ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン 作:すすすのすー
(大樹の節 三十日)
俺は“漆黒のオーディン”、士官学校の秘密を暴き悪を滅ぼす、闇の呪術士。
4月の終わりにおこなわれた、学級対抗模擬戦は、俺たち
そのあと、
◇◇◇
特に機嫌が良いのはローレンツだ。
仲間と先生の援護があったとはいえ、フェルディナント、ディミトリ、ドゥドゥー、マヌエラ先生を撃破し今回のMVPに輝いた。
「みんな、見てくれていたか? このローレンツ=へルマン=グロスタールの活躍を!」
「ローレンツくん、大活躍だったねー。ほんとかっこよかったよー」
「ヒルダさん、そう誉めないでくれ……僕はただ実力を発揮しただけさ、これは必然の結果だったわけさ! はっはっはっ!」
その前の模擬戦では、戦犯になりかけてたくせに、すぐに調子に乗りやがってローレンツのやつめ……
「それにしても、やっぱり凄いのは先生ですよ。あの戦場全体を見透すような指揮、どんな経験を積んだらあそこまで上手く指揮を執れるのか……」
「ジェラルト師匠から教えを受けたならあのくらいできて当然だと思うけどね」
イグナーツとレオニーが話している。
そういえば、レオニーはジェラルトさんの弟子だったんだな。
ジェラルトさんは強面の外見とは裏腹に、なんでも優しく丁寧に指導してくれる人だ。
戦いの基礎についてほとんどできていた俺たちは、教わったことは少ないが、この世界にきてすぐの頃に、戦技や指揮について指導を受けたときにそう思った。
「そういえばアンタたち三人は師匠の傭兵団にいたんだよな。なんで急に士官学校に入ることになったんだ?」
「うっ、それは……あたしたち三人も団長から推薦を受けたのよ。ゆ、優秀な若い傭兵がいるからって」
「ジェラルトさんも心配だったんじゃないかな、急にベレスが先生になることが」
ルーナとラズワルドが答える。
大司教が何か企んでるかも……とかは言えないからな。
「でも、入学金も高かったんじゃないか? 師匠もよく三人分も払えたな」
「えっ、聞いていないんだけど、入学金ってなんだ?」
ジェラルトさんは入学金の話なんてしてなかった。
士官学校に入学するのって、そんなに金がかかるのかな?
ウチの傭兵団、実は金はあんまり無いんだよな。
ジェラルト傭兵団は正義の傭兵団なので、困っている人たちを助けることが多い。
そして、困っている人たちはだいたいお金をちょっとしか持っていない。
だから依頼を安く請け負ったりすることが多いので、いつも金欠状態なのだ。
ジェラルトさんもよくツケで飲み食いしてるみたいだし、入学金が高いなら払えるわけがない。
「団長は入学金の話なんてしてなかったし、払ってないんじゃないの?」
「うちの傭兵団って、お金あんまり無いんだよね」
ルーナもラズワルドも知ってることはいっしょだな、急に入学金払えとか言われないよな……
「はあ? アンタら入学金払って無いのか? そんなのありかよ!」
「レ、レオニーさん落ち着いて下さい。彼らは元騎士団長の推薦で入学したんですから、そういう特例かもしれません」
「……確かに魔道学校の推薦枠とかなら、入学金は少なくて済むって聞いたことはあるけど」
レオニーが激昂しかけるのをイグナーツが落ち着かせる。
レオニーは、平民だから士官学校に入学するのは苦労した、って話はクロードから聞いたな。
この話題は長く話すとまた怒り出しそうだ。
なにか話題を変えなくてはな……
「仮に、あたしたちが入学金を払って無いとしても、レオニーに何か関係有るの?」
ルーナぁあ! 煽るんじゃない!
「わたしがどんだけ苦労して、ここに入ったと思ってるのさ! 腹が立ってきたっ! わたしはあんたらなんかには負けない! 師匠の一番弟子として勝負だっ!」
「勝負ぅ!? いいわ、受けて立とうじゃないの!」
「わわっ、レオニーさんルーナさん待って下さいよ! 二人とも止めなくていいんですか?」
「気にするな……ルーナがなにかで勝負してるのは、いつものことだしな」
「ルーナのほうが勝負を仕掛けられるのは珍しいけどね」
確かに、いつも勝負を吹っ掛ける側だもんな。
イグナーツが追いかけて行ったから、心配いらないだろう。
入学金の話のほうが心配だ……卒業と同時に莫大な借金が! ……なんてことにならなければいいが……
◆◆◆
(竪琴の節 一日)
「必殺ぅ! ……蒼炎剣ブルーフレイムソード!!」
まだ夜の明けない漆黒の闇と篝火の炎が世界を支配する時間。
俺は訓練所で剣の必殺技の練習をおこなっていた。
──魔法を覚えても、けして剣の練習は怠ったりはしない、なぜなら俺は剣も魔法も極める闇の魔法剣士なのだから……
しかし、こんな誰もがまだ寝ているような時間なのに、なぜかさっきから見られているような気がする。
この前、クロードたちに案内されたときに訓練所は幽霊が出るとか言われてたけど、本当に幽霊がいるのかな。
なんか急に寒気がしてきたぞ……本当に出ないだろうな。
キョロキョロと辺りを見渡して見れば……
……っ!! なにかいる──!!
柱の影から、じーっとこっちを見ている女の子がっ……!
おち、おち落ち着け、俺……幽霊なんか
なんか淡く光ってるし、絶対に人間じゃないよな、これ。
「ま! 見つかってしまいましたわ」
キャアアァァ! シャベッタアアァァ!!?
「あまりに熱心に鍛練をされてましたから、つい見いってしまいましたわ」
…………。
……よく見ると普通の人間だ。
「そんなに固まられて、どうかなさいましたか?」
女の子はこっちに近づいてきて、様子を伺ってくる。
「……暗闇より深き冥界から、這い出しし亡霊と見間違えただけだ……」
「まあ! 人を幽霊と間違えるだなんて、失礼ですわよ」
ふわふわの緑色の髪をくるくる巻いた髪型の上品そうな女の子だ。
年は俺より下だろう。
「……フッ、俺は“漆黒のオーディン”。剣と魔導を極めし、闇の魔法剣士……貴様は何者だ、ここの生徒か?」
「わたくしはフレン。ここの生徒ではありませんのよ」
「……ここは生徒用の訓練所のはずだ……それに、騎士団の者にもみえないが」
「わたくしのお兄様が教会で働いていまして、修道院に住まわせてもらっているだけですのよ」
ふーん、教団関係者の家族も修道院にすんでいるのか。
上品な喋り方からすると、もしかしたら偉い人の妹さんかもな。
「それより“漆黒のオーディン”さん、さっきから何をなさってましたの? なにやら叫びながら、剣を振り回していましたが」
「……必殺技の鍛練をおこなっていた。考えた技の名前と動きの確認だ」
「まあ! 必殺技ですか? 素敵ですわ!」
おおっ、この子ノってきたぞ!
女の子がこういう話にノってくるのは珍しい……いや、男もある程度大人になったらノってこないのだが……
「えっ、本当か? ならフレンも必殺技の名前を考えてみるか?」
「でも、わたくし剣は使えませんのよ」
「別に剣に限らなくてもいいんだよ、ちょっと見てろ……」
……意識を集中して……キラーンときてっ!
「必殺! アウェイキング・ヴァンダーーー!!!」
バーン! と撃つ!!
一瞬だけ、魔法の閃光が辺りを照らす。
今日も攻撃魔法は絶好調だな。
「ま! 今の魔法は……」
「攻撃魔法の〈リザイア〉だ」
「それなら、わたくしにもできましてよ。今はなんと叫んでらしたの?」
「……アウェイキング・ヴァンダー。覚醒する破壊者の意味を持つ闇の言霊だ……」
「さあ、見ていて下さいましてよ」
フレンが構えて集中して、魔力を集めはじめた。
「……必殺ぅ! あうぇいきんぐ、ばんだぁー!!」
おおー、なかなかの魔法だな。
流石は教会関係者だ。
修道士や司祭は白魔法が得意な人が多いので、フレンも誰かに習ったのだろう。
「フッ、なかなか筋がいいな。それに声も気合いが入っている」
「ふふっ、大きな声を出すのって、楽しいのですね。でも、どうして魔法名とは違う名前を叫んでいるのですか」
「……それは、必殺技だからだ。必殺技はここぞと言う時に出すもの。いつもと同じ、誰しも同じ、必殺技は有りはしないと俺は思っている……」
「……そういうものですの?」
そういうものなの!
「必殺技の名前がかっこいいと、強そうだし、自分も周囲の仲間も士気が上がるし、いいこと尽くしだろ?」
「……たしかに、それはそうかもしれませんね」
話し込んでると、周囲はすっかり明るくなってきた。
「オーディンさん、今日はとっても楽しかったですわ。またいっしょに必殺技の練習をしてくださいますか?」
「その時は、自分で必殺技の名前を考えておくといい。そのほうが愛着が湧くからな」
「そうですわね、わたくしも考えてみますわ。それでは、ごきげんよう、オーディンさん」
「またなー、フレン」
やっぱり、俺のセンスがわかる人と話すのは楽しいな。
フレンのために、俺もいろいろ必殺技の名前を考えておこう。
◇◇◇
「おっ、芽が出てるな」
朝の鍛練が終わったあと、温室に来ていた。
この前、前の世界から持ってきた、薬草と魔草の種を蒔いて数日が経ち、いくつか芽吹いていた。
前の世界では、剣を極めることに集中していたから練習はしていなかったが、魔法のことは自分で勉強したり、仲間に教えてもらったりして知識はある。
俺が特に興味を持ったのは、呪術という人の感情や想像力といった力を使う魔法で、薬草や魔草はその媒介に必要なものだ。
いつか必要な時があると思って、集めていてよかったな。
「……ふむ、これが肥料か。貴様は、豊穣なる土壌を創生せしものミスティック・ランドナトレッションと名付けよう」
「さあ、ミスティック・ランドナトレッションよ、その力を解放せよっ! 大地に実りし極彩色の恵みに、秘めし力のすべてを捧げるのだ!! はあああああああああ!!!!」
声をあげながら、芽と撒いた肥料に魔力を目一杯注ぎ込む。
ふう、これでよく育つようになるはずだ。
フォドラ大陸では作物に魔力を込めるのは一般的らしい。
前の世界でもやっていたかもしれないが、作物なんて育てたことがないからわからないな。
「お、温室でいきなり叫んで、何してるんですか?」
「むっ、お前は……」
温室に他の人も居たのか、気づかなかった……
コイツらは……
まだ他学級の生徒はほとんどわからないが、コイツらは学級模擬戦に出ていたから、覚えている。
「……出た芽に肥料と魔力を注いでいたのだ……貴様らは
「……ああ、そうだ」
「叫びながら、する必要があったのかな?」
ドゥドゥーは色黒で筋骨隆々の大男、アッシュはそばかすのある普通の少年だ。
「……お前は
「フッ、俺の名を知っているのか……」
「先生といっしょに入学した三人は噂になってたからね。凄く強い傭兵と聞いてるよ」
まあ噂にもなっちゃうよな~
俺たちめちゃくちゃ強いし~
しょうがないよな~
「お前たちに殿下は救われたそうだな、感謝する。何かあれば言ってくれ協力する」
「王国の民として、僕からもお礼を言うよ。殿下を助けてくれてありがとう」
「……フッ、俺たちはディミトリたちとは協力して戦ったにすぎない……だが、お前たちの感謝の気持ちは受け取っておこう……」
王子が助けてもらったから感謝って、王国の人間はディミトリといっしょで、真面目なやつが多いんだな。
いや、仲間が助けられたら、俺もお礼くらいするか。
「あー、ちょうど良かった。実は作物とかの栽培について詳しく無いんだ。よかったら教えてくれ」
「……わかった」
「新芽に大量に魔力を注ぐのは良くないかもね、種類によるけど」
「へー、どのくらい育ってきたら魔力を注ぐのがいいんだ?」
「……この辺りの作物だ」
「あとは種を蒔いてすぐの時、土に魔力を注ぐのも効果的だよ」
蒔いてから、すぐね……なるほどメモっとこう。
ドゥドゥーが示した作物は、結構育ってるな。
「青獅子の作物だけど、試しに注いでもいいか?」
「僕たちは魔法が使えないから、ぜひお願いしたいくらいだよ」
「直接注ぐのではなく、土と肥料に馴染ませるようにたのむ」
「……フフフッ、俺のミスティック・ランドナトレッションの出番の様だな……」
「それはもういいよ!」
「……変わった奴だな」
温室の世話も楽しくなりそうだな!
「アウェイキング・ヴァンダーーーー!!!」
「フ、フレン、どうしたというのだ」
どうでもいい補足
蒼炎剣ブルーフレイムソード
ウードの剣必殺技の一つ
FE覚醒、FE無双等で登場
ミスティック・ランドナトレッション
ただの肥料にオーディンが名付けたもの
オーディン・モズメ支援
アッシュはオーディンが平民だと思っているので敬語は使いません
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