ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン 作:すすすのすー
(大樹の節 二十一日)
俺は“漆黒のオーディン”、叡知の迷宮に身を委ね、深淵を覗かんとする闇の呪術士。
俺は大修道院二階にある、書庫を訪れていた。
この書庫は、外部の人間である商人や傭兵は、入ることが許されていなかったのだが、士官学校の生徒になったことで入れるようになった。
ずっと気になってたんだよなー、この世界の伝説の武器とか、英雄の伝承とかが。
傭兵仲間に口伝で聞いた内容だけでも血が騒ぐような話がたくさんあったが、その資料がこのガルグ=マク大修道院の書庫に大量にあるのだ。
──伝説の武器、英雄の伝承を探さなければっ! ……探し出しっ、漆黒のオーディン、新たなる伝説の糧……礎とするのだ!
しかし、それにしても本が多いな。
ジャンル分けはされているし、生徒閲覧不可の場所も分かりやすく表示されている。
武器とか英雄とかの分類って何になるんだろ? 伝承とか実話系物語になるのか?
──探し出すのに時間がかかりそうだな……闇の力を使うか。
「……この気配……そうか。ついに、やつら
「……書庫で何かお探しですかな?」
おっと、闇の力で目当ての本を探索していると、誰かから声をかけられた。
杖をついて腰が曲がった、穏やかそうな顔をした爺さんだな。
ここの書庫の人だろうか?
「わしは書庫番のトマシュ……なにかお探しの本でもありますかな?」
「あっ、書庫番さんでしたかー。実は伝説の武器やフォドラの英雄についての本を探しているんですよ」
「伝説の武器……英雄の遺産のことですかな? それならあちらの一角に歴史や伝承について記述されたものが有りますぞ」
「本当ですかー! トマシュさんありがとうございました」
書庫番のトマシュさんが教えてくれた場所に行くと、その一角全てが英雄の遺産やそれを使った英雄たちの書物だった。
ヤバい、こんなにいっぱいあるのか!
こりゃしばらく通い詰めないとな!
──……血が騒いできたぜっ!
◆◆◆
(大樹の節 二十七日)
4月の終わりに、学級対抗戦があるので、その前に予行試合を兼ねて
開催予定の場所は、前日に罠等を仕掛るのを防止するため使用できないが、ガルグ=マク郊外の似た地形の場所で、演習を行うことになった。
ちなみに、先生はすでに出場メンバー4人は決めてるらしく、先生とクロード、ローレンツ、ラファエル、マリアンヌが出場するらしい。
ルーナが、自分が出場メンバーに入っていないことで不満を言っていたが、先生が「ルーナ達がいると簡単に勝ちすぎる」「これは模擬戦、勝つことも大事だが成長も大事」と言ったことで、一応納得していた。
◇◇◇
俺たち、仮想
リーダーはこの“漆黒のオーディン”。
メンバーはヒルダ、イグナーツ、レオニー、リシテア。
ルーナとラズワルドは仮想
「でー? オーディンくん、作戦はどんな感じにするの?」
「フッ、我々の作戦は、金色の鹿と偽りし青き獅子を争わせ、漆黒の鷲は獲物を前に静かに爪を研ぐ……」
「あの、なに言ってるのか全然っわからないんですが、もっと分かりやすく言ってもらえます?」
リシテアが理解できないと文句を言う。
リシテアは
エーデルガルトのような白髪で背も低く、年相応だ。
だが、座学や魔法の成績は
だけどそんなんだから、お子様扱いされるんだよ、俺の闇の言霊のセンスがわからないとは……
「ルーナたちが先生たちに突撃するだろうから、俺たちはしばらく様子見するってことだ」
「急に、わかりやすく……言えるのなら最初から、そう説明してほしいんですが……」
「そう簡単に上手くいくかー? あいつらもそれなりの傭兵なんだろ?」
レオニーが疑問を投げかけるが、あいつらそれなりどころか歴戦の戦士なんだよな……
ただ……
「ルーナの性格からいって、間違いなく突撃する、リーダーもルーナだし他の連中も従わざるをえない」
出場メンバーに選ばれなかったことに、表面上は納得していたが、ルーナの性格的に絶対に鼻を明かしてやろうとするだろう。
ラズワルドもルーナに反対までして自分で作戦を立てるやつじゃない。
ほぼ俺の予想は正しいはずだ。
「ぼ、僕達にも、一応の勝機はあるということですね……緊張してきました」
「問題は先生の作戦だな、どういう風にくるのか予想がしづらい」
先生の存在にも注意を促す。
付き合いはまだ半年も無いがあの人は部隊の指揮能力も底知れない。
一応、先生がどういう風に来ても戦えるようにしておかないとな。
「クロードも厄介ですよ、いつも策略を張り巡らしてるから、先生の戦術と組み合わせたら……」
「ま、何かをしかけて来るって分かって構えてとけば、動揺は少ない……なんとかなるもんさ」
「まったく、補欠で良いなんて言っちゃったからって、まさか先生たちと戦わなきゃいけなくなるなんて、運がないなー」
リシテア、レオニー、ヒルダもそれぞれ意見を言う……ヒルダのはただの愚痴か。
──さあ、そろそろ始まる……仲間たちよ! 運命を共に……!!
◇◇◇
開始の笛の合図が鳴ったことで三チームとも動き出した。
審判役は模擬戦に参加しない生徒たちだ。
実際の学級模擬戦は、セイロス騎士団から人が派遣されるらしいが、今日の模擬戦は自主的なものなので審判も生徒が務めるのだ。
開幕早々、五人で一気に金鹿出場チームに向かって行くのは仮想青獅子チームだ。
ルーナとラズワルドを先頭に迷いなく金鹿チームに向かって行く。
一方の金鹿チームは、ローレンツが前に出たと思ったら、ラファエルと先生も続いて前に出た。
慌ただしそうにしてたので、もしかして足並みが揃ってないのか?
ルーナとラズワルドは迷いなくローレンツを討ち取ろうと動くが、先生やラファエルに阻まれ、他の仮想青獅子チームも混ざり乱戦になる。
「おおー! オーディンの予想通りですね。変なことを言うわりに、作戦能力はあるんですね」
「変なことは余計だ、リシテア」
「これなら、今みんなで向かったほうが二チームとも倒せないか」
レオニーが提案する。
うーん、今突っ込んだら確かに勝ったチームが立て直す前に攻撃できそうだ……
金鹿チームが思ったより苦戦してたからな。
「あっ、見てっ!」
ヒルダが声を上げた先を見た。
乱戦状態の中にクロードとマリアンヌが弓と魔法を射ちまくってる。
これ、弓はともかく魔法は味方に誤射するんじゃ……いや、マリアンヌの白魔法はしっかり制御されている。
マリアンヌってあんなに魔法が上手かったのか。
クロードの弓もマリアンヌの魔法も上手く青獅子チームに当たり、青獅子チームの生徒が二人やられる。
結局、人数が有利になった金鹿チームが仮想青獅子チーム全滅させ勝ったみたいだ。
ルーナとラズワルドが粘ってローレンツを倒したので、金鹿チームは四人になった。
「よしっ! 回復魔法で立て直される前に一気に攻めよう!」
レオニーが鼓舞して出撃しようとしたが……
俺は今まで煮詰めてきた、重大なプランを提案する。
「……まて、リーダーとして一つ提案がある……」
「なんだ、新しい作戦か? もう行って戦ったほうが早くないか?」
「……そんなことよりも、重要なことだ。みんなの登場シーンについて考えてきた」
みんなが一気に俺の顔を凝視する。
なんだ、そんなにきになるのか? 五人みんなでポーズしながら登場したら、さぞ……
「いいからっ、さっさと行くんだよっ! ばかっ!」
「オーディンに期待した私がどうかしてました……」
「あちゃー。先行くねオーディンくん」
「い、急ぎましょう、皆さん」
みんなー、まってくれよー
◇◇◇
人数は5対4、相手は戦闘後なので、人数的にも体力的にもこちらが有利だ。
先生、悪いが勝たせてもらうぞ!
「ヒルダ、リシテアでラファエルを倒せ! レオニーは先生の抑え、俺とイグナーツはクロードたちを抑える!」
「仕方ないなー、やっちゃうよー!」
「負けませんから」
「先生、勝負だっ!」
「イグナーツ、マリアンヌを狙え! 魔法を撃たせなくするだけでいい!」
「は、はいっ!」
ラファエルを倒せれば、あとは一人づつ人数の有利で潰していけばいい。
レオニーは槍使いだから、先生の剣に対して有利だ、実力差があっても粘れるだろう。
「その身で学んで! ハァーッ!」
「いたぁっ!」
と、思っていたらレオニーが倒される。
レオニー一撃!? 先生、本気出しすぎだろ!
援護に入ろうとした瞬間、顔の前を矢が通りすぎる。
「クロード! 邪魔するなっ〈リザイア〉!」
負けじとクロードも射返してくる。
演習用の矢なので矢じりが付いていないやつだが、当たった場所によって一撃で撃破判定になることもある。
先生は、ラファエルを倒そうとしているヒルダとリシテアを強襲していた。
「みえたっ!」
先生がヒルダの斧を避けつつ、剣を撃ち込んでいく。
「いたぁい! せんせー手加減してよー!」
ヒルダも倒されたか……先生の動きが速すぎる。
「いい加減倒れなさい! 〈ドーラΔ〉!」
「ぐはぁっ! オデの筋肉があぁ!?」
だけどヒルダの足止めのおかげで、ラファエルは倒すことができた。
「リシテア! 先生には近寄らせるな! 瞬殺されるぞ!」
「そ、そんなこと、言われましてもっ!」
先生はリシテアを狙って突っ込んで、リシテアも魔法を撃ち迎撃しているが厳しそうだ。
クロードがいつの間にか位置を入れ替えたのか、俺の相手はマリアンヌ、イグナーツはクロードと弓を撃ちあっている。
リシテアは先生に倒され、イグナーツはクロードに倒されてしまった。
マリアンヌとの〈リザイア〉の撃ち合いでは倒すことはできなかった……
1対3、一気に負けが濃厚に……
「さて、オーディン……あとはお前一人だ。どうする、降参するか?」
「フン、知れたことを……“漆黒のオーディン”の辞書に降参などという文字は無い。勝ちたかったら、俺を倒してみろ!」
かっこいいポーズを決めながら、クロードたち三人を見据える。
──俺の英雄の血はこういう状況こそ滾ってくるものだ
──さあ、まだ勝負は終わってないぜ!
──……魂が躍動する!
「導いてみせるっ! ハァーッ!」
「恨まないでくれよ……よっ!」
「ごめんなさい……やあーっ!」
がはぁっ!
◇◇◇
「あんたって本当バカねー。あんな状況で勝てるわけ無いんだから、さっさと降参しなさいよ」
「男には負けるとわかっていても戦わなきゃならないときがある……」
「さっきのが、戦わなきゃいけないときとは思えないけどね……」
うるさいな! お前らだって降参せず戦ってただろ!
まあ、ルーナたちが粘って一人倒してくれて、こっちも有利になったんだけどな。
ちなみに、金鹿チームが最初に慌ただしかった理由は、ローレンツが勝手に突出してしまったことが原因らしい。
ローレンツは先生に呼ばれて、相当怒られたみたいなので本番では言うことを聞くだろう。
先生は仮想青獅子チームは突撃、仮想黒鷲チームは様子見する、という俺たちの行動を読んでいたらしく、仮想青獅子チームは近くの森で待ち伏せし迎撃、倒した後で仮想黒鷲チームと戦う予定だったらしい。
現在、俺たちは学校に戻り、参加していない生徒たちを含めた全員で反省会と本番に向けた作戦会議をおこなっていた。
「私もクロードとの話だけで、作戦を決めてしまっていた。開始前から、ローレンツや他のみんなに周知しなかったのも序盤の苦戦の原因……反省している」
「ってことで、みんなで作戦を立てることになった。日にちはあまりないが、忌憚なく意見を出し合おう」
先生とクロードが前に立ち、司会をしている。
「やっぱり、勝ちにいくんだったらオーディンくん達に出場してもらったほうがいいと思うんですけどー」
「……はい、私なんかが出てもご迷惑をおかけしてしまうかと……」
「あっ、マリアンヌちゃん……そういう意味じゃないよ! マリアンヌちゃんはさっきも頑張ってたでしょー!」
「オーディンたちは出さない。彼らを出して勝っても実戦経験豊富な傭兵達の力で勝った、と言われてしまう。私は
先生はあくまで、もともとの金鹿の生徒たちでの勝利ということにこだわるらしい。
個人的には、いきなり入学してきた俺たちが、圧倒的な力を見せつけて、他の学級の生徒たちが驚愕する、みたいなのもかっこいいからアリだと思うんだけどなー
「マリアンヌの白魔法は欠かせない。あなたは攻撃と守備の要」
「……自信がありません」
「あなたならできる」
「マリアンヌちゃん、ファイトだよー!」
先生とヒルダがマリアンヌを励ましている。
実際、うちの学級は魔法を使える人間が初歩しか習っていないローレンツ含め6人しかいない。
白魔法を使える人間のうちリザイアまで使えるのは俺とマリアンヌだけだ。
仮想青獅子チーム相手でも、俺の相手をしても活躍していたし、白魔法だけならば俺と引けを取らない。
「ラファエル、あなたの筋肉にも期待してる」
「うおおお! オデの筋肉に任せてくれよ、先生!」
さっきの戦いは、ラファエルを倒すのに時間がかかったので負けてしまったという要因もある。
ラファエルのパワーとタフネスはチームの武器になるだろう。
「ローレンツ……あなたも」
「わかっているよ、先生。僕に挽回のチャンスをくれたことに感謝する」
「クロードもあなたを推薦していた。期待している」
「……! クロード、君が?」
「出場できないと文句を言うと思ってのことさ……ま、実力は十分あると思うぜ」
「フッ、みんな、見ていてくれ! このローレンツ=へルマン=グロスタールの勇姿を!」
ローレンツはさっきの模擬戦ではクロードに対する対抗心からか突出してしまい、自分のせいで敗北しかけたのを先生の指揮と剣技で逆転したのを目の当たりにして、先生の指揮に従うことを誓ったらしい。
「あたしたちの代わりに出るんだから、負けんじゃないわよ!?」
「みんなで、楽しく応援するよ」
「……この“漆黒のオーディン”を倒したのだ……お前たちの力は証明されている」
出場組も応援組も士気は十分だ。
きっと、本番も勝つことができるだろう。
俺たちの戦いはこれからだ!
戦闘シーン難しすぎ筆折れそう
金鹿チームが負けちゃうと色々面倒なことになるので、先生が無双したということで…
補足
・槍は剣に対して有利
FE覚醒、FEifにあった三すくみのこと。覚醒は剣→斧→槍→剣
ifは剣・魔法→斧・暗器→槍・弓→剣・魔法
武器レベルで与ダメージ、命中、回避に補正がかかる。
なお、FE風花雪月では三すくみは廃止されて、スキルとして〈剣殺し〉(槍術Bで習得)などになる
よって、オーディンの指示は技能レベルの低い現段階では意味はない