ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン 作:すすすのすー
第18話『黒鷲の学級』
俺は“漆黒のオーディン”、フォドラ大陸を救うために人知れず剣を振るう、選ばれし闇の戦士だ。
聖廰で起きた、天帝の剣が奪われそうになった事件の首謀者は、西方教会だったらしい。
西方教会はロナート卿の反乱にも絡んでいたらしく、今回の女神再誕の儀でガルグ=マク大修道院を訪れていた西方教会上層部たちは、全員捕らえられ処刑されることが決まった。
詳しい話は、教会も公表するつもりは無いのか、これ以上の情報はわからなかった。
今回の一件で、解放王の使った英雄の遺産“天帝の剣”を使えた先生には、炎の紋章という解放王と同じ紋章があることがわかった。
天帝の剣は先生に預けられ、そのまま使うことが許された。
邪心に堕ちた解放王が使い、聖者セイロスとの戦いにも用いられたとされる天帝の剣を、素性もよくわからない元傭兵の先生に預けるとは……絶対、あやしい……教会上層部に、先生のことをすべてを知っていそうな人は間違いなくいるだろう、大司教様とか……
まあ、とにかく俺としては、英雄の遺産を間近で見せてもらえる機会が増えそうなのは、良いことだな!
──血が騒ぐぜっ!
◇◇◇
(翠雨の節 一日)
翠雨の節の初日の朝、俺は
ベルナデッタは、先生との一週間にわたる話し合いの末、
俺はベルナデッタに怖がられているので、その一ヶ月の間はベルナデッタの代わりに
今節の課題までには
ベルナデッタは一ヶ月間様子を見て、最終的にどちらの学級に所属するか、自分で選択するらしい。
教室の真ん中を通って、教壇の前に立つが……教室中から冷たい目線……全然、歓迎してくれている雰囲気じゃない。
「……事情はだいたい知ってると思うけど、今日からあたくしの
「……俺は“漆黒のオーディン”、選ばれし闇の呪術士だ……」
マヌエラ先生に促され、自己紹介するが、やっぱり反応は良くない。
どことなく、みんなが非難するような目をしているのは、俺の被害妄想ではないだろう。
いや、彼らは悪くない……自分の学級の生徒を泣かされたうえ、他学級に移籍された代わりにきたのが、その原因になった人物ならば、否定的になるのも仕方がない。
これは俺に下された罰なのだ……
──ああ、そうか……女神よ、これが私への罰だったのですね……
「よろしくね。ウチのベルちゃんを泣かせた“漆黒のオーディン”くん」
ぐはっ!?
いきなり、冷ややかに声をかけてきたのはドロテアだ。
彼女は、ベルナデッタが引きこもっている間も、率先して話しかけ食事を持って行っていたらしい。
「まあ、そう言うなドロテア……オーディンも悪気があってしたことじゃないと聞いている」
「そうなんだ……正直すまなかったと思っている」
フェルディナントがフォローしてくれた。
ほとんど話したことないのに、良い奴だ。
「謝るのなら、ベルちゃんに謝ってほしいわね」
「……それが、会うのも駄目らしくて、謝る機会をまだもらっていないんだ」
俺はベルナデッタに対して接触禁止になってしまっている。
具体的には、ベルナデッタの部屋から金鹿の教室に向かうまでの道や食堂への道が通行禁止になっていたり、温室へ入っていいのが朝の短い時間だけだったり、いろいろと行動が制限されてしまい、ベルナデッタと徹底的に顔を会わせないようになっている。
そのことを話すと、ドロテアや他の生徒たちも少しは納得してくれたらしく、中には気の毒そうにしてくれる奴までいた。
「皆も思うことがあるだろうが、彼も今は
「なぜ、エーデルガルト様ではなく貴殿が仕切っておられるのですか……」
「俺はカスパルだ。お前の武闘大会での活躍は見てたぜ! あの炎を出す技、今度教えてくれよ!」
「わたし、ペトラ、言う、言います。わたしにも、是非、ご教授、願う、願います」
とりあえず、皆が自己紹介をしてくれる流れになった。
受け入れてくれるようで、よかった~!
◇◇◇
自己紹介が終わった後は、普通の授業になった。
もう士官学校に来て数ヶ月経つので、他学級の生徒の顔もなんとなく覚えていたので、名前を覚えられないということもなかった。
実は、マヌエラ先生の授業を受けるのは初めてだ。
元々、マヌエラ先生の専攻する白魔法は得意分野だし、フォドラの歴史なんかの授業は
……しかし、実際に受けてみると、ただの歴史の授業でもめちゃくちゃ面白い。
元歌劇団の天才歌姫と称された、美声から語られる歴史はまるで物語のようだし、合間にする小芝居は演技力と相まって、つい聞き入ってしまう。
マヌエラ先生……元歌姫であり医師であり教師……多才すぎだろ。
今の授業はアドラステア帝国の歴史についてだ。
「……この時の皇帝、マルクス1世はなんと言ったでしょう……オーディン、答えられるかしら?」
「……フッ、俺の戦いは、敗者の復讐のためでは無い、全ての人々のためではなくてはならない……これも、血の定めだ……」
「違うわオーディン、勝手に付け加えないで頂戴! 『私の戦いは、敗者の復讐のためではなく、全ての人々のためでなくてはならない』……穏健な皇帝であるマルクス1世は、そう言って帝国に反乱した氏族を許し、荒れた国土の再建を果たしていったわ」
だいたい合ってるから、いいじゃないですか!
先生やドロテアたちを真似して、芝居っぽく言ってみたら、怒られてしまった。
周りの生徒の中には、笑いのツボに入ったのか、何人かが吹き出して腹を抑えて震えている……別にウケを狙ってやったわけじゃないのに……
楽しい授業の時間は、あっという間に終わり、もう終業時刻だ。
これを機に何人かと仲良くなっておこうかな……この学級でよく話すのはエーデルガルトだけだし。
「やあ、オーディン。君の紋章について話が……」
やっぱりやめた! よし帰るぞ! 今帰るぞ! すぐ帰るぞ!
手早く帰り支度を済ませると、颯爽と教室を後にした。
誰かが話しかけてきた気がするが、そんなもんは知らん!
しかし、リンハルトの奴も
そういえば、今日は先生に食事に誘われてたんだった。
さすがに、食堂の利用を制限されることはなかったので、
食堂には先生とエーデルガルト、ついでにヒューベルトが待っていた。
「オーディン、
「……フッ……皆、俺の『闇の力』に恐れ戦いていたぞ……」
先生は俺の言葉に反応せず、エーデルガルトをチラリと見た。
「ずっと、この調子で……みんなも、もう慣れてしまった様子よ」
「一日であれだけ馴染むとは、我々の学級も変わり者ばかりですな……」
「元気そうでよかった」
やっぱり先生は、他の学級に移籍した俺を心配してくれていたみたいだ……今日の食事もそのことについてだろう。
今日のメニューは、山鳥の親子焼きとタマネギのグラタンスープか! 先生は俺の好物をよくわかってるな……んー! うまそうだ!
「あら、これ、好きだったの。貴女に教えたことあったかしら?」
「私はあまり食事を重視しませんが……これには目がありません……クク……」
先生は、他学級の生徒の食事の好みまで把握しているらしい。
ヒューベルトが、山鳥の親子焼きを美味しそうに食べている……コイツが笑うところなんて初めて見たな。
「……しかし、鶏肉と卵を焼いて親子焼きとは……なかなか業が深い名前ですな……ククク、貴殿もそう思われませんか?」
なに怖いこといってるんだコイツ……いや、普通のことを言っているかもしれないけど、闇の雰囲気を漂わせるコイツが言ったら、何を言っても悪いことに聞こえてくるだけか……
「そういえば、さっき教室を出る前にリンハルトが『君の紋章』なんて言ってたけど……貴方、紋章を持っているの?」
「ふむ、おかしな話ですな……貴殿はフォドラの外の人間だったはず……」
「私も知らなかった」
くそっ……リンハルトの奴がところ構わず、紋章のことについて話しかけてくるせいで、周りに広まり始めたじゃないか……話題の矛先を逸らそう!
「……ふぉどらのそとからきたおれが、もんしょうなんてもってるわけないだろ……それより、紋章なら先生だろ。今日ハンネマン先生に詳しく教えてもらったんでしょう、どうでした?」
「炎の紋章というのが、あるらしい」
それは、もうみんな知ってるよ!
詳しく聞いてみても、教会から発表された内容以外の情報はあまり無いみたいだな。
ハンネマン先生は、さらに詳しく調べてみるみたいだが、何か分かると良いが……
「先生の紋章についても気になるけど……今はオーディン、貴方のほうが気になるわ、聖廰では恐ろしく強い騎士を倒したらしいじゃない……」
また話題が俺のほうに戻ったが、紋章の事から話題を反らすことはできたな。
あの騎士については、聖廰襲撃や天帝の剣、学級移籍のこともあり、忙しくて考えていることを誰かに言っていなかった。
「あの髑髏の騎士か……アイツ、相当強かったぞ……ジェラルトさんと同じくらいの強さはあった」
「……本当?」
先生もジェラルトさんと同じくらいの強さと聞いて驚いている。
正直、ジェラルトさんは英雄の遺産を持たない人の中では、フォドラ大陸最強に近い人だと思うのだが、だからこそ、あんなところに同等の強さを持つ者が現れたのは驚いている。
「貴方の見立てでは、セイロス騎士団歴代最強団長の“壊刃”ジェラルトと同程度の強さはあったというわけね……でも、それほどの者を3対1とはいえ、なぜ簡単に……誰も負傷しなかったんでしょう?」
「いや、簡単じゃなかったけど……ジェラルトさん相手でも、3対1ならいつも勝ってたぞ」
「オーディンたちを、三人同時に相手するのは、英雄の遺産を持っている人でも難しい、って言ってたね」
俺と先生の言葉に、エーデルガルトとヒューベルトは呆気にとられたような顔をしている。
「あと気になったのは、アイツの動きだな……何故か、一番簡単に倒せそうな魔法職の俺を狙わず、二人を相手に戦い続けた……まるで、俺が剣もかなり使えると知ってるみたいに……」
剣を腰に佩てるとはいえ、二人を倒せず、魔法を援護で撃たれる状況なら、後衛から潰しにくるのは当然だ。
位置取りも、俺が剣を抜いて接近戦をすることがないように、仕向けるために動いていたと思う。
「俺を狙ったところを、接近戦で三人で仕留める予定だったんだがな。作戦変更して、俺が前に出て三人で接近して倒したんだ」
エーデルガルトとヒューベルトはお互いにチラリと目を合わせた。
先生はウンウンと頷き「良く考えて戦ってるね」と誉めてくれている。
「あとは、アイツを倒したとき、白魔法のレスキューで助けた奴がいる。指揮官でもないし、味方と連携もしてこなかった……レスキュー使いは他の仲間を助けようとしなかった……ハッ! ……もしかして奴が黒幕の一味……西方教会を焚き付けた奴らか……」
「そうかも、しれないわね……」
エーデルガルトも同意してくれている。
今日の俺は実に冴えているな!
「そして……なぜ奴は俺のことを知っていたかというと……」
「…………」
エーデルガルトもヒューベルトも表情を引き締め見てくる……
「この俺……選ばれし闇の戦士オーディンの名前が世に轟き始めたからだ!! ハッハハハハハ!!」
いやあ……有名になるというのは、辛いものだな……まさか戦場であんなに実力のある奴が、俺のことを知ってるなんて……いやあ、ホント辛いわぁ~
ただ、有名になりすぎると戦場以外でも狙われる可能性も出てくる……先日、イエリッツァ先生が教会とは別の仕事をしていた時に、何者かに襲われ重症を負ったらしい。
イエリッツァ先生ほどの実力者が負けるとは、下手人は恐ろしい使い手だ、注意しなくては……
「……そう、よかったわね」
「まったく、貴殿という人は……」
「オーディン、明日から頑張って」
明日から……いや、今日からだったか……学校生活も少し変わるが、この俺“漆黒のオーディン”は誰にも止めることはできないぜっ!
──魂が躍動するっ!
「思っていた以上に厄介な男ですね…消しますか?」
「待って…今は様子を見てみるわ」
ということで一節のみの
べレス先生の学級を追い出された主人公は風花雪月二次小説では初だと思います(不名誉)