ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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タイトルを『ラズワルドとルーナの鷲獅子戦』とするか迷いましたが、こちらにします

いつもより少し長いです


第32話『鷲獅子たちの蒼穹①』

 開幕の合図を告げる管楽器の音と共にセイロス修道士隊の計略〈神速の備え〉を発動させる。

 密集した金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)生徒28名と兵士600名、そして総指揮官である先生(ベレス)の総勢629名全員に神速の加護が付与された。

 この計略は対象とその周囲の人員の機動力を上げる秘術であり、セイロス修道士隊と王国の騎兵しか使えないと言われている。

 

 クロードが手を振り降ろすと同時に()()()は一気に進軍を開始した。

 

 

「同盟天馬兵団、出撃するわっ! 飛翔始めっ!」

 

 

 あたしの号令のもと、同盟天馬兵団60騎も一斉に飛翔を始めた。

 この鷲獅子(じゅじし)戦での飛行兵の扱いは特殊だ。

 学校行事であるこの演習は大前提として死者や重傷者を出さないようにルールが決めてある。

 特に〈ペガサスナイト〉や〈ドラゴンナイト〉のような飛行兵は空を飛び、高空からの落下死の可能性が極めて高いので『一定以上の高さでの戦闘の禁止』『弓兵及び魔法兵は一定以上を飛ぶ飛行兵を狙ってはならない』『弓矢を一度でも受けた飛行兵は戦闘不能扱いとなる』といったルールだ。

 このルールによって飛行兵は一定以上の高さにいれば攻撃されないし戦闘に参加できないが……空からの偵察はやりたい放題できるのだ。

 

 ──久しぶりにこんなに高く飛んだわね……風が気持ち良い……

 

 空から確認すると中央の丘の北側には黒鷲の学級(アドラークラッセ)……帝国軍の騎兵隊が展開していた。

 帝国騎兵隊は同盟軍が全軍で渡って来るのを予測していたのか、瞬時に転身し西側へと逃げて行く……

 まあ、こちらが〈神速の備え〉を使うことは予想できてはいなかったようだが。

 

 逃げる帝国騎兵隊にローレンツの同盟騎兵隊が追い付く。

 追撃戦で追いかける側の方が足が速い……つまり圧倒的有利な状況だ。

 瞬く間に帝国騎兵隊を討ち取っていく。

 ローレンツが帝国軍の〈ソシアルナイト〉の士官学校生に追い付き、〈葬騎の一撃〉を浴びせ馬から叩き落とした。

 

 ──順調ね。

 

 あたしたち同盟軍の緒戦の方針は全軍で川を渡って中央の丘の北側に展開することだ。

 

 展開後は三つの部隊に分かれ、中央の丘の制圧、丘の東部と西部の確保に乗り出す。

 

 中央の丘の制圧部隊は先生が指揮を執り、イグナーツ、ラファエル、マリアンヌなどの騎兵や重装兵を含まない編成だ。

 マリアンヌの〈リブロー〉で広範囲をカバーし、制圧後の弓砲台はイグナーツが使用する手筈になっている。

 

 丘の東部の確保部隊はクロードが指揮を執り、リシテア、ラズワルド、ヒルダなどが参加する。

 東部の青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)……王国軍も中央の丘の制圧を狙ってくるだろうから、この部隊は迎撃担当だ。

 

 西部の担当はオーディンだ。

 指揮下にはローレンツ、レオニー、フレンなどがいる。

 癪だけどオーディンの指揮能力は先生に次ぎ、クロードに匹敵するレベルだ……特に誰も反対することなく三部隊のうちの一つの指揮官に収まった。

 

 最後にあたし……ルーナ率いる同盟天馬兵団は偵察及び遊撃部隊。

 高空からあらゆる場所に目を光らせ偵察し、場合によっては単独で奇襲もかけないといけない難しいポジションだ……あたしならやれるはず……! 

 

 

 中央の丘、弓砲台からの砲撃が始まった! 

 

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁっ! ……なんと、いう……不運……!」

 

 

 不運にも同盟軍の〈ブリガント〉の男子生徒に直撃してしまい撃破されてしまう。

 あの弓砲台も練習用で本来の物より威力を落としており、着弾範囲の近くが審判役のセイロス騎士の見極めにより撃破判定が下されるというルールだったはずだが……まさか直撃を食らう生徒がいるとは……運が悪いのか、砲手の腕が良いのか……

 

 二射目を妨害するために中央の丘の真上を飛ぶ。

 弓砲台の部隊は帝国弓兵隊とセイロス傭兵団で固めているのでこれ以上は近づけない……砲手を務めているのは事前に予想されていた通りベルナデッタみたいね。

 

 ベルナデッタは空中で威圧的に飛び回るあたしたち天馬兵団には構わず二射目を射つ。

 妨害や援護をしようにもこの兵力差なら返り討ちに合ってしまう……先生に偵察結果の伝令だけ送って別の場所の偵察に行くべきね。

 

 

 部隊を東に向けて飛ばすと目下ではクロード率いる同盟軍部隊が東部へ進軍中だ。

 王国軍は北部の川に架かる三つの橋のうち東の橋の近くの森に兵を伏せていた様子だったけど、同盟軍が全軍を中央の橋から渡らせたので、伏せていた兵を中央に移動させている。

 北東からアッシュたちの王国弓兵隊と王国騎兵隊、南東からシルヴァン率いる王国騎兵隊とセイロス教団兵……〈神速の備え〉は使っていない様子だからアッシュの部隊とぶつかりそうだ。

 

 クロード部隊の上を飛び合流する。

 

 

「クロード! 北東から騎兵隊と弓兵隊! 南東から騎兵隊と歩兵部隊! 北東の部隊から先にぶつかりそうねっ!」

 

「ルーナ! 北東の連中の指揮官はわかるか?」

 

「弓兵隊はアッシュ……騎兵隊は“猛牛”と“黒豹”よ!」

 

「了解だ! あの赤緑コンビか……」

 

 

 “猛牛”と“黒豹”というのは、前にあたしたちがいた世界の古の英雄の異名だ。

 青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)の生徒に熱血漢の赤髪と冷静沈着な緑髪の〈ソシアルナイト〉コンビがいることをオーディンが面白がって「貴様らはまるで“猛牛”と“黒豹”のようだな」と言ったら、本人たちが気に入って名乗り出したのだ。

 ……フォドラ人って異名とかホントに好きね。

 

 

「ヒルダ、迎撃準備だ。重装隊を前に出してくれ」

 

「えー、あたし?」

 

「重装隊はお前の部隊だろ……楽しようとせず働け。剣士隊のラズワルドと騎兵隊は重装隊が王国騎兵を受け止めたら切り込んでくれ……敵の弓兵隊への牽制は俺がする……リシテアの魔法隊の計略は温存だ」

 

「もー、暑いし、重たいし、なんで〈アーマーナイト〉になんてなっちゃったんだろう……」

 

「見ててねルーナ、ヒルダ、リシテア。僕のカッコいいところ」

 

「あんた、あんまり見てると恥ずかしがるんじゃないですか……?」

 

 

 クロードの指揮に部隊の指揮官たちが答える。

 みんなはいつも通りみたいね……緊張の色は見られない。

 

 

「おっと空を見ろ……向こうも始まったようだな……」

 

 

 クロードの指差す方向を見ると数色の光が星のように空に光っている。

 もちろん、今は昼間で天気は快晴……あれは星ではない……光信号魔法〈流星〉だ。

 オーディンが自作したらしい幻影魔法〈華炎〉を応用し赤、青、緑、黄、紫などの色の数や組み合わせを空に光らせることにより遠くの味方と連絡を取れるようにしたのだ。

 この世界での……前の世界でもそうだったが、遠くの味方部隊との連絡手段は、狼煙、楽器、飛行兵の手旗や飛び方を使った合図、飛行兵や騎兵による伝令、移動系の魔法を使った伝令などがあるがオーディンの奴は新しく連絡手段を作ってしまったのだった。

 

 

「よしっ! こっちも〈流星〉を上げてくれ。『こちら戦闘準備よし、これより交戦する』リシテア、頼んだ」

 

「わかりました。信号魔法〈流星〉打ち上げます!」

 

 

 クロードの部隊で〈流星〉を使えるのは今のところリシテアだけだ。

 幻影魔法〈華炎〉も理学が得意なら一日かからずに覚えることができるらしい。

 この連絡手段の最大の特徴は時間と魔力消費の少なく抑え詳細に連絡を取り合えるところだ。

 飛行兵による合図では伝わるまで何度も繰り返さなきゃいけないし、敵方に解読される可能性もあるが、この魔法による連絡はこの鷲獅子戦で初めて使われるのでその心配もない。

 

 

 部隊間の連絡を取っていると、王国軍の騎兵隊が森の合間から猛然と迫ってきた。

 先頭は“猛牛”と“黒豹”の二騎の〈ソシアルナイト〉。

 アッシュの弓兵隊に狙われるのは厄介なので天馬兵団を高空に飛翔させる。

 

 

「騎士は退かん!」

 

「甘く見るなよ!」

 

 

 “猛牛”がそのまま重装隊に突撃を掛け、“黒豹”が重装隊の側面へ回り込み突き崩そうとする。

 

 “猛牛”はヒルダに向かって一直線で駆ける。

 ヒルダと“猛牛”が交錯した瞬間、“猛牛”が馬上から姿を消した……落馬したのだ。

 

 ヒルダは“猛牛”の進路上に戦技〈スマッシュ〉を間を合わせて()()()だけだ。

 

 

「もー、本気出しちゃったじゃなーい」

 

 

 本気、なんて軽く片付けているが並みの戦闘センスと度胸がないとできることじゃない……ヒルダは相変わらずね。

 

 

 騎兵の機動力を活かして回り込もうとする“黒豹”に対して、クロードの同盟弓兵隊が矢を射かける。

 クロードが強く弓を引き矢を放つと、線を引くように射出された矢が“黒豹”に当たる。

 

 

「……運じゃない、必然さ」

 

 

 あの二人があたしたちの世界の古の英雄の異名を名乗るにはまだ早かったようね……

 指揮官の“猛牛”と“黒豹”が討たれたことにより、王国騎兵隊は南東へと撤退していく。

 アッシュの弓兵隊も騎兵隊を援護しながら退く素振りを見せている。

 

 

「あー! 待ってなのー!」

 

「騎兵隊、追わないで! 僕らの任務は迎撃だよ。丘の東部を確保することに専念しよう」

 

「わかったの!」

 

 

 ラズワルドが追撃しようとした〈ソシアルナイト〉の女子生徒を引き留める。

 こっちは一段落ついたようね……また偵察飛行に戻ろうかしら。

 

 

 再び空へと舞い上がると先生の部隊は中央の丘の攻略に乗り出していた。

 様子を伺って援護に入るか考えるが、すぐに先生の部隊から信号魔法が上がった。

 

『作戦継続中、援護ノ必要ナシ』

 

 ──流石は先生……作戦は順調みたいね。

 

 こうやって遠い距離から意志疎通が図れるのは便利だ……オーディンにしてはやるじゃないの。

 

 こっちの世界に来てからのオーディンは魔法に凝りだして色々なものを編み出している。

 呪術に闇魔法、幻影魔法、信号魔法……オーディン曰く幻影()()と信号()()らしいが、まあ、どちらでもいい……ほとんどが前の世界で呪術士の師匠に習ったものの応用だけど、その力がセイロス教会や帝国(エーデルガルト)に認められてきている。

 この世界に来てからのオーディンは言う必要もないほど色々な才能を発揮しており、ラズワルドは踊りで人の能力を向上させる特別な力を使えるようになった。

 ……あたしだけは何も特別な力は持っていない。

 でも……かつて母さんと同じ道を進みたくないと思って止めた天馬騎士……空からの力があればもっとあの二人やみんなの役に立てるかもしれない。

 

 ──あたしだって! 

 

 

 高空の偵察飛行を続けていると、南から飛行部隊が飛んできている。

 イングリット率いる王国天馬兵団のようだ。

 

 

「ルーナ……貴女を倒さないことには王国軍の勝利は難しいようですね」

 

「イングリット。あたしを倒しにわざわざこっちまで飛んで来たってわけ……?」

 

 

 先頭のイングリットが声をかけてきた。

 王国天馬兵団にはイングリットだけではなく青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)の〈ペガサスナイト〉の女子生徒が二人、天馬兵団と合わせて63騎の青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)の全ての飛行戦力を連れてきたようだ。

 

 

「地に足付けた戦いでは貴女に譲りますが……空の上では負けませんよ!」

 

「上等じゃない! ……やってやるわっ!」

 

 

 おそらく士官学校で最強の〈ペガサスナイト〉である、イングリットを倒せれば……天馬騎士として大きな一歩を踏み出せるはず……

 

 邪魔の入らない東部の開けた場所に誘導しながら、同盟天馬兵団と王国天馬兵団はお互いを警戒しながら高空から低空へ旋回し降りて行く。

 落下しても死なない程度の高さになった瞬間、攻撃を開始するためだ……

 

 ──今よっ! 

 

 

「同盟軍、攻撃開始っ!」

 

「いざ! 勝負っ!」

 

 

 同盟天馬兵団と王国天馬兵団が一斉に槍を交える。

 交錯の瞬間、槍でイングリットを払い落とそうとしたけど難なく回避された。

 やはり天馬の使い方と馬上の動きは上手い。

 

 

「やりますね! ルーナ……!」

 

「あったり前じゃないの!」

 

「……ですが……()()()を侮らないことです!」

 

 

 イングリットの言葉とともに二人の〈ペガサスナイト〉に囲まれる。

 

 

「さあ! 王国の〈ペガサスナイト〉の力を見せます!!」

 

「私だって!」

 

「覚悟せよ!」

 

「トライアングルアタック!!」

 

 

 イングリットが槍を構え突撃し、青髪の〈ペガサスナイト〉が剣を振りかざし斬りかかり、赤髪の〈ペガサスナイト〉が斧を掲げ襲い来る! 

 

 ──受けきれない!? ならっ……! 

 

 イングリットの槍の一撃を回避せず受ける……力が劣るイングリットではあたしの守備は一撃で抜けない。

 

 ──二撃目! ここっ! 

 

 

「絶対負けない!!」

 

 

 ──太陽

 前の世界では一流の傭兵たちが使用していた奥義だ。

 手にした武器から相手の体力を奪いとる勇者の極意。

 

 二撃目の〈トライアングルアタック〉で攻撃をかけた青髪の〈ペガサスナイト〉は槍をまともに受けてペガサスから落馬する。

 落ちた場所が木の上だったから、木が上手くクッションになって大怪我してなければ良いけど……

 

 

「馬鹿な……! 我らの技を破ったのか……!?」

 

「こんなことなんでもないわ……! くぐってきた修羅場の数が違うのよ!!」

 

「ぐっ……!」

 

 

 一騎落としたので〈トライアングルアタック〉はすでに意味をなさない。

 動揺する斧使いの〈ペガサスナイト〉を槍戦技〈突槍〉で突き刺し倒す。

 

 あとはイングリット……太陽を使ったとはいえ、体力的に厳しいが……意地でも倒してやる……! 

 

 

「あの技を使うには私たちではまだ未熟でしたか……見事です、ルーナ。しかし、まだ終わりではありません!」

 

「来なさいイングリット! 決着をつけてあげるわ!」

 

 

 お互いの槍がぶつかり合い火花が散った。

 

 

 

 □□□

 

 

 

「ルーナ! ……無事かい?」

 

 

 天馬兵団同士の熾烈な戦いをしていたルーナとイングリットの下へ行くとすでに決着はついていたようだ。

 

 

「いいえ、相討ちよ……どっちも撃破判定もらっちゃったわ」

 

 

 鷲獅子戦では審判役のセイロス騎士が周囲に散らばり様子を見ているので、怪我をしても無理して動いている生徒や危険な勝負をしている生徒は彼らから止められるのだ。

 

 

「うーん、負けちゃったか……」

 

「負けじゃないわよっ! 相・討・ち! 間違えないでよ!」

 

「そ、そうだね……でも凄いじゃないか、まだなったばかりの〈ペガサスナイト〉でイングリットたちを撃破するなんて」

 

「ふんっ! ……止められなかったら、あたしが勝ってたわよ。良いところだったのに……」

 

 

 相変わらずの負けず嫌いだな……しかし空からの偵察を失ったのは痛いかもしれない、全部隊に報せないと……

 

 

「じゃあ僕は行くね、ルーナ」

 

「負けんじゃないわよ、ラズワルド!」

 

「任せて! 絶対、勝つよ!」

 

 

 クロードの部隊に合流すると、リシテアがすぐに信号魔法を打ち上げて状況を報告した。

 先生とオーディンの部隊からも信号魔法は上がり……作戦は順調に進んでいるみたいだ。

 

 

「ルーナがやられちまったのは痛いが、王国の〈ペガサスナイト〉を全滅できたので良しとするか……。さて、王国軍の第二陣が来そうだな……指揮官はシルヴァンあたりか? 今度は騎兵だけで突出してくることはなさそうだな」

 

「ほぼ同数か、向こうが少し多い程度でしょうか?」

 

 

 クロードとこの部隊の次席指揮官であるリシテアが話し合う。

 彼女はクロードが撃破された場合に指揮を執ることになっている。

 

 

「指揮官としての腕の見せどころだねー、クロードくん」

 

「ここで王国軍を倒せれば一気に僕たちが有利になるね」

 

「さて金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)の力を見せてやるか……」

 

 

 クロードの指揮で陣形を組み直す。

 ヒルダ率いる同盟重装隊を中心に、両翼に騎兵隊と剣兵隊、後方に弓兵隊と魔法隊を置く陣形は先ほどの迎撃と変わらない。

 

 しばらくして王国軍が姿を現す。

 数はリシテアの予想通りほぼ同数か少しあちらが上、率いる兵種もほぼ同種のようだ。

 弓兵隊には先ほど一度撤退したアッシュ、魔法隊にはアネットの姿もある。

 

 

 敵の王国騎兵隊が狙い済ましたように、僕の率いる剣兵隊を狙う。

 騎兵隊の指揮官はシルヴァンだ。

 

 

「シルヴァン。君が僕に敵うとでも……?」

 

「もちろんさ、ラズワルド。ここで大活躍して女の子たちにモテモテにならないとな!」

 

「その意見には同意だねっ!」

 

 

 〈ソシアルナイト〉のシルヴァンの槍を相手に剣で挑む……槍と剣、騎兵と歩兵、どちらも僕が不利だけど実力差でひっくり返せるはずだ。

 

 

「見え見えだっ!」

 

「……やるねっ!」

 

 

 剣で一撃を入れるも、あっさり回避されて槍を受けてしまう……シルヴァンってこんなに強かったかな……? 

 

 

「なんのために俺がお前に真っ直ぐ向かって来たと思っている? お前への対策はバッチリさ!」

 

「……まさか……〈剣殺し〉かい?」

 

「へぇ、ご明察だ!」

 

 

 シルヴァンは勝機と見て一気に攻めてくる。

 ……厄介だ。

 

 剣槍斧の三竦み、槍は剣に強く、剣は斧に強く、斧は槍に強い。

 前の世界では半ば常識のようなものだったが、この世界では事情が違った。

 このフォドラでは三竦みは練達の域に達した者でないと適応されない……シルヴァンはその域に達しているわけか。

 

 ここまで対策を打たれていると剣で勝つのは難しい。

 隙を見てすぐに剣から籠手に持ち替える。

 

 

「更にリーチを短くしてどうすんだ? 俺にお前の拳は届かねえ……馬でも殴る気か?」

 

「そんなことしないさ……来なよ、シルヴァン。踊らせて上げる!」

 

 

 連続で繰り出されるシルヴァンの槍に合わせて、拳戦技〈ステップコンボ〉で止める。

 数撃もの槍攻撃を籠手で止められ驚愕の表情のシルヴァンに飛びかかり、馬から引き摺り降ろす。

 

 そのまま丁度よく馬乗りになってしまった……整った顔に何発か入れてあげようかな……? 

 

 

「待った、待った! 降参だっ!! 籠手(それ)で顔殴られるのは洒落にならねえ!」

 

「なんだ、あっさりしてるね」

 

 

 シルヴァンに馬乗りになって拳を構えるとあっさり降参した。

 なかなか厄介だったけど、シルヴァンはやっぱり本気度が足りないね。

 

 

「騎兵は落馬した時点で撃破判定だっただろ……飛びかかって来るとは、顔のわりに泥臭いことしやがる……」

 

「……僕らは傭兵、泥臭いのは慣れてるのさ」

 

「ならば、その傭兵仕込みの剣術……俺にも見せて見ろ……」

 

「……フェリクス」

 

 

 次の相手はフェリクスか……

 フェリクスは部隊は率いていないようだが、僕がシルヴァンと戦っている間に一人で同盟剣兵隊の数名を相手にしていたらしい。

 彼の回りに撃破判定になったらしき同盟兵がたくさんいる。

 

 

「ラズワルド、貴様とも剣を交えてみたかった……勝負っ!」

 

「悪いけど、君には負けられないねっ!」

 

 

 訓練や剣術武闘大会を含めフェリクスとは一度も手合わせしたことが無かったけど、オーディンやルーナが勝っている相手には流石に負けたくはない……今のオーディンが剣術だけでフェリクスに勝てるかは微妙だけどね。

 

 フェリクスの剣を受け止め、斬り返す。

 お互い剣は鉄の剣を演習用に刃引きした物を使っている。

 

 

「隙ありだよ! 〈風薙ぎ〉!」

 

 

 剣戦技〈風薙ぎ〉、その名前の通り風を薙ぐように繰り出す一撃だ。

 あまりの速さに受けた者は反撃もできないと言われている。

 使い手はセイロス騎士団にすらいないが……僕と先生(ベレス)、ルーナは使える。

 

 

「チッ、流石に強いな……! だが、まだだっ!」

 

 

 〈風薙ぎ〉で形勢がこちらに傾いた。

 一気に畳み掛けて討ち取るぞ! 

 

 フェリクスへ向けて踏む出す瞬間、顔の前を矢が通りすぎる。

 

 ──一対一の戦いに手を出すなんて無粋だね……! 

 

 矢を放ってきた者は僕を狙って二射目を放つと率いている部隊に()()()()()()()への攻撃を命令した。

 

 

「先制、奇襲、成功です。これより、任務、遂行する、します!」

 

「ペトラっ!? どこから……!」

 

黒鷲の学級(アドラークラッセ)だとっ!?」

 

 

 突然現れたペトラ率いる帝国軍に、同盟軍も王国軍も混乱している。

 中央の丘から降りてきた様子も無いし、本当にどこから現れたんだ? 

 

 

「……おそらく白魔法〈ワープ〉です。マヌエラ先生たちが使えたはずです!」

 

 

 リシテアがみんなが疑問に思っていたことを答える。

 移動魔法による奇襲でこちらの戦線を撹乱する作戦か……黒鷲の学級(アドラークラッセ)もなかなかやる……! 

 

 

 ペトラは迷いなく僕に攻撃を仕掛けてくる。

 弓で攻撃してきた時も、狙ってきたので僕が撃破の優先目標になっているのかもしれない。

 

 ペトラの剣撃を受け流す。

 フェリクスほど重い一撃ではないが、その速さと独特な間の使い方でやりずらい……彼女には今節の剣術武闘大会でも苦しめられた。

 

 ペトラが参考にした、オーディンの戦闘中に挟む無駄な動きを基にしたフェイントは、オーディンのカッコつけることを目的にしたものと比べて洗練されており、隙もほとんどない。

 

 フェリクスが僕とペトラの前に躍り出て、攻撃を阻む。

 僕とペトラ、フェリクスがそれぞれ距離をとって対峙する。

 

 

「三つ巴か、面白い……」

 

「私、勝ちます!」

 

「悪いけど、負けられないよ」

 

 

 まず、仕掛けたのはフェリクスだ。

 ペトラに対して、上段から斬りかかる。

 ペトラはサイドステップで回避すると、小さな動作でフェリクスに斬り返す。

 僕はペトラの攻撃の合間に斬り込もうとするが、フェリクスに牽制されてしまう。

 

 この難しい状況にも、二人とも隙は見せない……この二人は特にそうだが、みんな本当に強くなったな……

 

 

「フェリクス……私、標的、ラズワルドです。共に、戦う、します、しませんか?」

 

「ほう、ならば先にコイツを倒し、その後決着をつけるか……」

 

「ええ? それはないんじゃないの、二人とも……」

 

 

 ペトラの提案に乗ったフェリクスが、ペトラと息を合わせてほぼ同時に斬りかかってきた。

 

 フェリクスの剣をなんとかかわし、ペトラの剣を弾いて距離を取る。

 共闘しているとはいえ、彼らは敵同士だ……お互いに警戒は解いていないはず……! 

 

 剣撃の隙間を縫うように動き、二度目の〈風薙ぎ〉!! 

 今度は確実に捉え、フェリクスが倒れる。

 

 

「隙、発見です!」

 

「ぐっ……!」

 

 

 代わりにペトラの剣を思い切り肩に受けてしまう。

 

 ぐぅ……刃が潰されてるとはいえ、鉄の塊だ……骨折したかも……

 

 ──だけどっ……! 

 

 ──〈剛撃〉

 片手だけで放ったそれを、ペトラは避けることができずに吹き飛ばされる。

 ペトラも致命打を与えた後に、まさか反撃されるとは思わなかったのだろう。

 審判役から撃破判定される前に道連れにする。

 訓練用の武器を使う演習であることが前提の少し狡いやり方だった。

 

 フェリクスもペトラも気絶しているのか起き上がらない。

 

 撤退していく王国軍の様子を見るとクロード率いる同盟軍は無事に勝てたようだ……。

 

 

「痛た……ごめん、クロード。やられちゃったよ」

 

「お疲れさん。お前さんが敵の主力を惹き付けてくれたお陰で楽に戦えたよ……そっちで伸びてる二人と一緒に回復してもらって、ゆっくり休んでてくれ」

 

「そうさせてもらうよ……」

 

 

 これから盛り上がりそうなところなのに……残念だけど、後は金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)のみんなに託すとするか……

 




相打ちアンド相打ちでルーナとラズワルドが退場。

戦闘描写が苦手な上に時間が無かったので雑になってしまったかもしれません…後日修正するかも…


補足

太陽
FE覚醒、FEifに登場するスキル
勇者(覚醒)ブレイブヒーロー(if)がLv5で覚える
技%の確率で発動、自分のHPを与えたダメージの1/2だけ回復
敵を倒した場合は、敵の残りHPの1/2だけ回復(端数切り捨て)

猛牛と黒豹
FE暗黒竜と光の剣、FE紋章の謎に登場する、カイン(猛牛)とアベル(黒豹)
FEシリーズ恒例の赤緑ソシアルナイト、風花雪月ではシルヴァンとイングリットが該当するらしい
覚醒世界では英雄王の時代の古の英雄として語り継がれている

士官学校のモブ生徒たちは全員元ネタとなったキャラがいます
不運にも砲撃の直撃を受けた男子やラズワルドに声を掛けられていたソシアルナイトの女子など
(第7話『神器への進化』のオチ部分とかも)



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