ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン 作:すすすのすー
(角弓の節 十四日)
「あれっ? 珍しいね、オーディン。休日に訓練所にいるなんて」
「フン、それはこちらの台詞だ、“蒼穹のラズワルド”。休みの日にナンパもせずに訓練所にくるなんて、どういう風の吹き回しだ?」
「そのあだ名、定着させようとするのやめてよ……恥ずかしいんだけど」
今日はとある出来事のおかげで、士官学校の女子生徒たちをナンパできないのですることがなくなり、暇をもて余して訓練所に来てみたら、オーディンが休日では珍しく訓練をしていた。
オーディンはここ一週間は平日も授業以外はずっと天幕に引きこもって「新魔法の習得だ!」なんて言っていたから、今日もそうしていると思っていたのだけど。
「今日は女子生徒だけでフレンの歓迎会だとさ、中庭を貸し切っているみたいだよ」
「ああ、ヒルダたちがなにかやってたやつか。途中入学のフレンに女子たちに馴染んでもらいたいって……」
「ヒルダは言い出しっぺだけど、ほとんど何もしていなかったね。机や椅子を集めたり、準備をしたのは男子たちだよ」
「どうせ、その男子たちの一人だったんだろ? 準備が終わったから追い出されて……良い様に使われてるなぁ」
「僕は彼女たちの笑顔が見れたから満足さ……それに、歓迎会なら
「……俺、抜きでな……俺のおかげでフレンをすぐ見つけれたのに……なぜだ……」
オーディンは歓迎会に参加出来なかったことを結構根に持っているみたいだ。
無茶な真似をして大怪我をしたんだから自業自得なんだけどね。
あの戦闘後にオーディンが気絶したときは大変だった。
ルーナとリシテアは泣き出すし、マリアンヌはなぜかずっと謝ってるし、落ち着くまで時間がかかった。
ルーナは戦闘中はどんなことがあっても気丈に振る舞うけど、本来はよく泣く娘だからね。
「でも楽しそうだよなぁ、歓迎会。俺だけ特別に参加できないかな……?」
「女子だけでやることにこだわってたからね……特別に参加できるなら僕だって凄く参加したいさ……」
女子だけの歓迎会に特別参加か……凄い楽しそうだ。
ちなみにヒルダは先生や男子たちに頼み込んで計画や準備を手伝ってもらっていた。
ローレンツやフェルディナントが資金まで出してくれたらしく、ちょっとした宴会になるようだ。
「そういえば、もう一人の拐われてた生徒……モニカだっけ? その娘の歓迎会も兼ねてるのか」
「いや、彼女は誘ってたらしいけど来ないみたいだよ……あまり体調が良くないって」
実はこの前の誘拐事件の時、フレンの他にもう一人去年行方不明になっていた女子生徒が見つかっていた……その女子生徒がモニカだ。
モニカは昨年所属していた
一年間拐われていたわりには元気そうだったけど、今日は体調を崩しているらしい。
「フッ、ここに来たついでだ……久しぶりに剣を交えるか……」
「言ったね。君が魔法にかまけている間にどれだけ差が出来てるか教えてあげるよ」
オーディンの誘いに乗り一緒に訓練することにした。
◇◇◇
訓練用の剣で斬りかかってくるオーディンの攻撃を受け止め、その剣を弾くように斬り返す。
オーディンの剣術はかなり我流の混ざったイーリス王家の剣術だ。
イーリス王家の剣術は大振りなファルシオンや軽くて細いレイピア等の様々な種類の剣を使うことを前提としており、両手と片手や左右の握りを問わずあらゆる構えや体勢から攻撃をする訓練をしている。
オーディンはこの剣術に加え、腕を前に出したり体を傾けたり、一見無駄に見える動きや本当に無駄な動きを織り混ぜて、あえて隙を見せ攻撃させ戦いを制御しようとする。
まあ、僕には通じないけど。
オーディン曰く「カッコいいポーズ」をした瞬間を狙い、剣を叩き込む。
付き合いが長いと、ポーズの種類が判ってくるので完全な隙になっているのだ。
「また、僕の勝ちだね」
「
「魔法ばかり使ってるから、剣の腕が落ちたんだよ。この分だと次の剣術武闘大会じゃ、フェリクスやペトラあたりに負けちゃうんじゃない?」
「ぐっ……あいつらはもともと強いけど、最近更に強くなってるらしいからな」
実際には、腕が落ちたのではなく他の生徒たちに追い抜かれそうになっていると言ったほうがいいかな。
最近、士官学校にいる生徒たちの成長は著しい……僕も前節の斧術武闘大会ではエーデルガルトに負けてしまったし、最も得意とする剣術では誰にも負けたくはないものだ。
オーディンの場合は特に深刻だろう、前衛の戦士職と後衛の魔法職は明らかに鍛え方が変わるからね。
「実際に武器の制限無しで戦うとどうなるだろうなって、思うことがよくあるな。槍を持ったディミトリや斧を使ったエーデルガルトに、俺の剣で……今は勝てるだろうけど、この先俺を越えてくる……奴らにはそんな力があるかもしれない」
「あの二人は腕力だけなら、僕たちよりもずっと強いからね……あれが紋章の力ってやつかな」
斧術武闘大会の決勝戦では、エーデルガルトとドゥドゥーがぶつかり合ってドゥドゥーが力負けしていたのは本当に驚いた。
前の世界でもみたことのないほどの大男のドゥドゥーを小柄なエーデルガルトが押し返していたのは、異様な光景だったからね。
「紋章なんか持って無くても強い奴は強いだろ。ペトラにカスパル、ドゥドゥー、ラファエル、それにレオニーも」
「……それもそうだね」
そういえば、その前の月の槍術武闘大会ではレオニーが紋章持ちのローレンツやイングリットを破って、決勝でもディミトリ相手に奮闘していたね。
圧倒的な腕力を持つディミトリ相手に気合と根性で挑んだレオニーは観客を熱狂させるほどの名勝負を演じた。
「来月の剣術武闘大会も優勝してえなぁ……でも、せっかく〈ダークメイジ〉になれたんだよな……」
「君は、一旦魔法は諦めて剣に集中したほうがいいんじゃない? そのあと〈エピタフ〉を目指せば……」
最上級職〈エピタフ〉は剣と魔法が使えるオーディンにピッタリの職業だ。
ただ、ずっと魔法職だった者が〈エピタフ〉になると筋力不足から、剣では大成しないと言われているので上級職〈ソードマスター〉を経由して、就くことが推奨されている。
「しかしだな……今、俺の中では闇魔法がキテるんだ……もう少しで封印されし真の力が解放しそうなのだ……」
「『封印されし力』ね……その冗談は嫌いだよ。洒落にならないから……」
「……うっ、それは悪かったな。上級職に剣も魔法も使える職があればな~」
□□□
昼過ぎの中庭は女子生徒たちで溢れていた。
机の上には数々の料理や飲み物、お菓子が並べられ、女子たちの話声や笑い声で喧騒としている。
「……本当……よく、これだけ集めたわね、ヒルダ」
「あたしもビックリしちゃったよー。まさかこんなに集まるなんて」
士官学校には40人くらい女子生徒がいるが、ほぼ全員が来ているだろう。
最近は物騒な事件も多かったし、みんな明るい話題で盛り上がりたいのかもしれない。
「途中でまとめ役を先生に変わってもらって良かったー。あたしがやってたら、こんなに豪華にならなかったもん」
「ヒルダが男手を集めてくれたおかげで、準備も楽ができたし、アンタにしては上手くやれたんじゃないの?」
「ふふふ……ルーナちゃんもありがとね! ……その、こんな……大きな獲物を獲って来てくれるなんて」
「そのわりにはみんな手を付けてないわね~美味しいのに……熊肉」
宴会の前にレオニーやペトラたち狩りが得意な生徒と鹿、兎、猪、今目の前にある熊などを狩ってきた。
ちなみに熊を狩ったのはあたしだ。
「熊はさすがに獣臭くて……食べれない娘も多いよ。ルーナちゃんって、もしかしてパルミラ人じゃないよね……?」
「パルミラって同盟にある東の国よね? 熊と関係あるの?」
熊くらい狩りをする人がいれば、どの国でも食べるだろうし……
ヒルダはなぜか言いにくそうに口を開く。
「……熊を剣で狩っちゃうなんて、その……蛮族感が……」
「ハァ!? こんな可愛い女の子に対して蛮族はひどいわよ、ヒルダ!」
「ごめんごめん! そうだね、ルーナちゃんは可愛い女の子ですよー!」
そんな話をヒルダとしていると、フレンやレオニー、リシテア、マリアンヌが集まってきた。
「ヒルダさん、今日はわたくしのためにこのような会を開いていただきありがとうごさいます。わたくし、他の学級の皆様とも仲良くなりたいと思っていましたので嬉しいですわ!」
フレンは他の学級の生徒たちと楽しくお喋りをしてきたようだ。
フレンの兄であるセテスさんも今回の企画は大喜びで了承してくれたらしい。
セテスさんは「とくに女子だけでというのが実に素晴らしい、ぜひフレンを頼むぞ」なんて先生に言っていたみたいだ。
まあ、気になってはいるのだろう……中庭の入り口からこっそりと覗いている緑髪が見えているのだが……
「ルーナさんとレオニーさんもありがとうございます。このために、わざわざ狩りに出ていただいたのでしょう? さっき、鹿や兎のお肉をご馳走になりましたわ!」
「どういたしまして、フレン。熊は食べたかしら?」
「熊のお肉は……すみません、わたくしには獣臭さが強すぎて……食べれませんでしたわ……」
「ほら、ルーナちゃん普通の女の子はあんなの食べれないんだって! マリアンヌちゃんもそう思うよねー?」
「えっ? 私は……ごめんなさい、私はもともと動物の肉が苦手なので……」
ぐぬぬ……フレンもマリアンヌも熊肉は苦手らしい……そういえば、ラズワルドも獣臭い肉は苦手なので、熊を運び込んでいるのをみた時に顔をひきつらせていた。
「えー、わたしは美味しいと思ったんだけど……」
「レオニーはどう考えても普通の女の子には当てはまらないと思うんですが……」
「なんだとー! リシテア、今のは聞き捨てならないね。わたしはどこから見ても女だろ!」
「熊を平気で解体して血塗れで『いい仕事した』なんて言ってる人は、普通の女の子じゃありません!」
熊の解体は一人でやるのは時間がかかるので、レオニーやペトラに手伝ってもらった。
どうせ、今日の料理は余っても夕食で誰かが食べるだろうし、熊肉はさっきから先生が一人でずっと食べてるから多分無くなるだろう。
「そういえばマリアンヌちゃん……最近、変わった首飾りしてるけど、前からそんなの持ってたの?」
ヒルダがマリアンヌの首飾りに目をつけ聞いている。
首飾りは白い石を削った質素なもので、最近のマリアンヌはコレを手で触っていたり、握り締めて祈っていたりしているのを見たことがある。
「これは……その……オーディンさんにいただいた物です。『不幸を跳ねかえし、幸運を招き寄せる』お守りだそうです……」
「ええー!? オーディンくんから、マリアンヌちゃんに? いつもらったの……? やるじゃん、オーディンくん!」
「まあ! 素敵ですわ! わたくしには何もくださらなかったのに……もしかしてマリアンヌさんのような方がオーディンさんの好みの女性なのでしょうか!?」
ヒルダとフレンが興奮して聞いている。
やっぱり女の子が一番盛り上がる話題は恋愛話よね……それが、オーディンの話題っていうのがなんとなく腹が立つけど。
「……マリアンヌ、アイツのインチキ呪術なんか信じないほうが良いわよ。どうせ適当なこと言ってるだけなんだから……」
「……えっ? そうなんですか……オーディンさんの師匠から教わった呪術をかけたらしいのですが……」
「ああ、ごめん。訂正するわ……だったら良く効きそうね。アイツの師匠の呪術は本物だから」
オーディンがマリアンヌに渡したお守りはちゃんとした物だったようだ。
お守りといえば怒ると口調が豹変する幼馴染みを思い出すから、彼女のお母さんから教わったのだろう。
リシテアが目を見開いて驚いている。
「装飾品に魔法を付与する技術なんて、教会の秘匿技術ものの話なんですが……本当に効果が有るのならとんでもなく高価な物ですよ、それ……」
「……えっ、そうなんですか? ……オーディンさんは簡単に作れるから、
「ええー!? 本当? あたし可愛いやつ作ってもらおう!」
「ふふっ……楽しみですわね……血が騒ぎますわっ!」
「か、簡単に作れるんですか……本当にオーディンは謎の技術を使い過ぎですよ……人探しに呪い、付与魔法まで……」
ヒルダとフレンが楽しそうに話をしている横でリシテアは頭を抱えてぶつぶつとぼやいている。
アイツが凄いんじゃなくて教えた人が凄いだけと思うんだけどねぇ……
「お守りなら、わたしは持ってるからいいかな……」
「レオニーが昔団長に貰った鎧の備品でしょ、それ。そんな小汚ないのじゃなくて可愛いの貰えばよかったのに」
「小汚ないぃ!? ルーナぁ、あんたって本当に情緒ってやつがないね!」
「……うっ、年季が入ってるのは事実でしょ……また団長に会えたんだから新しいの貰いなさいよ」
「子どもの頃に、師匠に作って貰ったやつだから良いんだよ。あの頃の教えを忘れない……初志貫徹ってやつだよ!」
まあ、ジェラルト団長に新しい物をねだっても、可愛いのをくれるかはわからないんだけどね。
いつもお金持ってないし、なんか古臭いものや武骨なものばかり好きそうだから、また鎧の備品とかで作りそうな気がする。
「オーディンくんって意外にやるねぇ……この前なんかメルセデスちゃんのお部屋に呼ばれてたのを見たよ!『ここでは言えないから~部屋に来て~』って……何話したんだろう……気になるー!」
「まあ! 乙女心が躍動しますわね!」
「そういえばフレンちゃんもオーディンくんと仲良いよね、口調も真似してるし……どうやって仲良くなったの?」
「ふふっ……わたくしですか? わたくしとオーディンさんとの関係は秘密の光のヴェールに包まれていましてよ……」
「ええー? 良いじゃない、教えてよー!」
ヒルダの話にフレンが頬を赤らめ満更でも無さそうに答えている。
いつの間に仲良くなったのかは知らないけど……フレンがオーディン化してきているのはなんか嫌ね。
職業や成長率についての話と金鹿女子withフレンの話
フレンはゲーム本編に女子との絡みが少ないので書いてみました
オーディンのお守り
幸運+2必殺回避+10