ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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第14.5話『ラズワルドとルーナの休日③』

(青海の節 十三日)

 

「来たか、ラズワルド!」

 

「ああ、シルヴァン……今日は絶好のナンパ日和だね」

 

 

 今日は絶好の快晴……というわけではなく曇り気味だが、その分この季節にしては暑くなく過ごし易そうだ。

 きっと、女の子たちも休日の今日は外に出掛けて、買い物等を楽しむだろう。

 

 

「それで、どうする? 修道院で女の子を探すか、街に繰り出すか……」

 

「とりあえず、修道院を廻ってみようよ。街へ行くのは、午後からにしよう」

 

「よっしゃ!じゃあ、修道院でナンパと行きますか!」

 

 

 僕とシルヴァンは前回のナンパ対決の反省から、今度は二人でナンパしようということになった。

 学校を代表する色男が二人……女の子が放っておかないだろう。

 シルヴァンと二人組の女の子を狙って辺りを散策してみる。

 

 ……居た! 黒鷲の学級(アドラークラッセ)のドロテアとペトラが仲良さそうに話している。

 

 

「やあやあ、お嬢さん方……仲良さそうに何話してるんだ?」

 

「僕たちと一緒に、お茶でもしながら話さないかい?」

 

 

 ペトラをお茶に誘うのは、実は初めてだ。

 普段休日は朝早くから狩猟に出掛けたり、鍛練や書庫で勉強したりしているので、なかなか誘う機会が無かった。

 ドロテアを誘ったことは何度もあるが、今だに一度も来てくれたことはない。

 会話には普通に対応してくれるので、嫌われてはいないと思う……思いたい。

 

 

「……貴方たち、ついに手を組んで女の子を口説き出したのね」

 

「こんにちは、わたし、ペトラ、言う、言います」

 

「ペトラちゃん、ダメよ。この人たちに真面目に取り合っちゃ、調子に乗っていつもナンパされるわよ」

 

「……難破(なんぱ)。船、壊れる、ですか? 彼ら、船沈める、します?」

 

「そうじゃないわ。彼らは女性を騙す悪い人たちだから、話しては駄目って言いたいの」

 

「おいおい、人聞きが悪いこと言わないでくれよ~」

 

「そうだよ、僕たちは女の子と楽しくお話したいだけだよ」

 

 

 ペトラがいるからなのか、今日のドロテアは僕たちに対する警戒心が強い。

 いつもなら、冷ややかに会話するだけなのに睨み付けてくる。

 

 

「貴方たち、私を口説くのこれで何回目よ……正直しつこすぎない?」

 

「いや~覚えてないな。可愛い娘がいたら声をかけるのは、紳士のたしなみってやつさ」

 

「僕は覚えてるよ。今節はこれで四回目、すべて合わせて十七回目だね!」

 

「シルヴァンくんは五回目よ……ラズワルドくんは多過ぎて数えてなかったわ。何で覚えてるのよ……」

 

「僕は女の子との会話なら、なんでも覚えてるのさ!」

 

「さすがラズワルドだぜ! どんなにフラれてもめげないな!」

 

 

 ドロテアは呆れたようにため息を吐いている。

 ペトラは興味深そうに僕たち二人を見ながら、話してきた。

 

 

「わたし、武闘大会、あなた見ました。あなたの剣、興味ある、あります」

 

「えっ、ペトラちゃん、彼らとお茶会するの構わないって言うの?」

 

「わたし、お茶飲む、する、構いません。騙される、解る、彼ら、大丈夫、思います」

 

 

 ペトラは武闘大会で、僕の剣を見て興味を持ったらしい。

 ペトラも大会ではルーナを相手に善戦していたので、剣の心得があるのだろう。

 

 

「……はあ、しょうがないわね……ペトラちゃんを一人にするのは心配だから、私も行くわ」

 

「本当かい、ドロテア!?」

 

「うひょー! やっぱりナンパは二人でするもんだ。作戦成功だな、相棒!」

 

 

 僕とシルヴァンは、喜びのあまり声をあげてしまった。

 あれだけお茶に誘っても来なかった、ドロテアともお茶ができるなんて幸運だね。

 

 

「……私も貴方たちがめげずに口説いて来るから、どれだけ断ったら諦めるか試してたのよねぇ……実は、前から少しだけ貴方たちに興味があったのよ」

 

「そういうことだったのか……とにかく準備してくるよ!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 食堂近くの歓談スペースで僕とシルヴァン、ドロテア、ペトラの四人は楽しくお茶会を開いていた。

 このスペースは、生徒たちや修道院の人たちがよくお茶会に利用しているスペースで、茶器の貸し出しなどもおこなっている。

 そういえば最近、先生は茶器を手に入れて自学級他学級問わず、生徒をお茶に誘っているらしい。

 先生とお茶をしたときに、自慢気に茶器を見せてくれたので、だいぶ気に入っていたようだ。

 

 僕たち四人で話す話題は、今までの自分たちの経歴やそれぞれの学級についてのこと、特技や苦手なこと……傭兵に貴族、元歌姫に異国のお姫様と見事に身分がバラバラで、話す話題に事欠かない。

 ペトラはブリギットという、フォドラ大陸のアドラステア帝国と別大陸のダグザという国の間に位置する島国の国王の孫にあたるらしい。

 今年は高位の王侯貴族が多いと聞いていたけど、まさか大陸外の国のお姫様までいるとは……

 

 

「そういえば、ラズワルドくんの傭兵仲間のオーディンくんっているじゃない?」

 

「うっ、オーディンがどうかしたの?」

 

 

 オーディンは奇行が目立つから、話題に出るとつい警戒してしまう。

 

 

「ああ、大会でフェリクスを倒して優勝したやつだな。同世代でフェリクスに勝てる剣士なんて、なかなかいないから驚いたぜ」

 

「オーディン、剣術、見事でした。魔法、剣術、合わせる、練達の域、素晴らしい、わたし、感嘆する、しました」

 

「そう、それよ。派手な幻影の魔法みたいなものを使って戦ってたじゃない? 光や炎の幻影が、歌劇の演出に使えるんじゃないかなって思って、彼が一人でいる時に声をかけようとしてみたのよ……」

 

 

 元歌姫のドロテアらしい着眼点だ。

 一応、舞台上で炎を使うこともあるみたいだけど、大々的に使ったら火事になっちゃうからね。

 ただ話の流れから、嫌な予感が……

 

 

「その、声をかけようとした時に彼が腕を押さえながら『ぐっ、静まれ、俺の闇の力よ……力が暴走するっ……!』なんて言ってたのよ……あまりに異様な雰囲気だったから、近寄れなかったわ」

 

 

 ……うわぁ。

 え、演技上手いねドロテア……流石、元歌劇団出身。

 

 

「わたしも、彼のこと、見物した、あります。誰もいない、場所、見る、話しかける、する、していました。オーディン、幻覚、見る、いますか?」

 

「俺もアイツのこと見たことあるぜ。温室の当番だったときにさ、変な動きで叫びながら何かしていたぜ……ウチの学級には殿下とかアイツは良い奴だ、って言ってるのも結構いるけど、実物を目にしたら、やっぱりなあ……」

 

 

 ……うわぁ……うわぁ。

 ホント、なにやってるんだ……オーディン。

 学校内での評価が、凄いけど怪しい奴、ヤバい奴だけど良い奴みたいな、謎の評価になってきてるよ……

 

 

「オーディンのあれは多分カッコいいと思ってやってるだけだよ……ほら、子どもが英雄の真似とかでカッコつけてやるやつがあるでしょ、あんな感じだよ」

 

「……そ、そうだったのね。闇の呪術士なんて自称してるし、本当に呪術も使ってるから、危ない人にしか見えなかったわ」

 

「オーディン、年齢、本当は、子ども、ですか?」

 

「アイツ、俺たちとそう変わらないだろう……その年齢であの実力、中身は子どもって、もっと危ない奴に思えてくるぞ」

 

「中身が子どもって言うより、子どもっぽい趣味なだけだよ……悪い奴じゃないよ」

 

 

 何で僕がオーディンのフォローをしなくちゃいけないんだ。

 

 

「とにかく、オーディンの話はおしまい。僕も苦労しているのさ……」

 

「変わった幼馴染みを持つと大変だなぁ……」

 

「君のフォローをしてまわるイングリットのほうが大変だと思うけどね」

 

「はっはっは! それもそうか!」

 

 

 自覚があるのなら、少しは控えてあげればいいのに。

 まあ、ルーナもオーディンも僕のナンパ癖をフォローしてまわるなんてしたことないから、僕も気楽にナンパできるんだけどね。

 

 

 

「じゃあ、話を変えるけど、ラズワルドくんって戦場で踊ってるらしいけど、本当かしら?」

 

「えっ? ど、どこでそれを……」

 

「おう、俺も聞いたことあるぜ。金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)の踊る傭兵の話」

 

「戦闘、踊り、興味ある、あります。ブリギットも、戦闘前、後、歌い、踊り、あります」

 

 

 ええ? みんな知ってるんだ……恥ずかしいよ! 

 この世界に転移したとき、女神様の力をもらって、僕の踊りには仲間の力を少しだけ引き上げる力があることがわかった。

 傭兵時代に先生がそれを知ってから、戦闘中に特にすることがないときには、踊るように指示を受けている。

 金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)のみんなも最初は戸惑っていたけど、最近は慣れてきて手拍子を入れてくれたり、一緒に踊ったりしてくれている。

 前の世界でも、この世界でも戦闘中に踊ることは一応古代からある文化らしい……ウォークライって言うのかな。

 国直属の踊り子部隊もあるらしい。

 

 

「よかったら、踊ってみてほしいわ。ね、お願いラズワルドくん」

 

「見たい、です!」

 

「ええ? ここでは、恥ずかしいよ……」

 

「ここまできてそれはないぜ、ラズワルド。さあ、踊った! 踊った!」

 

 

 ……しょうがないな、少しだけだよ、恥ずかしいし。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 今日は休日だけど、あたしは訓練所に向かっていた。

 授業のある日は鍛練を欠かさない分、休日には出掛けたり部屋でゴロゴロしたりしているので、休日に訓練所に行くことはあまり無い。

 

 

「見つけたわ。フェリクス、やっぱりここにいたのね!」

 

「……お前はあの時の女……俺に何か用か?」

 

 

 訓練所に行くと、自主的に鍛練している生徒たちの中に、目当ての生徒を見つけて話しかける。

 フェリクスはいつも訓練所にいるので、探すことに苦労はしなかった。

 

 

「あの時の女って……あたしはルーナって名前があるの。これからはそう呼びなさい!」

 

「……チッ、騒がしい奴だ。それで、何か用か?」

 

「アンタに用事なんて、一つしかないに決まってるじゃない。剣で勝負よ!」

 

「ほう、あの時の雪辱を晴らしにきたと言うわけか……」

 

 

 フェリクスは好戦的な笑みを浮かべている。

 受けて立つつもりのようね。

 この前の休日、剣術武闘大会の準決勝でこのフェリクスに負けてから、ずっと悔しくてしょうがなかった。

 

 

「では今から勝負するか? 俺はいつでもいいぞ」

 

「勝負は今からで良いんだけど、あたしはコレを使わせてもらうわ」

 

 

 そう言って腕に装備している盾を見せる。

 

 

「盾か、別に構わない……盾があれば俺に勝てると言いたいのか?」

 

「当たり前よ! この前は、あたしの本来の戦い方じゃなかったわ。今日は、あたしの本当の強さを教えてあげるわ!」

 

「フッ、面白い……では行くぞ!」

 

 

 ◇◇◇

 

 訓練剣で出された突きを盾を使って弾き除ける。

 フェリクスは体勢を崩すことなく、斬り、払い、時には蹴りを使ってあたしの防御を崩しにかかる。

 

 フェリクスの剣は、速くて力強い。

 技量も生徒たちの中では突出している。

 時折、剣の一撃が速く重くなるのは噂に聞く紋章の力かしら……とにかく手強い相手だ。

 

 フェリクスは、盾を巧みに使って守備を固めるあたしを相手に、かなり苦戦している。

 すでに盾を駆使したカウンターで二本勝ちを取っているから、相当あたしの盾を意識している。

 

 何度目かの打ち合い、突き出された剣をあえて盾で()()()()、フェリクスに僅かに出来た隙に一気に攻撃を畳み掛ける。

 

 フェリクスが体勢を崩した目の前に剣を突き出してやる。

 

 

「フゥー、これであたしの三連勝ね!」

 

「……チッ、盾の有り無しでこれ程変わるとは……だが、見事だった。大口を叩くだけのことはある」

 

 

 フェリクスは素直に称賛してくる。

 素直じゃなさそうな奴と思っていたけれど、剣のことについては、そうでは無いのかもしれない。

 

 

「ふふーん。あたしの実力、よくわかったでしょ!」

 

「ああ、実戦経験の多さに基づいた、傭兵の剣術……前々から気になっていたが、知ることができてよかった」

 

 

 その後は、さっきまでの勝負についての話や自分たちの剣術の話になった。

 コイツの時折強くなる一撃はやはり紋章による力らしい。

 

 

「でも、アンタに負けてから考え直すこともあるのよね……盾だって消耗品だし、いつもあるとは限らない。昔、父さんに習った剣術はアンタみたいに、両手持ちの剣術だったから、練習しなおしてみようかしら」

 

「……ほう、俺に近い戦い方だったのか?」

 

「そうよ……父さんに『お前は攻める気持ちが強すぎる、もっと守備を意識しろ』って言われてから、試行錯誤しながら、今の戦い方になったのよ」

 

 

 あのまま、父さんのように〈剣士〉や〈ソードマスター〉のような戦い方をしていたら、前の世界……滅びた世界の戦いではあっさり命を落としていたかもしれない。

 父さんから「守備を意識しろ」「戦いではどんなことがあっても冷静でいろ」と言う教えを今日まで守ってきたおかげで今のあたしがある。

 そういえば、フェリクスは剣術もそうだけど考え方や雰囲気もどことなく父さんに似ている……気がする。

 ……べ、別にだから、どうってことはないけど。

 

 

「俺は、お前の盾を使った戦い方に興味がある」

 

「えっ? アンタの剣術はほぼ完成してるじゃない。目指すのならカトリーヌさんとかのほうが良いんじゃないの?」

 

「俺も家の人間から習った剣は、この剣術ではない。フラルダリウス家の剣術は盾を主体にしたものだった。好みに合わんから使ってないだけだ」

 

「好みに合わないのに、また使い出すつもりなの?」

 

「……お前の戦い方を見て、気が変わった。盾の有る無しであれほど強さや戦い方が変わるのなら、もう一度使ってみるのも悪くはない」

 

 

 一瞬、複雑そうな顔をしていたから、好みに合わない以外にも理由が有りそうね。

 あたしには関係ないけど。

 

 

「ふーん、アンタがそう言うなら協力してあげてもいいわよ」

 

「お互い、良い練習台を見つけたと言うわけか」

 

「その剣術でも、すぐにアンタより強くなってあげるわ!」

 

「……ならば、俺は盾を使った戦い方でお前の上をいってやろう」

 

 

 早速、盾を外してもう一戦しようというところで、訓練をしていた顔見知りの男子生徒から声をかけられる。

 青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)の級長のディミトリだ。

 一緒に訓練していたのかイングリットの姿と、少し離れたところにドゥドゥーもいる。

 

 

「フェリクス、お前が他の者とこれほど親しく話すとは珍しいな」

 

「……チッ、猪め。その薄気味悪い笑顔で俺に話かけるな」

 

 

 ディミトリに声かけられたフェリクスは一気に機嫌が悪くなった。

 幼馴染みと聞いていたけれど、喧嘩でもしてるのかな。

 

 

「……興が削がれた。今日はもう戻るぞ……またな」

 

「えっ? ちょっと……」

 

 

 そう言って、フェリクスは足早に訓練所を出ていってしまった。

 

 

「なにディミトリ。アンタ、フェリクスと喧嘩でもしてるの?」

 

「……すまない、ルーナ。アイツがあれほど親しく話をしているのが珍しくて、つい声をかけてしまった」

 

「すみません。フェリクスは入学前に起きたことのせいで殿下のことをよく思ってないのです」

 

「入学前? アンタたち、入学前から喧嘩してるの?」

 

 

 ディミトリもイングリットも申し訳なさそうにしている。

 たしかこの二人とフェリクス、前にラズワルドと一緒にいたナンパ野郎の四人が幼馴染みだったはずだ。

 あたしも幼馴染みは十人くらいいるけど、流石に数ヶ月も喧嘩状態になったことはない。

 

 

「喧嘩というより、一方的に避けられているんだ。俺が原因なのだが」

 

「ふーん。アンタたち、一緒に戦場に出ることも有るんだし、早く仲直りしたほうが良いんじゃないの?」

 

 

 それにディミトリは次期国王だし、フェリクスは大貴族の息子だったはずだ。

 まさかとは思うが、喧嘩したまま卒業したら、内乱の種になるかもしれない。

 

 

「殿下は歩み寄ろうとしているのですが……フェリクスが強情でして……」

 

「……すまない」

 

「あたしにできるかわかんないけど、協力してあげてもいいわよ」

 

 

 とりあえず話を聞いてみないことには、何もわからないか。

 

 

 




フラルダリウス家の剣術については独自解釈です、英雄の遺産が盾なので。
フェリクスがソードマスタースタイルになったのは、グレンの死と親父殿に思うところがあったから…という感じです
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