ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン 作:すすすのすー
【炎の君主】エーデルガルト
エーデルガルトは戦後、千年の歴史を持つアドラステア帝国を解体し、新たに議会選挙共和制を導入したアドラステア共和国を建国。その初代首相として、数々の革新的改革を断行した。
任期満了後も一議員として政務に携わり、その生涯の全てを共和国の発展に捧げたという。
彼女の統治のもと、フォドラの身分制度は大きく変革され、人々はより自立した社会を築いていった。
だが後世の歴史家たちは、フォドラに大乱をもたらし、千年帝国を滅ぼした危険な革命家と見るべきか、それとも共和国繁栄の礎を築いた稀代の名君と見るべきか、その評価に長く頭を悩ませることとなる。
【共和国の双璧】フェルディナント
【共和国の双璧】ヒューベルト
フェルディナントとヒューベルトは、戦後に成立したアドラステア共和国において、初代首相エーデルガルトを長きにわたり支え続けた。
エーデルガルトの任期満了後、フェルディナントは第二代首相へ就任。一方ヒューベルトは旧エーデルガルト派を率いて独自勢力を築き、共和国政治における最大野党の指導者となった。
二人は時に激しく対立し、議場で怒声を飛ばし合い、時には殴り合いにまで発展したという。しかし国家的危機に際しては協力を惜しまず、共にフォドラの発展へ尽力した。
また両陣営は定期的に茶会を開いて交流していたため、庶民たちからはそれぞれ“紅茶党”と“珈琲党”の愛称で親しまれたという。
【血が騒ぐ喧嘩屋】カスパル
カスパルは戦後、ベルグリーズ伯および軍務卿として、旧アドラステア帝国軍の軍縮と解体に尽力した。
その後、アドラステア共和国成立に伴い警察庁長官へ就任。皮肉にも、かつて誰よりも喧嘩好きだった彼は、フォドラ中の争い事を止める立場となった。
なお、第二代首相フェルディナントと最大野党党首ヒューベルトが議会で殴り合いの喧嘩を始めた際、警察庁長官であったカスパルが間に割って入り制止したという逸話は、後世まで広く語り継がれている。
【目覚めし紋章学者】リンハルト
リンハルトは戦後、ヘヴリング伯および内務卿として、旧アドラステア帝国の解体とアドラステア共和国設立に携わった。
しかし本人は政務への関心が薄く、多くの時間を紋章学と聖人研究へ費やしていたという。
後に彼が発表した数々の新理論は、フォドラ史そのものを覆しかねない衝撃的内容であった。
その研究成果は歴史の闇に葬られることなく世界中へ広まり、以後、歴史学者や神学者たちは長きにわたり眠れぬ日々を送ることとなった。
【伝説の引き篭もり】ベルナデッタ
ベルナデッタは戦後、ヴァーリ伯、教務卿、そして南方教会司教として、アドラステア共和国におけるセイロス教会の運営を担った。
人前へ姿を見せることは稀であったが、その統治能力は極めて高くかつての大司教レアに並び称され、民衆からは深い敬愛と信仰を集めたという。
特に旧帝都アンヴァル地下牢の一室から教会へ指示を出していた逸話は有名であり、後世ではそれが“清貧と謙遜”の象徴として解釈されるようになった。
以後、南方教会歴代司教の間では、地下の質素な一室で政務を執る文化が長く受け継がれていくこととなる。
【精霊島の竜騎士王】ペトラ
戦後、故郷ブリギット諸島へ帰還したペトラは、祖父より王位を継承した。
即位後、彼女はフォドラへの従属関係の解消を宣言し、独立国家として新たな道を歩み始める。
以後はフォドラやダグザとの友好交流を積極的に進め、ブリギット発展の礎を築いた。
また彼女はフォドラより持ち帰った竜の繁殖にも成功したとされる。
竜を駆る女王として知られたペトラは、“精霊島の竜騎士王”として、後世に至るまで理想の統治者として語り継がれることとなった。
【神聖王国の聖王】ディミトリ
ディミトリは戦後、ファーガス神聖王国国王として、生涯を統治と改革に捧げた。
孤児保護や異民族との関係改善に尽力し、さらに民衆の声を政治へ反映させる制度改革を進めるなど、民と共に歩む治世を築いた。
しかし旧時代的体制と資源不足を抱える王国は、発展を続けるアドラステア共和国やレスター諸侯同盟に比べ、緩やかな衰退へ向かうと見られていた。
だが後に王国北部およびダスカー半島にて“燃える黒水”が大量発見される。かつて中央教会によって禁じられていたその資源を利用した新技術は、王国に爆発的発展をもたらした。
民のために生き、民と共に国を変革した王を、人々は後に“聖王”と称えたという。
【聖王の盾】ドゥドゥー
ドゥドゥーは戦後もディミトリの従者として傍らに仕え続け、王とファーガス神聖王国を支え続けた。
ディミトリが老齢で退位した後も、二人は友としてその余生を穏やかに過ごしたという。
死後は隣り合う墓に眠ることを約束していたとされるが、どちらが先に世を去ったかについては記録に残されていない。
【神聖王国の剣】フェリクス
フェリクスは戦後、フラルダリウス公としてファーガス神聖王国を支え、王ディミトリへ常に忌憚なき意見を述べ続けた。
また自領では“フラルダリウス大剣闘祭”を創設し、戦乱の時代が後に失われつつあった武芸文化の復興へ尽力した。
なおフェリクス自身もフォドラ屈指の剣士として知られていたが、大剣闘祭では各国の猛者たちに阻まれ続け、生涯ついに優勝することはできなかったという。
【至情の騎士】シルヴァン
【豊穣の騎士】イングリット
戦争終結後、シルヴァンはイングリットへ正式に求婚し、彼女は喜んでその申し出を受け入れた。
新たなゴーティエ辺境伯となったシルヴァンは、生涯を通じてスレン族との関係改善に尽力した。
遺産や紋章の力に頼らぬ平和な時代を目指し、その卓越した弁舌によって北方に安定をもたらした彼は、後世に名領主として語り継がれている。
またガラテア伯となったイングリットは、魔道技術によって飛躍的発展を遂げた領地経営をさらに推し進めた。
特に“ガラテアスープ”と呼ばれる芋と野菜をふんだんに使った煮込み料理は、王国を代表する郷土料理として広く親しまれたという。
紋章に左右されぬ世界を理想とした二人であったが、皮肉にも彼らの子どもたちは全員が紋章を宿していたとされる。
「やはり幼馴染が一番だ。そうだろう、ラズワルド」
晩年、シルヴァンがそう呟いたという記録が残されている。
【護国の老騎士】ギュスタヴ
【花開く努力】アネット
戦争終結後、ギュスタヴとアネットは親子揃ってファーガス神聖王国へ仕え、国王ディミトリを支え続けた。
やがて王国に新たな教育機関が創設されると、ギュスタヴは初代校長へ就任し、アネットも教師として教壇へ立つこととなる。
“ファーガス総合学校”と名付けられたその学び舎は、魔法専門の魔道学院や軍事教育中心のガルグ=マク士官学校とは異なり、学問・技術・行政・文化・芸術など幅広い分野を教える総合教育機関であった。
後に同校はファーガスのみならずフォドラ全土を支える数多くの人材を輩出し、新時代教育の象徴として語り継がれることとなる。
なお、学校で最も語り継がれたのはアネットの作った、奇抜な歌と踊りだったと言われている。
【世界を繋ぐ盟主】クロード
戦争の終結後、クロードはレスター諸侯同盟の盟主として、精力的に諸侯をまとめ上げた。
さらにフォドラの外へも目を向け、パルミラをはじめ、ブリギット、ダグザ、スレン、モルフィス、アルビネなど、様々な国や地域との外交関係を築いていった。
民族、信仰、身分の違いを乗り越え、広く門戸を開いた外交を推し進めたクロードは、やがて“世界を繋ぐ盟主”と呼ばれるようになったという。
なお、パルミラへ連れていった“きょうだい”のオーディンは、奇怪な呪術による大事件を起こした末、パルミラへの入国を禁止されたとされる。
世界を繋いだ盟主の“きょうだい”だけが、世界から締め出されることとなったのである。
【赤薔薇の副盟主】ローレンツ
ローレンツは戦後、グロスタール伯爵家の後を継ぎ、円卓会議の諸侯のひとりとなった。
盟主であるクロードにも負けぬほど同盟内の改革を積極的に推し進め、その目立った働きぶりから、いつしか同盟の“副盟主”とまで呼ばれるようになったという。
なお、グロスタール伯爵家では、家宝である『テュルソスの杖』の模造品をオーディンが作ったことをきっかけに、いつしかそれが量産されるようになり、グロスタール地方の名産品となったという逸話が残されている。
【大陸最強の戦士】ヒルダ
ヒルダは戦後、ルーナより受け継いだグリフォンを駆り、戦乱に乗じて侵攻したパルミラ軍との戦いで多大な功績を挙げた。
後に偶然参加したフラルダリウス大剣闘祭にて、兄ホルストを破って優勝。その後も連覇を重ね、いつしか“フォドラ大陸最強の戦士”と称されるようになる。
彼女には決闘の申し込みと求婚が絶えなかったという。
なお、隣国パルミラでは、“フォドラ最強にして最高の美女”として歴史に名を残しているが、本人はその評価に不満を漏らしていたとされる。
【血の定め解けて前へ】マリアンヌ
マリアンヌは戦後、自身の名をマリアンヌ=エドマンド=モーリスと改めた。
そして、先祖であるモーリスをフォドラ十傑の十一人目の英雄として、再びその名誉を取り戻すための戦いに身を投じたという。
その旅路の中で、マリアンヌの傍らには常に魔剣ブルトガングがあったと伝えられている。
なお、マリアンヌ本人はやがて歴史に名を残すほどの英雄として称えられるようになったが、肝心の先祖モーリスの知名度は、結局あまり上がらなかったと言われている。
【闇を祓うもの】リシテア
リシテアは戦後、ガルグ=マク大修道院の研究機関の協力を得て、自身の寿命を蝕んでいた紋章を消すことに成功した。
その後は、闇に蠢く者たちが残した地下都市シャンバラの研究を進め、コーデリア領に魔道学院を新設。
やがてコーデリア領は、フォドラ大陸最大の学園都市へと発展していったという。
なお、闇に蠢く者たちが残した地下都市シャンバラは、後に“闇の漆黒都市オーディン”へと改名されたと言われている。
【薄闇を統べるもの】ユーリス
ユーリスは戦後も、地下都市アビスのまとめ役として、ガルグ=マク大修道院を影から守り続けていた。
やがてユーリスの一派は、経済にも大きな影響を及ぼす巨大組織へと成長する。
しかし、彼が築き上げた私財の大半は、孤児院や救貧院の設立などに費やされていたという。
なお、ユーリスの一派にはガルグ=マク大修道院のみならず、フォドラ大陸中から厄介事が舞い込んでくるようになった。
いつしか人々は、ユーリスを畏怖と尊敬を込めて、“薄闇を統べる者”と呼んだという。
【フォドラの格闘王】バルタザール
バルタザールは戦後も地下都市アビスに残り、地下都市のごろつきたちのまとめ役として、治安の維持に努めていた。
やがて彼はアビスに巨大な地下闘技場を建設し、幻影兵を使った戦闘を行うことで、地下闘技場を大いに盛り上げたという。
なお、闘技場の建設に莫大な資金を費やしたため、その借金は死ぬまで返済できなかったと言われている。
【時代に名を残した魔道士】コンスタンツェ
コンスタンツェは戦後、植物を急速成長させる革新的魔術を開発したことで、その名を世界中へ轟かせた。
彼女の魔法理論は奇抜で難解なものが多かったが、その数々は後世魔道技術の発展へ大きな影響を与えたという。
特に農業魔術分野における功績は絶大であり、フォドラの食糧事情を劇的に改善したことで、“飢餓を終わらせた魔道士”として語り継がれることとなった。
後の世において「最も偉大な魔道士は誰か」と問われれば、必ずコンスタンツェ=フォン=ヌーヴェルの名が挙げられる。
なお、彼女の魔術によって生み出された高級ノアの実ブランド『コンスタンツェ=フォン=ヌーヴェル』は、後世においてもフォドラ最高級の甘味として広く親しまれたという。
【チョコレートケーキの魔女】ハピ
ハピは戦後、ガルグ=マク大修道院の魔法研究所で、闇魔法の研究を任されることになった。
しかし、あまり仕事には熱心ではなく、オーディンが残したカカオを使ったケーキ、“ダブルブラックビターグラスラント”をフォドラに広めることに夢中になっていたという。
彼女の夢は実を結び、チョコレートケーキはフォドラを代表する銘菓として広く知られるようになった。
なお、オーディンが考案した“ダブルブラックビターグラスラント”という本当の名前はあまりにも呼びにくかったため、いつしか誰もその名で呼ばなくなったと言われている。
【騎士団の太陽】アロイス
戦後もアロイスは、セイロス騎士団の副団長として、引退するまで歴代の団長を支え続けた。
アロイスの快活な人柄は多くの部下に愛され、騎士たちは強い結束を見せるようになる。
気づけば、彼が率いる騎士団は、解散した教会軍の最強部隊『フォドラの夜明け』にも勝るとも劣らないとまで言われるようになったという。
【聖人の守り手】カトリーヌ
【異郷の射手】シャミア
カトリーヌは戦後、セイロス騎士を辞し、大司教の座を退いたレアの隠棲へ付き従った。
またシャミアも教会を離れた後、たびたび彼女らの元を訪れていたという。
やがて隠遁生活に飽きたカトリーヌの提案により、レア、ベレス、シャミアを加えた四人は、各地を巡る気ままな旅へ出るようになった。
彼女らはフォドラ各地のみならず、海を越えてシャミアの故郷ダグザへまで到達したと伝えられている。
旅の途上では幾多の事件や騒動へ巻き込まれ、時には自ら首を突っ込んで人助けを行うこともあった。
しかし四人はいずれもフォドラ屈指の実力者であり、彼女らの行く手を阻める者はいなかったという。
【紋章学の父】ハンネマン
【聖医学の母】マヌエラ
ハンネマンは戦後も紋章研究を続け、生まれによる不平等を解消するため、その生涯を学問へ捧げた。
やがて彼は、紋章を持たぬ者でも同等の力を扱うことが可能な“魔道具”を発明するに至る。
後世、人々は彼を“紋章学の父”であると同時に、“魔道具の父”とも呼ぶようになった。
一方マヌエラは、戦後に教会規制が緩和された人体解剖学や顕微鏡技術を積極的に研究し、医学発展へ大きく貢献した。
彼女の医術は数多の傷病者を救い、後に“聖医学の母”として広く敬愛されることとなる。
フォドラ学問史において、この二人の偉人が同時代にガルグ=マク大修道院へ在籍していたことは、奇跡に等しいと評されている。
なお、二人の仲が良かったのか悪かったのかについては、現在も諸説存在している。
【無限への飛躍】ツィリル
ツィリルは戦後、ガルグ=マク士官学校に入学し、新設された“銀竜の学級”の級長となった。
銀竜の学級は、戦禍や飢饉によって親を失った身寄りのない子どもたちの教育のために新設された学級であり、その象徴として聖獣“白きもの”が描かれていたという。
士官学校を卒業した後は教師となり、次代を担う若者たちを教え、導き続けた。
【石工将軍】ランドルフ
【建築魔道士】フレーチェ
セイロス教会の捕虜となっていたランドルフは、終戦まで虜囚としてガルグ=マク大修道院の再建作業へ従事した。
妹フレーチェは生存していた兄との再会を果たすと、自らも復興事業へ参加したという。
戦後、ランドルフは将として人々を率いた経験を活かし石工職人となり、各地の復興建築へ尽力した。
一方フレーチェは、魔道知識を応用した革新的建築技術を発展させ、後に“建築魔道士”と呼ばれる存在となった。
兄妹はその後も共にフォドラ各地の建築事業へ関わり続け、多くの都市と建造物を後世へ残したという。
【旅の行商人】アンナ
終戦後、アンナはガルグ=マクの街に残り、商売を通じて復興に助力した。
やがて復興を見届けると、彼女は街から姿を消した。
その後も、謎めいた行商人が各地で残した逸話の数々は、数百年にもわたり語り継がれることとなる。
なお、とある“漆黒の英雄”の傍には儲け話がよく舞い込んでくるため、アンナは彼について各地を旅することが多かったとされている。
【盗賊王】メトジェイ
メトジェイは戦後、突如としてフォドラ大陸から姿を消した。
後世、とある異大陸国家の建国記には、彼が旧アドラステア帝国の研究施設より複数の実験用紋章石を盗み出し、そのまま海を渡ったと記されている。
さらにその記録では、荒廃した異大陸にて数々の部族と国家を征服・統一し、やがて巨大な王国を築き上げたとも伝えられている。
だが、その“盗賊王”が本当にフォドラ出身のメトジェイ本人であったかどうかは、現在に至るまで定かではない。
【流浪の傭兵】シェズ
シェズは戦後、再び傭兵稼業へと戻った。
だが、戦後の混乱期を過ぎ、フォドラの治安が落ち着き始めると、傭兵への依頼は次第に減っていった。
身軽で自由気ままな彼女は、やがてそのまま旅人となったという。
なお、とある“漆黒の英雄”の旅路を記した記録には、紫髪の元傭兵についての記述が数多く残されており、それはシェズのことではないかと、後世の歴史家たちの間では考えられている。
【小さな女神】ソティス
フォドラを揺るがした大戦の後、セイロス教における女神像には大きな変化が生じた。
従来の荘厳な姿に代わり、小さな少女の姿で描かれる肖像が広く普及するようになったのである。
一方で、一部地域では巨大な灰色の竜として描かれる例も残り、女神信仰の多様化を象徴していた。
また戦後、女神の真名が“ソティス”であることが広く知られるようになり、信徒たちは畏敬だけでなく親しみを込め、その名を口にするようになったという。
【フォドラを見守る白きもの】レア
レアは戦後、大司教の座を退き、赤き谷ザナドにて静かな隠棲生活を送った。
急速に変化してゆくフォドラの姿を、彼女はただ静かに、時には旅をしながら、見守り続けていたという。
やがて時代は進み、かつて彼女が築いた秩序もまた大きく姿を変えていった。
なお、アドラステア共和国初代首相エーデルガルトの死後、彼女の遺品から元大司教レアとの往復書簡が大量に発見された。
その内容は現在も完全公開されておらず、後世の歴史家たちを大いに悩ませ続けている。
【大地の守護者】セテス
セテスは戦後、新たに大司教となったベレスを補佐し、その後の代においても歴代大司教の補佐役を務め続けた。
厳格さと寛大さを兼ね備えたその政治手腕は、多くの混乱や問題を解決へ導き、教会とフォドラの安定へ大きく貢献したという。
だが戦後のフォドラ三国は急速な発展を遂げ続けており、新たな問題もまた次々と発生していた。
終わることのない政務に、彼は長きにわたり頭を悩ませ続けたとされる。
なお、セテスにとって最大の悩みの種は、ガルグ=マク大修道院城外付近へ“風を呼ぶもの”と“動かざる重きもの”の二体の聖獣が住み着いてしまったことであったという。
【夜明けを照らす炎】ベレス
ベレスは戦後、大司教を数年務めた後、突如としてその座を辞し、行方をくらました。
セイロス騎士団長を辞したオーディンを追って旅立ったとも伝えられているが、その真相は現在も明らかになっていない。
ベレスが去って数百年後、セイロス教会は漆黒教派、純白教派、灰色教派の三教派へと分かれることになる。
──だが、それはまた別の話である。
【死神騎士】エミール
【慈愛の微笑み】メルセデス
メルセデスは戦後、王国に新設された北方教会の司教に抜擢され、その弟エミールは北方教会の騎士団長に任命された。
メルセデスとエミールは、北方教会を訪れる困窮した人々を慈愛の心で救い続け、やがて姉は“北方の聖女”、弟は“北方の死神”として、後世に語り継がれることとなった。
メルセデスは晩年、こう語ったという。
「何かを決めてやり遂げることは大切だけれど、何も決めないほうが人生を楽しめることもある」
【人々のための歌姫】ドロテア
ドロテアは戦後、ミッテルフランク歌劇団へ復帰。戦乱を生き抜いた“戦場の歌姫”として知られていた彼女は、やがて“奇跡の歌姫”と呼ばれるほどの絶大な人気を博した。
特に彼女が主演した舞台劇『漆黒のオーディン』は空前の大成功を収め、後世に残る名作として語り継がれている。
その人気はあまりにも高く、後に“オーディン役”は、その時代で最も人気ある歌姫が演じることが慣例となった。
なお、この風習が後世における“オーディン女性説”の起源となったとも言われている。
【正義の一矢】アッシュ
アッシュは戦後、ファーガス神聖王国セイロス西方教会の騎士団長へ抜擢された。
領民へ真摯に寄り添うその姿勢はフォドラ全土で高く評価され、やがて“理想の騎士”と称えられるまでになる。
後に彼は西方教会司教へ就任し、民衆救済と教育に尽力した。
また晩年に執筆した騎士物語『フォドラの夜明け』は、時代を超えて読み継がれる歴史的大作となった。
なお、その登場人物を題材とした外伝的騎士物語『漆黒のオーディン』については、「熱狂的傑作」と「難解奇書」で評価が大きく分かれたという。
【色彩の旅人】イグナーツ
イグナーツは戦後、レスター諸侯同盟セイロス東方教会の騎士団長へ抜擢された。
騎士団長として堅実に職務を果たした後は、東方教会司教へ就任し、宗教政治家としても高い評価を受けた。
また彼は生涯を通じて画家としても活動を続けていた。
特に代表作『フォドラの夜明け』は、後世においてフォドラ史上最高の歴史画と評され、現在も東方教会に所蔵されている。
なお、その隣に展示されている人物画『漆黒のオーディン』についても、一定の人気を博しているという。
【筋肉野獣】ラファエル
ラファエルは戦後、騎士として教会へ仕える傍ら、祖父と妹が働くガルグ=マク大修道院食堂の仕事も手伝っていた。
やがて彼は“食べること”以上に“作ること”へ喜びを見出すようになり、騎士引退後は大修道院食堂料理長へ就任。
士官学校の若者たちの身体を支える料理作りへ、その生涯を捧げた。
豪快ながら栄養に優れた彼の料理は多くの騎士や兵士を育て上げ、“フォドラ最強の学食”とも称されたという。
なおラファエルは、オーディンが残した無限トマト量産呪術“ピュアジンク・キュイジーン・トメイトゥ”を唯一継承することに成功。
後世では“トマト料理革命”の祖としても歴史に名を残している。
【壊刃の継承者】レオニー
レオニーはオーディンがセイロス騎士団長を辞した後、その後任として新たなセイロス騎士団長へ就任した。
『フォドラの夜明け』に関わった者たちの中で、唯一傭兵として生きていた彼女もまた、ついに憧れ続けたジェラルトの後を継ぐ存在となったのである。
かつての師匠ジェラルトのように、騎士団長として西に東に任務に行かされ、こき使われて嘆く姿はまさに“壊刃の継承者”だった。
【純白の聖女】フレン
ベレスの後を継ぎ、新たな大司教となったのは、意外にもフレンであった。
“選ばれし光の聖女”と称された彼女は、戦災で傷ついた人々の救済と教団運営に尽力し、その慈悲深い振る舞いから“聖セスリーンの再来”と広く噂されたという。
その一方で、かつて“光の同胞”と称していた漆黒のオーディンから強い影響を受けていたとも言われ、時折見せる奇矯な言動によって周囲を困惑させることもあった。
なお、その度に補佐役であったセテスが頭を抱えていたという記録も残されている。
【蒼穹の踊り子】ラズワルド
【紅蓮の鷲獅子騎士】ルーナ
戦後、ラズワルドとルーナは突如としてフォドラの歴史記録から姿を消した。
だが二人が残した影響は、その後も各地に色濃く残り続けたという。
“蒼穹のラズワルド”と呼ばれた踊りは後世の踊り子文化へ大きな影響を与え、人々を勇気づける不思議な力を持つ伝承として語り継がれた。
また“紅蓮のルーナ”が駆ったグリフォンは、後に繁殖に成功。伝説の鷲獅子として、長くフォドラの空を舞い続けたという。
なお一人残されたオーディンは、彼らについて「選ばれし希望の戦士たちは役目を終え、元の世界へ帰還した」と語っていた。
しかし、その言葉の真偽を確かめる術は現在まで存在していない。
【漆黒の英雄】オーディン
オーディンはセイロス騎士団長を数年務めた後、その職を辞し、放浪の旅へと出た。
旅先では士官学校時代の旧友や関係者たちと再会し、各地で数々の奇譚を残したという。
彼にまつわる伝承はフォドラ各地に存在するが、その多くは真偽定かではない。
だが後世の若者たちは、彼の黒衣や言動に強く憧れ、やがて彼を真似る者たちが現れ始める。
そして人々は、彼らをこう呼んだ。
──“オーディン病”。