていく。

 

 

「人は、それぞれ自分が望む未来を切り開く!」

 

 

 ──〈幻月〉。

 

 〈マスターロード〉を極めたディミトリがグラディウスで放つ槍戦技。

 “はじまりのもの”に致命的な一撃を与え、手前に飛び退いた。

 

 その空いた空間に、天帝の剣を持つ先生が走り込む。

 

 

「信じるもののため!!」

 

 

 ──〈覇天〉。

 

 天帝の剣。

 

 かつて解放王ネメシスが振るったとされる、伝説の剣。

 

 遥か昔、一振りで山を真っ二つにした伝承。

 

 剣の刃が最大まで引き伸ばされ、“はじまりのもの”を引き裂く。

 

 そして、その天帝の剣の刃は“はじまりのもの”の背後の巨大な竜、“全てを終わらせるもの”の首まで届き、刎ね落とした。

 

 

『……“はじまりのもの”にして“おわらせる”もの……わしの器、わし自身の手によって“おわらせる”ことになるとはな』

 

 

 先生の宝玉の元の小さな女神様が呟く。

 

 巨竜の首が断たれたことによって、背中に乗っていた者たちの足場が揺らぐ。

 

 戦いは終わった。

 

 

「全員、脱出だ!」

 

「オーディン、捕まって!」

 

 

 ベレス先生の手を掴む。

 

 取った手には、確かな温もりがあった。

 

 

 

 ──―

 

 

 ──

 

 

 ―

 

 

 

 歴史は時のよすがを辿り、フォドラの大地に新たな炎が灯される……

 

 暴走した神祖ソティスはついに力尽き、この世界滅亡の危機は回避された。

 

 ここに、5年間に及んだ戦乱は収束し、次なる時代が幕を開けたのである。

 

 アドラステア帝国、ファーガス神聖王国、レスター諸侯同盟、セイロス聖教会……フォドラを形成した四つの勢力はすべて残った。

 

 

 皇帝エーデルガルトを戴くアドラステア帝国は、敗戦国としての傷跡を残しつつも強固な中央集権制を布き、貴族制度の打破に向けた改革に着手。

 身分と紋章によらない新たな世界の実現に乗り出した。

 

 

 ファーガス神聖王国の国王ディミトリは運営組織の再編を進め新たな治世に踏み出す。

 弱者が虐げられることのない泰平の世を目指し、正道を歩む国王を支えたのは、連合軍で共に戦った聖教会の新たなる大司教とレスター諸侯同盟の盟主……そして、かつては敵国として戦ったアドラステア帝国の皇帝だった。

 

 

 レスター諸侯同盟の指導者、盟主クロードは民族や信仰の違いを乗り越え、誰もが平等に生きる世界を実現するため、終わりの見えぬ道を皆と歩き始める。

 その道はフォドラのみならず、喉元を越えてパルミラへ、あるいは遠く大海を越えてブリギットやダグザへ、やがて到達することを希って。

 

 

 セイロス聖教会はレアの大司教引退に伴い、ベレスを新たな大司教として立てようとしていた。

 聖教会の新たな指導者は同時にフォドラ三国の導き手となり、戦争を乗り越えて復興を志す人々の大いなる助けとなった。

 かつて聖者セイロスが、戦乱に喘ぐ人々を救い導いたように。

 すべての生あるものの母として、すべての心あるものの支えとして。

 

 

 ……そして、この俺“漆黒のオーディン”はフォドラを救った伝説の救世主となった。

 

 フォドラ大陸連合軍のセイロス騎士団団長、そして伝説の神軍師として采配を振るった俺“漆黒のオーディン”の伝説は、フォドラの歴史書に多く記載されるようになった。

 

 

 

 

 

 

 ……というか、記載した。

 

 まるで、神話のような俺の五年間の戦いの記録は、俺のかっこいい活躍を有ること無いこと盛りまくって新たな歴史書を作った。

 

 もちろん、後でみんなに怒られたのは言うまでもない。

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。

オーディン(及び登場人物)視点の語りは終了し、これにて完結となります。

……ただ、最後にエピローグはあります。

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