ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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聖人に関連するネタバレが有ります、注意です。


第10話『紋章の謎』

(花冠の節 九日)

 

 俺は“漆黒のオーディン”、このフォドラに呪術を伝え呪術の祖となる、闇の呪術士だ。

 

 事は先生に個別指導を受けていた時に起こった。

 

 ──……まさか、この力は……俺の真の力……封印されし力が解放されたのか! 

 

 オーディンの理学の才能が開花しました。

 

 

「……何か掴んだようね」

 

「先生、掴んだのではない……俺の封印された力が解放されたのだ……」

 

「…………そう」

 

 

 そんな興味無さそうに言わないでくれますかね、先生。

 とにかく今日この日をもって俺の魔法使いとしての才能が……真の力が覚醒した。

 火の初級攻撃魔法〈ファイアー〉も覚えることができたし、新たな呪術へのインスピレーションも湧いてきた! 

 

 

「これも先生のおかげですよ! いままで根気強く指導してくれて、ありがとうございました!」

 

「オーディンが頑張っていたから。それは貴方が努力して手に入れた力」

 

 

 先生は首を振って否定した。

 俺が努力して手に入れた力か……いつの間にかベレスも先生らしいことを言うようになってきたな。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「……ハァハァ……くっ、静まれ……俺の力……フゥー、落ち着け……今日は血が騒ぎすぎる……」

 

 

 さっき理学の才能が開花してから、血の疼きが止めることができない。

 俺の新たな力によって俺の中の英雄の血が騒いでいるというのかっ!? 

 ぐっ……駄目だ! ……力が……暴走するっ! 

 

 

「……ぐおぉ! ……静まれ俺の血よっ!」

 

「えっ? オーディンさん……何を……」

 

 

 手を抑えて、血の暴走を静めているとマリアンヌが現れた。

 

 

「マリアンヌ……! 来るな! 今の俺に近づくんじゃない……!」

 

「えっ? ……えっ!?」

 

「……俺の中に眠る英雄の血が獲物を求めてるんだ……! 今の俺に近づいたら……相手が例え仲間であっても、手加減できない……お願いだ、これ以上来ないでくれっ! ……俺は仲間を傷つけたくないっ!」

 

 

 マリアンヌは動揺しているのか、その場から動かずじっと見ている。

 流石に驚かせ過ぎたかな……

 

 

「……この俺が自らの血如きに踊らされるなど……なんたる不覚……! ……ぐっ、静まってくれ……俺の血よ……!」

 

「…………」

 

 

 マリアンヌはじっーと俺を凝視している。

 ……別にそこまで見なくても大丈夫だぞ。

 

 

「……ふぅ……静まってくれたか……俺の血よ……」

 

「…………」

 

「……あの、マリアンヌ……何か用でもあるのか?」

 

「……え? ……いえ、オーディンさんは……何か……特別な血を持っているのですか?」

 

 ほう、俺の血の力について気になったということか……

 本当は話すべきことではないのだが……気になってしまったのなら、仕方がないよな! 

 

 

「……俺の血の中には、英雄の血が流れている……」

 

「……英雄の血……? ……紋章ですか?」

 

「……フォドラ大陸の紋章とは少し違う……悠久の時を越え受け継がれた英雄の血だ」

 

 

 紋章じゃなくて聖痕だしな。

 俺の右手にはイーリス王家の聖痕があるが、今は女神様の力で見えなくなっている。

 だが、ここにはたしかに存在するのだ……英雄の血の証が。

 

 

「……そして、俺には闇の力が存在するのだ……世界を破滅に導く闇の力……」

 

「……世界を……破滅に……」

 

「俺の中に存在する、相反する二つの力が戦い……俺の血を……力を暴走させているのだ」

 

 

 そういう設定だ。

 

 俺の中の『英雄の血』と『闇の力』は常に獲物を求めている。

 その二つの相反する力は、互いの力を反発させ暴走し、時に共鳴し俺の真の力を開放させる。

 そういう設定だ。

 

 

「……大丈夫なんですか?」

 

「心配いらない……この程度の身体の疼きなど、俺は慣れている」

 

「……そうですか」

 

 

 しかし、マリアンヌとこんなに長く話したのは初めてだな。

 いつも話し掛けても、すぐにどこか行ってしまうので人を避けていると思っていたのだが。

 よほど、心配だったのか……あるいは俺のことが気になったのか。

 

 

「この事は、仲間たち……特にルーナやラズワルドには黙っておいてくれ……」

 

「……!! オーディンさんがあの二人にも言えないこと……わかりました。絶対、誰にも言いません」

 

 

 ルーナたちにバレるとめちゃくちゃ怒られるからな、これ。

 マリアンヌなら口が固そうだから大丈夫だろう。

 

 

「……オーディンさん、もし何かあったら言ってください……私でも、お話くらいなら聞けますから」

 

「これは俺の血の宿命(さだめ)……俺が乗り越えて往かねばならぬことなんだ……」

 

 

 マリアンヌが心配してくれるとは……もしかして俺の闇の力に興味があるのか? 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 俺の理学の才能が開花したから、ハンネマン先生の授業を、また受けてみることにした。

 一度、受けたことがあるが全然理解出来なかった、しかし今回は大丈夫だろう。

 何故なら、俺は未来の天才大魔術師だからだ。

 

 

「……魔法とは、紋章との結びつきが大変強いものである。紋章学を紐解いていくことでより魔法への見識も深く……」

 

 

 ハンネマン先生の授業は紋章学の話に逸れがちなことで有名だ。

 紋章を持ってない人にはわりとどうでもいい話なので聞き流すことにする。

 士官学校の授業は生徒の自主性を考慮した授業の選択ができる。

 この時間、金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)はセイロス天馬兵団やキッホル竜騎兵団の騎士を招いて飛行術の実践授業中だ。

 飛行系の兵種は魔法が使えないので、金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)の魔法メインで扱う生徒は今ハンネマン先生の授業を受けている。

 

 しかし授業を聞いてみて、思ったことがある……

 

 全然わからんっ! 

 

 まあ、いきなり術式や定理が頭に入って来るわけないから当然か……

 全然わからないが、前回授業を受けたときはどこがわからないかもわからなかったから、今はわからない場所がわかる分、進歩したのだろう。

 ……そう、前向きに考えよう。

 

 

「……と、今回の授業はここまでにしよう」

 

 

 ハンネマン先生の授業が終わった。

 やっぱり基本的な部分から地道に勉強していくしかないか。

 

 

「むっ、君は……金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)の生徒だったな」

 

「はい、ベレス先生と一緒に傭兵をしていたオーディンです」

 

 

 帰り支度をしているとハンネマン先生に呼び止められた。

 ……フッ、もしかして俺が優秀そうだから、個別に指導してくれるのかな? 

 

 

「まだ君の紋章については調べていなかったな……今から我輩の部屋に来てくれるか?」

 

「……? ……俺はフォドラの外の人間だから紋章はありませんよ?」

 

「フォドラの外部から来た生徒も一応調べているのだ。フォドラの外部に我々の知らない紋章が見つかれば大発見だからな」

 

 

 へえ、そういうことも調べてるのか……ハッ! ……つまり俺に隠された力が存在するという可能性が……血が騒いできたぞ……! 

 

 

「つまり俺にも紋章がある可能性が……というわけですね!」

 

「万に一つ……いや億に一つという可能性だがな。いろいろな可能性を検証してこその研究者である」

 

 

 ハンネマン先生の部屋まで連れられて入っていく。

 そういえば、この部屋からベレス先生が、手から血を流して出てきたときは驚いたな。

 ハンネマン先生の部屋は、マヌエラ先生の医務室と違ってよく整理整頓されている。

 

 

「今は別の研究も進めているのだ。なるべく手短にな……そこの装置の上に手をかざすだけでいい」

 

 

 部屋の真ん中にある装置に右手をかざしてみる。

 ……俺の真の力よ! 覚醒の時は来た! 今その封印されし力を解き放て! 

 

 装置は光って何かを写し出した。

 こ、これはっ! 

 

 

「……こ、これは……!? ……見たことのない文様……この大きさ……間違いなく大紋章! ……まさか、本当にフォドラの外に紋章があったとは……! 格別の刺激だ!!」

 

 

 この形……見覚えがある……

 

 

 ……どこからどうみてもイーリス王家の聖痕じゃねえか!! 

 女神様! 隠してくれてたんじゃなかったの!? 

 これ、まずいよな……絶対まずいやつだ! 

 あわわ……どうしよう? ……どう言い訳すればいいんだ!? 

 

 ……よしっ! 危なくなったらスタコラ逃げろ! 

 

 

「あたらしい、はっけんがあってよかったです……おれはこれで……」

 

「待ちたまえ、オーディン君……どこへ行こうというのだ。……君のその反応、ひょっとして心当たりがあるのではないのか?」

 

 

 ギクッ! 

 

 

「や、やだなぁハンネマン先生……そんなことあるわけないじゃないですか……」

 

「紋章を調べる前は嬉々としていたのに、君は紋章を持っていると知っても喜ばなかった、むしろ青ざめている。何か知っているとみて間違いないだろう」

 

 

 ぐぬぬ、流石に鋭い……どう話すべきか……

 教会関係者のハンネマン先生に知られたのは迂闊すぎた。

 なんで聖痕と紋章が似たようなものだって、思い至らなかったんだ……俺のバカ! 

 

 

「君のその反応を見るに……どうやら話たくないことのようだな。だが、この大発見はフォドラの紋章学における、新たな第一歩になるかも知れないのだ。是非とも我輩に君のことを教えて欲しい」

 

 

 ハンネマン先生は俺に問いただす気満々だ。

 目がギラギラして怖い。

 まとわりつかれると、余計に目立ってしまってセテスさんとかに怪しまれるかもしれない。

 ハンネマン先生の授業も受け辛くなるしな……

 いっそのこと全部協力して、黙っててもらうほうがいいかもしれない。

 

 

「……絶対、誰にも言わないでくれますか?」

 

「話してくれるというのかっ! もちろんだ、研究者として研究対象者の秘密は守る」

 

「特にセテスさんとか教会の人には話さないでくださいよ」

 

「教会関係者に秘密にすると……わかった約束しよう」

 

「ラズワルドとかルーナにも秘密にお願いします」

 

「君の傭兵仲間にもか? うむ、わかった」

 

 

 バレたら絶対に怒られるからな。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 ハンネマン先生にこの世界にやって来た経緯と俺の聖痕ついて話す。

 この世界にはとある女神様の頼みによって転移してきたこと、世界の危機が訪れること、俺が前の世界でイーリス聖王国の王族だったこと、イーリス王家には神竜ナーガの血を継ぐ者の証として聖痕があること、聖痕を持つ者は神竜ナーガの牙を削って作られたファルシオンという武器を使うことができること。

 

 

「にわかには信じがたい話だ……君たちは世界を越えて現れ、我々の世界を救いにきたと?」

 

「はい、信じてもらえるか、わかりませんがこれが俺たちがこの世界にいる理由です」

 

 

 実は女神様には、具体的に何がこの世界を滅ぼすのか聞いていない。

 俺たちはこの世界に来たときに、この世界の危機について色々と考察したが……結局、俺たちの世界を危機に晒していた邪竜ギムレーのような強大な悪の存在が現れると予想をした。

 この世界の危機については信頼できる人にしか話さないように、俺とルーナとラズワルドで話し合って決めたんだが……ハンネマン先生が実は邪竜復活を目論む邪竜教みたいな人ではないことを祈ろう。

 

 

「君たちの話が本当のことなら、セイロス教の上層部に相談したほうがいいのではないのか」

 

「……俺たちをこの世界へ連れてきた女神様がセイロス教の女神と同じかわかりませんから」

 

「……少し乱暴で老人のような喋り方をする、幼い少女か……確か我々の知る女神の人物像とは些かかけ離れている。これを知らせるのはリスクがあるか……わかった、この事は我輩の心の中だけに留めておこう」

 

 

 やっぱりセイロス教の女神とは違う女神なのかな? 

 それなら、セイロス教会には黙っておいたほうがいいだろう。

 

 

「しかし君の話にも信憑性はある。君は神竜ナーガと呼ばれる存在の加護を受けた英雄の血を継ぐものとして、紋章を持っているが、フォドラの紋章にもこういう仮説があるのだ。聖者セイロスをはじめとした聖人たちは人ならざるものに姿を変えることができると……」

 

「人ならざるもの……?」

 

 

 マムクートやダグエルのことかな? 

 

 

「うむ、君の紋章の性質はこの装置でも発見できたように、フォドラの紋章とほとんど変わらないように見える。君の紋章についての話その伝承が本当ならば、フォドラ大陸でも紋章を持つ者は人ならざるものの血を受け継いでいる可能性があるということになる」

 

 

 うーん、フォドラの紋章もイーリス王国の聖痕と似たようなもので、神竜ナーガのような存在から加護を受けて与えられたものと言いたいのかな? 

 じゃあ聖人たちもマムクートみたいに長命で、何処かで生きていてひっそりと暮らしている可能性もあるな……

 

 

「ハンネマン先生、聖人たちがまだ現代まで生きている可能性って無いんですか? 俺たちの世界では神竜ナーガの子孫である方が、数千年を生きて存在していました」

 

「ほう、それは実に興味深い話だ! ……我々の世界の聖人については諸説存在する。聖人たちが生きているのではないかという話も勿論存在するが、最も信憑性の高い話はファーガス神聖王国西部にあるトータテス湖に住まう神獣が聖インデッハではないかという話だ。これは数百年前、トータテス湖で神獣の試練を乗り越えた者が、聖インデッハが使ったとされる『尽きざるもの』を賜わったという伝承がある。この伝承から導き出される答えが神獣が実は聖インデッハであり、他の聖人たちも人ならざる者に姿を変えることができるのではないかと言う仮説だ」

 

 

『尽きざるもの』については俺も知っている。

 神聖武器の一つで聖インデッハがかつて英雄戦争で使ったとされる伝説の弓だ。

 現在は試練を乗り越えた者の手によって神獣のもとへ返されているらしい。

 トータテス湖か、いつか行ってみる必要があるかもしれない。

 もし聖人たちが生きているというなら、世界の破滅についての手掛かりを知っているかもしれないし……何より伝説の武器とか血が騒ぐぞ! 

 

 

「とにかく君が正直に話してくれて助かった、これは紋章学にとって大きな一歩となるだろう。今日はもう戻りたまえ、我輩は研究を続ける」

 

「はい、ハンネマン先生、失礼します」

 

「ああ、できればそちらの器具に血を数滴垂らしておいてくれ、あと髪を数本……」

 

 

 血とか髪の毛とか使うのはなんだか呪術っぽいな。

 言われた通りに血と髪の毛を提供し部屋を出る。

 ふぅ、なんとかなったな。

 

 

 ん? 何故かハンネマン先生の部屋の前で座り込んでるやつ……生徒がいる。

 なんだコイツ、寝てるのか? 

 

 

「んんっ……ああ、終わったの?」

 

「……何がだ?」

 

「君とハンネマン先生の話だよ……ハンネマン先生に用があって、待ってたら眠くなっちゃって。ハンネマン先生が部屋に生徒を招いて長話をするなんて珍しいからね、君も紋章学を学んでるの?」

 

「いや、そういうわけではない」

 

 

 なんだコイツ? 初対面なのにグイグイ来るやつだ。

 しかも、教師の部屋の前で堂々と寝るなんて、明かに怪しい。

 

 

「ふーん。じゃあ、何か面白い発見が有ったとか? 君についてのことで……」

 

「ち、違うぞ勉強を教えてもらってただけだ!」

 

「そうかなぁ? 興奮したような声も聞こえてたし、勉強を教えててあんな声出すかな?」

 

「……貴様には関係ないことだ……」

 

 

 なんか根掘り葉掘り聞いてきそうなかんじだ……今度こそ逃げるぞ! 

 

 

「とにかく俺は帰る!」

 

「あっ、ちょっと!」

 

 

 待たなーい! 

 全速力で俺はその場を後にした。

 

 

 




「おお、リンハルトくん、君か!実は大発見が…あ、いや何でもない…」
「ええー、気になるじゃないですか…」


オーディンの理学才能開花をしたので設定公開…もしかしたら変えるかもしれませんが

三人組の習得魔法
オーディン
理学 ファイアー(D)ブリザー(D+)トロン(C)エクスカリバー(A)メティオ(A+)
信仰 ライブ(D)リザイア(D+)リカバー(C)ワープ(B)リザーブ(A)

ラズワルド
理学 ファイアー(D)ウインド(D+)シェイバー(C)エクスカリバー(A)
信仰 ライブ(D)リザイア(D+)リブロー(C)サイレス(A)

ルーナ
理学 サンダー(D)アロー(C)トロン(B)サンダーストーム(A)
信仰 ライブ(D)リザイア(D+)レスト(C)レスキュー(A)
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