ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン 作:すすすのすー
俺は"漆黒のオーディン"、闇の精霊の加護を受けた選ばれし闇の呪術士だ。
ガルグ=マク大修道院周辺に帝国軍が集結しつつある。
偵察に出ていたシャミアさんの話では、帝国軍の先遣隊と衝突するのは早くて明後日になるだろうということだ。
俺は大修道院の二階にある枢機卿の間で決戦前最後の軍議に参加していた。
参加者はセイロス騎士団の幹部、カトリーヌさん、アロイスさん、ギルベルトさん、シャミアさん等。
教団の指導者、レア様、セテスさん、他教団幹部っぽい人たち。
士官学校のベレス先生、マヌエラ先生、ハンネマン先生や級長のクロードとディミトリも参加している。
俺はまだ正式に聖騎士には任じられていないんだが、一応聖騎士予定…新規騎士団の団長予定者としての参加らしい。
おそらく決戦前最後となるだろう軍議の末席に座った。
「さて、部隊配置や撤退時の集合地点、籠城時の取り決めは確認できたな…後は迎え撃つ作戦だが…何か策があればすぐに言ってくれ、少しでも勝機を上げたい」
進行役のセテスさんが焦燥した顔で軍議を進める。
今まで軍議は決定事項や連絡手段の確認だけだった。
士官学校の戦力は東側にクロードが指揮する
同盟軍と王国軍は野戦で決着がつかなかった場合は籠城戦には参加せずそれぞれの国へ一時撤退し、すでにこちらに向かっている援軍と合流する予定だ。
思いつく策はいくつかあるから、ダメ元で提案してみるか。
「フッ、“漆黒のオーディン”から提案させてもらう…俺の幻影呪術を使って敵兵に呼びかけを行い士気を下げる作戦を」
「ふむ、呼びかけで士気を下げる…具体的にはどのようにするのだ?」
「女神様の姿…聖堂の宗教画とかに描かれているやつですね。あれを俺が鷲獅子戦で邪竜を投影したみたいに巨大な姿で空に浮かび上がらせて、敵兵に呼びかけるんです『不信心者は天の裁きを受ける!』みたいなことを」
言いながら、我ながらそこそこ効果がありそうな策だと思った。
広域に声を伝える魔法は昔から存在するので、その魔法で演技の上手いマヌエラ先生やドロテアあたりに喋ってもらい…流石に本物の幼女神様の姿で呼びかけするのは威厳がないので宗教画等でよく見られる女神様の姿を投影する。
これで、帝国軍内にいる敬虔なセイロス教徒の士気は確実に下がるはずだ。
俺の提示した策を聞いた、教団の偉い人たちが議論を始めた。
「攻めてくる帝国軍にもセイロス教徒はいるはずだ…存外、悪くない策かもしれぬ」
「たしかに上手く決まれば、間違いなく士気は下がるだろう…上手くいけばな」
「鷲獅子戦での幻影の邪竜の姿は私も見た。あの魔法で投影できれば騙せる可能性は十分ある」
「女神様の姿を投影し敵軍を騙すなど罰当たりにもほどがある!そんなこと許されるものか!」
「罰当たりなのは天に背いた帝国であろう!」
この教団幹部っぽい人たちは普段はあまり姿を見ないが…彼らが枢機卿なのだろうか?
偉い人たちの議論は賛同派と反対派でほぼ同数くらいだ。
「オーディン…私達が女神を騙ったのが発覚した場合、敵の大義を肯定してしまうことになります。その策は採用できません」
数度の議論の末に結局、レア様の発言で俺の策は却下された。
採用されない理由もわかるが…正直戦力的になりふり構ってられないと思うんだがなあ…
その後も軍議が進み、俺の策もいくつか採用されたが…不安の残る形で決戦を迎えることとなった。
軍議が終わり、枢機卿の間から離れるとクロードが話しかけてきた。
「オーディン…さっきの策は今回思いついたものなのか?」
「幻影の女神様で呼びかける作戦のことか?…まあ、幻影呪術を作った時に何か派手なことに使えないかとは考えてはいたな、鷲獅子戦の邪竜の時みたいに。…まさか戦争で使うことを考えるとは思いもよらなかったけどな」
「採用されてたら、とんでもなく帝国軍は動揺すると思うんだけどな…苦しい状況なのにレアさんも随分慎重なことだ」
「幻影が使えない理由も納得できる。採用されなかった策にグダグダ言っても仕方ねえよ」
レア様は聖墓では先生を通じて本物の女神様の啓示を授かりたい様子だったので、女神様の名を騙って何かをしたくないのかもしれない。
…この件については、先生たちと話し合う必要があるな…いや、今は帝国軍を退けることだけを考えよう。
◇◇◇
「皆、聞け!すでに帝国軍は目前まで迫っている!戦える者は武器を取れ!他の者は急ぎ避難せよ!我らには主の加護がある!恐れることはない、勝利を信じるのだ!」
セイロス騎士団団長代理のアロイスさんがセイロス教団軍を鼓舞するための最後の演説を行なっている。
すでに全軍配置は終わっており、クロード率いる同盟軍戦力はガルグ=マク西側へ、ディミトリ率いる王国軍戦力は東側へと行き東西の砦を守れる位置に布陣した。
この二つの砦は援軍を呼び込む為の重要な起点となるため敵に押さえられるわけにはいかない。
最も数が多く主力になるのは中央のセイロス教団軍の為、多くの士官学校生が中央に残り部隊指揮を任されている。
メンバーは俺、ラズワルド、ルーナ、レオニー、イグナーツ、ラファエル、アッシュ、メルセデス、ドロテア、他数名の金鹿と青獅子学級生…
「先生、準備は万事整った。あとは迎え撃つだけだ」
「西側のクロードたちが心配だね。距離があって細かく指揮ができないから」
「クロードならなんとかやりますよ。まずくなったら撤退するでしょうし」
「…クロードは生き残ると思うけど他の子たちが心配…オーディンが西側にいてくれたら安心できるのに」
「中央の方が、我が呪術で全軍に指示しやすい…西も東も崩させませんよ」
「じゃあ遠目のところはオーディンに任せるね」
先生は俺のことを妙に信頼している…たしかに実戦指揮能力では俺のほうがクロードより上だが、別にクロードの指揮で大きな被害をだしたことなんて無いのにな…
鷲獅子戦なんて目じゃない大規模な戦闘になるので先生も不安なのかもしれない。
遠くに見えていた帝国軍の姿がすでに確認できるほど近づいてきた…報告通り先遣隊でもこちらの兵力を上回る数だ。
先遣隊だが指揮はエーデルガルトが執っているらしい…後方の中央には皇帝近衛軍団の旗が掲げられていた。
皇帝自ら最前線に出てくるとはな…
「弓砲台発射準備!魔道砲台起動!各員赤く示す有効射程に入ったら射撃開始せよ!」
中央部隊が先生の指揮により、城郭に配置されている弓砲台と魔道砲台で迫ってくる帝国軍兵士を狙い撃つ。
有効射程を突破して、城郭の門に近づいてくる兵士には弓兵と魔法兵が弓と魔法を浴びせた。
「逃がすものか...!<メティオ>!!」
敵の指揮官には最上級魔法の<メティオ>や遠距離闇魔法の<スライム>を叩き込む。
使用回数が少ないからすぐに弾切れになってしまうが…出し惜しみしている状況ではない。
数に任せて攻め込んでくる敵兵をただひたすらに効率良く殺す為に、先生と共に指揮を執る。
「報告します!東側に飛行魔獣の集団が…!!」
「ほ、報告!西側砦、帝国の投石器の攻撃により壊滅状態!」
<戦術師>の能力でセイロス騎士たちの報告より先に視えている。
すでに西側の同盟軍は一旦要塞の城郭内に避難させ、東側は中央部隊からシャミアさん率いる弓兵隊を援護に向かわせていた。
帝国軍の中から魔獣の集団が現れ城郭に突撃し破壊を始めた。
魔獣は頭に兜のようなものを付けており、顔にある紋章石を壊しにくくされていた…帝国はすでに魔獣を兵器として運用することに成功しているようだ。
「このままだと城郭が壊される。私が近接部隊で迎撃するから、オーディンは全軍の指揮をとって」
「先生…迎撃なら俺が出撃するべきでは…?」
「私の力じゃ東西の部隊まで指揮できない…どちらが後方で指揮すべきかは明白だよ」
全軍の指揮は本来は先生の役割だが、戦場の大部分を見渡せる<戦術師>の能力で俺の方が向いていると判断された。
先生の補佐の立場から、急に全軍を任されて緊張してきた…いや、やっていることは今までと変わらない、冷静に盤面を動かすだけだ。
東側の王国部隊は飛行魔獣集団の迎撃に成功、西側の同盟部隊は転移魔法を使い敵の投石器を奪取し中央の教団部隊を援護し始めた。
中央の魔獣集団は数が多い…迎撃に出た先生たちも奮戦しているが魔獣が捨て身で城郭に突撃してくるせいで一部の城郭が破壊されてしまった。
「東に援軍が到着しました!王国軍です!」
「報告します!援軍が西側部隊と合流しました」
「……」
東と西に援軍が到着した。
…したのは良いが、期待していた数ではなかった。
この数では帝国軍を押し返すのは不可能だ。
すでに城郭は数か所が破壊されて籠城も厳しい⋯このままでは負ける。
近くで戦場の推移を見守っていた、レア様たちに話しかける。
「レア様⋯援軍はあの部隊の他に来ますか?」
「報告ではあれだけの様だ⋯王国と同盟には援軍依頼を出してはいるが⋯大規模な軍を動かすのは数週間かかると返答された」
レア様ではなく隣にいたセテスさんが答えた。
セテスさんもこの状況のまずさに顔色が悪い。
「今は敵の先遣隊を押し返せていますが、温存している全兵力が投入されたら持ちません⋯ガルグ=マクから退くことも考えておいてください」
「⋯わかりました」
「俺は押し返せている今のうちに出撃して、先生と共にエーデルガルトを狙います。中央の前線部隊と東西は指揮するので、セテスさんに後方の指揮は任せても良いですか?」
「君ほど上手くやるのは無理だが⋯任された、なんとかしてみよう」
戦局を変えるには総大将のエーデルガルトをどうにかするしかない⋯覚悟を決めるか。
転移魔法の<ワープ>で先生の部隊近くに飛ばしてもらい合流した。
「先生、中央を突破して敵の本陣を狙います!」
「わかった」
「“漆黒のオーディン”参上だ!フォドラ最強の呪術士の力を見よ!」
すでに全部隊、騎士団計略は使い切っていたので騎士団を解隊し陣形を組みなおす。
今率いている部隊は訓練で何度か同じことをやっているので手慣れたものだ。
「さあ、踊るよ!みんな僕を見て!」
「飛行部隊の位置取りは青い光に従いなさい。そこが敵の弓兵の射程外よ」
「騎兵配置完了!泰然自若ってやつだね」
「魔法使いはオデの後ろに来い!守ってやるぞぉ」
「<Mシールド>!ここからですよ、頑張りましょう!」
禁じられた森の時との違いは騎士団の慣れだけではない。
士官学校の生徒たちが瞬時に俺の幻影呪術での指揮を汲み取り、声に出して指示を伝えてくれる。
そして⋯先生に至っては俺と同等に指揮ができる⋯<戦術師>でもないのに流石は先生だ。
数百人の部隊がひとつの巨大な生き物の様に動き、数千人いる帝国軍を蹴散らしながら中央突破する。
帝国本陣に辿り着く前に、エーデルガルト率いる近衛軍が前に出てきた。
「今よ!計略を⋯!」
「<猛火計>だろ!⋯読んでるぜ!」
火計の発動を氷魔法の<ブリザー>と<フィンブル>で妨害し発動させない。
エーデルガルトが苦虫を嚙み潰したような表情で見つめてくる。
ついにエーデルガルトと対面した。
両部隊動かず睨みあう⋯少し話す時間がとれそうだ。
先生は俺のことをちらりと見て頷いた⋯俺に話せと言うのか。
「エーデルガルト⋯なぜ戦争を始めたんだ?」
「前から決めていたことを、実行に移しただけよ」
「だとしても⋯他に道はなかったのか!」
「言ったはずよ⋯信じる道など始めからなかったと。オーディン、貴方も教会の闇については気づいているのでしょう?」
薄々気づいてはいた⋯レア様がマムクートのような長命の種族であり、教団として長い間このフォドラを支配し続けていたことを⋯
そして、それがエーデルガルトにとって許されないことなのであろう⋯“人ならざる者”に支配され続ける世界。
「俺は、それを闇とは思わない」
「⋯貴方はそう言うでしょうね⋯このフォドラの痛みを知らない、ただの女神の走狗である貴方ではね」
「戦争なんか起こしたら、もっとフォドラの人たちが苦しむことになるんだぞ!」
「だとしても⋯どれほどの血が流れようと、私は変える!人々の世を取り戻す!」
「人々の世を取り戻すために、お前らも人の理を外れた“闇に蠢く者”と組んだっていうのかよ!」
「そうよ!手段を選んでる場合ではないわ!」
話し合いは決裂した。
両軍、武器を構え戦闘態勢に入る。
数では俺たち教団部隊が圧倒的に負けているが、おそらく質で勝ちに持っていけるだろう⋯ここでエーデルガルトを
「⋯シェズ!」
「“灰色の悪魔”!覚悟!!」
「⋯⋯!」
天帝の剣を使おうとした先生の前に、転移してきた<フリューゲル>の二刀流女傭兵が襲い掛かる。
「烈火剣レイジングファイアーソード!!」
「
<魔刃>と<雷斧>、お互い魔力を纏わせた剣と斧がぶつかり合い火炎と電撃を散らしあう。
エーデルガルトの持つ斧“ラブラウンダ”はアドラステア帝国のフレスベルグ一族に代々受け継がれる神聖武器、俺の持つ封魔剣エクスブレードにも引けはとらない。
「⋯くっ!」
「降伏しろ、エーデルガルト!お前じゃ俺に勝てない!」
数度、同じように魔力の刃をぶつけあうとエーデルガルトが苦痛そうに顔を歪めた。
士官学校で重装系兵種だったエーデルガルトと魔法職寄りで成長した俺では魔防に大きな開きがある。
このまま魔法で体力を削って終わらせるのもひとつの手だ。
「貴方はどこまでも⋯!この後に及んでまだ私を殺さないつもりなの!?」
「⋯⋯!」
「殺意の無い剣は脅威じゃないわ!覚悟が無いなら退くのは貴方の方よ!」
気づかれているか⋯だが、このまま押し切る!
そう思い踏み込もうとした時、横合いから闇魔法<デスΓ>が放たれ飛びのいて回避した。
ヒューベルトか⋯!?
「エーデルガルト様!一時、撤退してください。炎帝隊の被害が許容範囲を超えました」
「ヒューベルト⋯そう、頃合いね⋯貴方たちはよく戦ったわ。けれど、もう終わりよ⋯!温存していた全兵力を投入しなさい!」
「⋯させるか!!ここで終わらせる」
エーデルガルトに迫るが、近衛騎士たちが壁となり行く手を阻まれた。
エーデルガルトとヒューベルトが転移魔法で消え、無事な帝国軍兵士たちから次々撤退していく。
「⋯先生、すみません。エーデルガルトを倒し切れませんでした」
「私も二刀流の剣士に手間取ったから⋯お互い様だよ」
「帝国軍は全兵力を動員するようです⋯俺たちもガルグ=マクへ一度退きましょう」
信号呪術で転移魔法<レスキュー>を要請してガルグ=マクの城郭内に率いていた部隊ごと回収してもらう。
俺たちが戻ってくるとセテスさんたちは安堵したような表情で迎えてくれた。
「先遣隊は崩せましたがエーデルガルトには逃げられました⋯これから、全兵力で攻めてくるようです」
「⋯そうか、ベレス、オーディン⋯ガルグ=マク要塞での籠城戦は可能か、君たちの見解を聞きたい」
「城郭は壊された。兵力差が有りすぎる。援軍の見込みはしばらく無い。先遣隊との戦いで兵力と体力と魔法と矢玉も消耗しすぎた。籠城しても助かる見込みは無いね」
俺も先生と同じ意見だ。
このままガルグ=マクに踏みとどまっても兵力差で押しつぶされるだけだ。
「このガルグ=マク大修道院を叛徒の手に引き渡すというのですか⋯?」
「大司教⋯ガルグ=マクが奪われようとも我々が生きていれば、まだ再起の目はある⋯冷静に考えよう」
「⋯セテス。わかりました、全軍に撤退の指示を!私たちはガルグ=マク大修道院を放棄いたします!」
レア様の命令のもとに全軍撤退命令が出された。
これにより、教団軍と王国軍は王国へ、同盟軍は同盟への撤退が開始された。
俺が率いていた部隊は先遣隊との戦いで、体力を消耗しているため人員の入れ替えを行なうところ…いや、志願者を募って殿軍として部隊を再編するか…どのみち殿軍の指揮も俺か先生がとることになるだろうしな。
危険が確定している殿軍に志願するだけあって多くの精鋭部隊出身者が集まってくれた。
ジェラルト傭兵団のような顔見知りも多いが、おそらく数々の修羅場を潜り抜けてきた者たちだ…面構えが違う。
城郭の上から見るとすでに帝国の大軍が遠くから迫ってきている。
先遣隊の数倍の数…あの後にも大量の兵士が続いていると考えると、帝国軍は凄まじい人数を動員してきたのだな…
帝国の大軍を眺めていると、一騎の<ドラゴンナイト>がこちらに飛んでくるのが見えた。
…あれは!
「クロード、撤退したんじゃなかったのか?」
「既に同盟軍部隊は安全なところまで撤退できたよ。こっちの金鹿の学級の生徒は全員無事だ」
「何しに戻って来たんだ?」
「おいおい、冷たいじゃないか…お前らが心配で単騎で戻ってきてやったのに…」
「これから撤退戦の殿軍をするところだというのに、同盟の次期盟主様直々に一人で援軍に来てくれたのか?」
「あの数相手に殿軍って、まじかよ!?戻ってくるんじゃなかったぜ」
そうは言っているが、クロードは不敵な笑みを浮かべている。
戻ってきたことを後悔している様子ではない。
「クロードも戻ってきたんだ?」
「
「今から地獄の撤退戦だっていうのに、クロードも物好きなやつだな」
「クロードくん、メシはちゃんと持ってきてんのか?オデのは分けてやんねえぞ?」
「不思議ですね…こんな状況でも先生とクロードくんとオーディンくんがいれば大丈夫な気がします…」
先生も金鹿生たちもクロードが戻ってきたことに驚きつつも喜んでいる。
「こんなとんでもない状況なのによく笑ってられるわね、金鹿の人たちは…私、
将来の選択肢を間違っちゃったかしら?」
「ドロテア…気持ちはわかるよ。僕も今日はみんなについていくのが精一杯だったから」
「アッシュ、ドロテア、一緒に頑張りましょう。頑張っていればきっと女神様が助けてくださるから」
他学級から来た生徒は今回の戦闘でだいぶ疲れてしまっているようだ…ここから厳しい戦いになるからみんなの体力管理にも気を付けなくては…
「じゃあ、そろそろ出撃するか…
「オーディン、その騎士団名って却下されてなかったかな?」
「なんであたしらの騎士団が帝国風の名前なのよ!?締まらないじゃない」
「…とりあえず士官学校有志義勇軍にするね」
ラズワルドとルーナに騎士団名のダメ出しをくらっていたら、先生が適当に名前を付けてしまった。
先生!そんなとってつけた様な名前じゃ余計締まらないですよ!
「…ベレス、貴女たちが殿軍をする必要はありません」
「…レア様!?まだ残ってたんですか?」
周囲にはレア様の護衛らしき人はいない。
教団本隊と一緒に撤退したと思っていたが、一人で残っていたのか?
「誰かが殿軍を引き受けないと教団軍が追撃されますよ…」
「帝国軍は私が引き受けます。貴方たちは撤退しなさい」
「帝国軍を一人でですか…」
俺が聞き直しても黙って頷いている。
すでにレア様は覚悟が決まった目をしていた。
その目の先には先生がいる。
「子供たちを…皆を頼みましたよ」
レア様の言葉に先生も黙って頷く。
「もう、赤き谷の惨劇を繰り返させはしません!」
レア様の体が光を発し、巨大な竜となり飛び立っていった。
あまりにも突然の出来事にみんな騒然としている。
「嘘だろ…白きもの、あれがレアさんの正体だったのか…」
クロードが呆然と呟いている。
生徒たちや教団に所属していた騎士たちも驚いて動揺している。
「やっぱり、マムクート…いや、竜族だったのね」
「なんとなく、そんな気はしていたよ」
「雰囲気がそうだったもんなぁ…」
俺の他にもルーナとラズワルドも気づいていたらしい。
この辺は前の世界で何人か似た人を見たことがあるからくる違いだろう。
「呆けている暇はないよ。あの白い竜…レア様が時間を稼いでいるうちに撤退を急ごう!」
先生の号令で、撤退が始まった。
帝国軍正面に降り立ったレア様の暴れっぷりは凄まじいものだった。
帝国軍の軍団を質量に任せて踏みつぶし、尻尾を振り回し集団を薙ぎ払い、口から光線を発射し触れたもの全てを蒸発させ破壊した。
マムクート族とはレベルが違うな…あれは原初の神竜族に近いかもしれない。
ただ、邪竜ギムレーほどの巨大さは無いから、“英雄の遺産”級の武器持ち数人がいる部隊に囲まれたら厳しいかもしれない。
レア様のおかげで帝国軍は混乱し、ほとんど安全に撤退できた。
あとは、どうにかレア様が逃げる援護をできないものか…
そう考えていると、魔獣の集団がレア様に突撃し始めた。
一匹一匹はレア様よりはるかに弱いが、城郭を破壊した時同様に捨て身で突っ込んでくるせいで、レア様がみるみるうちに追い込まれていった。
「オーディン、レア様を助けに行く…<ワープ>で飛ばして!」
「先生、一人じゃ無理だ、部隊でなんとか…」
「ダメ、複数人だと魔獣に追立られたときに逃げ切れない…私だけ一人なら天帝の剣で戦えるし<レスキュー>で回収もしやすい」
「ああ、もうわかった!飛ばすからすぐに戻ってきてくれよ」
「オーディン、みんなを任せた」
転移魔法<ワープ>で先生を、レア様のすぐ近くに飛ばす。
――俺はこの時の判断をのちに後悔することになる。
転移してすぐに天帝の剣を振るった先生はレア様の周囲に纏わりつく魔獣を確実に殺していった。
先生が戻ってくるとは思っていなかった、レア様は驚いて先生と向き合う形で見つめあってしまっている。
「先生危ない!」
横から“闇に蠢く者”に似た魔道士の魔法を受けた先生は崩れる城郭と共に崖下へと…
「先生ーーーッ!!」
お久しぶりです…また長い間更新を空けてしまいました。