ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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第53話『闇騎士』

 

 

 俺は“漆黒のオーディン”、金色の金髪道化師から漆黒の黒衣を纏う銀髪戦術師へと姿を変えた、選ばれし闇の呪術士だ。

 

 

 俺とベレス先生、ラズワルド、ルーナの四人は先生の部屋に集まっていた。

 先生の部屋は学生寮の一階の角部屋にあり、一応先生は学生寮の寮長も兼ねているらしい。

 まあ、寮長と言っても寮内の落とし物を集めて管理したり、掲示板の管理をしたりする程度の仕事で、寮内の風紀違反なんかの注意はよほどのことがない限りしないらしい。

 

 流石に四人も集まるとこの部屋も狭いな。

 

 

「これにソティスが宿っているの?」

 

「そうだな⋯この宝玉の中に時のよすがを辿りし、女神の魂の一片が眠っている」

 

 

 先生が女神様の宝玉を手に取り興味深そうに眺めている。

 今日、四人で集まったのは力を使った女神様の宝玉に、先生と融合して消えてしまったはずの女神様が入っているという話をしたかったからだ。

 他の人に聞かれたらまずいので先生の部屋でこそこそ話しているのだった。

 

 

「僕とルーナの宝玉には変わりはないから、やっぱりオーディンが宝玉を使った影響だよね」

 

「そうでしょうね⋯あたしたちの宝玉を使ってどうなるか試すわけにもいかないし女神様が目覚めてくれないことには⋯」

 

 

 ラズワルドとルーナはそれぞれ女神様に貰った宝玉と先生が手に持つ俺の宝玉を見比べて考察している。

 全て同じ大きさの緑色の玉だが、俺の宝玉だけ魔力が失われているのがわかるが⋯どことなく存在感のようなものを感じる。

 

 

「魔力を流せば少しの間喋れるようになるんでしょ⋯ちょっと流してみなさいよ」

 

「無茶言わないでくれよルーナ⋯また女神様に怒られるのは嫌だぞ」

 

「私が魔力を流してみようか?」

 

「いや、先生⋯無理矢理起こすのはやめておこう。女神様はかなり力を失っている様子だったから、何度もそんなことをしてしまうと消えてしまうかもしれない」

 

「流石に女神様が消えちゃうのは困るよね…うーん、待っているしかないのかな」

 

「ソティスは自称神様だからお祈りしてみると起きるかも?」

 

 

 ⋯先生、女神様を呼び捨てだし「自称神様」とか言ってるし⋯実はあまり敬っていないのかな?

 そう考えつつも四人で女神様が起きるようにお祈りしてみた。

 

 

『⋯ふわぁ⋯なんじゃ、おぬしら雁首揃えて何をしておる⋯?』

 

「ソティス!」

 

「ああ、女神様っ!」

 

『なんとなく呼ばれたような気がして、意識が覚めたのじゃ』

 

 しばらく祈っていたら、祈りが通じたのか女神様が起きてしまった。

 お祈りしたら目が覚めるなんて本当の神様みたいだ。

 

 

「ソティス、おはよう。また会えて嬉しいよ」

 

『⋯いつでもおぬしと共におる、と言うたであろう。⋯じゃが、昨日の今日でまた話せるようになるとは思うていなかった。そこの小童には感謝せねばならない』

 

「オーディン、ありがとう」

 

「フッ⋯礼には及ばない」

 

 

 女神様の意識がこの宝玉の中に宿ったのは、本当にたまたまだろうしな⋯玉だけに。

 先生も女神様も喜んでいる様子で良かった。

 

 

「女神様⋯そこにいるの⋯?あたしには見えないんだけど⋯」

 

「僕にも見えないね⋯オーディンと先生には見えてるの?」

 

 

 どうやら女神様の姿と声は、ルーナとラズワルドには認識できないようだ。

 女神様の宝玉を二人が触ってみたり、女神様が二人に話しかけてみたり、いろいろと試しても女神様を認識できない様子だ。

 

 

「うーん、宝玉に魔力を流せば会話できるようになるかもな」

 

『絶対嫌じゃ!⋯あの自分が他の存在に侵される感覚⋯もう味わいたくないぞ!』

 

「魔力を流すなんてこと、僕らは魔法職じゃないからできないよ」

 

「ルーナ、ラズワルド。ソティスの言葉は私たちが訳すから」

 

「また女神様とお話してみたかったのに⋯」

 

『わしには聞こえておるから、そう悲しまぬともよいぞ』

 

 

 女神様が宿っている宝玉は先生に渡しておくことにした。

 俺が持っているよりも先生が持っている方が良いと思ったし、必殺技の開発とか呪術の研究とかしている時に女神様が現れるのも嫌だからな。

 

 

「女神様⋯レア様や教会関係者に女神様の状態について話した方がいいですかね?」

 

『うーん、わしとしては話して欲しくないのぉ。正直、あのレアという女は胡散臭すぎる⋯』

 

「胡散臭い?」

 

『うむ。わしとこやつがこのようになった原因⋯黒幕かもしれぬし⋯何か良からぬことを⋯むっ、いかん、また眠たくなってきお⋯た⋯話は⋯ここま⋯じゃ⋯」

 

「あっ、女神様⋯消えてしまった」

 

「ソティス⋯おやすみ」

 

 

 話の途中だったが女神様は消えてしまった。

 

 結局、女神様のこの状態をレア様に話すのはしないことにした。

 実際レア様の行動はかなり怪しいのでもう少し調べてからでも良いだろう。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 セテスさんが、西方教会の情勢が落ち着いたため大修道院へ戻ってきた。

 それから数日後、俺とラズワルド、ルーナ、そして先生の四人は『大事な話がある』とセテスさんの部屋へと招かれていた。

 

 

「ベレス、オーディン、ルーナ、ラズワルド、四人とも久しぶりだな⋯私が留守の間ガルグ=マク大修道院とフレンを守ってくれてありがとう」

 

「どういたしまして」

 

 

 揃って部屋に入ると開口一番セテスさんから感謝と労いの言葉を貰った。

 セテスさんがこれだけ長く大修道院を離れることは珍しく、その間はフレンとも離ればなれになっていたのでとても心配していたらしい。

 

 

「うーむ、聞いてはいたが⋯ベレスのその変わり様は⋯少し驚いてしまうな」

 

「これは『真の力』が覚醒した私の姿⋯」

 

「そして、先生と同じタイミングで俺も『真の力』が⋯」

 

「⋯冗談を言ってる場合ではないのだがな⋯まったく君たちは」

 

 

 セテスさんは先生の姿を見て驚いた様子だったが、先生と俺の言葉を聞いて呆れてしまった。

 いや、冗談というわけでもないのだけど。

 

 

「しかし大司教は一体なにを考えているんだ⋯これでは、まるで⋯」

 

「⋯まるで?」

 

「なんでもない⋯すまないが今の発言は忘れてくれ」

 

 

 ジェラルトさんの日記に書かれていたことと現状を照らし合わせるとレア様が赤ん坊の時のベレス先生の身体に何かしたことは間違いないだろう⋯それはまるで人体実験の様な何か。

 セテスさんもレア様が先生に何かをしたことはわかっているみたいだが⋯大司教の補佐役という立場上、俺たちにそれを伝えるのは難しいのだろう。

 

 

「今日呼んだのは、士官学校を卒業した後の君たちの扱いについてだ」

 

「卒業後⋯団長にはセイロス教団に傭兵として雇ってもらうって話はしたけど、その話かしら」

 

 

 俺たちの『使命』を考えるなら、女神ソティス様を信仰の対象としているセイロス教団で仕事をするのが一番良いとは思うけど⋯

 実は俺たち三人と先生はクロード、ディミトリ、エーデルガルト、フォドラ大陸三国の次期国家元首から直々に『ウチの国に来ないか』と誘われている状況でもある。

 級長三人とも『使命』に協力してくれると約束してくれたし、友達からのお願いだから断りにくいんだよな。

 

 

「いや、君たち三人には傭兵ではなく正式にセイロス騎士団へ加わって欲しい。それもただの騎士ではなく『聖騎士』としてだ」

 

「ええっ、聖騎士ですか!?」

 

 

 驚いて叫んでしまった。

 聖騎士というのは、セイロス騎士団でも特別な階級で通常の騎士より上位の扱い⋯場合によって騎士団長に匹敵する権限を持つこともある。

 士官学校を卒業してすぐの者が易々と就けるような地位ではない。

 

 

「うむ。君たちの実力⋯そして背負っている使命。教会の上層部で協議した結果、聖騎士の地位に就くに相応しいと判断された」

 

「人格やらで問題視されなかったんですか?主にオーディンとかの」

 

「なっ!?ラズワルド、それを言うならお前のナンパ癖もそうだろ!」

 

「一部、君たちの人格面や若さからその立場は相応しくないという意見もある。⋯しかし、君たちは女神に遣わされた使徒だ。教団としても傭兵という中途半端な立ち位置でいて欲しくはない⋯まして他国に士官されるわけにもいかないからな、最大限の要職を用意した」

 

「急に聖騎士なんて言われてもねえ⋯そういえばあたしたち三人って言ってたけどベレスはどうなるの?」

 

「私は来年も教師をするのかな?」

 

「ベレスについては聖墓での儀式を終えた後、大司教から直接沙汰があるそうだ。私も詳しくは聞いていない⋯はぐらかされてしまったのでな」

 

 

 儀式を終えた後か⋯女神様との関係もあるし、レア様は一体先生をどうするつもりなのだろうか⋯

 

 

「そういえば、聖騎士ってカトリーヌさんの雷霆みたいな“英雄の遺産”かそれに匹敵する武器を持っていないといけないんじゃ?」

 

「ベレスとオーディンはともかく、あたしとラズワルドはそんな武器持っていないわよ」

 

 

 ラズワルドの言うように、聖騎士は“英雄の遺産”かそれに匹敵する武器を持っていないと就くことができない。

 俺は封魔剣エクスブレードを持ってるから良いのだけど。

 

 

「ルーナとラズワルドの二人には教団から『聖騎士』の格に相応しい武器が貸与されることになる」

 

「へぇ、なんの武器かしら?剣なら良いんだけど」

 

「残念ながら剣ではない。ルーナには槍の“グラディウス”、ラズワルドには“オートクレール”という斧が貸与される。二つとも『聖騎士』が振るう武器としての格は十二分にある」

 

「何処かで聞いたことがあるような⋯武器名だね」

 

「マジかよ⋯超凄え武器じゃねえか⋯」

 

 

 グラディウスはかつてフォドラの喉元を守り切った勇士の使った槍、オートクレールは英雄戦争で活躍した帝国竜騎士の斧だ。

 どちらも“英雄の遺産”に匹敵する、有名かつ強力な武器である。

 二人にだけずるいぞ!!

 

 

「セテスさん!俺には!?俺には何かないんですか!!」

 

「⋯私も何か欲しい」

 

「君たちは“封魔剣エクスブレード”と“天帝の剣”を持っているじゃないか⋯オーディンのその剣は聖騎士となるに値する格はある」

 

「カドゥケウスの杖みたいな装備品でも良いですから!俺にも何か!何か貸してくださいよ!」

 

「神聖武器はそう易々と貸し出せるものではない」

 

「そんなぁ⋯」

 

 

 セテスさんは易々と貸し出せるものではないと言っているが、カドゥケウスの杖は大修道院に持ち帰った後なぜかフレンが私物みたいに扱っている。

 アッサルの槍もなぜかセテスさんの部屋に置いてあるし、自分たちは良いのだろうか⋯

 

 

「それと、三人には聖騎士就任とともに新設する部隊の指揮官を務めて欲しい」

 

「新設する部隊?」

 

「君たちの使命に関係する敵⋯古くから教団とは敵対してきた存在だが、我々は“闇に蠢くもの”と呼んでいる。やつらを専門に調査し戦う部隊を作る」

 

「なるほど、屍兵と戦い慣れているあたしたちにピッタリの部隊ってわけね」

 

「⋯騎士団員の人選も君たちに任せたい。今期の士官学校生を勧誘するなら君たちの方が詳しい上に信頼関係もあるから適任だろう」

 

 

 部隊を新設するとは⋯教団も“闇に蠢くもの”に対して本気で対応するらしい。

 人選もこちらに任せてくれるなら⋯思い浮かぶ生徒がたくさんいるな⋯ラズワルドたちと話合って決めていくか。

 

 そして、新設する部隊にはなくてはならないものが存在する⋯それは『名前』だ!!

 魂を躍動させるような最高のネーミングで部隊名をつけなくてはな⋯久しぶりに血が騒いできたぞ⋯!

 

 ⋯ただもう一つ気になる点がある。

 

 

「しかし⋯聖騎士ですか」

 

「むっオーディン、どうした。少し不満気だな」

 

「いえ⋯俺は闇属性なので『聖騎士』は名乗りたくないというか⋯俺だけ『闇騎士』とか『暗黒騎士』とかに変えちゃダメですかね?」

 

「駄目に決まっているだろう!」

 

 

 

 

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