ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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第26話『闇の幻影』

(角弓の節 五日)

 

 

 俺は“漆黒のオーディン”、この世界に潜む悪党どもに闇の裁きを下す、選ばれし闇の呪術士だ。

 

 

 今俺は、大修道院内にある傷病兵用の病室にいた。

 一昨日の戦いで重症を負ってしまい、数日間は安静にしておくように、医師であるマヌエラ先生から言われたのだ。

 ただ、負傷を負ったと同時に〈リザイア〉を使って自己回復していたのが良かったらしく、特に後遺症などの心配も無いらしい。

 

 しかし、昨日は病室にいろいろな人が訪ねてきて大変だった……

 最初にお見舞いに来た先生とラズワルド、ルーナからは凄く怒られた(先生は怒ってないけど)、「なぜあんなことした」「せめて剣を使え」「二度と無茶をするな」だの散々に言われた後に、ルーナが泣き出して……ルーナの奴、気は強いくせにすぐ泣くからな。

 そのあとは、金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)の連中やディミトリとドゥドゥーやアッシュ、アネット、メルセデス……フェルディナント、ドロテア、ペトラ、ジェラルト傭兵団の人たち……とにかくたくさんの人がお見舞いに来てくれた。

 リシテアから散々文句を言われたり、ハンネマン先生とリンハルトに体にいろいろされそうになったりもあったけど……いろんな人たちが心配して、俺のお見舞いに来てくれたのは悪くない気分だな。

 

 今日はこの時間みんな授業を受けているだろうし、お見舞い来る人はまだいない。

 

 しかし、何もせず安静にしているのも暇だな……紙があれば新しい必殺技や呪術、武具の名前でも考えてまとめるのに……

 

 そうだな、久しぶりに俺が悪の化身を倒し世界を救う物語でも考えてみるか……

 

 

 

 

 ──滅せよ! 傲慢な女神に連なる者どもを、未来永劫、人の世から葬り去るのだ! 

 

 ──そうはさせんぞ……! 暗き深淵の地の底を蠢く者の王よ……! この“漆黒のオーディン”が貴様を討ち……全てを終わらせてやる……! 

 

 ──現れたか、神竜と邪竜の血を宿せし者よ……貴様の血、我らの宿願のために残らず捧げてもらおう……! 

 

 

 

 

「オーディンさん、入りますわよ!」

 

 

 ……おっと、妄想もそろそろクライマックスといったところで、誰かが来たようだ……この声はフレンかな? 

 

 フレンと先生が病室の中に入ってきた、フレンは拐われる前と変わった様子はなく元気そうだ。

 

 

「よっ、フレン。元気そうで良かった」

 

「聞きましたわ、オーディンさん! わたくし、オーディンさんのおかげで助け出してもらえたのですわよね……今日はお礼とお見舞いにきましたのよ。本当にありがとうございます!」

 

「フッ……気にするな、貴様は俺の“闇の同胞”……志を同じくする仲間ではないか……」

 

「そうですわね……って、違いますわよっ! わたくしは光属性と何度言ったらわかってくださいますの!」

 

「光と闇は表裏一体……貴様と俺が“光の同胞”と同時に“闇の同胞”であることに、何も矛盾は無いのだ……」

 

「……なるほど……そういう考えもありますの……?」

 

「二人はいつもこんな会話していたの?」

 

 

 俺とフレンの会話に先生が驚いた表情をして聞いてきた。

 早朝の訓練所でエーデルガルトを交えた三人で会話したり、必殺技を考えていたこと話すと「仲が良いんだね」と頷いて聞いていた。

 フレンはエーデルガルトのことを話すと少しだけ暗い表情になったが、どうかしたのかな? 

 

 

「そんなことより、聞いてくださいますか? わたくし、金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)に入れてもらえることになりましたのよ!」

 

「何っ!? 本当か!」

 

「はい! 最初は、お兄様は人里離れた場所に身を隠すと仰っていましたけど……先生やオーディンさんたちに守ってもらえるほうが安心ですもの!」

 

 

 フレンはずっと士官学校に憧れていたからなあ……これは凄く嬉しいだろう。

 俺も自分のことのように嬉しいぞっ! 

 

 

「昨日は皆さんが歓迎会を開いて下さいましたのよ!」

 

「楽しかった」

 

「ええ~!? 俺抜きで楽しんだのかよっ! ひどくないか……」

 

「……皆さんは、無理をして心配させた罰だと仰っていましたけど……オーディンさんが命懸けでわたくしのことを助けてくださったご恩はけして忘れませんわ……何かご恩を返せることがあれば、仰って下さいね」

 

「もう無茶しないで、オーディン」

 

「わかったよ……フレン、先生」

 

「さあ、“純白のフレン”の活躍はこれからですわ! ……金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)の皆さん……運命を共にっ……!」

 

 

 

 ◇◇◇

(角弓の節 六日)

 

 

 

 マヌエラ先生の許可が出て病室生活も今日で終わり、また明日から授業に参加できるようになった。

 

 ここ数日安静にしてて体が鈍ったから剣でも振るか……いや温室の様子も気になるな……

 そんなことを考えていると、ラズワルドとルーナがやってきた。

 

 

「オーディン、怪我は治ったんでしょ? ちょっと来なさい」

 

「ルーナ、ラズワルド、どこに連れていく気だ……?」

 

「これからセテスさんのところに行くんだよ」

 

「えっ? セテスさんのところ……また誰かやらかしたのか……?」

 

「そうじゃないわよ……話したいことがあるだけよ」

 

 

 なんか、ルーナが怒ってるような……ラズワルドに聞いてみると「結構真剣な話だからさ」だと言っている。

 

 セテスさんの部屋に着くと、すぐに三人とも迎え入れてくれた。

 

 

「おお、君たちか。オーディン、すまなかった……このところ調査やら大司教の代行やらで忙しくてな、見舞いも行ってやれなかった」

 

「いえ、大丈夫です」

 

 

 セテスさんいつもどおりの様子だな……機嫌は良いみたいだし、俺たちに疑いの目を向けることも無くなっている。

 大司教様は現在、騎士団を率いて西方教会に査察に行っているらしい。

 

 

「……君たち、改めて礼を言う。おかげでフレンが無事に戻った。どれだけ感謝の言葉を並べても足りない。私にとって、君たちは大恩人だ」

 

「どういたしまして」

 

「感謝は受け取っておくわ……」

 

「それに、これさえあればフレンがどこにいるのかすぐに把握できる……オーディン、本当にありがとう」

 

 

 セテスさんは俺の作った呪術道具を発動させ、頬を緩めながら「むっ、今は温室にいるのか」なんて言っている……過保護なセテスさんはコレでフレンの位置をよく確認しているようだ。

 すまねえ、フレン! ……俺はとんでもない物をセテスさんに渡してしまったのかもしれない……

 

 

「私は立場上、これまで君たちには疑いの目を向けていた。しかし今は君たちを頼もしく思っている。どうだろうフレンのことを頼めないか?」

 

「フッ……この“漆黒のオーディン”にお任せあれ」

 

「フレンのことは僕たちが守りますよ」

 

「そうね……フレンを守ることについては異論は無いわ……友達になったし」

 

「……むっ、それ以外のことに何かあると言いたげだな……?」

 

 

 ルーナが不満気な言い方をしたことに引っ掛かったのか、セテスさんは聞き直す。

 

 

「前節の課題から帰ったときにはゴタゴタしてて話せなかったけど、今日は“英雄の遺産”について話にきたのよ」

 

「……“破裂の槍”の件は聞いている。マイクランが魔獣になったと……」

 

 

 ルーナたちが話しにきたのはその件か……俺はハンネマン先生から事前に説明を受けていたから動揺は少なかったけど、他の生徒たちはみんな動揺していたからな。

 

 

「ベレスが持っている、あの“天帝の剣”に危険は無いの? あんな危ない物を持たせて……前にベレスに何かしでかそうっていうなら、ただじゃおかないって言ったわよね……」

 

「君たちの危惧することも尤もな話だ。魔獣化の危険性は一致する紋章を持っていれば、限界を越えて使用し続けない限りその可能性は低いが……“天帝の剣”は特別なのだ……」

 

「解放王ネメシスが力に溺れて、自ら邪に染まったって話ですよね」

 

 

 ラズワルドとルーナはあまり知らない様子なので、補足で解放王ネメシスについて説明する。

 “解放王”とは、ネメシスがかつてフォドラが邪神に襲われた際に、主より“天帝の剣”を授かり、その剣で邪神を退けフォドラを救ったときにつけられたあだ名で、その後はさっき言ったとおり邪心にとらわれて聖者セイロスに討ち取られた。

 

 

「よく知っているな、オーディン……ベレスがそうなるとは思わないが、本来ならもっと資質を見極め、審査して預けるべき物だった。大司教には、そう具申したがな……」

 

「また大司教様の一存ってワケね……」

 

「私は大司教の仕事全般を補佐している。光栄なことに大司教からも信頼を賜り、多くの裁量を私に委ねてもらっている。また、大司教自ら決済するべき内容も事前に相談されることが多い。……ところがだ……ベレスを教師にした件と“天帝の剣”を使わせる件は寝耳に水の話だった……正直、戸惑っているのだよ」

 

 

 セテスさんは他の大修道院の偉い人たちより、大司教様からの信頼が厚いと聞いている。

 そのセテスさんにも、大司教様はベレスについてのことは秘密にしているというわけか……

 やはり何かきな臭いぞ……ロナート卿の「大司教が民衆を欺いている」という言葉とエーデルガルトの「人が人ではないものに支配されている」「その者たちが自分たちに都合の良い世界を作ろうとしている」と言っていたことが嫌でも思い浮かぶ……

 

 

「あんたが本当に何も知らないということは理解できたし……信じるわ。でも、正直言って大司教については信じることはできないわ」

 

「今はそれで良い……ただ、これだけは言っておきたい。レアはベレスに悪意を持って接しているのではない……大きな期待を寄せているだけなのだ……私はそう信じている」

 

 

 セテスさんは自分に言い聞かせるように言っている。

 結局は、大司教がどういう意図でベレスを扱っているのか話をしてくれるまでわからないだろうな。

 

 ついでにセテスさんにフレンを誘拐した連中についての考えを話しておこう。

 

 

「そういえば、フレンを誘拐した連中について何かわかったことはありますか? 俺は帝国出身者の部隊だと思ったんですけど……」

 

「それは、現在調査中だが……なぜ帝国の者と思うのだ? シャミアも君がそう言っていたと報告してきたが……」

 

「武器の形とか剣術とか見て、思ったんですよ……同じように訓練された正規兵じゃないかと」

 

「オーディン、僕たちフォドラに来てまだ半年くらいだよね……本当にそんなことわかるの?」

 

「またカッコつけて適当なこと言ってるんじゃないの?」

 

「いやいや、昨日お見舞いに来てくれたオグマさんたちにも聞いたけど『あれは帝国兵だ』って言ってたぜ!」

 

「あの人たちが言うなら……信用できそうね」

 

 

 もともと剣術についてはよく見ているし、フォドラに来てからは後衛で敵の動きを観察する機会が増えたから、構えや振り方、足捌きなんかでわかるようになった。

 武具についても、その辺の奴よりは詳しい自信はある。

 

 

「死神騎士については、この一件から姿を消した仮面の騎士……イエリッツァであるとみて調査を進めているが……奴はとある帝国貴族からの推薦で教師になった身だ。帝国の反教会組織が動いているのかもしれんな……」

 

「えっ? イエリッツァ先生が死神騎士!?」

 

 

 話によると、フレン救出後からイエリッツァ先生は行方不明になっているらしい。

 聖廰の事件の後も重症を負ってしばらく現れなかったし、そう考えるとおかしくないのか……全く気づかなかった。

 お見舞いに来てくれたメルセデスは普段と変わった様子は見られなかったけど、今度聞いてみるか……

 

 

「情報提供をありがとう。やはり君たちの働きは評価に値する……今後もよろしく頼む」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 久しぶりに大聖堂に来てみた。

 今は大司教様は出掛けているし、鉢合わせる心配もないから色々と見て回れる。

 もともとこういう雰囲気の場所は嫌いではない……血が騒ぐというか、真の力が解放されそうになるというか……とにかく場所自体に凄いパワーが込められていそうで、とにかく血が騒ぐ……! 

 

 

 大聖堂には修道士や巡礼者、生徒も少しいるが……あれはイグナーツとイングリットかな、何してるんだ? 

 

 

「こ、これは……騎士というよりも……じゃ、邪神……?」

 

「ああ……ボクの絵が……」

 

 

 どうやらイグナーツが描いている絵をイングリットが見ていたようだ。

 珍しい組み合わせだけど、この前の課題で共闘したときに仲良くなったのかな? 

 知らなかったけどイグナーツは絵を描くことが趣味らしく、かなり上手いらしい。

 

「よう、二人とも絵でも描いてるのか? 俺にも見せてくれよ」

 

 

 二人が見ていた紙を覗き込んで見てみる。

 …………。

 

 

「あっ、オーディンくん……」

 

「これは、その……私のせいで……想像と違うものになってしまって……」

 

「…………」

 

 

 ガクガクガクガクガクガクガクガク

 

 

「えっ? オーディン、どうしたのですか?」

 

「オーディンくん、ふ、震えすぎですよ……」

 

 

 震えが止まらない。

 イグナーツの描いた絵はまるでこの世の全ての闇を表したような女性の絵だ……

 この絵は……いや、これは絵ではない……芸術だ!! 

 この芸術が俺の脳に新たなる呪術のイメージを喚起させる!! 

 

 

「イグナーツ! お前は天才だ!! この絵は借りていくぞっ!!」

 

 

 イグナーツから絵を借りて走り出す。

 この呪術を早く実現せねばっ!! 

 大聖堂の裏手、人通りの少ない場所までやってきた。

 目の前にあるのは確か『女神の塔』って名前だったかな、女神再誕の儀で使われる神聖な場所らしい。

 

 早速、俺の呪術を実行してみよう。

 

 

「はああああぁぁぁぁ!!! 出でよこの絵に宿りし闇の戦乙女よっ! 我が前にその姿を見せるのだ!!」

 

 

 まずは絵を基に、幻影の呪術で女性を写し出す……なかなか恐怖心を煽る美女だな……もうちょっと怒った表情にして、闇のオーラを付け加えるか……。

 

 

「お、オーディン……何をしてるのですかっ?」

 

「あわわ、ボクの絵が……幻影ですか……これ……?」

 

 

 イングリットとイグナーツはついてきてしまったようだ。

 二人とも驚き戸惑っているようだな……

 

 

「見ての通りだ。お前の描いたこの闇の戦乙女を現実の世に生み出す……」

 

「絵を現実に……そんなことが可能なのですか……?」

 

「そ、それは凄いことですが……まずいですよ! こんなところで、そんなことすれば……!」

 

「まあ、見ていろ……!」

 

 

 改めて魔力を込め始める……できるはずだ……いいや、できぬはずがない! なぜなら俺はフォドラ大陸随一の呪術士! 漆黒の……オーディンだからだっ!! 

 

 

「はあああぁぁぁぁ!!! 常闇の堕天使よ……瑞光の全能者よ……我に力を与えたまえっ! 出でよ戦乙女っ! 我が前に姿を見せるのだっ!!」

 

 

 魔力を込めるたびに『闇の戦乙女』の幻影は大きくなっていく……実体化させようと思っていたのに、なんか違うな……

 大きくなった幻影はすでに『女神の塔』に匹敵する大きさだ……裾が短いうえに下から見上げているから下着が丸見えだな。

 

 

「セテス殿、こちらですっ! あの呪術士が、女神の塔の前で……じゃ、邪神を……!」

 

「なんと冒涜的なことを……! なっ!? 下着が見え……なんと破廉恥なっ!?」

 

 

 しまった! 騒ぎを聞きつけた司祭たちがセテスさんを連れてきたようだ。

 セテスさんも幻影を見て言葉を失っている。

 

 あわわ、まずいですよっ! 

 

 

 

「……あれはっ、激怒したセイロス!? いや、違うか……コラーッ! 君たち、なにをやっているんだ!!」

 

 

 このあと無茶苦茶説教された。(イグナーツとイングリットも)

 

 

 

 




上げた評価を即座に地に落としていくスタイル


邪神のような絵
イグナーツ・イングリット支援

他人の支援会話に混ざっていくスタイル



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