ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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第39話『ルミール村の狂乱』

 俺は“漆黒のオーディン”、このフォドラに新たな革新的技術を創造する、選ばれし闇の呪術士だ。

 

 

 シルヴァンから〈ハルバーディア〉というスレン地方特有の上級槍歩兵の話を聞いて「これだっ!」っと思ったのだが、新しい兵種を作る一件は思った以上に難航していた。

 他の国や地方には存在しているとはいえ、必要な技能や試験のやり方などがいまいちわからないのだ。

 前の世界にあったようなチェンジプルフやマスタープルフがあれば条件は違ったのだろうけど……チェンジプルフ、マスタープルフとはその人が持っている素質から別の兵種にクラスチェンジできるもので前の世界で兵種を変更するときはそれを使っていた……各種試験パスはそれらと少し似ているので、それを調べてみるとするか……

 

 

 

 ◇◇◇

(赤狼の節 二十五日)

 

 

「コロス! コロス! ウアアアア!」

 

「フフフフフフ……! アア……ヴァア……!」

 

「助けてえ! 助けてよおー!」

 

 

 ルミール村の様子が一変したと報告があって、急遽駆けつけると村は酷い有り様だった。

 正気を失った村人が暴れ、逃げる村人を襲い、村中の家が火事で燃えていた。

 

 

「何だこりゃ……何がどうなってやがる……」

 

「うは……まさに地獄の様相だな。誰が正気を保っているかもわかりゃしない」

 

 

 救援部隊の指揮官であるジェラルトさんも絶句し、クロードも呆然としている。

 

 

「これ、何か手を打たないとどんどん悪い状況になりそー……」

 

「でもどうすれば……」

 

 

 先生もどうすればいいのかわからず困惑しているが、ヒルダが言う様に早く手を打たないと犠牲は増えるばかりだろう。

 

 

「先生。俺の闇魔法や白魔法の〈リザイア〉なら、ある程度安全に暴れる村人を気絶させることができます。魔法職を軸に戦闘しましょう」

 

 

 俺の闇魔法は鷲獅子戦で不殺を実証済みだし、白魔法〈リザイア〉は体力を奪う性質上加減をすれば命を奪わずに相手を昏倒させることができる。

 魔法が使える者はローレンツを除いて理学と信仰の両方を習得しているので金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)の魔法職の生徒はほぼ全員〈リザイア〉が使える。

 俺とリシテア、マリアンヌ、フレンほか2名と先生が先日〈バトルシスター〉の兵種になれるようになったので計7名だ。

 

 

「……妙な人たちがいるね」

 

「ラズワルド、あんたも気づいたのね。村人に紛れて、怪しげな連中がうろついているわ。あいつらが元凶なら……」

 

「怪しい連中は魔法職が少ないセイロス騎士団に任せよう。それでいいですかね、ジェラルトさん、先生」

 

「ああ、方針は決まったな。俺たち騎士団は怪しい連中の排除及び捕縛、ベレスはガキどもを率いて村人の救出だ」

 

「わかった。三部隊の第一編成……オーディンは西側、クロードは東を頼んだ。私の部隊は中央で騎士団とともに行動する。……作戦開始!」

 

 

 先生の号令とともに行動を開始する。

 指揮官は〈トリックスター〉この俺“漆黒のオーディン”、次席指揮官リシテア〈ウォーロック〉、ルーナ〈ペガサスナイト〉、ラファエル〈グラップラー〉、その他〈アサシン〉〈パラディン〉〈フォートレス〉〈ウォーリアー〉……金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)は既にほぼ全員が上級職となっている。

 

 

「闇へ沈め……〈ミィル〉!!」

 

「眠りなさい! 〈ドーラΔ〉!」

 

 

 俺とリシテアが放った闇魔法で暴れている村人たちが倒れる。

 リシテアのやつは話を聞いてなかったのか……〈リザイア〉ではなく、普通に闇魔法を使っている。

 

 

「……おい、リシテア。お前は〈リザイア〉の方を……」

 

「馬鹿にしないでください。わたしだってあんたと同じことくらいできます」

 

 

 それならいいのだけど……最近、妙にリシテアは俺に対抗意識を剥き出しにしてくる……正直やりずらいぞ……

 

 

 

「見ろ! オデの筋肉!!」

 

「オーディン、こっちの村人はあらかた救出できたわ……あたしたちも怪しいやつらをとっちめてやりましょ!」

 

「よっしゃ! ルーナ、上から偵察して怪しい連中を見つけてくれ」

 

 

 ラファエルも素手で暴れる村人たちを気絶させていき、こちらは既に鎮圧できた。

 ルーナに上空からの偵察を頼み敵の指揮官を探させる。

 

 

「オーディン! 南方に騎兵部隊……あいつ……死神騎士よ!」

 

「なにっ……!?」

 

 

 ここで死神騎士が現れるということは……この騒動の元凶は例の“炎帝”か……! 

 死神騎士は一直線でこちらに向かって来ているようだ。

 

 

「死神騎士は俺とルーナで相手する」

 

「わたしの〈ダークスパイクТ〉で倒したほうが良いんじゃないですか……?」

 

「少し事情があるんだ……ルーナ、殺すなよ」

 

「…例の事ね。わかってるわよ……まったく、無茶言うわね……」

 

 

 死神騎士はメルセデスの弟エミールだ。

 ルーナには以前その事を話しているので理解してもらえたが、メルセデスに救うと約束したからな……それに、ここで生け捕りにできたら“炎帝”が何を目的にしているかもわかるはずだ。

 

 

「また貴様らか……」

 

「もう用がないとは言わないんですね、イエリッツァ先生……」

 

「俺はイエリッツァなどではない……」

 

「じゃあ、エミールと言ったほうが正しいのか?」

 

「……!!」

 

 

 死神騎士は俺の言葉には答えず、鎌を振りかぶって突撃してきた。

 ルーナが俺との間に入り、死神騎士と槍を打ち合う。

 

 

「嘗めんじゃないわよ……!」

 

「食らえ……! 〈ミィル〉!」

 

「チッ……!」

 

 

 闇魔法〈ミィル〉で地面から攻撃し、馬から倒す作戦だ。

 ルーナは飛行兵種だから魔法の誤射を心配する必要はないしな。

 守備に長けたルーナが死神騎士の攻撃を上手くいなし、俺の闇魔法でじわじわ削っていく。

 

 ──よしっ! あともう少しだっ……! 

 

 

「フン……随分手こずっておるな死神よ……」

 

「……貴様!? ……ミュソン……!」

 

 

 突然現れた男に死神騎士が驚きの声を上げる。

 新手か? ミュソンという名の魔術士のようだが……纏う闇の雰囲気が尋常じゃない。

 

 

「フン、ソロンの実験とは別に儂も試したいことがあったのだ……薄汚い獣の末裔同士、ここでどちらも朽ち果てるがいい」

 

 

 ミュソンはそう言うと強大な魔力を放った。

 

 空には無数の魔法陣が出現し、その中心にまるで眼球のような光が現れる。

 そこからボトリ、ボトリと無数の()()()()()()()が落ちてきた。

 

 

「あれは……まさか……そんなはずは……」

 

 

()()()()()()それを目にしたとき、全身が粟立つのを覚えた。

 

 

「なんですか……あれ?」

 

「オデにはわかんねえな……オーディンくんとルーナさんは何か知ってるのか?」

 

「し、屍兵(しかばねへい)なの? ……冗談でしょ……」

 

 

 生気のない肌……赤く光る眼孔……身に纏うおぞましい瘴気……間違いない……屍兵だ……! 

 

 

「さあ獣の末裔どもよ……亡者どもと踊るがよい……!」

 

 

 ミュソンはそう言うと転移魔法で姿を消した。

 

 

「全員、戦闘準備!! コイツら全て敵兵だ!!」

 

 

 ……クソッ! ……数が多いし、囲まれている……! 

 屍兵どもは一斉に襲いかかってきた。

 部隊は混乱しながらもなんとか応戦している。

 

 

「リシテア! ラファエル! みんな! 確実に止めを刺せ! こいつらは中途半端に攻撃しても動きを止めないぞ!」

 

「な、なんでそんなこと知ってるんですか……!?」

 

「説明してる暇はないわ! 今は生き残ることに集中しなさい!!」

 

「うおおおぉ!! ぶっ飛べぇ!!」

 

 

 屍兵は死神騎士たちにも襲いかかっているようだ。

 精鋭部隊のようだったが、やつらも混乱している。

 

 

「チッ……! ……ここは、退こう」

 

 

 死神騎士を先頭に屍兵をなぎ倒しながら、敵の部隊は幾らかの犠牲を出しながらも撤退していった。

 

 

 ──緊急事態発生、状況不明、合流セヨ

 

 ──撤退スル、許可ヲ

 

 

 先生とクロードの部隊から信号呪術が空に上がっている。

 

 

「中央へ退いて先生たちの部隊と合流する。ルーナ、先に先生に合流して説明を頼む! クロードの部隊にはラズワルドがいるから大丈夫のはずだ」

 

「わかったわ! ……あんたも無茶しないでよ」

 

「なあ、気絶させた村人たちはどうするんだぁ?」

 

「……置いていく。正気の村人たちを守りながら退くぞ」

 

「……怪物たちが気絶した人を襲わないことを祈りましょう」

 

 

 リシテアはそう言っているが、おそらく助からないだろう……やつら、屍兵は眠っている人間や気絶している人間……生きている者にお構い無しに襲いかかる。

 ……俺の責任で気絶させた村人たちは死ぬこととなる。

 

 

「ラファエル、リシテア、先陣で突破口を作ってくれ! 俺は殿を努める! ……全員、生き残るぞ……! 運命を共に……!!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 先生たちのいる中央の部隊と合流した後は、村の中心部にある林を使って屍兵を迎え討つ。

 この屍兵は数が多くて厄介だが、そんなに強くはないようだ。

 

 この屍兵はおそらく召喚のみで術者や強力な個体による制御はされていないパターンだな。

 術者や強力な個体に制御されているとその屍兵は強くなるが、制御している者を討てば屍兵は全て消滅させることができる。

 逆に制御されていない屍兵は術者を倒しても消えないので殲滅する必要がある。

 

 

「チッ……村人はだいぶやられちまったな……ガキどもに被害は出てないか?」

 

「なんとか……三人のおかげで」

 

 

 先生とジェラルトさんも初めて相対する屍兵に困惑していたようだけど、俺たちと合流してからは持ち直したようだ。

 

 村に召喚された屍兵はほとんどを殲滅できた。

 

 

「……ほう、まさか生き延びるとはな……不吉なる“凶星”よ」

 

「トマシュさん! あんた、こんなところでいったい……怪しげな連中に指示を出してたよな……?」

 

 

 戦闘が終わり声をかけてきた人物を目にしてクロードが驚きの声を上げた。

 トマシュさんがなんでこんなところに居るんだ? 怪しげな連中に指示を……? 

 

 

「わしはトマシュなどではない……我が名はソロン、人の世の救済者だ……!」

 

 

 そう言うとトマシュさんは姿を変えた。

 青白い肌、黒い眼球……まるで人ではない……ナニカのようだ。

 

 

「どうだ、驚いて声も出ぬか? 仮の姿にまんまと騙されおって。わしがガルグ=マクに潜んでおったのは、フレンという小娘の血を手に入れるため……この血があれば、我らはまた一歩、大望の実現へと近づく……!」

 

 

 フレンを拐った首謀者はトマシュさん……いや、ソロンだったのか……

 

 

「貴様らは何者だ? 屍兵を召喚する術をどこで手に入れた……?」

 

「屍兵……? ああ、亡者どものことか……我らの技術を見て驚いているようだな」

 

 

『我らの技術』か……こいつら独力で屍兵を召喚する技術を手に入れたのか……とんでもないやつらだ。

 

 

「貴様、なぜこの村を狙った? 何を企んでやがる!!」

 

「フン、実験台など誰でも良かった。成果は十分……帰らせてもらうぞ」

 

「おい、待て! ちっ、消えちまったか……」

 

 

 ソロンは転移魔法で消えてしまった。

()には転移魔法を使う者が多いな……逃がさないように対策を打たなければいけないかもしれない。

 

 

「終わったな……切り替えなきゃいけないか。俺は村ん中を見回ってくるよ。まだ助けられる人がいるかもしれない」

 

「待て、クロード……はぐれの屍兵がまだ残っているかもしれない……見回りは何人かで組んでしよう」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 先生やジェラルトさんとともに焼け落ちた村の後で事後処理を行っていた。

 村中を探しても俺たちとともに行動して守った村人たち以外に生き残りはいなかった。

 

 

「どうにか片づいたな……。犠牲も……多かったが、生き残りも僅かにいる。奴ら、実験台は誰でも良かったとぬかしていやがったな。あいつらのせいで、ルミール村の連中は……」

 

「オーディン。……()()……そう呼んでいたよね……何か知ってるの?」

 

「ええ……あれは……」

 

「ここにいたか、ベレス」

 

 

 先生に説明しようとしたら仮面を被った怪しげな風体の人物が現れた。

 突然人が現れることにもう驚きはしない……やつらは転移魔法について高い技術を持っているのだろう。

 

 

「その姿……お前が、炎帝か」

 

「いかにも。我が配下の死神騎士が世話になったな」

 

 

 ジェラルトさんが“炎帝”と会話をしている。

 俺は、以前邂逅したときにすぐ気絶してしまったから見たのは一瞬しかないが、思っていたのと印象が少し違うな……ミュソンやソロンのような禍々しさは感じない。

 

 

「世話になったとは随分な挨拶だな。お前がこの村を無茶苦茶に……」

 

「勘違いするな!」

 

「なに?」

 

「ソロンは確かに協力者だが、同じ目的で動いているわけではない。このような行い、事前に知っておれば我が必ず止めた。それは断言しよう」

 

「……たしかに、屍兵は死神騎士の部隊も襲っていたな」

 

 

『協力者』ということは手を組んでいることは間違いないが、仲間というわけではないらしい。

『同じ目的』……それが気になるな……

 

 

「……口では何とでも言える。とりあえず大修道院まで来てもらおうか」

 

「できぬ相談だ……が、我と貴様らとで手を組むというのであれば受けよう」

 

「何だと……?」

 

「放っておけば、彼奴らはまた凶行を繰り返す。それを止めたくないのか? 特に天帝の剣を持つ貴様の力があれば、ソロンなど敵ではない……」

 

 

 “炎帝”の狙いは天帝の剣を持つ先生か……ソロンも先生を“凶星”と呼び一目を置いていたみたいだからな。

 

 

「……手を組もう」

 

「……だそうだ、炎帝。……まずは貴様の目的とやらを教えてもらおうか」

 

 

 先生に追従して、話を広げる。

 コイツらの目的が何か分かれば今後は動きやすくなる。

 

 

「そう怒りを露にしていては、嘘ということが丸わかりだ……」

 

「……」

 

「その選択、後悔するでないぞ……」

 

 

 “炎帝”はそう言い残すと転移魔法で姿を消した。

 

 

 

 




闇うごwith屍兵
金鹿の終盤で見せた技術なら違和感がないかなと思いブチ込みました


補足
屍兵(しかばねへい)
名称はFE覚醒で登場する敵ユニットのこと
風花雪月の「古代兵」のように死者を復活させ使役する闇うごの技術…覚醒の屍兵とほぼ一緒だからオーディンたちはそう呼んでいる

急に現れて〈レスキュー〉で帰っていく闇うご縁の皆さん…同じ展開ですみません
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