ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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第31話『鷲獅子戦前』

 第31話『鷲獅子戦前』

(飛竜の節 十三日)

 

 俺は“漆黒のオーディン”、秘密の闇のヴェールに包まれた国からやってきた選ばれし闇の戦士だ。

 

 

「よしっ、みんな聞いてくれ鷲獅子(じゅじし)戦の詳細がさっき決まった」

 

 

 先生とクロードが教壇に立ち司会役を勤める。

 二人はさっき三学級の教師や生徒、セイロス騎士団の関係者たちと鷲獅子戦の打ち合わせを行ってきたところだ。

 

 

「まずはその件で、良い知らせと悪い知らせがある……どっちから聞きたい?」

 

「えー? じゃあ、良い知らせからー!」

 

「もったいぶらずに話したまえクロード。鷲獅子戦まであと半月……悠長に使っている時間は少しも無いのだぞ……!」

 

 

 こういう会議で中心になって発言をする生徒はヒルダやローレンツだ。

 ヒルダは戦場で指揮官として力を発揮するタイプではないが、こういうみんなで集まる場では意見をよく言う。

 

 

「そうかい……じゃあ、まず良い知らせからだ。同盟側で参加するセイロス傭兵団枠にジェラルト傭兵団を引っ張ってこれたぞ」

 

「師匠の仲間たちか! これなら千人力だな!」

 

「やったわね! これなら、あたしたちも動きやすいわ」

 

 

 レオニーとルーナが大喜びして、他の生徒たちも嬉しそうだ。

 かつてジェラルトさんが率いたジェラルト傭兵団は金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)の課題にもよく参加してくれているからみんなとも馴染みが深いし、セイロス教団の傭兵たちの中でも圧倒的に強い。

 精鋭過ぎるので不平等になることとジェラルトさんが別件の任務で連れていく可能性の両方があったので、参加できないこともあると考えていたのだが、連れていくことができるようで良かった。

 

 

「まあその駆け引きで、黒鷲の学級(アドラークラッセ)にセイロス魔法隊を持っていかれちまったが……」

 

「私たちの金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)にはセイロス弓兵隊、青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)にはセイロス重装隊が配備される」

 

「弓の扱いに長けた人が多い僕らには良いんじゃないかな」

 

 

 鷲獅子戦は()()学校としての行事なので、前回の学級模擬戦とは規模が大きく違う。

 国軍の大演習などに比べれば小さいが、セイロス教団の人員300名に加え帝国軍、王国軍、同盟軍からの人員300名も参加し各軍600名ほどで三軍合わせて1800名以上、監視役のセイロス騎士団や見物の貴族たちを含むと更に大きなものとなる。

 実際の戦争ではこの数倍数十倍の人員が動員されるが、貴族の子息たちでもこの規模の戦闘や演習をするのは初めての者が多いだろう。

 

 各軍から派遣される兵士の兵種などはほぼ決められているので、セイロス教団側の戦力で特色を付ける。

 さっきの打ち合わせで級長たちは優秀な傭兵団、魔法兵や弓兵などを取り合った……すでに鷲獅子戦の前哨戦をおこなってきたのだ。

 

 

「そ、それで悪い知らせとは一体なんですか……クロードくん」

 

「わたくしも気になりますわ。その悪い知らせというものが……」

 

 

 イグナーツとフレンがクロード聞いた。

 

 

「悪い知らせっていうのは、俺たちの初期配置だ。河川の北側に布陣することになった」

 

「オデ、よくわかんねえけど、それの何が(わり)いんだあ?」

 

 

 鷲獅子戦の詳しいことは知らないが配置についてはあらかじめ決まっており、年ごとにローテーションしているらしい。

 

 

「……なんと、今まで調べたことによると、この初期配置での勝率は一割を切っているんだ」

 

「えっ!? なんでそんなことに……不平等じゃないですか!」

 

 

 リシテアが驚きの声を上げているが、俺も驚いた。

 黒板に張り出されている地図を見ても、そんなに不利な配置とは思えない……中央の丘を取る争いに勝てれば十分勝機はありそうに見える。

 

 

「実はこの中央の丘は慣例で西側の軍が布陣することになっているんだ……今回は黒鷲の学級(アドラークラッセ)だな」

 

 

 クロードがさらに詳しい説明を始めた。

 なんでも数十年前は中央の丘に最初から布陣はされていなかったのだけど、中央で毎年熾烈な争いが起きてしまうがために死者が何人も出てしまい、外交問題にまで発展してしまうことがあったらしい。

 それを踏まえて、その次の年から西側の軍が中央の丘に布陣する権利を得て、他の二つの軍が奪いに行く形となっているそうだ。

 ちなみに西側初期配置の場合、六割を越える勝率があるらしい。

 

 

「一応交渉はしてみたんだけと、皇女様はとりつく島もなかったよ」

 

「決まってしまったことは仕方がない。このことを踏まえて作戦を考えよう」

 

「まだ負けると決まったわけじゃない……こっちには先生もいるし、不利な配置から戦うってのも面白いだろ?」

 

 

 先生とクロードの言葉でみんな前向きに作戦を考え始めた。

 

 

「やっぱり、なんといっても中央の丘の奪取だな。ここを落とせなきゃ話にならない……弓砲台まであるしな、誰が配置されるか……」

 

「オーディン、黒鷲の学級(アドラークラッセ)で弓の扱いが上手い生徒はわかる?」

 

「……フッ、もちろんだ」

 

 

 なぜなら、俺は黒鷲の学級(アドラークラッセ)に在籍していたこともあるからな! 

 弓といえばペトラかな……それと、あと二人ほど上手い生徒がいるのでその三人の名前を挙げる。

 

 

「……あ、ベルナデッタさんは?」

 

「マリアンヌちゃん、ほんとだ! ベルナデッタちゃんはー? あの娘も弓が上手かったよー!」

 

 

 ……ベルナデッタも弓使いだったのか、俺との入れ違いでの移籍だから知らなかった。

 アイツが相手なら有効な作戦が立てれそうだな。

 

 

「先生、クロード。ベルナデッタが相手なら、この“狂気の天才”策士オーディンに良い作戦が有るぞ……」

 

「……悪い予感がするんだが、言ってみろ」

 

「……幻影の炎で中央の丘を焼き尽くすのだ! そうなれば奴は恐怖に怯え戦くだろう!」

 

 

 まだ、ベルナデッタは俺に怯えているらしい。

 部屋を幻影の炎で燃やされた件で、一時期は料理の火を見るのも怖がっていたそうだ。

 相手の弱点を攻める……我ながら見事な策だな……

 

 あれっ? なんかみんなの空気が変わったような……? 

 

 

「オーディン! アンタって本当サイテーねっ! アンタを本物の炎で焼いてやるわよっ!?」

 

「トラウマにつけこんで策を考えるなんて……人の所業じゃありませんよ」

 

「なんで、そんなひどいことしようとするのー! 見損なったよ、オーディンくん!」

 

「……その、さすがにあんまりだと思います……オーディンさん」

 

「だめだこりゃ」

 

「ま!」

 

 

 また、女子から集中放火を浴びたっ! 今度はちゃんと考えた作戦を言っただけなのに……解せぬ。

 

 

 

 ◆◆◆

(飛竜の節 二十一日)

 

 

「鷲獅子戦の準備で忙しいところ呼び出してすまないな、ベレス、オーディン」

 

「いえ、大丈夫です。鷲獅子戦での闇魔法の使用の件ですよね」

 

 

 俺と先生は今、セテスさんの部屋に来ていた。

 要件は新たに開発した、闇魔法の使用の件だろう。

 

 

「先日の盗賊討伐の出撃では、君の闇魔法使用による死者は出なかったらしいな」

 

「ええ、むしろ〈ファイアー〉や〈トロン〉よりも魔力の制御はしやすいですね……今の俺が〈ダークメイジ〉だからかもしれないですが……」

 

 

 数日前に出撃した盗賊討伐の依頼で実験的に、俺の〈闇魔法〉を使用してみた。

 鷲獅子戦では死者が出るほど強力な魔法や制御ができない魔法の使用は許可されないので、新しく開発されたばかりのうえ一度も実戦で使ったことのない俺の闇魔法はどうしても実験する必要性があったのだ。

 俺の闇魔法を食らった盗賊たちは運が悪いが魔法の練習台になってもらった……いや、普通は盗賊は武器で斬り殺されたり魔法で焼き殺されるので、気を失っただけだから逆に運が良かったのか。

 

 

「魔法の専門家としてハンネマンさん、医療の専門家としてマヌエラの許可も出た……君の闇魔法、鷲獅子戦での使用を許可する」

 

「よっしゃあ! ありがとうございます、セテスさん!」

 

「よかったね、オーディン」

 

 

 これで〈ダークメイジ〉として活躍できるぞ! 許可されなかった場合は〈メイジ〉に戻るつもりだった。

 ハンネマン先生やマヌエラ先生に盗賊討伐を見に来てもらってよかったな。

 ハンネマン先生には紋章の研究への更なる協力と闇魔法の詳細について教えること、マヌエラ先生にはエーデルガルトを盗賊討伐に同行させることを条件にされ、こちらの手の内を晒すこととなったが結果的に良かったと言えるだろう。

 

 

「た・だ・し! 君の作った闇魔法はまだ未知数のことと多い。何か違和感を感じたときはすぐに使用を止めること、それが条件の一つだ」

 

「はい、わかりました」

 

「……それと、闇魔法についての研究は現在の教会ではあまり進んではいない……闇魔法について研究していた者が変死したり行方不明になることが多くてな……」

 

 

 えっ? 何それ怖い……

 書庫に闇魔法についての書物が少ないのはそういう理由なのかもしれない……あるいは研究すると危険が降りかかる可能性があるから別の場所に保管しているのかも……

 

 

「……君ほどの腕を持つ者が遅れをとることはそうそう無いだろうが十分に注意して行動してくれ」

 

 

 やっぱり、剣もある程度使えて身軽に動ける〈トリックスター〉になるのを急いだほうが良いかもしれない……あの兵種は〈盗賊〉の資格も必要なので鷲獅子戦の後になるが……

 

 あと、闇魔法をこっそりフレンにも教えようと思っていたけど、これも考え直したほうが良さそうだ……バレたらセデスさんにめちゃくちゃ怒られるだろうし……

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 今日も鷲獅子戦の作戦会議だ。

 作戦の大まかな方針はほとんど決まり細かい戦術などを決めていたところである。

 

 

「鷲獅子戦の作戦についても大分決まったな……」

 

「そうね、あと重要なことは……ルーナ、〈ペガサスナイト〉行けそう?」

 

「…………」

 

 

 俺が〈ダークメイジ〉で出撃することが決まったので、鷲獅子戦の兵種が決まっていないのはルーナだけだった。

 ルーナが単に〈ペガサスナイト〉をやりたがらないだけなのだが……

 

 

「ルーナ……〈ペガサスナイト〉になれるのは貴女とフレンだけ……フレンはまだ天馬兵団を率いることができるほど指揮能力は高くないの」

 

「空を飛べる士官がいるのといないのでは大分違うんだ……俺が〈ドラゴンナイト〉になれてりゃよかったんだけどな」

 

 

 先生とクロードがルーナを必死に説得している。

 

 飛行兵の偵察能力と伝令は実際の戦場でも極めて有効な価値を持つ。

 広い戦場で広範囲を素早く移動できるので強襲や味方の援護もしやすいし、空から飛び方や手旗信号などで指揮官の命令や敵味方の情報を素早く伝えることができる。

 直接伝えに行く伝令役としても役に立つしな。

 

 ……困ったことに金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)ではこの〈ペガサスナイト〉になっている生徒がいなかったのだ。

 クロードみたいに〈ドラゴンナイト〉になる準備をしていた生徒はいたのだが……鷲獅子戦に間に合わないようだから、急遽飛行術が才能開花し得意になっていたルーナに〈ペガサスナイト〉の資格を取ってもらったらしい。

 

 

「あ、あたしは地に足付けて戦いたいの……」

 

黒鷲の学級(アドラークラッセ)には二人、青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)には三人も〈ペガサスナイト〉がいる。金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)だけ飛べる士官がいないのは凄く不利……」

 

「この前の盗賊討伐の時は問題なく戦えていただろ? 今回の鷲獅子戦だけだと思って……頼むぜ……」

 

 

 空からの情報伝達については既に()()()()を立ててあるのでいいのだが、先生とクロードは空からの情報収集はかなり重要視しているので諦める様子はない。

 フレンは便利な白魔法〈レスキュー〉を使えるので〈プリースト〉にしておきたいのだろうしな。

 

 クロードから俺とラズワルドに対して視線を感じる……ルーナが〈ペガサスナイト〉をやりたがらない理由を知っている、俺たちが説得するしかないか……

 

 

「ルーナ……君が〈ペガサスナイト〉になりたくない理由は知っているよ。……ここには君と君のお母さん比べる人はいないんだ」

 

「そうだぜ……みんな、貴様の真の実力に期待しているんだ。他の学級の天馬騎士たちには格の違いを見せつけてほしい」

 

「はあ……わかったわ……勝つためだもんね。みんな、つまんない意地はってごめん……」

 

 ルーナは、天才天馬騎士と謳われたルーナのお母さんと比べられるのが嫌で天馬騎士にはならなかった。

 この世界ではルーナのお母さんを知る人はいないので比べられることもなかったのに……

 

 だが、これで最後の問題は解決したな! 

 

 鷲獅子戦まであと数日……この行事、ほとんどの生徒にとっての学校一番の思い出になるらしいしな……かつてないほどに血が騒いできたぞっ……! 

 

 

 ◆◆◆

(飛竜の節 二十五日)

 

 

 グロンダーズ平原へ向けて数日、ガルグ=マク大修道院を出た士官学校生一向は同盟と帝国の境界を流れる、フォドラいちの大河アミッド……そこに架かるミルディン大橋の城塞に一泊したところだ。

 明日にはグロンダーズ平原に到着するだろう。

 

 この移動は行軍の訓練も兼ねているので、生徒はみんな士官として忙しく動き回っていた。

 俺は前の世界で国同士の戦争で兵士を率いることもあったので、そこまで苦労はしていないけど……慣れていない生徒たちはグロンダーズにたどり着く前に既に疲れている者も多い。

 

 

「……殿下、体調が優れないのなら出発までお休み下さい」

 

「ドゥドゥー、体調が悪いわけではないんだ……何故か今朝から鼻水が止まらないだけだ……」

 

「ディミトリ、ドゥドゥー。獅子の王子とその鉄壁なる盾よ……深刻そうな顔をして、どうした?」

 

 

 ディミトリとドゥドゥーが何やら話しているので声をかけてみる。

 ディミトリはさっきからしきりに鼻をすすっている。

 

 

「いや、オーディン……なんでもないんだ。何故か知らないが朝起きたら鼻水が止まらない……それ以外、身体に不調は無いのだが……」

 

「……鼻水? 風邪でも引いたか?」

 

「級長として知らず知らず無理をなせれたのでしょう。出発までまだ時間は有ります……少しでも、お休みください」

 

「いや、必要ない……しかし、困ったな……鷲獅子戦までには治るといいのだが……これでは集中できない」

 

「鼻水が止まらないなんて、普通の風邪だろ……今のうちに休んで……あっ!」

 

「むっ、どうした?」

 

 

 鷲獅子戦まではあと二日あるが……仮に三日間鼻水が止まらないとしたら一つだけ心当たりがある……でも、もしそうだとしたら『アイツ』は()()()()()()()にも同じことをしているはずだ。

 

 

「エーデルガルトを探そう!」

 

「……エーデルガルト? なぜ彼女を?」

 

 

 もし、俺の予想が正しければエーデルガルトも同じことになっているはずだ……

 

 黒鷲の学級(アドラークラッセ)の生徒に声をかけて、エーデルガルトを見つけだした。

 ついでにヒューベルトも一緒にいる。

 エーデルガルトもディミトリもいつも従者と一緒にいるな……クロードはそんなことはないのに。

 

 

「……ずずっ、何、オーディン? ……今は忙しいのだけど……ずずっ」

 

「エーデルガルト、鼻水出てるぞ……」

 

「……女性に対してはもっと表現を考えるべきよ、オーディン」

 

「おやおや」

 

 

 エーデルガルトはちょっと恥ずかしそうにハンカチで鼻を拭った。

 ヒューベルトは肩を竦めている……コイツは特に鼻水が出ている様子はないな。

 

 

「朝から鼻水が止まらないのよ……こんなことは今まで一度もなかったのに……」

 

「薬も効いていないようですな……それなりに効く薬だったのですが……」

 

「君もか……エーデルガルト……」

 

「ディミトリ、もしかして貴方も……?」

 

 

 エーデルガルトもディミトリも鼻をすすりながら驚いている……なんかシュールな光景だ。

 

 だが間違いない……俺がたどり着いた答えは……! 

 

 ──クロードの奴、やりやがったな!! 

 

 

「……エーデルガルト、ディミトリ、聞いてくれ。お前たちは呪術をかけられている……」

 

「呪術……!?」

 

「……オーディン、なぜそんなことがわかるんだ……?」

 

 

 エーデルガルトとディミトリは驚きの声を上げ、後ろの従者二人は怖い顔になっている……呪術といえば俺だからな……ただドゥドゥー、お前に睨まれると凄く怖いから止めてくれ……

 

 

「犯人はクロードだ! 何ヵ月か前に『三日間鼻水が止まらなくなる』呪術を教えてやったことがあるしな……」

 

「はぁ、間違いなくソレだな……クロードの奴め……まさか呪術をかけられるとは……ずずっ……」

 

「オーディン言って良かったの? 言わなかったら多分バレなかったでしょうけど……ずずっ」

 

「俺は鷲獅子戦を楽しみにしてたんだ……こんなことで、貴様らが実力を発揮できなくなるのは嫌だ。すぐに解呪してやるよ……」

 

 

 解呪は簡単なのですぐに終わった。

 みんな興味深そうに見ていたので、もう一度受けても大丈夫だろう。

 

 ……まったく、恐ろしい策士だなクロードは……アイツ、バレてたら絶対俺に罪を擦り付けてたぞ! 

 

 

「あーあ、まさか味方に作戦を妨害されるとはな」

 

「出たな、クロード! 俺の教えた呪術をこんなことに使うなんて呪術士の風上にも置けんやつめ!」

 

「ここが最高の手札の切りどころと思ったんだけどなぁ……」

 

 

 二人に解呪をしてやると、すぐにクロードが姿を表した……多分どこかで様子を伺っていたのだろう。

 

 

「クロード、貴方って本当にあくどいわ……まさか呪術を使ってくるなんて」

 

「オーディンが教えてくれなかったら、対処しようがなかったぞ……まったく」

 

「まあ、そこの“闇の呪術士”殿のおかげで策は失敗したわけだ……これからは正々堂々とやらせてもらうさ」

 

「クロード……今まさにあくどい手段を使ったお前の口から『正々堂々』なんて言葉が出るとはな」

 

「勝つための手段を選ばないところは認めるけど、やり過ぎると人が付いてこなくなるわよ……」

 

 

 クロードはいろいろ策を巡らせていたようだけどやっぱり正々堂々勝ちたい。

 

 

 

 ◆◆◆

(飛竜の節 二十七日)

 

 

 本日は快晴、絶好の演習日和だ。

 

 セイロス聖教会をはじめ、貴族の観覧者たちは既に高台へと移動し様子をみている。

 

 鷲獅子戦と名付けられた、栄誉ある学級対抗戦がまもなく始まろうとしていた。

 

 音楽隊による開幕を告げる管楽器の音が鳴り響く。

 

 

「恨むなよ。手加減できるほど、器用ではないんだ」

 

「やり方は自由だ、勝ちゃいいんだろう?」

 

「勝つのは私たちよ……何が起ころうともね」

 

「……俺の真の力を解放する時がきたようだな……魂が躍動するっ!!」

 

 

 今、帝国領グロンダーズ平原で、三つ巴の熱い戦いが繰り広げられる! 

 






補足
三日間鼻水が止まらなくなる呪術
第9話『闇の呪術』参照
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