ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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第56話『女神の天秤』

 

 

 俺は“漆黒のオーディン”、セイロス騎士団最強の騎士団である漆黒闇騎士団(シュヴァルツァドゥンケリッター)(仮名)を率いる選ばれし闇の聖騎士だ。

 

 

 先日から進めていた、騎士団に新設する対“闇に蠢くもの”部隊の仲間集めは順調に進み、俺とルーナとラズワルドの三人は、三学級の平民や嫡子ではない貴族の生徒たちに金鹿の学級のみんなで作ったお守りを配りつつ仲間にならないかスカウトしてまわった。

 

 ラズワルドはドロテアを漆黒闇騎士団(シュヴァルツァドゥンケリッター)(仮名)に誘ったが、断られてしまったらしい⋯まあ、ドロテアは騎士や修道士志望で士官学校に入った感じではないからな。

<リブロー>使いをもっと集めたかったけど、確保できなかったのは残念だ。

 

 

 仲間集めと並行して、俺たちの使命⋯この世界を滅ぼす脅威について各国の重鎮たちに伝える活動も行っていく。

 

 今日はフェルディナント、リンハルト、カスパルの三人を俺の部屋に招き、俺たち三人が女神様からこの世界を守る使命のために異世界から召喚されたと説明していた。 

 

 

「凄え話じゃねえか! お前ら、女神様に会ってフォドラに呼ばれたのか!」

 

「にわかには信じがたいな⋯いや、オーディン、君が嘘をついていると疑っているわけではないのだが⋯」

 

 

 説明を終えると、カスパルは興奮した様子だったが、フェルディナントは実感がわかない様子といったところ⋯ちなみにリンハルトは寝ている⋯お前は前に聞いたことある話かもしれんが、真剣に話してるのに寝るんじゃねえ! 

 

 

「⋯とりあえず、リンハルトは起きろ! ⋯まあ、本題は世界を破滅させるような敵についてだな」

 

「以前、フレンを誘拐した者たちだな。炎帝、死神騎士、ソロン、クロニエだったか?」

 

「死神騎士はイエリッツァ先生なんだよな? 俺、あの人には訓練で一回も勝てなかったんだよな⋯でも、見てろよ! 絶対に倒してやるから!」

 

 

 死神騎士ついては俺たちは生け取りにする予定だから、カスパルはあまり関係ないんだけどな⋯

 本題はフェルディナントたちの親であるアドラステア帝国の重鎮たちにその危険な存在のことを周知していくことだ。

 フェルディナントの父は帝国の宰相、カスパルの父は軍務卿、リンハルトの父は内務卿⋯この三人を含めた六貴族は、現在の帝国では現皇帝のイオニアス9世、次期皇帝のエーデルガルトより実権を握っているらしいからな。

 

 

「とにかく、父には伝えておくよ。世界が滅ぶ可能性があるとすれば、帝国⋯いや、フォドラ全土が一丸となって事態に望まなければなるまい!」

 

「たしかに⋯まあ、そういうのは親父に言っときゃなんとかなるかな。俺は怪しい奴らを片っ端からぶっ倒してれば良いんだろ」

 

「そう上手く行くかなぁ? 六貴族っていっても一枚岩ではないし、僕の父と軍務卿なんていつも言い争いしてるらしいからね⋯一応、伝えるだけは伝えておくよ」

 

「ここに、奴らについてまとめた資料が三人分ある。宰相、軍務卿、内務卿まで届けてくれ」

 

 

 フェルディナントはともかく、カスパルやリンハルトが上手いこと説明できるとは思えないので、“闇に蠢くもの”について教団が調査した今まで分かっていることや危険性についてまとめた資料も一緒に手渡しておく。

 

 ⋯後は、お待ちかね! “闇のお守り”贈り物コーナーだ! 

 

 

「貴様らにも、オーディンの“闇のお守り”を渡しておこう。一つ選んでくれ」

 

「ほうほう、これが君たちが配っているという噂のお守りか⋯私たちも貰って良いのか?」

 

「もちろんだ⋯みんなに配るために作ったからな。『不幸を跳ね返し、幸運を招き寄せる』呪術が付与してある」

 

「おう! じゃあ、コレ貰うぜ。なんかの動物の牙かかっこいいじゃねえか」

 

「呪術ねぇ⋯僕はそっちの方が気になるかな。今度、暇な時に教えてよ」

 

 

 三人にも無事お守りを渡せたので、生徒で渡していないのはエーデルガルトとヒューベルトだけになったな⋯

 最近、二人とも何故か大修道院に居ないことが多いので渡す機会が無かったのだ。

 

 

「後は、エーデルガルトとヒューベルトに渡せば生徒全員に配ったことになるんだけど⋯二人とも今日は大修道院に居たか?」

 

「ああ、今日はあいつら二人とも居たぜ」

 

「エーデルガルトもヒューベルトも今節は異様なほどに忙しそうだな⋯帝都アンヴァルをはじめ帝国の各地を廻っているそうだが⋯何かあれば父が言ってきそうなものなのだが⋯」

 

「そういえば、二人ともまた何か支度してたような⋯」

 

「おっ、そうなのか。じゃあ、二人に会ってくるから⋯三人とも例の件について頼んだぜ」

 

 

 そう言うと、三人に別れを告げて解散した。

 また、大修道院からいなくなる前にエーデルガルトとヒューベルトに会わなくては⋯! 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 ガルグ=マク大修道院の門付近を探しているとちょうどエーデルガルトとヒューベルトを見つけることができた。

 二人とも遠出をするような格好をしているので、出かける前に会うことができて良かった。

 

 

「よう、エーデルガルト、ヒューベルト。今から出かけるのか?」

 

「⋯ええ、オーディン。これから帝都へ向かうの⋯大事な用事があるのよ」

 

「おや、我々にご用ですかな⋯生憎、今節は忙しい身でして修道院にほとんどいませんでしたからね」

 

 

 そういえば、二人とこうやって話すのは久しぶりの気がするな⋯黒鷲の学級に一時的にいた時はかなり話す方だったんだが。

 

 

「出かける前に会えて良かったぜ。士官学校の生徒みんなにお守りを配っているところでな⋯フォドラ最強の呪術士“漆黒のオーディン”の闇のお守り⋯お前たちにも分けてやろう!」

 

「お守り⋯私とエーデルガルト様にですか⋯それにしては随分と数があるようですが」

 

「卒業記念に金鹿の学級のみんなで作ってたんだ。生徒のみんなに配ったら後はセイロス教団の知り合いとかに配る予定だ」

 

「お守り作り⋯貴方たち、そんなことをしてたの? ふふっ、金鹿の学級は呑気なものね⋯楽しそうだわ」

 

 

 お守りの束を取り出すとエーデルガルトとヒューベルトは興味深そうに眺めている。

 作った自分で言うのもなんだが、お守りの一つ一つが個性が合って良い。

 まあ、可愛い感じのやつとかはほとんどヒルダが監修したんだけど。

 

 

「⋯では、私はこれを貰いますか」

 

「ほう、“アクナキ・グロウス”を選んだか⋯ヒューベルトならそれを選ぶと思っていたぞ」

 

 

 ヒューベルトが選んだものは黒曜石を丸く削ったものなのだが、模様がなんだか目玉のように見えるから結構不気味な感じがするお守りだ。

 リシテア辺りはかなり怖がっていたものだが、ヒューベルトはこういうのが好きだと思っていたぞ。

 

 

「ふむ、貴殿は私がこれを選ぶと分かっていたと⋯」

 

「オーディン⋯もしかして、このお守り全てに名前を付けているの?」

 

「フッ、もちろんだ⋯! この青いのが“スターダスト・ブルームーン”、これが“ジャングゴー・ジャンクシー”、こっちが“シークレッド・ウォール”、そしてこれが⋯」

 

「待って、わかったわ。名前を全て聞いてたら日が暮れてしまうから⋯時間もないし私も選ぶわ⋯」

 

 

 なんだよ、つれないなあ⋯エーデルガルトならノってくれると思ったのに。

 時間がないといったわりに、エーデルガルトはアレコレ結構悩んだ末お守りを一つ選んだ。

 シンプルで可愛らしい紅い花型の首飾りだな⋯ヒルダ辺りが作ったやつだろうか? 思ったより可愛いのを選んだな⋯

 

 

「そのお守りの名前は⋯」

 

「いいえ、オーディン。言わなくて良いわ⋯どうせなら私が名前を付けたいもの」

 

「⋯そうか、エーデルガルトのネーミングセンスなら、きっと良い名前が付くだろうな」

 

「クク⋯楽しそうでなによりです」

 

 

 エーデルガルトは貰った首飾りを大事そうにしまい込んだ。

 名前は帝都への道中でじっくり考えてくれ⋯そして、後で教えてくれ⋯エーデルガルトのネーミングセンスは参考になるからな。

 

 

「まさか、最後にこんな贈り物が貰えるとは思わなかったわ」

 

「別に会うのは最後じゃないだろ、まだ少し学校生活も残ってるし⋯卒業した後、友達じゃなくなるわけでもないしな」

 

「⋯そうね」

 

「⋯我々が、友ですか」

 

 

 二人とも微妙に暗い顔をしてるんだけど、なんでだ? 

 もしかして⋯友達と思っているのは俺だけか? それはめちゃくちゃ落ち込むんだが⋯

 

 

「何があろうと俺たちは一緒の学び舎で学んだ学友で、同じ戦場で戦った戦友だ。それは変わらない」

 

「⋯まあ、学友で戦友なのは事実ですな」

 

「ありがとう、オーディン。進む道は違うかもしれないけど⋯私も貴方のことは友人と思うわ」

 

 

 良かった。

 二人とも友達と思ってくれてるみたいだ。

 

 

「引き留めて悪かったな。二人とも帝都への道中も気をつけて行けよ」

 

「ええ、オーディン殿もお達者で」

 

「そうね⋯名残惜しいけれどここでお別れよ、オーディン」

 

「おう、またなエーデルガルト、ヒューベルト」

 

 

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