ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン 作:すすすのすー
俺は“漆黒のオーディン”、ガルグ=マクで数々の伝説を起こしてきた過去があり、これからも数多の伝説を起こしていくであろう“ガルグ=マクの伝説の男”だ。
緊急速報! “漆黒のオーディン”率いる『フォドラの夜明け』がガルグ=マク奪還に成功! 帝国軍全軍二万人が敗走!
この様なニュースがフォドラ中を駆け回り、大陸全土が震撼した! ⋯か、どうかはわからないが、そういう情報を届ける為に王国と同盟には伝令を出した。
この大陸の伝令兵も前の世界同様、ペガサスナイトやドラゴンナイト等の飛行兵種なので、伝令の内容が広まるのは早いだろう。
教団勢力が戻ってくるまで、やることは沢山ある。
まずは、ガルグ=マク要塞の状態の確認、帝国軍が残していった物資の数、アビスに残っていた人を含む現在のガルグ=マクの人口調査、去って行った商人たちに戻ってくるように伝えて、あとは⋯とにかく沢山だ。
現在いる『フォドラの夜明け』と
◇◇◇
取り戻したばかりのガルグ=マク大修道院には、問題が多い。
「オーディン、帝国軍が置いて行った食料の備蓄はあまり多くないみたいだね。僕たち『フォドラの夜明け』に補給線を押さえられてたから……」
「食堂のおばちゃんが、これじゃあひと月も持たねぇっていってたぞ。どうするんだ?」
食料担当のアッシュとラファエルからの報告だ。
帝国軍が慌てて撤退していったから、食料庫にはそこそこの食料が残されているかもと期待していたが、当てが外れた。
とりあえず、ピュアジング・キュイジーン・トメイトゥを毎日全力で使うのは継続して……
「アッシュ、温室の植物は使えるところは全部野菜と果物と穀物、全部食べられるものに替えてくれ。ラファエル、毎日食堂には大量のトマトを送るから、食堂のおばちゃんにこれで何日持つか再計算するように頼むんだ」
「温室か……その手があったね。うん、やってみるよ」
「うげぇ、またトマトかぁ……いい加減、肉を腹いっぱい食いてぇぞぉ……」
まだ試作段階だが、ガルグ=マク周辺の土地も使ってコンスタンツェの開発した『植物の成長を早くする魔法』で食料の生産を早めるのもありかもしれない……コンスタンツェにはその指揮をとってもらうか。
「オーディンくん、商人に戻ってきてもらえたのは良いんですが、商人たちもこの戦火で沢山ものを失ったりしてあまり売れるものが無いみたいで……」
「わたしたちも金がないし、商人も売る物がない……どうすりゃいいんだ?」
今度は市場担当のイグナーツとレオニーの報告だ。
耳が早いことで商人たちは教団勢力の俺たちがガルグ=マク奪還に成功するとすぐに戻ってきた。
ただ、ガルグ=マクを去った時に帝国軍に徴収されたり賊に襲われたりで、売り物を失ってしまっている人も多かった。
そして、俺たち『フォドラの夜明け』も活動資金が全くない、勝手にガルグ=マク大修道院にある物を売るわけにもいかないし……
「イグナーツ、売り物を失った商人たちには帝国軍が置いて行った武器と装備品を持って王国や同盟に売りに行くように指示するんだ。レオニー、商人の一人にアンナさんって女商人がいるだろう? あの人に教団のツケだって言ったら、ある程度の物資は融通してくれるはずだ」
「なるほど、その帝国の武器と装備品を他国に売って資金調達ですか。王国も同盟も今は武器が一つでも欲しいでしょうし、僕たちと商人の資金源にもなる。良い案ですね、オーディンくん」
「アンナさんか……たしかにあの人は売り物は失ってなかったけど、結構足元見られるぞ。まあ、でもしょうがないか……交渉してみるよ」
帝国軍を撤退させる時に再三武装解除を指示していたのが効果を発揮したのか、ガルグ=マクには大量の帝国軍の武器と装備が置いてあった。
商人たちがそれを他国に売りに行って資金が確保できるまでは、借金してなんとかするしかない。
「オーディンくん、ガルグ=マク周辺の街から逃げていた人たちが少しずつ戻ってきてるみたいだわ……ただ、中には戦争の時に家が壊れちゃった人もいるみたいで……」
「巻き込まれて家族が死んでしまった人もいるみたいで……みんな悲しそうにしていたわ……」
次は市民の対応を任せたドロテアとメルセデスだ。
市民の中には、逃げずに残った人たちも結構いた。
ガルグ=マク周辺の街や村落は、教団が直轄する城下街を除けば帝国領の方が多い。
教団直轄の城下街の人々も帝国出身者の割合が多いため、街に残って戦争の推移を見守っていた市民も多かったが、ガルグ=マク防衛戦の終盤で“白きもの”が大暴れしたことにより巻き添えになったようだ。
「ドロテア、家を失った人たちには大修道院の建物に住んでもらおう。ただ、大修道院内で仕事を手伝ってもらうことを条件にな。メルセデス、大聖堂は少し片づけたら市民にも解放する。今は話を聞いてあげて少しでも遺族の人たちに寄り添ってあげてくれ」
「それが良いわね。今は人手が全然足りないみたいだし、家を失って悲しんでいる人たちも仕事があれば気は紛れるかも」
「大聖堂を解放してくれたら、みんなお祈りができるようになるわ。これで、家族を失った人たちの心が少しでも安らげば良いわね……」
これから、逃げていた人たちがどんどん戻ってくるだろうから、それを管理する人間が足りない。
士官学校の元生徒たちを中心に『フォドラの夜明け』は全員大忙しだ。
「オーディン、ここにいたんだね!」
「ちょっと来なさい! 大変だわ」
次はラズワルドとルーナか……なんらかのトラブルが起きたようだが……
そんなこんなを忙しくしている内に時間は流れていった。
◆◆◆
「うおおお! オーディン殿!! 本当に貴殿たちだけでガルグ=マクを取り戻したのか!」
「報告を聞いた時は驚いたぞ。君たちがガルグ=マク周辺で活動している情報は得ていたが、単独で帝国軍を敗走させるとは」
「水臭いじゃないか! こんな面白そうなことをするなら、アタシらも誘いなよ!」
ガルグ=マク復興活動を始めて数日後、セイロス騎士団団長代理アロイスさん率いる一部の部隊がガルグ=マクへやってきた。
カトリーヌさんとシャミアさんも一緒だ。
「レアさんもベレスもいない様だな⋯カトリーヌ、残念だったな」
「⋯ああ、だがガルグ=マクを取り戻せたのは大きい。これで周辺を探しやすくなった」
「我々は王国のカロン領へと撤退していたのだ⋯そこで、数度ガルグ=マクへの偵察とレア様とベレスの捜索をしに秘密裏に動いていたのだが⋯合流してやれず、すまなかった」
「謝る必要などない⋯ガルグ=マクを陥落させるなど、誰も思いつかない……この”漆黒のオーディン”を除いてな……」
アロイスさんたちはカトリーヌさんの実家が治めるカロン領にいたらしい。
王国内では最もガルグ=マクに近い領地だから、そこで帝国軍の動向を伺いつつ、レア様と先生を探していたとの話だ。
セテスさんや教団の偉い人たちがいる本隊は王都フェルディアに駐留しているので、合流にはまだ時間がかかるそうだ。
「でも助かりましたよ……軍の運営ならともかく、ガルグ=マク復興の運営なんてできる人は貴族が少ない『フォドラの夜明け』にもアビスにもいないからとにかく大変で……これで、ガルグ=マクの全権はアロイスさんに変更できますね」
「なにっ……いや、私も復興の運営などできぬぞ……ここは貴族出身の聖騎士カトリーヌ殿が全権を……」
「アタシに政治なんかできるわけないだろ……そういうのが嫌でお尋ね者じゃなくなっても名前を戻してないんだから」
「こいつら二人がオーディンの代わりに政治の真似事ができるとは思わん。セテスさんが戻ってくるまで指揮を執ってくれ……セイロス騎士団の聖騎士ならその程度の権限は持ってる」
「俺はまだ正式には聖騎士じゃないんですが……」
「せいしきにはせいきしじゃないと……むむむ、オーディン殿やるではないか」
「なに、もともと内定済みだったんだろ。これだけの戦功を立てたんだ、もう勝手に聖騎士を名乗っちまっても誰も文句は言わないよ」
「ということで、我々は君の指揮下に入る」
人手が増えるのはありがたいが、結局総指揮は俺が執ることになった。
セテスさん……早く戻ってきてくれ!
◇◇◇
「ツィリル、例のものは集まったか?」
「うん、こっちがレア様でこっちが先生……色が似ているから間違えないようにね」
「よし、でかした!」
アロイスさんたちと戻ってきた人たちの中にはツィリルもいた。
ツィリルは細かい作業が得意なので、レア様の部屋と先生の部屋で例のもの……二人の髪の毛を集めてもらっていた。
なぜかと言えばもちろん呪術でレア様と先生を探し出すためだ。
「これで、レア様がどこにいるか分かるようになるんだよね」
「ああ、この“漆黒のオーディン”の呪術の真髄を見せてやる! 呪術道具が出来たらみんなを呼ぶから、頼んだぞ」
「わかった」
みんな忙しいが、レア様と先生がどこにいるかを知るのは最大の目的だ。
もしかしたら、死んでしまっているかもしれないが……いや、それは考えないでおこう。
呪術道具を作り終えると、大陸の大きな地図がある部屋……騎士団長の部屋にみんなを集めた。
アロイスさん、カトリーヌさん、シャミアさん、ツィリルと『フォドラの夜明け』の面々、みんな真剣な表情だ。
「それじゃあ、まずは先生から……呪術の力よ! “灰色の悪魔”、闇の導き手ベレスの居場所を指し示せ!!」
呪術道具に魔力を流すと僅かにだが反応があった。
先生は生きている。
俺もみんなも、ほっとした表情を見せた。
ダウジングの要領でフォドラ大陸の地図の上を使って探す。
本来、この呪術はこういう風に地図を使って、対象が今どこにいるのか探すものなのだ。
先生の反応はフォドラ大陸の中心部、ガルグ=マク大修道院を指し示していた。
もっと細かいガルグ=マク周辺の地図を用意する。
「先生が落ちた崖下の川の下流……そこにある湖だな」
「先生が生きてて良かったよ……」
「湖ね……その辺りも結構探したのにねぇ」
「いや、見つからなくて当然だな……先生は湖の中にいる……!」
先生は驚いたことに湖の中心あたりで反応があった。
湖の中にいて生きているとか意味がわからないが……多分女神様の不思議パワーとかで生きているのだろう。
いや、普通に先生は生きて生活していて、ただ湖で泳いでいたり、船の上で釣りをしているだけの可能性もあるが……それなら、ガルグ=マクへ戻ってくるはずだ。
先生の捜索は後でするとして……次はレア様の番だ。
レア様の呪術道具も魔力を流せば光出し僅かに反応があった。
「レア様は……帝都アンヴァルにいるな」
「帝都だと……!? 帝国軍の奴ら、やっぱりレア様を捕らえてやがったか!」
カトリーヌさんは、怒りを露わにしている。
レア様が生きていれば帝都で捕らえられている可能性が高いことは予測できていた。
レア様は別に崖下に落ちたわけではなかったからな。
「アタシは今から帝都に行ってレア様を助けにいくよ」
「落ち受け、相棒」
「カトリーヌ殿……気持ちは分かるが我々の戦力では帝都に行くのは無理だ」
シャミアさんとアロイスさんがカトリーヌさんを落ち着かせようとしているが、カトリーヌさんは今にも飛び出して行きそうだ。
「レア様が帝都に囚われているということは、時間も経ってますし命の心配はないでしょう。それよりも先生を先に見つけて、セテスさんたちと合流して考えましょう」
「チッ、わかったよ……みんなが行かないのなら一人ででもアタシはレア様を助けに行くからな」
カトリーヌさんがレア様を強烈に信奉しているのは知っているが……レア様を助けに行くのは難しいだろうな……とにかく、今は、先生の救出を優先しなくては……
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処女作ですがエタらせるつもりは毛頭有りません!我が、人生に賭けて完結させます!!