ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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第14話『天道現臨』

(青海の節 十三日)

 

 俺は“漆黒のオーディン”、幾千の伝説が集いし大地で異形の神器を手にした、選ばれし闇の戦士だ。

 

 休日の今日もいつも通り、朝早くに起きたので日課となっている必殺技の練習を行っていた。

 

 剣に魔力を流し魔法攻撃をする剣戦技〈魔刃〉と剣に光や炎を纏わせる俺の呪術〈華炎〉は、相性が良いらしく、併せて使ったほうが威力が出るような気がする。

 戦技は武器にかかる負荷が大きいので、多用は禁物だが、使いどころを間違えなければ切り札になりうる……まさに必殺技だな。

 

 しばらく愛剣ミステルトィンを振りながら、〈戦技〉と〈華炎〉を試していると誰かが訓練所にやって来た。

 

 夜も明けてないこの時間に来たことがあるのは、未だにフレンとエーデルガルトだけだが……

 

 

「オーディン、休日というのに精が出るわね」

 

「……フッ、我が“闇の同胞”エーデルガルトか……」

 

 

 やっぱりエーデルガルトだったか。

 ここで会うのは、6月の初めに一緒に必殺技を開発して以来だが、先日の武闘大会で俺の〈華炎〉を見て、そろそろ現れると思っていたところだ。

 

 

「……その“闇の同胞”って、なんなの?」

 

「一緒に必殺技を開発した仲ではないか……共に、至高の必殺技について高みを目指す同胞のことだ」

 

「……必殺技を考えるのは構わないけど、勝手に変な同胞にしないでくれるかしら」

 

 

 なんだよ~ノリが悪いな~! 

 この前はあんなにノリノリだったくせに……

 フレンのやつも最近は自分の設定が固まってきたのか、“闇の同胞”扱いすると「ま! わたくしは光属性ですのよ!」なんて言って嫌がるんだよな。

 今は同じ“選ばれし者”として一緒に必殺技の開発や雑談をしている。

 フレンは最近は必殺技の開発よりも、俺の話を聞きたがっているので、雑談ばっかりしてるんだよな~

 

 

「エーデルガルトも“闇の同胞”より“選ばれし者”のほうがいいのか?」

 

「そういうわけじゃないんだけど……それより貴方、ついにあの幻影の炎を纏わせる技を完成させたのよね」

 

「……フフフッ、やはりそのことか!」

 

 

 エーデルガルトはこの前会ったとき、俺の〈華炎〉について一際興味を持ってくれた。

 武闘大会で披露した時は、他の生徒からも反応が良かったし、「使える」と思って教えてもらいに来たのだろう。

 

 

「よしっ! 任せろ、教えてやるよ。エーデルガルトは黒魔法の〈ファイアー〉は使えるか?」

 

「理学は修めていないから使えないわ……」

 

「使えたらイメージしやすいから良かったんだが、まあ良いか……まずは幻影を発生させる条件から詳しく説明すると……」

 

 

 エーデルガルトに使用する呪術と理学の術式を教えていく……今日中に使えるようになるといいな。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 エーデルガルトが幻影の炎を纏わせた訓練用の剣を振ろうとすると、纏わせていた炎が消えてしまった。

 もう何度目かの試みだったが、同じように失敗してしまう。

 周囲には、朝早くからの鍛練を日課にしている生徒たちがすでに鍛練をはじめだした。

 

 

「幻影を出すまではできたけれど……出したまま戦うのは難しそうね……」

 

「……うーん、幻影は出せたから、間違ってはいないと思うが、魔力の制御が甘いのかな?」

 

「魔法は基礎中の基礎しか習っていなかったから、戦闘に使えるほど得意じゃないのよね……」

 

「俺に教えられるのはここまでかな、あとは慣れていくしかないかもな」

 

「理学をもう一度習い始めるのも悪くないかもしれないわね……とにかく、今日はありがとうオーディン。有意義な時間を過ごせたわ」

 

「フッ、気にするな……俺も楽しかったからな」

 

 

 俺の呪術が広まっていくのは良いことだ。

 しかもこの呪術は俺が一番最初に開発した、思い入れのある呪術だし、必殺技への応用性も高い……アドラステア帝国次期皇帝であるエーデルガルトが使っていれば注目度も上がり、俺の評判も凄く上がるだろう。

 

 

「オーディン、貴方たちって何者なの? これ以外にも聞いたことのない呪術を使って人探しをしたと聞くし、傭兵仲間を含め三人とも一流と言っていい剣の腕、先生なんて聖騎士の“雷霆(らいてい)のカトリーヌ”に勝ってしまうし……」

 

「そ、それは……秘密だな。今はフォドラの外部から来た謎の“選ばれし戦士たち”そう表現する以外は無い……先生はフォドラ出身だけどな」

 

 

 アネットのお父さんを探し当てた一件は、もうほとんどの生徒が知っていることらしい。

 先生は、先日の剣術武闘大会騎士の部で優勝した。

 生徒の部以上にレベルが高く、特に準決勝でイエリッツァ先生、決勝でカトリーヌさんを倒した先生は観客たちを大いに驚かせた。

 生徒の部で実力を見せた俺たち三人と先生が何者かなんて、大修道院では一番の話題の種だろう。

 

 

「……オーディン。ラズワルドにも言ったんだけど、貴方たち帝国に来ない? 私は貴方たちのような有能な人材を求めているの、貴方のその強さや呪術、新しい考え方……帝国に来てくれたら存分に力を発揮できると思うの」

 

「帝国か、悪くないんだけどな……俺たちはフォドラに目的があってきたんだよ」

 

 

 エーデルガルトは、俺たちの実力を随分買ってくれてるらしい。

 だが、俺たちがここに来た目的はこの世界を救うことだ。

 この世界に転移させた女神様の話では、この世界はフォドラ大陸を中心として滅亡していくらしい。

 それをどうにかするためには、フォドラ大陸の真ん中に位置するガルグ=マク大修道院と三国の秩序として存在するセイロス教の中で動いていくのは、最適解に近いと思う。

 セイロス教自体が少し怪しい部分もあるから、監視する意味合いも込めてだけど。

 帝国で行動していると、王国や同盟の情報を集めるのが難しくなることも有りそうだしな。

 

「……その目的というのは、帝国では果たせないことなの?」

 

「そういうわけじゃないんだが……今のところは教団にいたほうが動きやすいと思っている。ただ協力を頼みたいときは、帝国に行くことも考えている……その時は目的についても話すよ」

 

「そう……期待して待っているわ……」

 

 

 教団と帝国は現在不穏な関係にあるらしい。

 可能性は低いと思うが、教団が世界を滅ぼす原因だった場合は帝国と協力して戦わなければならないだろう。

 その時は、クロードやディミトリにも協力してもらって、三国で力を合わせてもらうのが最善かな。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 エーデルガルトと別れた後はいつものように、温室に来ていた。

 

 近くで捕まえてきた蟻を温室で栽培している食虫植物ハエトリグサに入れて、葉っぱを閉じさせる。

 

 ──クククッ、その生け贄を喰らい成長せよ……闇の供物よ! 

 

 この食虫植物は、前の世界での大陸の東端、イーリス聖王国の隣国フィリア王国の東の果てにしか存在しない珍しい植物で、呪術の材料になる。

 俺の呪術の師匠から、種を分けてもらった時に聞いた話だと、育てるのが難しいうえに時間がかかるらしかったが、温室ではあっさり育てられている。

 ……というよりこの温室、植物の育ちが異様に早くないか? いくら魔法や良い肥料で育てているとはいえ種を植えて、一週間程度で野菜や果物を収穫できるなんて聞いたこと無いのだが……

 この温室の技術を広めることができたらフォドラ全土の食料事情を改善できるような気がする。

 アッシュとかドゥドゥーに相談してみようかな、寒冷な土地柄上ファーガス神聖王国は特に飢饉で食料難に陥ることが多かったはずだ。

 

 

「……ふわぁ……温室の世話なんて面倒くさいな……」

 

 

 温室の世話を終わらせて戻ろうとしたら、誰かが温室に入ってきた。

 眠たそうに歩いている男子生徒……コイツっ! 以前、ハンネマン先生の部屋の前で会ったやつじゃねぇか! 

 前会った時に、紋章についてしつこく聞いてきそうにしていたから、逃げ出したんだった。

 なるべく目を合わさないように出ていくか……

 

 

「あっ、君はたしかハンネマン先生の部屋の前であった……」

 

 

 おーい! こっちは話しかけるなって空気出しながら歩いてたのに、あっさり声かけて来やがって……前回も思ったがコイツは空気がまったく読めなそうなやつだな。

 

 

「何か用か?」

 

「いや、この前話せなかったから話しかけただけだよ。あと君、この模様について何か知ってることある?」

 

 

 そう言って、紙を俺に見せてくる。

 

 ……どれどれ……どう見てもイーリス王家の聖痕です、本当にありがとうごさいました。

 

 もう~! ハンネマン先生~あっさり情報が漏れちゃってるんですが!? 

 

 

「俺ハ、何モ、知ラナイゾ……」

 

「嘘だね。そんなわかりやすく反応されたら、僕でもわかるよ」

 

 

 コイツ、何が目的だ……俺の紋章なんか調べてなんの得があるというのだ……まさかコイツが……世界を滅ぼそうとしている悪の一味の一人では……

 

 

「……貴様、何が目的だ……俺の紋章について調べて貴様になんの得がある」

 

「あっ、やっぱり君の紋章なんだ。君はフォドラの外の国の出身だよね、この紋章も見たことないし、一体何が由来なの? 僕たちが持つ紋章との関係性は? こんな大発見を、なぜ秘密にしようとしているの?」

 

 

 ぐっ……やっぱり質問責めが来た! 

 

 

「……フン、貴様に教えることなど何もない!」

 

「えー、気になるなー教えてくれてもいいじゃないか……まあ、今日は疲れたからもういいや、また今度にするよ」

 

 

 えっ? 引き下がるの早くない? 話すつもりはなかったが、急に引き下がられると話したくなってくる……ここは、我慢だ……って何で、俺が我慢してるんだ! 

 

 

「そういえば、君の名前を聞いていなかったね……僕はリンハルト。君は?」

 

「……俺は“漆黒のオーディン”。フォドラの外で生まれ、謎の紋章を宿す、選ばれし闇の呪術士だ」

 

「オーディンね、今度また話をさせてもらうよ……」

 

 

 リンハルト……覚えたぞ、二度とお前には会わないようにするぞ! 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 昼食を済ませた俺は、ガルグ=マク大修道院の外壁の外に出て新たな呪術の開発を行おうとしていた。

 

 ──その名を【天道現臨】。

 

 天候を操り、雲を一掃し太陽を覗かせたり、逆に雨を降らせたり、術の力を高めれば昼と夜を逆転させられるような気がする。

 まさにド派手な呪術……俺が二番目に開発する呪術にふさわしい。

 

 ……ぐっ、呪術のことを考えていたら、血が騒いできたぞ……今なら強力な力……闇の力を使えそうだ……静まれ、もう少し待つのだ……

 手頃な大岩があるので、その上によじ登り呪文を天に向かって唱えることにした。

 天気はやや曇り気味、たまに太陽が顔を出す程度だ。

 

 

「天に翔し忠義な神々に告ぐ……しばし我の声に耳を傾けよ……はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!! 昼・夜・逆・転!!!」

 

「ひえっ!? ……なに、なんなの?」

 

 

 うん? 岩の下から声が聞こえたような気がしたが。

 まあ、いいか。

 ありったけの魔力を手に込めて、呪文を使い叫んでみても、昼と夜が入れ替わる様子はない……流石にいきなりそこまでの強力な術を使うのは無理か……

 次は曇り空から太陽を覗かせるくらいの呪文にしてみるか。

 

 

「天に翔し神々に告ぐ……陰惨たる雲間から赫灼の太陽の姿を現せ……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!! 天・道・現・臨!!!」

 

「ほぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!! な、なに、何が起きるの!?」

 

 

 やっぱり、岩の下から叫び声がするな……降りてみるか……

 

「トゥー!」っと、かっこよく飛び降りて、ポーズを決める。

 岩影には士官学校の制服をきた女子生徒がおびえた様子で見ていた。

 見たことのない生徒だな……もう入学して三ヶ月くらい経っているから、他学級の生徒でも名前はわからなくても顔くらい覚えているはずなのだが。

 画材を持っているから、絵でも描いていたのかな。

 

 

「な、な、な、何なんですか!? 貴方は!!」

 

「俺は“漆黒のオーディン”、天を支配する、選ばれし闇の呪術士だ!」

 

「じ、呪術士? 呪いですか!? ベルに呪いをかけたんですか!?」

 

 

 なんだ、コイツ? そんなこと一言も言ってないだろう。

 

 

「解いてください! ベルにかけた呪いを、解いてください!」

 

「フッ、解くかどうかは貴様の態度次第だな……」

 

「ひえぇぇぇぇぇ!! あたし、何かされちゃうんですか!? 呪術の生け贄にされちゃうんですか!?」

 

 

 そもそも呪いなんかかけてないんだけどな! 

 とりあえず名前もわからん奴と、いつまでも話すのは面倒だ。

 

 

「……とりあえず、名を名乗れ、話はそれからだ」

 

「……あたしはベル……ハッ! 嫌です! 怪しい呪術士に名前を知られると、呪いをかけられるって聞いたことあります!」

 

 

 たしかに名前は呪術にとって重要なものの一つだけど、被害妄想が酷すぎないか。

 

 

「誰かぁ!! 助けてぇぇぇぇぇ!!」

 

「お、おい!」

 

 

 そう言って女子生徒は逃げ去ってしまった。

 さっきのリンハルトといい、このベル? という女子生徒といい、士官学校には変わった奴が多いな。

 




ベルたそ〜

補足

天道現臨
オーディン・ヒナタ支援
天候を操る呪術(嘘)
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