ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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第37.5話『ラズワルドとルーナの休日⑥』

(赤狼の節 二十三日)

 

 

「マリアンヌ、調子はどうだい?」

 

「あっ、ラズワルドさん……」

 

「今日も熱心に馬のお世話かい? 良かったら僕も手伝おうか?」

 

「……いえ、今終わったところなので……」

 

「あ、そうなの? じゃあ、僕とどこかへ遊びに行かないかい?」

 

「……私なんかと一緒に遊びに行っても楽しくないですよ……」

 

「そんなことないよ。君と一緒なら、どこへ行くのもきっと楽しいさ!」

 

「……いえ、私は……帰ります……失礼します」

 

 

 ◇◇◇

 

 

「やあ、リシテア。今は暇かい? 良かったら僕とお茶でもしようよ。おいしいお菓子もあるよ!」

 

「わたし、忙しいので! ……それに、お菓子に釣られるほど子どもじゃありませんよ!」

 

「うーん、そうか……残念だな。じゃあ、このお菓子はあげるよ。君のために買ったものだからさ」

 

「く、くれるのなら、貰っておきます……今度、暇な時なら一緒にお茶してあげなくもないですよ……」

 

「あはは、ありがとう。楽しみにしてるよ!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「やあ、フレン!」

 

「ま! ラズワルドさん……お待ちになって……わたくしにご用ならそこで仰って。大変失礼だとは存じますけれど、これ以上、近づかないいだきたいの」

 

「えー! どうしてかな?」

 

「ごめんなさい……お兄様からあなたには近寄らないように言われていて」

 

「僕に近寄らないように……なんでそんなことを……?」

 

「ラズワルドさんはいつも女性を遊びに誘っている軟派な人だと聞いていますわ……お兄様がそのような人には絶対近寄るなと仰っていましたの!」

 

「えー? 誤解だよフレン。僕は女の子を遊びに誘っているけど、ただ楽しくお喋りしているだけだよ」

 

「いけませんわ……! わたくしも楽しくお茶会でお喋りをしたいのはやまやまですが……そのことが知れたらラズワルドさんがどんな目にあわされるか……」

 

「……たしかに、セテスさんから酷い目にあわされるのは勘弁願いたいね……」

 

「そうでしょう……ですから、わたくしには近寄らないでくださる? では、ごめんあそばせ」

 

 

 フレンはそう言って去っていってしまった。

 

 これで、三連敗か……金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)で僕と一度もお茶をしていない三人に声をかけてみたけど、上手くいかなかった。

 だけど、リシテアが次の機会にと言ってくれたのは良かったな……やっぱりお菓子作戦が功を奏したのだろう。

 

 しかし、フレンとお茶できない理由がセテスさんだとは……どうにかして誤解を解かないといけないな……フレンはオーディンとは二人きりでよく遊んでいたので、僕とは駄目なんてことはないはずなのに……

 

 次に声をかける女の子を探して、あたりを歩いていると大司教レア様がこちらに向かって歩いてきた。

 

 

「ラズワルド、丁度良いところに居ましたね」

 

「あっ、大司教様……僕に何かご用ですか?」

 

「以前、暇がないのでお茶会のお誘いを断ってしまったでしょう? 今は時間が空いているので、私の方からお誘いしてみようと思ったのですよ」

 

 

 えー!? ウソでしょ……

 

 たしかに、以前大司教様をお茶に誘って断られたことがあったけど、大司教様の方から誘いなおしてくるなんて……

 女性からの誘いを僕が断るなんてできないよね! ……緊張するけど楽しみだなー! 

 

 おそれ多いことに、大司教様に大広間三階にある大司教の自室まで案内された。

 

 

「ここが私の部屋ですよ。ふふ……生徒を招くのは、いつ以来でしょうか……本当に珍しいのですよ」

 

「そ、そうなんですか……?」

 

 

 この部屋に招かれた生徒は過去に全くいなかったというわけではないらしい。

 そういえば、前にカトリーヌさんと話したときに生徒時代にレア様の部屋に招かれたことがあると自慢していたので、彼女以来になるのかもしれない。

 カトリーヌさんが今25歳だったので、生徒時代は7,8年前だろうけど、その頃からすでに大司教の地位に就いているレア様は一体何歳なのかな……いや、この話題は考えないほうが良さそうだ……

 

 

「……そう緊張する必要はありません。この部屋にいるのは大司教ではなくただのレアなのですから」

 

「そ、それでも緊張しますよ……」

 

「まあ、可愛い子ですね。私も大司教になってから生徒からお茶に誘われるなんて初めてですからね……それに貴方はあの子、ベレスの仲間……一度、こんな風に話をしてみたかったのですよ」

 

 

 可愛いだなんて……恥ずかしいよ……! 

 この部屋のレア様は大修道院にいるときの普段のレア様と違って威厳のある言動をとらないので、優しいお姉さんみたいだ……これがレア様本来の性格なのかもしれない。

 

 

「貴方たちが入学して、もう半年になりますね……学校生活には慣れましたか?」

 

「はい……いきなり入学したのには驚きましたが……僕たちの国には学校なんてありませんでしたし、いろいろなことをみんなと学べて、今はとても充実していて楽しいですよ」

 

「貴方たちはフォドラの外から来たと言っていましたが、どのような国だったのですか?」

 

 

 レア様は、やはり聞かれると思っていたこと聞いてきた。

 しかし、なんと答えたら良いのだろうか……僕たちの故国イーリス聖王国はこの世界には存在しない国だ。

 あまり、どこにあるか深く突っ込まれるのもいやだしなあ……

 

 

「僕たちの国は……フォドラからはずっとずっと遠くにある場所……とにかく簡単にはたどり着けないような場所にあるんですけど、良い国でしたよ。僕たちは大きな戦争の後、平和になったので傭兵をやりながら世界を旅しようとしてたんですよ」

 

 

 これは嘘は言っていない……前の世界で傭兵として世界を旅して回ろうと思っているときに、女神様から声をかけられたのだ。

 まさか、世界を越えて旅をすることになるとは思ってもみなかったけどね。

 

 

「大きな戦争の後ですか……貴方たちは私が知ることもできない遠い場所から来たようですね……」

 

「はい、それでフォドラに来た時にジェラルト団長と出会って傭兵団に入れてもらったんですよ」

 

 

 ベレスたちと出会ってまだ一年は経っていないが、あれから色々なことが起こったな……としみじみ感じる。

 教団の偉い人やフォドラの将来を担う三人の若い指導者たちとも知り合いになれたから、僕たちは使命に近付けている……そう信じたい。

 

 その後はレア様と他愛のない雑談をした。

 

 僕からは傭兵団にいた頃のジェラルト団長とベレスの話や学校でのベレスの様子を話し、レア様からはジェラルト団長との出会いの話をしてもらった。

 レア様はジェラルトさんと出会った頃から大司教だったのだろうか? そうだったのなら、ますます年齢の謎が……でも、これは聞けないよなぁ……

 

 

 

 □□□

 

 

 

「先生、空から見回ってみたけど、特に変わったところはなかったわ」

 

「わかった。ありがとう、ルーナ」

 

 

 今日は先生とジェラルト団長とともにルミール村に来ていた。

 たまたま、団長と出発しようとしていた先生を見かけたので暇だったからついて来たのだ。

 団長と先生の他には、調査を依頼されたマヌエラ先生と団長たちを見つけて無理やりついて来たレオニーがいる。

 

 最近、ルミール村では異変が起きているらしい。

 村人たちの様子がおかしく、落ち着きなく動き回る、攻撃的になる、逆に寝込んでしまい眠ったまま起きない等の症状が見られるみたいだ。

 

 

「……これだけちぐはぐな症状が見られるなら、疫病の類いではないわ……考えられる原因は、複数の毒物か、魔道……しかも闇の魔道か、呪術の類か……その辺りじゃないかしらね」

 

 

 マヌエラ先生が村人を診察して回った後に考察を口にしていた。

 

 

「呪術か……それなら、オーディンを連れてきたら良かったな」

 

「レオニー、アイツには調査なんて無理よ。アイツができるのは、教えてもらった呪術を使ったり自分好みに改造することくらいだし……」

 

「うーん……でもさ、呪術を専門にしている奴っていったらオーディンくらいしか知らないぞ? わたしたちが調べて回るよりは何かわかるかもしれないし」

 

 

 まあ、オーディンもいないよりはマシだったかもしれない……呪術の詳細が分からないにしても、妙なところで勘が良いから何か別のことに気付いていたかもしれないし。

 最近のアイツは、戦術の才能にしろ観察力にしろアイツの父親である天才軍師に本当に似てきているから……

 

 

「教団には詳しい人はいないの?」

 

「騎士団にはそんな奴はいねえな……」

 

「あの堅物髭男は呪術は専門外だろうし、教団にもそんな人材は多分いないわね……書庫番のトマシュさんなら何か役に立つ書物を知ってるかもしれないけど、最近は留守にしていることが多いみたいなのよね……」

 

 

 先生の問いかけに団長とマヌエラ先生が否と答える。

 堅物髭男というのはハンネマン先生のことよね? ……マヌエラ先生は昨日もハンネマン先生と言い争っていたらしいけど、そのことをまだ怒っているらしい。

 

 

「次の調査ではオーディンの奴を連れてくるか……俺は別件で帝国に任務で行くから、また後日だな」

 

「師匠、最近働きすぎなんじゃないの? 修道院にもあんまり帰ってきてないしさ」

 

「全くそのとおりだぜ……レア様も人使いが荒い。ルーナ、早くお前らが卒業して役に立ってくれよな」

 

 

 そう言って団長はあたしに向かって声をかけてきた。

 役に立つ? 何の話だろ? 

 

 

「……なんだ? オーディンから聞いてなかったのか? 卒業したら俺の下で騎士として働いてもらうって話をしてたんだけどな……」

 

「オーディンの奴、そんなこと言ってなかったんだけど……まあ、団長の部下としてなら働いてあげてもいいわよ。騎士っていうのは柄じゃないから傭兵としてのほうがいいけど」

 

 

 柄じゃないのもあるが、実際は騎士になるよりも傭兵の方が使命を果たすために身軽に動けそうだからだ。

 教団の騎士になってしまうと、団長のようにいそがしくこき使われそうだ。

 

 

「あっ、傭兵としてならわたしも雇ってくれよ! わたしも師匠と一緒に働きたいよ!」

 

「レオニー……あんたも?」

 

「お前らが傭兵か……シャミアみたいな例もあるし、問題ないぞ。しかし、騎士になるより傭兵がいいなんて変わった奴らだな……お前らくらいの年のやつなら騎士の方が良いだろうに」

 

「騎士を辞めて傭兵になってた団長に言われてもねぇ」

 

「わたしは師匠に憧れて傭兵になることが夢だったんだ。いつか師匠みたいな傭兵になってみせるよ」

 

 

 この感じだとレオニーは同僚になりそうね。

 いっそのこと金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)の騎士志望の人たちを推薦してみるのもいいかもしれない。

 戦闘力の高いラファエルや指揮と観察力に長けるイグナーツなんかは欲しい人材よね……

 でも、それより気になることがひとつある。

 

 

「そういえば、先生はどうするの? このまま来年も士官学校で教師をするつもり?」

 

「うーん……わからない。大司教に聞いてみる」

 

「先生って教師が天職なんじゃないかな。師匠の手伝いならわたしたちがするから教師を続けてもいいんじゃないのか?」

 

「あたくしもそう思うわ、先生は立派な教師よ。あたくしだって貴女から学ぶことは多いわ」

 

 

 レオニーやマヌエラ先生は先生(ベレス)が教師を続けた方がいいと思っているようだ。

 あたしも先生は教師に向いていると思っているけど……先生はこの世界を救うための重要人物のような気がするのよね……なるべく一緒に行動したいのだけど……

 

 

「ベレスが教師を続けてたら、来年もいざってときにこうやってガキどもを使えるかもしれないからな……悪くねえな」

 

「あっ、それ良いわね。じゃあ、もしつづけることになったら教師をしながらあたしたちを手伝うっていうのはどう? 来年の生徒も経験が積めるでしょうし」

 

「ちょっと、ジェラルトさん、ルーナ。士官学校の生徒は便利屋じゃないのよ……今年はそういう課題が多かったからやむ終えず手伝っているだけで、本来は勉学に励むことが学生の本分なのよ……」

 

 

 マヌエラ先生がまるで教師のような真面目なことを言っている。

 いや、お酒を飲んでいない状態のマヌエラ先生はちゃんとした教師なのだ。

 

 

「私はかまわないよ」

 

「まあ……先生がそういうのなら、あたくしもこれ以上は言わないけど」

 

「じゃあその件は決まりだな。今日の件は取りあえず調査は終わりだ……この村にはしばらく連絡要員を配置しておくから、何かあったら教団に連絡が入るだろうさ」

 

 

 騎士団の調査が来たことで、闇魔術や呪術を使って何か良からぬことを企んでいる者たちを動きにくくさせることができるはずだ……次の調査で原因を暴いてやるんだからね……! 

 

 

 

 

 




少し投稿が遅れてすみません。

次話は今週の日曜日くらいに投稿したいです。
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