ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン 作:すすすのすー
…一年以上放置しててすみませんでした。遅くなりましたが風花雪月無双発売決定おめでとうございます
前話のラズワルドルーナ外伝と連続投稿です
俺は“漆黒のオーディン”、俺を産んでくれた
今日は、セテスさんに俺たち三人の正体と目的を打ち明けるために、揃ってセテスさんの部屋の前まで来ていた。
ルーナも、先日ラズワルドと話して気持ちを切り替えることができたのか、調子が戻ったみたいだが……ルーナとレオニーは先生以上にジェラルトさんの仇討ちに燃えているので、先走らないかが気掛かりだ。
「ついに、俺たち選ばれし者の使命を教会関係者に話すことになるのか……緊張するな」
もし、俺たちを召喚した女神様がセイロス教団の女神とは別の女神だったら……今までのことから、異端審問的なものに掛けられることはないと思いたいが……それでも不安だ。
ただ、まだ大司教レア様に直接話を持って行くのは怖いから、その補佐役のセテスさんに話をすることにした。
「やっぱり、宗教関係の話は難しいからね……僕はセテスさんなら、僕たちを召喚した女神様がセイロス教の女神様とは関係がなくても、僕たちをどうこうしようとはしないと思うよ」
「そうだな、フレンを助けた時の件もあるし……まあ、なんとかしてくれるだろう」
「そんなことより、説明役はあたしかラズワルドがやるわ……オーディンだと無駄に話が大袈裟になるし、無駄な創作を加えて絶対長くなるから、あんたは黙っていなさいよ」
「いや、ここは俺たち選ばれし者たちのリーダーである俺が話すべきだろ!」
「……ハァ!? いつからあんたがリーダーになったのよ!」
三人であーだこーだとセテスさんの部屋の前で騒いでいると、部屋の扉が開き中にいた部屋の主が出てくる。
「……あっ、セテスさん」
「うるさいぞ。……君たち、さっきから部屋の前で何を騒いでるんだ?」
俺たち三人は騒ぐのを止めて中に入れてもらう。
……教団が味方になるかどうかはここが正念場だ。
◇◇◇
ルーナから黙っていろと言われたので、俺たちが別の世界で女神様から召喚された経緯や俺たちの過去はルーナとラズワルドが説明した。
……途中、邪竜ギムレーと戦った件は
長い説明を終わって、セテスさんは呼吸を整えるように深く息をはいている。
「……君たちがフォドラに現れた経緯はわかった。この一件は私の一人の一存では決められないから、大司教に話を通しておく」
「この話、大司教に伝えても大丈夫なの?」
「僕たちが言うのもなんですけど……信じてくれるんですか?」
ルーナとラズワルドが聞き返す。
一番不安なのは俺たちを召喚した女神様がセイロス教団の女神と別の神とされることより、そのことで教団から邪教徒認定されて排除されることだ。
「その女神を自称する少女は確かに“ソティス”と名乗ったのだな」
「ええ、俺たちに力を与える時に『我は“はじまりのもの”、フォドラの生きとし生けるものを導く神祖ソティス』と言ってました」
「僕たちに力をくれた時はたしかにそんな感じだったわね」
「オーディン……よくそんなこと一言一句おぼえてるね」
俺は記憶力は良い方だからな……特に、こんな血が騒ぐようなかっこいい台詞は一度聞いたら忘れない自信がある。
「“ソティス”は我々セイロス教団の奉ずる女神の真名だ。教団にも知る者は多くない……我々の知る女神とは姿形は違っているようだが……ほぼ同一の存在と見て良いだろう」
「良かった……あの小さな女神様はセイロス教団の女神様だったんですね!」
「心配して損したわ……こんなことならもっと早く言っておけば良かったわね」
「これで教団は完全な味方と判断できるな! ……久しぶりに血も騒いできたぜ!」
ずっと、あのちんまい生意気な女神様がガルグ=マク大修道院の宗教画に描かれているようなセイロス教団の絶世の美女神様と重ならなかったんだが、これで安心できる。
「いや……もしも、君たちがこのことをガルグ=マクに来た時に最初に話していたならば私は君たちをもっと警戒していただろう。君たちを女神の使いを名乗る不届き者と思ったかもしれん」
「えっ、じゃあどうして……?」
「今までの君たちの行動だよ。君たちはベレスや学校の仲間のためではあるだろうが、教団や教徒の人々のために力を尽くして働いてくれた。嘘をついていないと判断できる……打ち明けてくれてありがとう」
こうしてセテスさんへの説明を無事に終えることができた。
めでたしめでたし……
◆◆◆
セテスさんに使命を打ち明けた次の日。
四聖人の聖キッホルゆかりの地であるロディ海岸を西方教会の過激派が狙っているとの情報が入った。
西方教会は大司教暗殺未遂事件の後、新たに司教を立てたのはいいが、反発する一派が過激派になってしまっているらしい。
教団は現在、騎士団を各地に派遣しているため主立った騎士たちがおらず、いつもは大司教の補佐をしているセテスさんが珍しく任務に行くことになった。
「……それで、なぜか俺たちもフォドラの西の果てまで行くことになったわけだ」
「こんな、寒い時期の王国になんて行きたくないよー!」
クロードの言葉にヒルダが叫んでいる。
セテスさんに付いて行きたがったフレンが先生と
先生は珍しく「嫌な予感が……」「なぜ自分が……?」なんて言いつつ微妙な顔をしていたらしいので、ガルグ=マクから離れてジェラルトさんの仇と関係の無い教団内の内輪揉めに関わるのが嫌だったのかもしれない。
それと別に微妙な問題がもう1つある……
「さあ、わたくし“純白のフレン”率いるセスリーン神官隊、ついに出撃ですわ!」
「フレン、貴様は所詮副官……セスリーン神官隊を率いるのは、この“漆黒のオーディン”だ!」
今回の任務は聖人キッホルゆかりの地で、その娘である聖人セスリーンにも関係がある。
どうやらキッホル竜騎兵団とセスリーン神官隊は政治的な意味でも出撃しなくてはならないらしい。
キッホル竜騎兵団の方は元々セテスさんが教練していたので、そのまま指揮することになっているが、セスリーン神官隊は現在教団内に指揮できる人(指揮A)がいないらしい。
それで本来は聖人を冠する騎士団は聖騎士や幹部級騎士しか率いることができないが、特例で指揮Aの技能を持つ先生に指揮権が移譲され……先生は面倒と思ったのか、同じく生徒では唯一指揮Aに達している俺に一任したのだった。
……微妙な問題とはこのセスリーン神官隊のことだ。
セスリーン神官隊は四聖人の名を冠するセイロス教団の部隊のひとつ。
全員が女性の〈ビショップ〉か〈プリースト〉で構成されており、格としてはキッホル竜騎兵団、マクイル破邪隊、インデッハ剣戟隊と並び、セイロス教団において最高位の部隊なのだが……このセスリーン神官隊は本来は内勤で事務仕事をしたり大司教レア様の慈善活動などに帯同するのが主な任務なので、戦闘部隊として前線に出るのが数十年ぶりだそうだ。
個人としては実戦経験豊富なおばさま方……年上の女性たちも結構いるが、大半がセイロス聖女隊出身の若い女の子たちなので結構不安だ……
俺は先生より魔法が得意なのでセスリーン神官隊を率いるのには適役なんだが、(部隊単位では)実戦経験の無い百人を越える女性のみの部隊を率いるとか結構な難題のような……
……最近気づいたのだが、先生は普通に面倒なことを「オーディン、任せた」って丸投げすることが多い気がするぞ……
◇◇◇
「オーディンくん!! 怪我人だあ! 助けてやってくれ!」
「了解! ラファエル、すぐに回復役を向かわせるから死なせるなよ!」
「お、オーディンくん! 敵が集団魔法の準備をしています!」
「落ち着け、イグナーツ。〈Mシールド〉を頼む! ……ラズワルドはそこでそのまま踊りを継続だ」
「わかった! みんな、サポートするよ!」
西方教会の反乱鎮圧は思った以上に敵の兵力と反抗が強く激戦になっていた。
戦場が海岸線の砂浜なこともあって、歩兵は足を取られ騎兵は行軍もままならず、俺率いる魔法職のセスリーン神官隊が最前衛に出るという事態も起こっていた。
俺と魔道士たちは魔法の力を使って体を浮遊させ移動する。
地面から頭ひとつ分ほど浮き上がり、移動速度は駆け足程度だが、魔法職はこれが使えるので足を取られやすい砂浜での移動も苦にならない。
今回、〈トリックスター〉ではなく闇魔法試験パスで新たに資格を取った〈ダークビショップ〉で出撃したのも正解だったみたいだ。
「守って見せます」
「神よ、ご加護を……」
「夢は安らぎ……」
「私が欲しいの……?」
部隊単位での実戦経験不足で不安だったセスリーン神官隊だったが、おば……ベテラン女神官たちの活躍で逆にこちらが助けられていた。
セスリーン神官隊の若い女の子たちもよく訓練されていて足を引っ張ることもなく指揮の通りに動いてくれている。
さすがは四聖人の名を冠する最高位の部隊だ。
セテスさんをはじめとした飛行部隊はみんな浅瀬の海を越えた離島にある聖人キッホルゆかりの石碑を奪還に向かったので、最も機動力があり活躍できるのは俺が率いる魔法部隊だ。
副官のフレンに加え、リシテア、マリアンヌ、魔法の使える金鹿女子生徒たち(とついでにローレンツ)もセスリーン神官隊に合流して手伝ってくれている。
「闇の裁きだ! 〈スライム〉!!」
「目障りなのだよ! 〈スライム〉!」
「近寄らないで……〈スライム〉」
「容赦しませーん! 〈スライム〉!」
「まだ未熟ね……〈スライム〉!」
敵兵たちの多くは魔法職だが、中には〈盗賊〉や〈アサシン〉等も混じっているので、弓も届かない様な遠距離から俺の闇魔法を
前の世界にあった闇魔法〈スライム〉はこの世界にある闇魔法〈スライムB〉よりさらに射程に優れるのが特徴……数発しか使えないのが難点だが使える者の人数を増やせば遠距離から一方的に敵を殲滅できる。
この闇魔法〈スライム〉は……最上級の黒魔法〈メティオ〉〈サンダーストーム〉より攻撃力は控えめだが、習得難易度が低いので使える人間が増えると既存の戦術を大きく変えてしまいそうな魔法だ……俺秘伝の闇魔法として習得法が流出しないようにしなければ……
「みんな、あんなに遠くを攻撃できる魔法を習得してるなんて……」
「お、リシテアも俺の闇魔法が使いたくなったか?」
「だ、誰があんたなんかに……!」
リシテアは前に認めてくれた(ケーキをだけど)のか、負の感情が感じられる視線を向けてくることは少なくなっていた。
しかし、俺から闇魔法を教えてもらうのはまだプライドが許さないのか拒絶している。
「オーディンさんたちばっかり新しい魔法を使ってずるいですわ! わたくしも専用の光魔法がほしいですのよ!」
「フッ……この魔法は俺の故郷にもともとある技術、新魔法の開発は流石の俺でも簡単なものではない……」
正確には故郷イーリスの隣の国ペレジアの技術だ。
フレンも俺の闇魔法を使うのは“選ばれし光の戦士”という設定上の理由で拒否をしている……俺の闇魔法は、男性(と紋章持ちのような特別な才能のある女性)以外は使えないこの世界の闇魔法と違って、女性でも簡単に使えるらしいので覚えた方が得だと思うんだけどなぁ……
前の世界には光魔法の種類は少なかった……というより光属性の攻撃魔法は伝説の魔道書〈聖書ナーガ〉しか知らないし、その魔道書は仲間の魔道士たちが切り札として使っていたので前の世界で魔法を使わなかった俺には扱わせてもらえなかったから、フレンに教えてあげるのは難しい。
……しかし、フォドラには光属性の攻撃魔法が豊富にあるのでフレンと一緒に新しい魔法を開発してみるのも面白いかもな。
海岸側の敵将たちは〈スライム〉による遠距離攻撃で倒してしまったので敵将とは特に話をすることなく戦闘が終了した。
たぶん生きていると思うので、セテスさんから
鎮圧の後、帰りの支度を整えているとセテスさんに呼ばれた。
俺の他には先生、ラズワルド、ルーナ、それとフレンがいる。
「……協力に感謝する。これに懲りて、西方教会も二度と手は出すまいが……念のため、聖遺物は回収しておいた。万一にも彼らの手に渡っては困るのでな」
そう言って、セテスさんは手にした槍と杖を見せてくれる。
「これは……!? もしかして〈アッサルの槍〉と〈カドゥケウスの杖〉ですか!? 聖人キッホルと聖人セスリーンが使ったとされる槍と杖ですよね! ……すげえ! 実物を見れるなんて……血が騒ぐぜっ……!」
「ああ、そうだが……詳しいな」
「オーディン、本当にあんたって武器狂いね」
「オーディンは伝説の武器に目がないからね……そのおかげか伝説の武器や英雄の遺産が多く出てくるフォドラ史の成績も悪くないんだよね」
「勉強熱心なのは良いこと」
みんなが何か言っているが耳に入らない……〈アッサルの槍〉も〈カドゥケウスの杖〉も解放王ネメシスの英雄戦争時代の武器なのだが……保存状態が良かったのか、すぐに実戦に使えそうなほどに綺麗だ。
「ベレス、君に預けておく。教会まで大切に送り届けてくれ」
「わかった」
セテスさんにそう言われ、先生に槍と杖が渡される。
……よし、絶対に後でじっくり見せてもらおう。
「……しかし、久しぶりに来られて良かった。この海岸は私たちにとって特別な場所でね」
「特別?」
「ああ、ここに建てられている石碑は、聖キッホルの記念碑であると共に……実は我が妻の墓でもあるのだ」
聖キッホルの記念碑がセテスさんの奥さんのお墓? どういうことだ??
「お母様……もう大丈夫ですわよ。この“純白のフレン”が眠りを妨げる者たちを浄化いたしました。どうぞ、安らかにお眠り下さい」
セテスさんの奥さんのお墓ということは、フレンのお母さんのお墓でもある。
「母親もここに?」
「記念碑が奥さんとお母さんのお墓ってわけ? ちょっと意味がわからないわ」
「……うーん、セテスさんはこの記念碑に関係する一族ってこと? それで代々ここがお墓になってるということかな?」
事情を知らないらしい先生とルーナは首をかしげて、ラズワルドは考察を口にしている。
どうやらセテスさんとフレンが兄妹ではなく親子だと知っているのは俺だけだったようだ。
「……ベレス、ルーナ、ラズワルド。オーディンには以前、フレン誘拐事件の時に話をしたが、君たちにも話しておこう。我が妻というのは、フレンの母親だ。つまり、フレンは我が娘なのだ」
「そうだったんですか!?」
「知らなかった」
「……ああ、あたしは納得したわ……妹に接する態度にしては過保護すぎたもん」
「そう、それですわ! お父様が過保護すぎて、何度わたくしの真の力が暴走しかけたことか……!」
先生たちは三人とも気づいていなかったらしい。
態度は完全に娘を心配する父親の態度だけど、年の離れた妹を過剰に心配する兄もいないわけではないだろうし、気づかなかったのも無理はない。
「……事情があってな。公には妹ということにしていたのだ。フレンは特別な血を持つがゆえに常に命を狙われる身……素性を偽ることで、追手から身を隠す必要があった」
「これも血の定めですわ」
「……フレン、せめて母の墓前だけでもオーディンのような話し方をするのはやめなさい」
「やめませんわ。お母様ならきっと『貴様は我が血を受け継いだ娘……血の定めからは逃れられぬのだ』って言ってくれますわ」
「私の妻はそんなことは言わないぞ!?」
セテスさんの奥さん……フレンのお母さんがどういう人だったか気になるところだが……みんなで聖キッホルの記念碑に祈りを捧げてロディ海岸を後にした。
──フレンのお母さん……フレンはたくましく育ってますよ。
ベレス先生と金鹿の魔道士(リシテア・フレン以外)にオーディンの闇魔法がアップデートされているようです。
補足
スライム
威力5命中65必殺0射程3-10重さ12レベルC回数3
FE覚醒に登場する長射程の闇魔法。
現在の
ベレス
〈ソードマスター〉⇔〈バトルシスター〉
オーディン
〈トリックスター〉⇔〈ダークビショップ〉
ラズワルド
〈踊り子〉⇔〈勇者〉⇔〈ウォーリアー〉
ルーナ
〈ペガサスナイト〉⇔〈ソードマスター〉⇔〈ハルバーディア〉
クロード
〈ドラゴンナイト〉⇔〈スナイパー〉
ローレンツ
〈パラディン〉⇔〈ウォーロック〉
イグナーツ
〈アサシン〉⇔〈トリックスター〉
ラファエル
〈グラップラー〉⇔〈フォートレス〉
ヒルダ
〈フォートレス〉⇔〈ウォーリアー〉
マリアンヌ
〈ビショップ〉⇔〈ヴァルキュリア〉
リシテア
〈ウォーロック〉⇔〈ビショップ〉
レオニー
〈スナイパー〉⇔〈パラディン〉
フレン
〈ビショップ〉