ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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第17話『天帝の剣』

(青海の節 二十六日)

 

 俺は“漆黒のオーディン”、世界の全てを紅蓮の炎で焼き尽くす、選ばれし闇の呪術士だ。

 

 結局、ベルナデッタはあの一件以来、さらに引きこもってしまっていた……先生や黒鷲の学級(アドラークラッセ)の生徒たちが、食事を持っていったり話かけたりしているらしいが……最近、他学級の生徒からの冷たい目線が辛いです……

 

 今日は、女神再誕の儀の当日だ。

 金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)では、生徒たちが集まり警備の準備をしていた。

 

 先生やクロード、その他の生徒たちで集めた情報から、敵の狙う場所は一般解放され、女神再誕の儀の時間は警備が手薄になる、聖廰が敵の狙いと予想した。

 

 

「しかし、聖人のお墓なんて荒らして、敵に何か得があるのでしょうか?」

 

「徳は下がりそうだけどな」

 

「“とく”だけにか? レオニー、上手いこと言ったな、はっはっは」

 

 

 リシテアの疑問に、レオニーが軽口で答えて、クロードや他の生徒たちが笑いだす。

 ウチの学級は、戦闘になるかもしれない状況でもリラックスしているというか、緊張感に欠ける場合が結構ある。

 まあ、こういう雰囲気は結構好きだけどな。

 

 

「君たち、品がないし、不謹慎だと思わないのかね」

 

「聖人様のお墓のことで、そういうことを言うのは(ばち)が当たりそうなので、やめましょうよ……」

 

「主よ……何も起こりませんように……」

 

 

 ローレンツやイグナーツがクロードたちを諌めている。

 実際、本当に聖廰が狙いだとしたらなにが目的なんだろうな……英雄の遺産を扱うには、紋章とその血統が重要だが、聖人の遺骸を研究して、なにかをするのかもしれない。

 

 

「オデは食堂が狙われると思うんだけどなあ……」

 

「他の狙われそうな場所は、黒鷲の学級(アドラークラッセ)青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)の子たちに任せようよ。他の学級も修道院の警備が課題なんだし」

 

 

 ラファエルとヒルダも話をしているが、狙われそうな場所は他にも沢山あった。

 宝物庫、武器庫、食堂、温室、書庫、紋章学者(ハンネマン先生)の部屋、色々と推理をした結果、最終的に狙いが聖廰の可能性が最も高いだろうと結論が出たのだ。

 

 

「で、先生はどう思ってるの?」

 

「お腹が空いた」

 

「はははっ、課題が終わったら、またみんなで慰労会でも開こうよ」

 

 

 ルーナとラズワルドも先生も相変わらずだな。

 そろそろ、女神再誕の儀が始まる時間なんだが……

 

 

「君たち、緊張感が足りない様だが? 間もなく女神再誕の儀が行われるのだぞ」

 

 

 そう言って、セテスさんとフレンが現れた。

 んん? なんで、フレン? 

 

 

「我々が女神の塔に入っている間、警備が薄くなりそうな場所を特に警戒してくれ」

 

「先生、聞いて下さいます? お兄様ったら、酷いのです。心配だからお前は棺の中にでも隠れていたらどうか、なんて仰いますのよ? ふふふ」

 

 

 お、お兄様? まさかフレンのお兄さんって……

 フレンは出会った時に教団で働いている兄がいると言っていたし、よく話題にもあげていた。

 自分を大切にしてくれているが、過保護すぎて嫌になる、とよく言っていた。

 

 

「そ、それは冗談だと言っただろう、フレン。お前は私の後ろにずっといなさい」

 

「まあ! わたくしだって、最近は魔法の特訓をしていますのよ。“純白のフレン”の『聖なる力』で、世に蔓延る悪を成敗してくれますわ!」

 

「わかった、わかったからフレン……とにかくベレス、君は教師として生徒をしっかり指揮するように」

 

「皆さん、失礼いたします。儀式の後でまたお会いしましょうね」

 

 

 そう言ってセテスさんとフレンは立ち去って行った。

 

 

「いつ見てもセテス様って、過保護よねー。あたしの兄さんみたい……」

 

 

 ヒルダが当たり前のように、セテスさんとフレンを兄妹扱いしている……ひょっとして有名な話だったのか、知らなかった。

 

 

「フレンさんって、あんなこと言う人でしたか?」

 

「“純白のフレン”ねぇ……なんか、誰かさんに影響受けてそうな気がするな……」

 

 

 イグナーツが疑問を口にすると、クロードがニヤニヤしながらこちらを見てくる。

 ──そんな目で俺をみるなよおおお! 

 

 べ、別に悪いことを教えているわけじゃないしな……一緒に訓練しながら、必殺技を考えたり、お喋りしたりしているだけだ。

 会えば説教されそうな雰囲気がセテスさんにはあるので、入学以来なるべく避けて行動してきたが……まさか、セテスさんとフレンが兄妹だったなんてな。

 

 

「みんな、そろそろ行こう」

 

「身を隠して、聖廰へ下りる階段を見張るとするか。入り込んだ奴がいれば袋の鼠だ。噛みつかれないようにしながら、捕らえてやろう」

 

 

 先生が促すと、クロードが生徒たちをまとめ移動し始める。

 さあ、どんな敵が現れることやら……俺の血が疼いてきた……まさか強敵が……!? 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 聖廰の中は、既に人の気配に溢れていた。

 武装した兵士たちや魔道士だ。

 一般解放されているとはいえ、この雰囲気はものものしすぎる。

 

 

「俺たちの推理が当たったみたいだな。見ろ、お客さんが来てるようだぞ」

 

「数が多い……セイロス騎士団に援軍を」

 

 

 先生は、生徒の一人に援軍を呼びに行かせたが、たしかに敵兵の数が多い。

 こちらは金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)の生徒以外にも、指揮下のセイロス傭兵団や教団兵もいるが……あちらのほうが数が多そうだ。

 

 

「もう中央の奴どもに気づかれたか……わしが、棺の封印を解くまで時を稼げ!」

 

 

 最奥の魔道士が指揮を出している。

 アイツが指揮官のようだ……どうやら聖人の棺の封印でも解こうとしているらしい。

 それよりも、中央にいる髑髏の兜をかぶった騎士の方が気になる……相当強そうだ。

 

 

「敵の狙いは、一番奥の棺か。聖人の遺骨でも奪おうってのかねぇ。棺を開けられる前に、さっさと奴らを片づけちまいたいところだな……」

 

「クロード……中央の騎士、かなりヤバそうなやつだ」

 

「ああ、いかにも物騒な雰囲気だな……みんな、あの黒い奴には近づく……なっ!?」

 

 

 まずいぞ! クロードが注意しようとしていると中央の騎士が突っ込んできた! 

 

 

「さあ、死合え! ……逸楽を……!」

 

「……くっ!」

 

 

 髑髏の騎士は、真っ直ぐ先生に向かってきて、交戦し始めた。

 ……コイツ! 先生が狙いかっ! 

 騎士の放つ凄まじい殺気に、ほとんどの生徒や兵士は身がすくんで動けなくなってしまっている。

 

 髑髏の騎士の横から、黒魔法〈ブリザー〉を放つが寸前で回避される。

 ラズワルドとルーナが二方向から斬りかかったが、ラズワルドの攻撃は手にした大鎌で防がれ、ルーナの攻撃は身を捩りかわされた。

 

 

「先生、コイツは俺たちがやる! 先生たちは敵の指揮官を!」

 

「……オーディン……ルーナ、ラズワルド、任せた。気をつけて」

 

 

 かなり危険な相手だが、コイツだけに手を取られていたら、棺の封印が解かれてしまう。

 先生はみんなと最奥の棺に向かわせることにした。

 

 

「虫ほど望んで火に寄るか……」

 

 

 騎士は低音で響く声で話している……魔法で声をわかりにくくしているのか? 

 

 

「虫!? 舐めんじゃないわよ!」

 

「僕たちを倒さないと、この先には進めないよ」

 

「この“漆黒のオーディン”と戦ったことを後悔させてやろう……」

 

 

 馬上の相手……凄腕の騎士相手の3対1の訓練は、傭兵時代、ジェラルトさんを相手に結構な回数をやっている。

 最初は、ジェラルトさんの腕が鈍らないように、訓練の誘いを受けたが、あっさり勝ってしまったのでジェラルトさんを本気にさせてしまったらしい。

 本気になったジェラルトさん相手でも、3対1では一度も負けたことはない。

 ジェラルトさんからは「お前ら三人同時に相手をするのは、英雄の遺産を持ってる奴でも難しい」とまで言われたので、先生も信頼してこの場を任せてくれたのだろう。

 

 

「はあああっ!!」

 

 

 ルーナが先陣を切って飛びかかる。

 騎士は即座に切り払い対応するが……

 

 

「デュアルアタック!」

 

 

 ラズワルドが間髪入れず攻撃し、追い討ちをかける。

 

 

「くらえ! 〈ファイアー〉!」

 

 

 俺の攻撃は騎士を狙わず、最も当て易い攻撃であえて馬を狙う。

 かわされたか! まるで人馬一体……この髑髏野郎、やはり相当な実力であることがわかる。

 

 ラズワルドが狙われて攻撃されたときは、ルーナが横から入り防御する。

 ルーナが攻撃されそうになれば、俺が魔法を放ち、できた隙に乗じてラズワルドが攻める。

 目まぐるしく替わる攻防や立ち位置、俺たち三人の連携は、どんな強敵相手でも崩すことはできない。

 

 戦っていると妙なことに気づく、この髑髏の騎士、俺を狙ってこないのだ。

 魔法を放てば、謎の斬撃を飛ばして応撃してくるのだが……積極的には攻撃してこない。

 魔法職である俺を片づけて、2対1にしたほうが良いと奴も考えてくると思っていたが……まるで俺が接近戦も戦えると知っているかのように、位置を変えてくる。

 

 

「命を削れ……もっとだ!」

 

 

 騎士は、ラズワルドとルーナを相手にとり、一進一退の攻防をおこなっている。

 奴が俺に狙いを定めたときに、三人で一気に勝負を決めてやろうと思っていたが、作戦変更だ。

 

 

「俺も前に出る! ……終わらせてやる!」

 

「サポートするわ!」

 

「すぐに終わるよ!」

 

 

 俺も加わり、三人で一斉に攻撃を開始した。

 幻影の分身を突撃させてみるが……やはり無視された。

 初見殺しのこの技に、気にした素振りを見せないのは、俺のことを知っている可能性もあるな。

 

 

「くらえ、必殺! 烈火剣レイジングファイアーソード!」

 

 

 剣術武闘大会の時とは違う、本物の剣ミステルトィンに戦技〈魔刃〉を使った必殺技だ。

 髑髏の騎士は大鎌で防御するが、魔力でダメージを受けたのか小さくうめき声をあげている。

 ──まだ終わりじゃないぜ! 

 

 

「行っけーー!!」

 

「手加減しないよっ!」

 

 

 ルーナの盾を足場に使い、ラズワルドが一気に飛び上がり、剣を突き出した。

 

 ──月光

 かつてのイーリス自警団副団長、現イーリス騎士団の団長が得意としている奥義だ。

 剣で使えば重騎士の鎧を真っ二つにし、槍で使えば大盾を敵ごと貫き、弓ならば竜騎士を一矢のもとに葬った。

 

 ラズワルドの剣が騎士の鎧を貫き、腹部に深く突き刺さり、落馬する。

 刀身が背中から出ていることから、剣は貫通しているようだ。

 

 ラズワルドが騎士の腹から剣を引き抜き距離をとる。

 騎士はまだ大鎌を手離していないが、この傷なら高位の回復魔法を使っても、しばらく戦えない。

 

 

「貴様らほどの者がいようとは……」

 

 

 髑髏の兜からも血を吐き出し、騎士が喋る。

 騎士の体が光ったかと思うと、騎士は姿を消した。

 

 

「今の魔法は……レスキューか? 逃げられたな……」

 

「うーん、止めを刺しておくべきだったかな?」

 

「考えるのは後よ。みんなの加勢にいきましょ!」

 

 

 そう言って、奥を目指そうと移動しようとした瞬間、背後から魔道士の集団が現れた。

 援軍か? そう思って顔を見合せるが、見知った顔がいない……どちらさんですか? 

 

 

「なっ、貴様ら……中央教会か!」

 

「ラズワルド! ルーナ! コイツら敵の援軍だ! 斬れ!」

 

 

 危ねえ! このまま、みんなに合流していると挟みうちをくらうところだった。

 魔道士たちは、かなりの数がいたが、最初の出会い頭に指揮官を斬ったので、散り散りになって逃げ出した。

 

 さあ、今度こそ合流だ。

 

 中央の広場を守っていた、髑髏の騎士が持ち場を離れて戦っていたので、先生たちはそれほど苦労せず制圧できたらしい。

 生徒や兵士たちに戦死者はいないようだ。

 

 最後に残った聖人の棺を開けようとしている魔道士と先生が対峙している。

 

 

「手遅れよ……! 封印はすでに解かれた! おぬしらなど……な!? ……この剣は……」

 

 

 魔道士が棺を開けると、中には変わった形をした剣が入っていた。

 ──あ、あの剣はまさか……!? 

 

 先生が魔道士に斬りかかり、剣を奪い返した。

 魔道士は先生に〈ファイアー〉や〈Mシールド〉などの魔法で応戦するが、奪い返した剣であっさりと斬られた。

 剣は先生が手にした瞬間から、ずっと光っているが……偶然、聖人の棺の中から出てきた剣の力を発揮出来るなんて……ありえるのか? 

 

 

「侵入者はここか!? ……って、あれまあ。だいたい片づいてんな。者ども! 生き残ってる侵入者どもを残らずふん縛れ!」

 

 

 ふぅ、これで安心だな。

 カトリーヌさん率いるセイロス騎士団も現れて、聖廰の中に残っていた敵兵たちも制圧されていく。

 

 先生は、すでに生徒たちをまとめあげ、聖廰を出る準備をしていた。

 俺は気になっている剣について先生に聞いてみることにした。

 

 

「先生……その剣は……」

 

「敵の指揮官が棺から取り出してた……また、もとに戻したほうが良いかな?」

 

 

 ……いや、そういう話をしにきたのではないんだが。

 ……間違いない……この形……見た目……この剣は……

 

 

「これは、天帝の剣!」

 

「てんてーの剣?」

 

「ああ、俺も気になってたんだけど……やっぱりそうか」

 

 

 俺の言葉にクロードも反応してやってきた。

 クロードも気づいていたか……

 

 

「天帝の剣……かつて“解放王”ネメシスが邪神を退けるために振るい……力に溺れ、邪に染まったあとも聖者セイロスとの戦いに使われた伝説の剣……英雄の遺産です!」

 

 

 千年も前に、歴史の表舞台から姿を消したわりには、形や伝承なんかが結構伝わっていて、図鑑『英雄の遺産』みたいな書物にも載っていた。

 形もそっくりだし間違いないだろう。

 

 

「先生が使ってるときは光ってたよな……英雄の遺産は、紋章が一致しないと真の力を発揮できない……しかし、先生はその力を発揮していたように見える……」

 

「たしかに、英雄の遺産は紋章を持つ者なら、紋章が一致していなくても使うことができるけど……光ったりするのは、紋章が一致している証拠だと文献で読んだとこがある」

 

 

 クロードが俺と話しているあいだ、先生は剣を見つめている。

 先生はもしかして……

 

 

「……先生は解放王の子孫だったのか?」

 

「何のことやら」

 

 

 俺が聞く前にクロードが先に言っていた。

 考えることは同じだな。

 先生は眉をひそめて、首をかしげてる……たぶん本当にわかってないかんじだな。

 

 

「とぼけんなって……天帝の剣は、かのネメシスのみが使えた遺産。それを使えるってことは、あんたにも同じ紋章があるってことだろ?」

 

「わからない」

 

「わからないは通用しないぞ、先生」

 

「クロード……先生がわからないって言ってるなら、本当にわかってないぞ……誤魔化してるわけじゃないぜ」

 

「そんなことないだろ……知っていることを教えてくれよ、先生」

 

「先生ー、クロードくーん、なにやってるのー? 先生は大司教様に呼ばれてるから、『急いで来て』だって!」

 

 

 三人で話し込んでいると、ヒルダが呼んできた。

 

 なんやかんやあったが、とりあえず、一件落着だな。

 

 しかし、先生が天帝の剣を手にし……その力を使うことができるとは……やはり先生は選ばれし戦士……この世界で最初に出会ったのも、女神様が導いた運命だったのか……

 

 

 




作者の死神騎士のイメージはジェラルトさんと互角くらいです
覚醒三人連携>雷霆カトリーヌ>死神騎士=ジェラルト>先生(天帝無し)=カトリーヌ≧イエリッツァ≧三人組単体
強力な武器が無い場合はジェラルトさんが一番強い想定です
なお武器なしで彼らよりもっと強い人が教会にいる模様

月光
FE覚醒、FEifに登場するスキル
グレートナイトがLv5で覚える
技%の確率で発動、敵の守備、魔坊を半減して攻撃
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