ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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第55話『この旗につどいて』

 

 

 

 俺は“漆黒のオーディン”、セイロス騎士団の狂気の天才軍師、選ばれし闇の聖騎士だ。

 

 

 俺は学校の講義が全て終わった放課後、セテスさんの部屋に来ていた。

 新設する対“闇に蠢くもの”専門部隊の仲間集めをするために、スカウトする予定の生徒をまとめた資料をセテスさんに渡すためだ。

 

 挨拶もそこそこにセテスさんに資料を手渡すと、それを見たセテスさんはすぐに表情を強張らせた。

 

 

「資料の一番上にフレンの名があるのだが⋯見間違いではないよな」

 

 

 怒りを抑えたように少し震えた声でセテスさんが問いかけてくる。

 本当にフレンのことに関しては、わかりやすい人だよなあ⋯

 

 

「見間違いではないですよ、セテスさん。フレンも新しく作る部隊の一員に欲しい人材です」

 

「⋯理由を聞こうか」

 

「フレンは<ダークペガサス>になりました。<レスト>、<レスキュー>、<リザーブ>が使えますし、これだけ豊富な支援ができる飛行兵は彼女以外いません。」

 

 

 <ダークペガサス>は希少だからな。

 <レスト>はともかく、<レスキュー>と<リザーブ>は生徒や修道士たちにも使い手が少ないし、それら全てを駆使して空から縦横無尽に支援してくれるフレンは逸材だ。

 フレンが卒業したら何をするかは聞いていないが、大修道院を離れて生活するなんてないだろうからスカウトしても良いだろうと思っていたが、セテスさんは不満そうだ。

 

 

「ふむ⋯フレンのことを評価してくれるのは父親としては嬉しいことなのだが⋯フレンが特別な血を持っていることは君も知っているだろう。フレンを危険に晒す可能性があることはさせたくない」

 

「危険なのはたしかにそうですけど⋯じゃあ、フレンは卒業したらどうするんですか?」

 

「それは⋯私の元で大司教の補佐などをな⋯」

 

 

 まあ、それが一番無難な進路だろうなと思うが⋯

 あれだけ能力があるし、意欲もあるのにもったいないな。

 

 そう考えていると、ズイッと急にセテスさんが俺の方に近づいて来た。

 

 

「そもそも、君はフレンのことをどう思ってるんだ?随分と親しい様子だが」

 

「えっ、ちょっと⋯」

 

 

 最近噂になっている、セテスさんの『男子生徒にフレンをどう思っているか』と聞く攻撃だ!

 ついに、俺もこれを受ける時が来た⋯運命とは決して抗えぬもの⋯!

 

 

「フレンは大切な仲間ですけど⋯き、急にどうしたんですか、セテスさん」

 

「本当にそれだけか?フレンを口説いたりはしてないだろうな!?」

 

「口説いてないですよ⋯フレンはただの“闇の同胞”です」

 

「⋯その“闇の同胞”というのは何なのだ!?フレンは君のことを“光の同胞”となどと呼んでいるが⋯私には意味がわからぬ⋯」

 

 

 “闇の同胞”とは同胞同士しかわからない固い絆で結ばれたものを表す⋯のではなく本当はそう呼び合って遊んでるだけなんだけど、今のセテスさんに説明しても説教されるだけな気がするな。

 

 

「私は君に一つ問いたい⋯君はフレンのために、その命をかけることができるのか!!」

 

「できますけど⋯」

 

 

 叫びながら問いかけてきたセテスさんが急にキョトンとした顔になった。

 ⋯フレンのことに関しては急に怒ったり黙ったり忙しい人だな。

 

 

「フレンのためじゃなくても⋯仲間のためなら命をかけますよ、俺たちは。もちろん死ぬ気は無いですけど」

 

「⋯そうだな、今の質問は失礼だった。フレンを救うために大怪我した君に対しても⋯我々の世界を救うために、この世界に来てくれた君たちにも⋯すまなかった」

 

 

 そういえば、あのフレン誘拐事件で既に俺はフレンのために命をかけて戦ったとも言えるな⋯全然、そんなつもりでは無かったんだけど。

 だが、今の一言でセテスさんは落ち着いてくれたみたいだ。

 

 

「別に謝らなくてもいいですよ⋯わかりました、フレンを新設部隊に誘うのは諦めます」

 

「ああ、頼む。まだフレンには伝えていないだろうな?」

 

「はい、フレンなら二つ返事で了承してくれそうですから。先に保護者のセテスさんに許可を取ろうと思って⋯」

 

「賢明な判断だ。感謝するよ」

 

 

 断られる可能性も高いと思ったが、フレンを勝手にスカウトしちゃうと絶対怒られるだろうからな。

 しかし、これで当てにしていた支援回復役が一人少なくなってしまった。

 

 ついでにセテスさんに金鹿の学級のみんなで作ったお守りを渡しておくことにしよう。

 みんなが手伝ってくれたので生徒の人数分以上の数を揃えることができた。

 セテスさんの前にお守りを並べる。

 

 

「このお守り、金鹿の学級のみんなで作ったんですよ。セテスさんも一つどうぞ」

 

「ほう、私にもくれるのか。ありがたい、頂いておこう」

 

 

 そういうと、お守りの一つを手に取った。

 ⋯そのお守りは!?

 

 

「そのお守りは⋯フレンが作ったやつですね⋯」

 

「おお!そうだったのか⋯フレンがこれを⋯ふふふ⋯」

 

 

 特に考えず、フレンの作ったものを選んでしまうとは⋯セテスさん、恐ろしい人だ⋯!

 

 

 ちなみに、新設する騎士団の名前として漆黒闇騎士団(シュヴァルツァドゥンケリッター)という、徹夜して考えた超絶カッコいい名前をセテスさんに認めて貰おうと資料にこっそり書いていたが、普通に却下されてしまった。

 

 ⋯何故だ!!

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 セテスさんと話した後は温室に来ていた。

 温室は魔法により温度が一定に保たれており暖かいので、この寒い時期には 暖を取りに来ている人も結構いる。

 

 温室では最近、金鹿の学級の担当箇所は先生がアンゼリカの種ばかり植えて占領しているので、俺は代わりに黒鷲の学級の担当箇所をこっそり使わせてもらっていた。

 岩ゴボウは『力+1』という凄い効果を持つ食べ物なんだけど⋯硬すぎるし苦すぎるから、食べさせられる身にもなって欲しいぞ。

 

 俺が探している人物をちょうど見つけることができた。

 その人物⋯アッシュはいつも通り自身の学級である青獅子の学級の担当箇所を手入れしている。

 ついでにドゥドゥーも一緒だ。

 

 

「よおアッシュ、ドゥドゥー、調子はどうだ?」

 

「⋯むっ、オーディンか」

 

「こんにちは、オーディン。調子は普通だよ⋯君は調子良さそうだね」

 

「⋯ふっ、この“漆黒のオーディン”、常に調子が良い⋯なぜなら、この闇のお守りを持っているからな」

 

「へえ、お守りかい?⋯どこで手に入れたの?」

 

「俺たち金鹿の学級のみんなで作ったんだ。お前たちにも渡そうと思ってな」

 

「⋯これをおれに⋯?」

 

 

 アッシュとドゥドゥーにお守りの束の中から一つ選んでもらう。

 二人は遠慮しつつも、みんなに渡しているものと聞いたら素直に貰ってくれた。

 ⋯ほう、アッシュは“ミッシング・イリュージョン”、ドゥドゥーは“バサラ・マサラ”を選んだか⋯二人ともなかなかセンスが良いな。

 今配っているお守りは全て俺が渾身で付けた名前がある⋯二人が選んだものはその中でも特にお気に入りの名前のやつだ。

 

 

「ありがとう。大切にするよ、オーディン」

 

「手間をかけて悪かった」

 

 

 アッシュもドゥドゥーも喜んでいるようで良かった。

 ドゥドゥーは贈り物の類は先生からもほとんど受け取らないらしいけど、今回は受け取ってくれてなによりだ。

 

 

「それともう一つ大事な用事があるんだ⋯アッシュ、お前もセイロス騎士団に入らないか?」

 

 

 アッシュは青獅子の学級に所属する平民だ。

 騎士志望で弓の実力と鍵開け技能を持つ⋯盗賊系のスキル持ちは性格に難がある場合も多いが、アッシュは正義感が強い性格で信頼に値する人格者である。

 

 

「ええ?僕がセイロス騎士団に入って良いのかい?僕は、セイロス教団に反乱を起こしたロナート様の⋯」

 

「それは関係ないさ⋯でもアッシュ⋯もしかして、お前もまだ教団に不信感が⋯」

 

 

 中央教会に反乱を起こし、騎士団と俺たちの手によって討たれたロナート卿はアッシュの養父にあたる存在だ。

 ロナート卿はその後の調査で西方教会に唆されて、反乱を起こしたことがわかったみたいだけど⋯見方によっては、アッシュにとってセイロス騎士団はロナート卿の仇にもなる。

 もう少し考えてスカウトするべきだったかもしれない。

 

 

「⋯僕自身、ロナート様や義兄さんを殺した、セイロス教団を信じきれないところはあるよ。でも、セイロス騎士団が自分たちの正義と信念を持っていることも知っている⋯僕も君たちや彼らと共に戦えば、真の正義を見つけられるのかな⋯?」

 

「それはアッシュ⋯お前次第だ⋯自分の正義は自分で見つけるんだ」

 

「⋯ありがとう、オーディン。僕はセイロス騎士団に入りたい。君となら自分の正義を見つけられる気がするから」

 

「おお、俺の漆黒闇騎士団(シュヴァルツァドゥンケリッター)に加わってくれるのか!歓迎するぞ!」

 

「⋯新しく作られる騎士団ってそんな名前だったんだ。まあ、今はガルグ=マクの近くの街に弟たちも住んでるからね。ガルグ=マクで働いた方が良いって思ってもいたんだ」

 

「よろしくな、アッシュ!」

 

「⋯良かったな。アッシュ」

 

 

 黙って聞いていたドゥドゥーもアッシュを祝福している。

 

 これでまた一人、仲間ができた。

 この調子でどんどん集めて行くぜ⋯!

 ⋯魂が躍動する!

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 温室の次は食堂だ。

 すでに夕食時間だから生徒も沢山いる。

 

 休日は収穫祭や他学級交流会が開かれる日があって楽しいが、今日は平日なので普通のメニューだ⋯ふむ、今週の休日は団結祭か⋯

 

 食事を取りに並んでいると、スカウト予定の人物⋯青獅子の学級のメルセデスが席に座ってるのを確認できたのでそちらに向かった。

 メルセデスの親友のアネットや先生も一緒に食事をしていたが、まあ良いか⋯

 

 

「メルセデス、アネット⋯先生と一緒に食事か?良かったら俺も混ぜてくれよ」

 

「良いよ」

 

「あっ、うん⋯あたしも良いよ」

 

「こ、こんにちは⋯オーディン」

 

 

 今日は野菜たっぷりのサラダパスタだ。

 一部の野菜嫌い以外はみんな結構好んで食べる当たりメニューだな。

 

 

「えっ、と⋯⋯美味しいね」

 

「そ、そうねぇ⋯⋯お代わりしてもいいのよ⋯⋯?」

 

「お代わりしてくる」

 

 

 先生はお代わりに行ってしまったが、メルセデスとアネットの様子が何か変だ。

 いつもなら二人で楽しそうに会話しているけど、今日はお互いに顔を合わせようとすらしない。

 

 

「どうしたんだ二人とも⋯なんだか様子が変だぞ?謎の呪術でもかけられたのか?」

 

「呪術って、かけそうな人がオーディンしかいないんだけど」

 

「なんでもないわ⋯気にしなくて良いのよ」

 

 

 なんでもなさそうに見えないのだが⋯喧嘩でもしてるのか?⋯いや、メルセデスとアネットに限ってそれはないだろう。

 先生がお代わりを取ってきて無言で食べ始めた。

 二人の様子が変なのに、先生は気にならないのだろうか⋯?

 

 事情は良くわからないが俺は俺の目的を果たすことにしよう。

 

 

「メルセデス。後で大事な話があるんだが⋯食事が終わったら、どこかで二人で会えないか?」

 

「えっ、それは良いけど⋯その⋯二人きりで?」

 

「人にあまり聞かれたくないから、二人の方が良いけど⋯まあ、先生とアネットは事情を知ってるから来ても良いが」

 

「あたしが事情を知ってること⋯?」

 

「私はこの後別の人と食べるから行かないよ」

 

 

 この後って⋯どんだけ食うつもりなんだ先生は⋯

 

 アネットは一緒に来て話を聞くつもりのようだ。

 食事が終わり、俺の部屋までメルセデスとアネットを連れていくが、二人ともいつもより口数が少ない⋯というか全然二人で喋らない。

 

 

「ここが、俺の部屋⋯“漆黒のオーディンの秘密の部屋”だ」

 

「全然、秘密っぽくないけど」

 

「ここってエミールが使っていた部屋よね」

 

「まあ、座っててくれ。今、お茶を淹れるから」

 

 

 メルセデスとアネットを部屋の中へと案内し、お茶の準備をする。

 俺個人ではあまりお茶会はしないので、この茶器セットはラズワルドに借りた物だ。

 

 

「オーディン、先にアンと話したいんだけど良いかしら⋯」

 

「ん?別に良いけど」

 

「アン、あのね、ちょっと⋯」

 

「⋯買い出しの時の話?もういいよ、気にしてないもん」

 

 

 お茶を準備している間、メルセデスとアネットが話し始めた。

 二人の話では先週街に買い出しに行った時、柄の悪い男⋯ごろつきに絡まれたらしい。

 アネットがごろつきに反発して「あたし、あなたより強いと思います。試してみますか?」とか言ったもんだから、一触触発⋯メルセデスの機転でなんとか逃げ出したとのことだ。

 それで、この一件で二人の意見が食い違って喧嘩していたみたいだ。

 

 

「ごめんなさい、アン」

 

「あたしこそ、ごめん。メーチェ⋯これからもあたしたち、仲良しってことでいいんだよね」

 

 

 二人がお互いに謝って仲直りしている。

 ⋯メルセデスもアネットも凄く仲が良いのに喧嘩なんてするんだな。

 

 

「はー、良かったあ!このまま仲直りできなかったらどうしようって⋯!」

 

「もう、一週間も口を聞いてなかったのよね〜こういう二人が話しできる機会を作ってくれた先生とオーディンに感謝しなきゃ⋯あら?そういえば、どうして私たちここに来たのだったかしら?」

 

 

 メルセデスはアネットとのことに夢中で俺がここに呼んだ理由を覚えていないらしい。

 一件落着したところで、そろそろ本題に入るか⋯

 

 

「メルセデス、俺たちがセイロス騎士団に新設する部隊に入らないか?」

 

「ええ?私がセイロス騎士団に⋯」

 

「騎士としてではなく部隊付きの修道士としてだけど⋯対“闇に蠢くもの”専門部隊、お前の弟の死神騎士エミールにも関わっていくと思う」

 

「そう⋯エミールたちに対抗する専門部隊に⋯」

 

 

 メルセデスは死神騎士である弟のエミールをずっと助けたがっていた。

 おそらく、新設する部隊はその死神騎士に対して最も対面する機会が多いだろう。

 つまり説得や捕縛の機会も増えるからメルセデスにとっては悪い話ではないはずだ。

 

 

「う〜ん⋯私は⋯」

 

「メーチェ、教会で働きたいって言ってたもんね⋯でも、家のこともあるし⋯難しいよね」

 

「メルセデスは家のこともあるし無理強いはしない。でも、俺はお前の実力は高く買っている⋯一緒に戦ってくれるとありがたい」

 

 

 メルセデスは紋章持ちだから、今の養父に引き取られたと聞いたことがある。

 家としてはそれを利用して成り上がりたいとのことだけど⋯それにメルセデス本人はあまり乗り気ではないらしい。

 

 メルセデスの評価は魔法使いとして極めて高い能力を持っていることだ。

 特に信仰魔法は<リブロー>、<レスト>、<リザーブ>を使えるので回復役としては一流と言っていいだろう。

 正直、フレンがスカウトできなくなったのでメルセデスにも断られると回復役が足りなくなる。

 

 メルセデスはかなり考えて⋯迷っているみたいだ。

 

 

「⋯これも女神様が定めた運命なのかしら⋯オーディン、私も一緒にあなたと戦うわ。どこまで役に立てるかわからないけど⋯」

 

「ありがとう、メルセデス。⋯しかし、運命を決めるのは女神様じゃなくて自分だ。今、メルセデスは自分で運命を決めたんだ」

 

「⋯⋯!⋯そうね」

 

 

 メルセデスが仲間に加わった!

 また一人、漆黒闇騎士団(シュヴァルツァドゥンケリッター)に新たな仲間が⋯!

 ⋯新たな物語の予感⋯血が騒ぐぜ⋯!

 

 

「良いなあ、あたしは卒業したら家に戻って伯父さんたちの手伝いをしなくちゃいけないから⋯ガルグ=マク大修道院に残れるのはちょっと羨ましいかな⋯」

 

「おっ、羨ましいならアネットも入るか?いつでも歓迎だぜ」

 

「あらあら?良いわね、アンも私たちと一緒に頑張りましょう」

 

「あたしは伯父さんたちの手伝いをするのは嫌じゃないから⋯あと、お父さんも連れ帰らないといけないし⋯もしも、お父さんと一緒に教会に戻ってくる時があればその時はお願いね、二人とも」

 

 

 アネットの方は家庭環境もだいぶ良いようだ。

 最近はアネットとギルベルトさんが話している姿も良く見るし、卒業後はしばらく家族で一緒に過ごすのかもしれない。

 

 

「二人とも頑張ってね!応援してるよ」(力+4)

 

「あらためて、よろしくね〜、オーディン」

 

「ああ、メルセデス⋯運命を共に!」

 

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