ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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第2話『壊刃と教団』

(大樹の節 二十日)

 

 俺は“漆黒のオーディン”、数多の世界越え、今此処に現れた、選ばれし闇の呪術士だ。

 

 現在、ジェラルトさんとセイロス騎士と思われる人が対峙するのを眺めていた。

 

 

「やはり、ジェラルト団長ではないですか! うおおお! お久しぶりですなあ!」

 

 

 ジェラルトさんはセイロス教団に追われているとか、噂があったんだが、所詮噂は噂というやつだな。

 セイロス騎士団の騎士──アロイスさんと親しげに話している。

 二人は知り合いみたいだな。

 

 アロイスさんとジェラルト親子が話している間に、エーデルガルトたちが俺たちに話しかける。

 

 

「ありがとう、あなたたち。さっきは助かったわ。私はエーデルガルト=フォン=フレスブルグ。アドラステア帝国の皇女であり、第一位の皇位継承者よ」

 

「俺からも礼を言わせてくれ。ありがとう。俺はファーガス神聖王国、ディミトリ=アレクサンドル=ブレーダッドだ」

 

「クロード=フォン=リーガンだ。実家はレスター諸侯同盟の盟主だが、そんなことは気にしなくていいさ」

 

 

 俺に対しては家名までは名乗らなかったのに……

 えっ、第一位の皇位継承者……!? 

 

 

「第一位の皇位継承者って、帝国の次期皇帝ってこと? 随分、大物だったのね」

 

「実家が同盟の盟主ってことは、クロードも凄い人だったんだね。ディミトリも王国の貴族なの?」

 

 

 ルーナとラズワルドは驚いた様子を見せたが、特に口調も変えず質問する。

 

 

「……あなたたち、ブレーダッドを知らないの? 彼は王国の王子……彼も次の王になるはずの人よ」

 

「あたしたち、フォドラの外から来たから王様とか貴族とか詳しくないのよ」

 

「へえ、アンタらフォドラの外の出身者か……ちなみにどこから来たんだ?」

 

「そ、それは秘密よ、秘密! 教えられないわ」

 

「秘密ねえ、そんなこと言われたら、余計気になっちまうよ」

 

「クロード、あまり詮索するな」

 

「ちなみに、クロード……彼も次期盟主になるはずよ」

 

「おいおい、俺はまだ決まってないっての。少しずつ正体を明かし合おうと思ってたのに」

 

「へえー、すごいねフォドラ三国の次期指導者が揃い踏みか。僕はジェラルト傭兵団のラズワルド」

 

「あたしはルーナよ」

 

 

 ええーー! めちゃくちゃ偉い人たちじゃないですかー! 

 全員がフォドラ三国の次期指導者とかやばいだろ……なんで、ラズワルドとルーナは平然と会話してんだ。

 とりあえず目上の人と話す口調に戻さなければならんな。

 

 

「それを早く言ってくださいよー。めちゃくちゃ偉そうな態度とってしまったじゃないですかー!」

 

「……あなたが普通の口調で喋れるほうが驚いたわ」

 

「いつも通りで構わない。俺達はまだ士官学校で学ぶ学生でしかない」

 

 

「……フッ、それもそうだな、貴様の助言感謝する。先ほど名乗ったが、俺は“漆黒のオーディン”覚えておけ……」

 

「ははは、お前、面白いやつだな“漆黒のオーディン”ね」

 

 

 口調をまた戻すと、笑ってるクロード以外がみんな半眼で見てきた。

 なんでだ。

 よくよく考えてみると、幼なじみの王女には友達口調だったし、そもそも俺も国王の妹の息子……王族だったのを忘れてた。

 

 ベレスがやって来て、会話に入りたそうにこちらを見ている。

 

 

「あなたも、さっきはありがとう、助かったわ。それにしても腕が立つのね。しかも貴女の父は……歴代最強のセイロス騎士団元団長“壊刃”のジェラルド」

 

「元団長とは知らなかった」

 

「そんなことあるの? 何か言えない事情がありそうね」

 

 

 エーデルガルトがベレスと話してるけど、“壊刃”は騎士団長時代の異名だったのかな? 

 

 

「ベレスが知らなかったなら僕たちが知るわけ無いからね。ジェラルト団長がセイロス教会に近付こうとしなかったのはこういうワケがあったのかな?」

 

 

 ラズワルドが考えてるが、ジェラルトさんに聞いてみないと真実はわからんだろうな。

 

 その後は、帝国王国の次期指導者達が俺たちを熱烈勧誘したりとあったが、結局ジェラルト傭兵団もセイロス教団の本拠地ガルグ=マク大修道院に向かうことになった。

 

 大修道院か……きっと神器や禁じられし部屋、血が騒ぐ何かがいっぱいあるのだろうな……俺の中の血が……騒ぎ出した……まだだ……くっ、静まれ……

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 昼の光に照らされたガルグ=マク大修道院は見るものを圧倒させる雰囲気があった。

 

 士官学校の三人とは別れ、ジェラルトさんとベレスはセイロス教の大司教に会ってくるらしく、施設の中の方へ入っていった。

 

 残りのジェラルト傭兵団は教団所属の傭兵用兵舎で滞在準備を進めていた。

 

 

「やっぱり、僕たちしばらくここに滞在するのかな?」

 

「団長がセイロス騎士団に復帰するなら、このままセイロス教団の傭兵になるってのも、考えられるわよね」

「となると、俺たちを率いるのはベレスになるのかな?」

 

「名前もベレス傭兵団になっちゃうね」

 

「あたしはベレスが団長でも全然いいけどね……あっ、べ、別にジェラルト団長が嫌ってわけじゃないんだからねっ!」

 

 

 名前……ジェラルトさんが騎士に復帰しベレスが率いるようになったら、傭兵団の名前も変えることになるのか…………

 新たな名前が必要となるなら、つけなければならないだろう! この俺がっ!! 

 ……魂が躍動する……! 今まで傭兵団の名前なんて考えたことがなかった……俺は見落としていたのかっ! 組織には名前がある。

 つけなければっ! かっこいい名前をっ! 

 

 

「よう、探したぞここにいたか」

 

 

 ジェラルトさんが戻ってきたようだ。

 

 

「ジェラルトさん、どうでしたか?」

 

「俺はセイロス騎士団に戻ることになった」

 

「団長……あたしたち、傭兵団はどうなっちゃうの?」

 

「この傭兵団はそのまま俺が率いる、セイロス教の傭兵団ってことになる」

 

 

 なーんだ、なら名前は変わらないのか。

 いや……これを機に名前の変更を具申してみるかっ! 血が騒ぎ、魂が躍動するような名前を……! 

 

 

「ベレスはどこに行ったんですか?」

 

 

 ラズワルドが問いかける。

 そういえばベレスが帰ってきてないな。

 士官学校の三人に、修道院内を案内でもしてもらってるのか? 

 

 

「あいつは士官学校の教師をやることになった。盗賊騒ぎの一件で逃げた教師の代わりだとよ」

 

 

 一瞬、ジェラルトさんが言っていることが意味がわからなかった。

 教師……士官学校の? 教師って指導役だよな? 先生とか呼ばれる。

 なんでベレスが……確かに剣とか戦術とか教えるの上手いけど……急すぎないか。

 

 

「えー、いきなり先生になるだなんて急すぎませんか?」

 

 

 ラズワルドも同じく疑問に思ったらしい。

 

 

「アロイスの野郎が、大司教のレア様に推薦したらしい、レア様も妙に乗り気でなあ……二つ返事で了承したらしい」

 

「うーん、そうなんですかー」

 

「そうなの……ベレスと毎日会えなくなっちゃうね。べ、別に寂しくなんかないんだからねっ!」

 

 

 ルーナはとくにベレスと仲が良かったからな、ちょっとショックだろうな。

 

 

「それで、だが……お前ら三人に頼みがある。あいつの学級の生徒として士官学校に入学してくれないか」

 

「俺たちが学校に?」

 

「えっ、それも急すぎないですか?」

 

「学校!? あたしたちが」

 

 

 俺含め三人とも、驚きの声を上げる。

 そりゃ、そうだろう、急に学校に入れとか言われれば普通はびっくりする。

 

 

「なんでまた?」

 

 

 ジェラルトさんに聞いてみる。

 何か事情があるのだろうか? 

 

 

「正直、あいつを教師にする意図が読めん」

 

 

「お前ら三人を士官学校に入学させることを条件にしても、レア様はあいつを教師にすることを選んだ」

 

 

「お前らの素性がよくわからんことを了承した上でだ」

 

 

「言いたくないんだが……何かを企んでるかもしれねえ」

 

 

 俺でも、ここまで聞いたら流石にわかる。

 ジェラルトさんはベレスのことが心配なのだろう。

 

 

「ルーナ、ラズワルド、オーディン、あいつのことを頼んでいいか?」

 

 

「団長、ベレスはあたしが守るわ!」

 

「ジェラルト団長、まかせてください!」

 

「万事! “漆黒のオーディン”に任せておけ!」

 

 

 しかし、いきなり学校に入ることになるとはな。

 ……これも女神様の導き、運命(さだめ)というやつか。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 ガルグ=マク大修道院の中で、俺たちは大司教の補佐をしているセテスさんという人物を待っていた。

 この部屋もセテスさんの執務室らしい。

 

 

「オーディン、アンタはなるべく喋らないでよね……」

 

「君は何を言い出すかわからないからね、頼むよ」

 

「えー、俺はこういう時はわきまえてるだろ? むしろルーナのほうが心配だ、丁寧に喋れないし」

 

「バカにしないでよね、喋れるわよ!」

 

 

 喋れないだろうに……前の世界でも、今の口調で国王に突っかかったり、まああの人も口調とか全然気にしない人だから良かったんだけど。

 そもそも、ルーナが丁寧な言葉づかいで喋ってるのを見たことない。

 

 待っていると人が入ってきた。

 

 

「待たせてすまない。私は大司教の補佐をしている、セテスという」

 

「ラズワルドです」

 

「ルーナ、です……」

 

「俺は“しっ……オーディンです」

 

 

 あぶね、ついいつもの調子で言いそうになってしまった。

 緑髪で良く整えられた髭をもつ、男の人だ……歳は良くわからないな、肌の感じや皺の無さから20代にも見えるし、厳格そうで威厳のある態度から40歳以上にも見える。

 結構、厳しそうな人だな、なるべく無難に話そう。

 

 

「君たちが士官学校に入るにあたり、いくつか質問がある。士官学校には多くの貴族たちの子弟がいるからな、素性の知れぬものを入学させるわけにはいかんのだ」

 

 

「まず君たちは、どこで生まれ育った?」

 

「フォドラ大陸の外の国です」

 

 

「全員か? その国の名前と、どこにあるか教えてくれ」

 

「……答えられません」

 

 

「……君たちはいつフォドラに来た?」

 

「4ヶ月くらい前……ですかね」

 

 

「……君たちはなぜフォドラに来た?」

 

「……答えられません」

 

 

 あわわ、ヤバいヤバいヤバい……ラズワルドが質問に答えるたびに、セテスさんの表情が険しくなってきてる。

 仮に「イーリス聖王国です」「この世界にはありません」「女神様に呼ばれて世界を救いにきました」なんて答えても、もっとヤバいことになるだろうし……

 そもそも、セイロス教の女神と俺たちを呼んだ女神様が、同一の神なのかもわからない。

 

 

「…………君たちは、どうやって育ってきた」

 

「……よ、傭兵として戦って育ってきました」

 

 

「…………君たちを育てたのは誰だ? 誰に戦いかたを習った?」

 

「父さんや母さん、親の仲間の人たちです」

 

 

「君たちの親は今どこにいる?」

 

「僕たちの生まれた国です」

 

 

 …………長い、まだ終わらないのか……胃がキリキリしてきたぞ。

 

 

「……フォドラに来て4ヶ月というが、なぜフォドラの言葉を流暢に喋れるのだ?」

 

「えっ? うーん、わかりません」

 

 

 そういえば、なんでこの国の言葉を喋れるようになってるんだろう。

 文字も全く違うのに、わかるようになってるし、女神様が不便だと思ってそういう力をくれたのかな。

 

 その後も質問が続いたが「答えられません」「わかりません」がほとんどだった。

 

 

「ああ、わかった……君たちが自分の素性を一切話すつもりが無いのは十分にわかった。……これでは、とても入学させることなんてできんな」

 

 

 冷静さを保とうとしてるけど、セテスさんめちゃくちゃ怒ってるよね、これ。

 どうすりゃいいんだ……

 

 

「なら、ベレスも教師なんてしないわ」

 

「なにっ?」

 

 

 今まで黙っていたルーナがやっと口を開いた。

 まあ、俺といっしょでボロを出さないようにラズワルドに任せてただけなんだけど……

 

 

「あたしからも質問があるわ、なぜ急にベレスを教師にするの?」

 

「……盗賊の一件で教師が一人欠けたのは君たちも知っているな。それで、アロイスさんからの推薦で彼女が推され、大司教が承認されたのだ」

 

「そんなことは、知ってるわ。団長はあたしたちは素性も知れない三人組だけど、ベレスのために学級へ入れていいかって、大司教に承認をとったんでしょ?」

 

「……そうだな」

 

「それは、おかしくない? アンタが言ってるように素性がわからないやつを学校に入れるくらいなら、ベレスを教師にしないでしょ。なんで断らなかったの?」

 

「……それは……大司教は彼女をいたく気に入られたからだ……」

 

「気に入ったからなんて、理由にならないでしょ、どういうつもりなの!?」

 

「……」

 

 

 セテスさんも言葉に詰まっている。

 これセテスさんも大司教様から理由を聞かされてないのかな? 

 

 

「それなら、ベレスは教師にはならない、あたしたちも学校には入らない、それでいいんでしょ」

 

「……そういうわけにもいかんのだ、彼女が教師を務めるのは大司教たっての希望だ」

 

「じゃあ大司教ってのをここに連れてきて、理由を説明しなさいよっ!」

 

「……大司教は忙しい方だ、それは出来ない」

 

「だいたい、急にベレスを教師にするって話がおかしいのよ、今は三つの国の次期指導者が学校にいるんでしょ! なんで、そんな大事な時期に……元騎士団長とはいえ傭兵の娘をいきなり教師にするの? おかしいでしょ!」

 

 

 ひええ、ルーナもすんげえ怒ってる……もう止められんぞ。

 

 

「団長は、アンタたちが何か企んでるかもって思って、心配であたしたちをベレスにつけたのよ」

 

「ちょ! ルーナ!」

 

「あっ、バカッ!」

 

 

 それは言ったらダメなやつだろ。

 

 

「私は、君たちやジェラルトさんが、教団に何かよからぬことをしようとしているのか疑っているのだが……」

 

「父親が娘の心配してることの何が悪いっていうの!?」

 

「……ぐっ、それは」

 

 

「もし、ベレスに何かしでかそうっていうのなら、ただじゃおかないんだからね!!」

 

 

 おわった。

 ルーナは息を荒くしてセテスさんを睨み付けている。

 これ、入学どころか今すぐ追い出されるんじゃないのか? 

 まさか、異端審問とかで処刑とかも……

 

 

「……君たちの事情はわかった」

 

 

 俺とラズワルドが顔を青くして、待ってるとセテスさんが口を開いた。

 

 

「大司教の決定だ……私にはどうすることもできない。彼女が教師となることも、君たちが入学することもな」

 

「私は大司教……レアを信じている。今日はもう下がっていい」

 

 

 えーと。

 つまり、入学許可が降りたってことでいいのか? 

 

 

 ……俺は“漆黒のオーディン”、荘厳なる学舎で闇の力を学ぶことになった、闇の呪術士だ。

 もう既に学校に居づらいんだが……

 

 




セテスさんはなにも悪くないです

補足

幼なじみの王女
FE覚醒の子世代ユニット、ルキナのこと、ウードの従姉

敬語が話せないルーナ
暗夜王族支援会話でタメ口
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