ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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第34話『鷲獅子たちの蒼穹③』

 ドゥドゥーが率いる王国重装隊に守られた王国魔法隊と帝国魔法隊から魔法が放たれる。

 

 

「やべぇぞ! オーディンくん!」

 

「ま! こんなことって……」

 

黒鷲(アドラー)青獅子(ルーヴェン)が組むって……そんなのありかよっ!?」

 

 

 

 飛んでくる魔法をなんとか避けながら、ラファエルとフレン、レオニーが悲鳴のような焦りの声をあげている。

 レオニーの言葉に激しく同意したい……俺もさっき本当にそう思ったからな。

 しかし、こちらも黙ってやられるわけにはいかない……手持ちの戦力でなんとかしないといけないのが指揮官の辛いところだ。

 

 

「みんな、落ち着け! ……レオニー、弓兵隊の計略で足止めだ! フレンはそのあいだに修道士隊を前に出して魔法を防いでくれ」

 

「オーディン、後ろの天馬兵団はどうするんだ!?」

 

「今、イグナーツたちに〈流星〉で援護を頼んだ……部隊がやられてないなら来てくれるはずだ」

 

「一か八かってやつか……ええい、やってやるさ!」

 

「行きますわっ……!」

 

 

 弓砲台が破壊された今、中央の丘を確保していてもあまり意味はない。

 帝国軍と王国軍の連合部隊は俺の部隊を大きく上回る戦力だ。

 

 

「あのドゥドゥーの王国重装隊が厄介だ。俺たちで倒すぞ……!」

 

「オデにまかせろ!」

 

 

 フレンの修道士隊が敵の魔法部隊の攻撃を阻む。

 しかし、いくら魔法攻撃に強いといっても兵力の差が激しい……手早く指揮官の生徒たちを討たねば……! 

 

 

「ドゥドゥー、我が闇を受けよ……! 〈ミィル〉!」

 

「……ククッ、させませんよ……!」

 

 

 ドゥドゥーに放った闇魔法をヒューベルトに防がれる。

 地面に似たような性質を持つ闇属性の魔力を流して止めたのか……器用なやつだ。

 

 

「うおおおおお!! 食っちまうどおお!!」

 

「フン、甘い!」

 

 

 前に出たヒューベルトを襲うラファエルの突撃を今度はドゥドゥーが止めた。

 コイツら……即席のくせに見事な連携だ。

 

 ラファエルは猛然とドゥドゥーに鉄拳を叩きつけるが全て鉄の盾で阻まれる。

 ガチッ、ガチッ、と激しく鉄と鉄がぶつかり合い、凄い音を鳴らしている。

 巨漢同士のラファエルとドゥドゥーの戦いはなかなかの迫力だ。

 しかし、いくら力が互角でも〈拳闘士〉と〈アーマーナイト〉じゃ相性が悪い……早く援護してやらないと……

 

 

「オーディン殿……なかなか興味深い魔法を使いますな……」

 

「ヒューベルト、我が闇魔法……その身を持って味わえ……と、言いたいところだが、こちらも魔法対決をしてるほどの余裕はない」

 

 

 魔法対決で士官学校一、二を争う魔法の実力を持つヒューベルトに勝てるとは思えないので接近戦に持ち込む。

 剣を抜きヒューベルトとの距離を一気に詰める。

 

 ヒューベルトの手持ちの闇魔法は全て知っている。

 接近戦を挑んでくる相手に使うべき闇魔法は……! 

 

 ──〈バンシーΘ〉!! 

 

 

「……読み通り!」

 

「なっ……!?」

 

 

 地面から放たれたヒューベルトの闇魔法〈バンシーΘ〉を大きく跳躍して回避する。

 跳躍した勢いのまま、切り伏せた……刃を潰しているとはいえ鉄の塊を体に打ちつけられたら、相当痛いだろうな……

 

 ヒューベルトの手持ちの闇魔法は〈ドーラΔ〉〈スライムB〉〈バンシーΘ〉〈デスΓ〉の四種類だ。

 〈ドーラΔ〉は初級魔法、〈スライムΒ〉は長射程を狙うのに適しており、〈デスΓ〉は必殺になりやすい。

 〈バンシーΘ〉は地面から放出する闇の中級魔法で魔法を受けた相手の足を止める性質を持っているから、距離を詰めてくる相手に放つ魔法としては最適解だが……闇魔法に詳しい俺にとっては悪手だったな……使う魔法を読めたら回避するのは難しくない。

 これをしたり顔で説明してやりたいところだけど、今は時間がないか。

 

 俺に闇魔法を詳しく教えてくれたハピにはマジで感謝しないとな……

 

 即座にドゥドゥーに向き、魔法を放つ。

 〈アーマーナイト〉は魔法に対して相当弱いので手加減して撃っても、当てさえすれば撃破判定になる。

 

 

「食らえ……闇の裁きだ〈リザイア〉!」

 

「ぐぁ……! ……ここまでか。……申し訳ありません殿下……」

 

 

 ドゥドゥーは倒したが……ラファエルはすでに負けてしまっていたようだ。

 

 

「すまねぇ、オーディンくん……オデ、負けちまったよ……」

 

「いや、お前はよくやったよ、良い戦いだったぜラファエル。……ドゥドゥーもな」

 

 

 ラファエルとドゥドゥーが「ドゥドゥーくんはやっぱり良い筋肉だなぁ!」「……お前もな」なんて言って健闘を称えあっているが、俺の戦いはまだ終わっていない……

 

 強敵である、ハンネマン先生にマヌエラ先生がまだ残っている。

 

 

「オーディン、ここまでやるなんて大したものよねぇ」

 

「流石は入学前からベレスくんの教えを受けているだけのことはある」

 

「……生徒相手に教師が二人がかりですか?」

 

「悪く思わないでね……貴方を倒さないとあたくしの学級が勝つのは難しそうだもの」

 

「教師二人による特別授業だよ、喜びたまえ」

 

 

 上級職二人相手に真正面から戦うのは厳しすぎるぞ……

 成功するかはわからないが……策を使うしかないか……

 

 左手を突き出し、魔力を最大限に集中させ始める。

 

 

「いいだろう……俺の『封印された真の力』を解放する時が来たようだな……先生方よ……()()()()を見たことが有るか……?」

 

「……? ……何言ってるのよ、オーディン」

 

「むっ、君はまだ我輩に黙っていた力があるのか……? いや、まさか……例の力か!?」

 

 

 マヌエラ先生はよくわかっていないようだが、ハンネマン先生は前に俺の秘密についていろいろと話をしたことがあるので狼狽えはじめた。

 

 

「まさか、この姿を見せることになるとはな……邪竜よ!」

 

「い、いかん……!」

 

 

 練り上げた魔力で幻影を作りだす。

 マイクランの時みたいに演出し、俺を闇が包み込み巨大な竜が姿を現した。

 前の世界で俺たちが昔戦ったものよりだいぶ小さいが、それでも巨大なギムレーだ。

 フッフッフッ……我ながら見事に再現されているな。

 

 

「ちょ、ちょっと巨大な魔獣……いいえ、魔竜!? 冗談じゃないわよ……! どうするのよ、ハンネマン!?」

 

「マヌエラ…お、落ち着きたまえ……! しかし、どうすれば……!?」

 

 

 

 ハンネマン先生とマヌエラ先生は邪竜ギムレーを見上げて盛大に狼狽えている。

 

 前にイグナーツの描いた絵を幻影として召喚した時に思ったのだが、この大きな幻影はフォドラの人たちにとってはかなりインパクトがあるらしい……何かの策に使えないかなと思っていたが効果は抜群のようだ。

 ただの幻影、ハッタリだから微妙に透けているのだけど前足の後ろに隠れている俺に二人は気づく様子はない。

 

 ハンネマン先生とマヌエラ先生が呆然としている隙に闇魔法〈リザイア〉を二人に撃つ。

 

 

「ぐはっ…!」

 

「ぎゃぁ!?」

 

 

 完全に意表を突かれた攻撃に二人ともあっさり倒れてしまった。

 ふぅ、少し卑怯だったかもしれないが……勝ちは勝ちだよな……

 

 幻影を消すと戦っていた味方の同盟軍や敵側の帝国軍と王国軍がみんな遠巻きで俺を見ていた。

 

 ……あれ? また俺なにかやっちゃいました? 

 

 

「オーディン! ……無事!?」

 

「……巨大な竜が現れたのを見て、慌てて駆けつけたのだが……姿はもう無いようだな」

 

 

 東から先生とディミトリが慌てた様子で駆け寄ってきた……クロードの姿もある。

 

 

「……こちらに巨大な竜の姿が見えたから、来てみたけれど……オーディン、やはり貴方の仕業だったのね」

 

 

 西側からはエーデルガルトがやって来た。

 中央の丘からは同盟軍のイグナーツとマリアンヌも降りてきている。

 どうやら全軍が集まったようだな……

 

 

「……オーディン、まさかとは思うがさっきのあれはお前の仕業か……?」

 

 

 ディミトリが問い詰めるように聞いてきた。

 ……これ、怒られる雰囲気じゃねえか……! 

 

 

「ちょ、ちょっと待てよ……俺はただ幻影の魔法を使っただけだ……あれはただのハッタリだぜ……?」

 

「鷲獅子戦の最中で、戦場の真ん中にあんなに巨大で禍々しい竜が現れたら……驚いてみんなが集まるに決まっているでしょう……」

 

 

 エーデルガルトの言葉に周囲を見てみると審判役のセイロス騎士団まで集まってきている。

 一団の中にいるセテスさんとルーナが鬼のような表情で俺を睨らみ、俺と目があったラズワルドは肩を竦めた……これは……また、後で説教が確定しちまったな……

 というか、あいつらやられていたのか。

 

 

「……さて、王子様に皇女様。ウチの“闇の呪術士”がやらかしたおかげと言ってはなんだが……奇しくも生き残った全軍がこの場に集まったようだ」

 

 

 クロードがディミトリとエーデルガルトに声をかけた。

 

 

「そのようだな……三つ巴で戦うには金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)の数が少し多いな……」

 

「そうね、ディミトリ。マヌエラ先生とハンネマン先生のように手を組んで戦ったほうが良いみたいだわ」

 

「おいおい、結局そうなるのかよ……仲が良いことだな」

 

 

 黒鷲と青獅子はまだ共闘を続けるらしい。

 それでも残った生徒も兵力もこちらのほうが上だ。

 クロードの言い方もどこか余裕を残している。

 

 

「勝つのは漆黒の鷲でも蒼き獅子でもない……我ら金色(こんじき)の鹿だ……!」

 

「決着をつけよう! クロードはディミトリ、オーディンはエーデルガルトの相手を……他のみんなは……」

 

 

 先生の指示で戦う相手を決められる。

 俺の相手はエーデルガルトだ。

 クロードとディミトリ、リシテアとアネット、イグナーツとアッシュ、マリアンヌとメルセデス、フレンとリンハルトなど、あえて同兵種でぶつけてるなんて先生も粋な指示を出す……

 

 

「エーデルガルト……我が“闇の同胞”よ……貴様と刃を交えることになるとはな……皮肉な運命だ……」

 

「……いえ、これは運命ではなく宿命よ……貴方とはいつか戦うことになると思っていたわ」

 

「……これも、血の定めか。エーデルガルト、俺の前に立ち塞がるのなら、この闇の力でその身に流れる、その血のすべてを止めてやる!!」

 

 

 ──……決まったっ! 

 

 

「…………」

 

「あれっ? どうしたエーデルガルト……」

 

 

 俺のカッコいい決め台詞を聞いたエーデルガルトはなぜか不満そうに黙りこんでしまった。

 

 

「……オーディン。その台詞、以前私がフレンに考えてあげたものよね」

 

「そ、そうだっけ? ……そう言われたら、そんな気がするな」

 

「私が言おうとした台詞と被ってるんだけど……」

 

「そ、そんなに怒るなよ……決め台詞が似ててもいいじゃないか……」

 

「……別に怒ってなどいないわ」

 

 

 怒ってるだろっ……! 言おうとした決め台詞って『その血がすべて流れるまで切り刻む』ってやつかな……? 

 たしかに俺も言おうとした決め台詞を盗られたら嫌だしな……今後は気をつけよう……

 

 

「……じゃあ、気を取り直して……勝負!」

 

「……私の力、見せてあげる!」

 

 

 俺が剣を構え、エーデルガルトが斧を構えた。

 絶対に勝ちに行くなら、魔法の間合いで戦うべきだけど……俺が求めているのは、血が騒ぐような熱い勝負だ……! 

 

 

「蒼炎剣ブルーフレイムソード!!」

 

「ストライクゼステューラ!!」

 

 

 俺の青い炎を纏わせた剣戦技〈剛撃〉とエーデルガルトが赤い炎を纏わせた斧戦技〈スマッシュ〉がぶつかり合う。

 

 ──重い……! 

 

 腕力差の影響で俺のほうが大きく吹き飛ばされた。

 ……流石に力比べだと勝負にならないな。

 

 エーデルガルトの横凪ぎをバックステップで回避し、すぐに踏み込み剣を切り返す。

 俺の剣を斧で受け止め、そのまま押し返された。

 

 斧で相手の攻撃を受け止めるのは、剣で防ぐよりかなり難しいのに……やはりエーデルガルトは強い……! 

 

 振り回される斧をかわしながら、剣を突きいれる。

 エーデルガルトは体にかする剣にはものともせず、一振りするだけで仕切り直される。

 

 ──反撃できない……!? この俺が怯えているのか……? 

 

 いや、この感覚は俺の怯えからくるものではない……先生と模擬戦をするときにも感じたこともある「反撃できない」と感じる得体のしれない力……! 

 

 剣に纏わせている青い炎を全身に身に纏う……ただの幻影の炎なのだが、この炎が俺に更なる力を与えてくれる……ような気がする。

 エーデルガルトが俺と同じように赤い炎を全身に纏う。

 蒼き炎を纏う闇の戦士と紅き炎を纏う次期皇帝か……この好敵手同士の戦いは鷲獅子戦の歴史に残るような伝説の戦いになるだろう……

 

 もう一度、戦技を使えるように構え直す。

 〈魔刃〉は訓練用の剣でも切れ味が上がり過ぎてしまうから、もう一度〈剛撃〉だ。

 エーデルガルトも〈スマッシュ〉で勝負を決めにくるようだ。

 

 俺とエーデルガルトが同時に踏み込む。

 

 ──華炎

 俺はこの感覚を知っている。

 武器には魔力が、魔法には武器で振るうような力が一撃に宿るような感覚。

 俺の必殺とは別種の『真の力』……! 

 

 剣と斧がぶつかり合った瞬間、斧が弾き飛ばされエーデルガルトが後ろに倒れた。

 

 

「……俺の勝ちだな」

 

「私の全力……紋章の力の全てを持ってしても、勝てない。……オーディン、貴方は一体何者なの……?」

 

「俺は“漆黒のオーディン”。数多の時を超え、滅びし運命(さだめ)を変えるために戦う選ばれし闇の戦士だ」

 

「…………」

 

 

 俺とエーデルガルトの勝負が終わると戦闘を見ていたらしい生徒や兵士たちから拍手や歓声が上がった。

 

 他の生徒たちもほとんど決着はついているみたいだな。

 

 唯一戦っていた先生とディミトリも、ディミトリの槍が折れて先生が剣を目の前に突き出したことで今、勝負が終わった。

 最後に先生とディミトリが戦っていたところをみると、クロードがディミトリに負けて先生がディミトリと勝負した、といったところだな。

 

 

「そこまで! グロンダーズ鷲獅子戦、今年の勝者は……金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)とする!」

 

 

 セテスさんの勝者宣言でグロンダーズ鷲獅子戦が幕を閉じた。

 金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)の生徒や同盟軍の兵士から大きな歓喜の声が上がる。

 

 

「うおおおお!! 勝ったどぉー!!」

 

「……勝った……私が居ても……?」

 

「やりましたね! 僕たちが勝てるなんて……」

 

「やったー! 勝ったね、みんな凄かったよ!」

 

「ヒルダも今日は頑張っていましたよね」

 

「先生とオーディンの師匠仕込みの用兵、見事だったよ。わたしも頑張らないとね」

 

「レオニーさんは十分頑張っていたさ、僕は序盤に退場してしまったことが惜しいよ……まあ、悔いはないけどね」

 

「ルーナ。楽しかったね……一生の思い出になったよ」

 

「……そうね、ラズワルド」

 

「またやりたいね」

 

「おいおい先生、鷲獅子戦は一度きりだぜ? まあ先生は教師を続けていれば来年もするのか……とにかく俺たちの金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)が勝てて良かった。本当にそう思うよ」

 

「やりましたわね、オーディンさん! ……これにて、わたくし“純白のフレン”と……」

 

「“漆黒のオーディン”……遥かなる鷲獅子戦の……終幕!!」

 

 

 




おかげさまで、無事に山場の一つである鷲獅子戦終了まで進めることができました!
これからも本作品をよろしくお願いいたします!



補足

華炎
FE覚醒に登場するスキル
神軍師がLv5で覚える
技%で発動、武器なら魔力の、魔法なら力の1/2だけ攻撃力上昇
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