ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

51 / 88
第43話『約束』

 俺は“漆黒のオーディン”、“狂気の天才策士”の異名を持つ天才軍師であり、選ばれし闇の呪術士だ。

 

 

「……はいッ! お集まりの紳士淑女の皆様、大変長らくお待たせしました! これより、来る舞踏会に先立ちまして……白鷺杯を開催致しますぞ!」

 

 

 アロイスさんの司会で白鷺杯が進行されている。

 白鷺杯は舞踏会の前の余興として数年前から開催され始めた比較的新しい催しだが、優勝者は貴族の社交会でもちょっとした噂になる程度に有名になれるらしい。

 優勝賞品には特殊職〈踊り子〉になることができる〈踊り子の秘伝書〉をもらうことができるが……俺としてはそちらの方が興味あるかな。

 

 〈踊り子〉は前の世界でも特殊職として存在し、踊りを見せた相手を鼓舞し、支援できる特別な兵種だった。

 〈踊り子の秘伝書〉を解析出来れば新たな兵種への発想が生まれるかもしれない。

 

 

「判定人は不肖アロイス=ランゲルトと! ミッテルフランク歌劇団の元歌姫、マヌエラ=カザグランダ! セイロス騎士団の歴戦の騎士、ギルベルト=プロスニラフ! そして、漆黒の闇に舞う華麗なる刺客、シャミア=ネーヴラント! 以上四名により厳正公平に判定いたします!」

 

「よろしく。当然だけれど、あたくしは自分の学級を贔屓したりはしないからね?」

 

「……よろしくお願いします」

 

「今年の判定人は四人か……」

 

 

 判定人はアロイスさん、マヌエラ先生、シャミアさん……そして、ギルベルトさんの四人だ。

 こういう催しにギルベルトさんが参加しているのは珍しいな……

 白鷺杯は新しくできた催しなので毎年ルールが微妙に修正されたり付け加えられたりしている。

 今年は舞踏会の楽曲に合わせて踊る課題舞踊と自分で自由に踊る自由舞踊の二つで競うらしい。

 

 

「それでは! 各学級の代表者は、壇上へどうぞっ!」

 

 

 アロイスさんの言葉で各学級の代表である三名が壇上へ上がった。

 黒鷲の学級(アドラークラッセ)はドロテア、青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)はアネット、そして我らが金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)からはラズワルドが代表として出場する。

 

 

「さあ、お三方! 楽団の方々も! 準備はよろしいですかな?」

 

「久しぶりの舞台ね……」

 

「頑張ります!」

 

「みんなが僕をみてる……は、恥ずかしい……」

 

「それでは! ……課題舞踊、お願いします!」

 

 

 音楽団が課題舞踊の曲を演奏し始めた。

 この曲は落成の日の舞踏会でも流される曲らしいので、踊れない平民出身者たちのお手本代わりにもなっているみたいだな……前の世界の練習させられた貴族の舞踏会の踊りと結構似ているな……これなら落成の日の舞踊会でも踊れそうだ。

 前の世界では、王侯貴族の嗜みとして母さんの親友に練習だけはさせられていたけど、練習だけで実際に舞踏会に参加したことはなかったしな。

 

 ドロテアが元歌姫らしく優雅に、アネットは可愛らしく踊っている。

 ……ラズワルドがいつもと違う雰囲気で踊っているのは珍しいけど、ラズワルドが一番上手く見えるのは金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)の代表に勝って欲しい願望があるからなのか……

 

 

「終~了~!! お三方とも素晴らしい踊りでした!!」

 

 

 アロイスさんの終了の合図で踊りが終わる。

 確かに三人とも甲乙付けがたい内容だった気がする。

 例年行われていた白鷺杯でも、判定するのが難しかったから、去年から『自由舞踊』というそれぞれ自由に踊る題目が追加されたみたいだ。

 

 

「それでは! 続きまして、自由舞踊の方をやってもらいましょう!! ……まずは黒鷲の学級(アドラークラッセ)、ドロテア=アールノルト!! よろしくお願いします!」

 

 

『自由舞踊』一番手はドロテアみたいだ。

 帝国のミッテルフランク歌劇団の元歌姫なので一人で壇上の上にいても堂々としている。

 

 楽団が奏でる音に合わせてドロテアが踊りながら歌い始めた。

 

 

「ユラリ~、ユルレリ~♪」

 

 

 上手い。

 

 周囲からも息をのむ音や感嘆の声が漏れ聞こえてくる。

 これがミッテルフランク歌劇団の若き歌姫の実力か……

 

 ドロテアは俺が前に教えた幻影呪術〈華炎〉を自分なりにアレンジしているのか、周囲に水のようなエフェクトをかけて踊っている。

 

 踊りも完璧で歌と派手な演出まである……これに勝つのは難しいぞ……

 

 

 ドロテアの演目が終わり、周囲から盛大な拍手と歓声が上がる。

 

 

「さあ、アネットちゃんとラズくんはこれに勝るものが見せられるかしら」

 

 

 ドロテアは堂々と自信たっぷりにそう言うと壇上を降りていった。

 

 

「いやぁ~素晴らしい出来でした!! 流石はミッテルフランク歌劇団の元歌姫ドロテア殿! ……それでは、続きまして青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)のアネット=ファンティーヌ=ドミニク! どうぞ壇上へ!」

 

「は、はいっ!」

 

 

 アネットが壇上に上がると……その後ろから数名の男子生徒も一緒に上がり始めた。

 

 

「切り込むぞ!」

 

「あぁ~、本当にやるのかぁ……」

 

「……き、緊張しますね」

 

「くっ、もうなるようにしかならない……戦うからには勝たねばな……」

 

「アン~! みんな~! 頑張って~!」

 

「殿下……みんな……ご武運を……!」

 

 

 まさか……バックダンサー付きか!? 

 壇上にはアネットの他にフェリクス、シルヴァン、アッシュ……そして級長のディミトリが上がっている。

 

 自由舞踊は踊りならある程度自由にやってもいいらしいのでルール上問題は……無いのか? 

 

 楽団の演奏とともにアネットとその後ろのフェリクスたちが踊り始めた。

 女の子っぽい可愛らしい踊りだが、後ろの連中も相当練習したのか、なかなか良い動きだ……特にフェリクスは踊りのキレが良い。

 

 

「今日のご飯は~、煮込んだお肉~♪ 食後にお菓子も、どこどこど~ん♪」

 

「どこどこど~ん♪」

 

 

 アネットの変な歌詞の歌にバックダンサーの野郎共が合いの手を入れている。

 

 

「川の向こうから~、次々やってくる~♪ お菓子と~、お肉の群れ~♪」

 

 

 アネットの歌が終わると周囲は拍手と笑い声で溢れた。

 普段は真面目なフェリクスやディミトリたちが踊る物珍しさもあってか、結構ウケたみたいだな。

 

 

「うぅ、もう、お嫁に行けないよ~!」

 

「……いい踊りだった」

 

 

 アネットは赤くなってぷるぷる震えているが……フェリクスは満足そうに頷いている。

 フェリクスの奴……踊りが好きなら自分が代表になればよかったのに。

 

 

青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)の皆様、息の合った良い踊りでした!! 最後に金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)のラズワルド!! どうぞ!」

 

 

 ラズワルドが壇上に上がる。

 既に覚悟は決まったのか恥ずかしがってはいない。

 こんな舞台で踊るのはある意味、ラズワルドの夢のようなものだったからな。

 

 ──思い切りやってこい! ラズワルド! 

 

 楽団の演奏に合わせて踊り始めた。

 前に踊った二人とは違い、曲のテンポも早い曲だ。

 力強い男性的な動きや繊細な女性的な動き……ラズワルドは踊りを教わったのがお母さんだということもあって、踊りには女性的な振り付けも入っているらしい……まあ、俺にはよくわからないんだが。

 

 しかし、ラズワルドの踊りは戦場で踊っている時に比べても良くなっている気がする……

 

 

「ラズワルドの踊りが変わったのが気になる?」

 

「あ、先生」

 

 

 ラズワルドの踊りを見ていると先生が話しかけてきた。

 

 

「ラズワルドの踊りが良くなったのは、なんとなくわかるんですけど……先生が何かしたんですか?」

 

「ラズワルドに欠けていたのは『自分を見てほしい』という思い……私はそれを教えただけだよ」

 

 

 なるほど……ラズワルドは恥ずかしがり屋だから「自分を見ないで」って思いながら踊っている節がある。

 だが、今日のラズワルドは自信があるように見える。

 まるで「僕を見て」「この踊りを見て」そう思いながら踊っているみたいに。

 あの踊りを見ていると体じゅうから力が沸いてくるぐらいだ。

 

 流石は先生だな、ラズワルドをここまで変えるとは……

 

 

「でも、それだけじゃドロテアに勝つのは難しいかもね……」

 

「フッ……ならば行こう、先生。俺たちも踊ってラズワルドを勝たせましょう!」

 

「冴えているね、オーディン。……金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)! ラズワルドを援護する!!」

 

 

 先生の言葉と共に壇上へと上がって踊り始める。

 

 ルーナ、クロード、ヒルダ、ラファエル、ローレンツ、レオニー……先生の声を聞いた金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)の生徒たちも次々と壇上へと上がってきて踊る。

 ラズワルドの踊りは金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)の生徒は見慣れたもので一緒に踊った経験のある生徒も多いからみんな踊れるのだ。

 

 壇上に上がっていない金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)の生徒たちも一緒に踊り始めて、それを見て見よう見まねで踊りだす他の学級の生徒たち。

 生徒たち以外もマヌエラ先生やアロイスさん……壇上から周囲を見回すと会場のほとんどの人たちが踊っているように見える……

 

 

「……見ろよ、ラズワルド! みんながお前の踊りを見て踊りだしたぜ!」

 

「ああ、本当だね。これほど嬉しいことはないよ!」

 

 

 楽団の演奏がチャイムの音で途切れるまで俺たちは踊り続けた! 

 

 

 ◇◇◇

 

 

「いやぁ、盛り上がってついつい私も踊り出してしまいました! それでは、気を取り直して判定に入りましょう。まずはマヌエラ先生から、どうぞっ!」

 

「あたくしは……黒鷲の学級(アドラークラッセ)かしら。踊りの技術的には金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)のラズワルドも負けてなかったし、盛り上がりでは勝っていたわ。でも、単体の自由舞踊の完成度はドロテアの方が上かしらね」

 

「まずは黒鷲の学級(アドラークラッセ)に一票入りました!」

 

 

 最初の判定人のマヌエラ先生は自分が担任する学級の黒鷲の学級(アドラークラッセ)に一票を入れた。

 盛り上がりより技術や演目としての完成度を重視したらしい。

 

 

「続いての判定人、セイロス騎士団の騎士ギルベルト殿!」

 

「私は……青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)です。……理由は……その、非常に良い踊りでした……」

 

「おおっと! 青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)に一票入りました!」

 

 

 ギルベルトさんは青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)に一票を入れた。

 ……いや、なんとなくそんな気がしたんだけど、まさか本当にこのために判定人になるとは……

 ほぼ全ての生徒がギルベルトさんはアネットの父親ということを知っているので、一部から「身内びいきだ」「ダメ親父!」「女神の罰を受けろ!」なんてヤジが上がっている。

 アネットも「父さん」と呟いて下を向いて恥ずかしそうにしていた。

 しかし、これで次に票がはいらなかったらラズワルドの優勝の目がなくなってしまう……

 

 

「では、三人目の判定人シャミア殿!」

 

「私は……金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)だ。彼の踊りを見ていると体から力が沸いてくる。実に良い踊りだ」

 

金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)に一票! これで、各学級に一票ずつ入りましたね! 最後に私アロイスの判定に入ります! お待ち下さい!」

 

 

 ラズワルドに一票入って、ホッと一息する。

 あの盛り上がりから圧倒的な優勝もあり得ると思っていたのに接戦となってしまったな。

 

 優勝の行方はアロイスさんの一票次第だが……アロイスさんは頭を抱えて考えはじめている。

 

 

「むむむ……はい、決まりました! それでは発表しますぞ! 今年の白鷺杯の優勝学級は……金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)に決定!!」

 

「僕が……優勝……やったー! みんな、ありがとう!」

 

「負けちゃったけど、楽しかったよ。ラズワルド、おめでとう!」

 

「私が優勝できないなんて……と普通なら思ってたでしょうけど、貴方に負けるなら納得だわ。ラズくん、おめでとう」

 

 

 よっしゃあ! 優勝はラズワルドに決まったようだ。

 これでラズワルドは〈踊り子〉の秘伝書を手に入れることができる。

 後で早速見せてもらうとしよう。

 

 その後は、クロードの提案でラズワルドの白鷺杯優勝記念の宴が開催されるようになった。

 

 

 ◆◆◆

 

 

 ガルグ=マク落成の日の舞踏会、その前夜祭を終えて俺たち金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)は教室に集まっていた。

 

 

「年に一度の舞踏会。前夜祭まであるとは、士官学校もお堅いだけじゃないんだな」

 

 

 明日は待ちに待った舞踏会の日だ。

 クロードが言うように前夜祭まであって、全員が明日の舞踏会へのモチベーションを上げていた。

 

 

「明日は楽しみにしておけ……俺の闇の偉力で舞踏会に強盛な瑞気を付与しようと案出中で……」

 

「オーディン。あんた、また宴会用の呪術でも考えてるの? たいして盛り上がらないんだから、やめといたら?」

 

 

 ルーナ、余計なお世話だ! 

 今度考えている新作の呪術は素晴らしいものだ、この呪術が認められて俺は世界の覇者になるに違いない。

 

 

「明日もご馳走が出るんだろ? オデはそっちが楽しみだなあ」

 

「そういえば、オーディンさんはレア様直々にお菓子作りを頼まれていませんでした?」

 

「フレン……そういえば、そうだったな。大司教に我が秘伝のお菓子ダブルブラックビター・グラスラントを所望されたんだ。また、アネットとメルセデスに手伝ってもらわなければ……」

 

「噂のお菓子だね。楽しみ」

 

 

 先生が喜色満面で頷いている。

 俺が灰狼の学級(ヴォルフクラッセ)に持っていったカカオ風味のケーキ、ダブルブラックビター・グラスラントはちょっとした噂になっていたらしい。

 噂を聞きつけた先生から、再三「次はいつ作るの?」と問いただされたけど、カカオ豆が手に入らないので作れなかったのだ。

 今回は教団の方で材料も準備してくれるみたいだけどな。

 

 

「オーディン……本当にお菓子作りまで出来るんですか。なら、あんたのその実力を見せてもらおうじゃあありませんか!」

 

「リシテア……それお前が食べたいだけなんじゃないのか?」

 

「リシテアさん、オーディンさんの噂のお菓子のことを凄く気になさられていましたからね」

 

「フ、フレン……バラさないで下さい!」

 

 

 金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)には女子生徒を中心に甘いもの好きが結構いるからな……気になっていた人も意外に多いのかもしれない。

 

 

「明日は各学級の良い男を捜して、踊る相手をとっかえひっかえ……うふふ」

 

「楽しそうだね、ヒルダ。僕とも踊ってくれるかい?」

 

「もちろんだよー、ラズワルドくん。白鷺杯の優勝者と踊らないわけないよー」

 

「あの……私は、見学で……」

 

「そうはいかないわよ、マリアンヌちゃん。男子から誘われたら受けるのが礼儀なの」

 

 

 男子から誘われたら受けるのが礼儀なのか……前の世界では踊りの練習だけはしたことあるが、舞踏会には参加したことはなかったから誰かを誘ってみようかな? 

 

 

「あの……誰を誘ってもいいんですよね? ボク、どうしようかな……」

 

「ははは! 明日だけは、せいぜい良い夢を見たまえ、イグナーツ君! 僕は女性からの誘いを受けなければならないから相手を選ぶ暇などないかもしれないなあ!」

 

「……ローレンツは、今だけ妄想で良い夢を見ていたまえ」

 

 

 高笑いしているローレンツにレオニーがツッコミを入れている。

 しかし、女子から誘われるパターンもあるのか……最近の俺は妙に視線を感じる気がするから、俺のファンの子たちから誘いが途切れないかもしれないなあ! 

 フッフッフッ……いやぁ、実に困った! 

 

 

「ところで諸君、一つ提案があるんだ。先生も聞いてくれ」

 

「提案?」

 

 

 クロードがみんなを集合させて話し始めると、みんな雑談を止めて注目する。

 我らが級長はまた何かを企てているらしい。

 

 

「無謀かつ無責任な提案かもしれないが……5年後のこの日にまたみんなで大修道院に集まらないか?」

 

 

 クロードの提案は思いもよらないものだった。

 ……5年後かあ

 

 

「それって、同窓会ってやつだよなあ?」

 

「 5年後というと……ガルグ=マクの千年祭の年ですね……」

 

「千年祭はこれまでにないような大きな祭典になると聞いてますよ」

 

「なーるほどー。それなら千年祭にかこつけて集まりやすいかもしれないわねー」

 

「ああ、僕は新たな盟主として、レア様にお祝いを述べに来てるかもしれない」

 

「それはないと思いますけど」

 

 

 金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)のみんなは5年後の未来を想像して思い思いのことを言っている。

 

 

「先生はどうだ? 5年経ってもここで教師をやってるなんてのは想像しづらいが……どこにいようと、金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)の可愛い生徒たちのために、駆けつけてくれるよな?」

 

「たぶん」

 

「そこは先生、絶対行くと約束するとこだろ? 先生が来るなら、みんな来るって」

 

「ふふ、今から楽しみですね。5年も経てばみんな大人っぽくなってるでしょうし」

 

「あ、先生、ジェラルト師匠も誘っといてね。立派に成長した弟子の姿を見せたいから!」

 

「じゃ、そういうことで、クロードくん。決まりでいいんじゃない?」

 

「よし、じゃあ絶対に覚えておいてくれ! 5年後のこの日、大修道院でまた会おう! ……忘れんなよ、先生。俺たちは必ず、ここで再会するんだ」

 

 

 話の流れで5年後の同窓会への参加が決まってしまった。

 

 ラズワルドとルーナに目を向けると盛り上がっている生徒たちの輪から抜けて教室を出る。

 未来に向けての語り合いに夢中で、俺たちがいないことに気づいた生徒はたぶんいないだろう。

 

 

「……ちょっと、なんかあたしたちも参加する流れになっちゃったけど……どうするの?」

 

「5年後か……僕たちの使命が果たされたなら、フォドラにはもういないだろうね……」

 

「もうすぐ、この世界に来て1年か……長かったような、短かったような。とにかく敵の姿は少しずつ捉えられているんだ……あと5年もこの世界にいることはないだろうな」

 

 

 教室を離れた後でラズワルドたちと意見を交換し合う。

 こいつらも世界の破滅を救うためとはいえ5年もこの世界にいるつもりはないようだ。

 俺たちは黙っていたが、破ってしまう可能性がある『約束』をしてしまったようだ。

 

 

「……先生も金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)のみんなもいい人だし、いつかお別れするって思うとさびしいよね」

 

「そうだな……つい、ずっとここにいたくなってしまう」

 

「それは、わかるけど……三人で一緒に元の世界に帰るって約束はどうするの?」

 

「そりゃあ……帰るさ、前の世界に帰らなければいけない……それはわかっている」

 

 

 ルーナは特に前の世界に帰ることにこだわっている。

 三人で必ず元の世界に帰る……これも三人で決めた『約束』だ。

 

 

「5年後もここで世界の破滅と戦っている可能性もあるから……それなら問題ないと思うけど……」

 

「あと5年も前の世界に帰れないのは嫌よ……! 早く『奴ら』を倒して帰りたいわ」

 

「まあ、世界を救ったあとに元の世界に帰るときは……説明を先生に頼むしかないよな」

 

「1年もいなくなってたらみんなも心配してるだろうし……」

 

「うん……みんな今頃どうしてるかしら?」

 

「意外と俺たちのこと忘れて、楽しくやってたりしてな」

 

「…………」

 

「…………」

 

「冗談だよ! 冗談!! 二人とも、そんなに睨むなって!!」

 

 

 三人で、前の世界に残してきた仲間たちに思いを馳せるのだった。

 




踊りの描写が難しくて書き進めるのが難航してました。
…結局あっさり描写で終わらせてしまいましたけど。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。