ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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第66話『いつかきた旅路』

 

 

 俺は“漆黒のオーディン”、フォドラに夜明けを灯す聖なる闇の騎士団を率いる、選ばれし闇の聖騎士だ。

 

 

『フォドラの夜明け』に新たにフレンが加わり、新章突入! 新たな伝説の物語が今始まる! ……とは、ならなかった。

 

『フォドラの夜明け』のメンバーはそれぞれ治安維持や商人の手助け、食料他備蓄管理、住民と難民の橋渡し役等々の俺が割り当てていた仕事があり、セテスさんたち教団の上層部が帰ってきても、人手不足で引き継ぎがなかなか上手くいかず、対外活動はせいぜいガルグ=マク大修道院周辺の山賊を討伐する程度のものに留まった。

 

 しかし、セテスさんたちが帰ってきたおかげで俺も慣れていない統治者みたいな仕事が減って、再び自分の趣味や研究の時間を作ることができるようになった。

 

 

 

 ⊛ 合格 ⊛

 

「吾輩であれば当然のことだ」

 

 ハンネマン先生が〈賢者〉になりました。

 

 ⊛ 合格 ⊛

 

「合格できて良かったわ」

 

 マヌエラ先生が〈賢者〉になりました。

 

 

 セテスさんが帰ってきて、フォドラ大陸に前の世界にあった兵種の再現にも再び取り掛かることができた。

 セテスさん曰く、兵種の再現については教会の許可はいらないのである程度自由にやっていいとのことだ。

 

 その研究成果の一つが今ハンネマン先生とマヌエラ先生が合格した〈賢者〉である。

 前々からフォドラの外の大陸に存在する、スレン特有の〈ハルバーディア〉、ダスカー地方の〈鍛冶〉、クパーラ地方の〈鬼人〉等は覚醒試験パスで特級職として再現することができていたが、今回はついに俺たち三人がいた前の世界の兵種を再現することができたのだ。

 

 

「実に素晴らしい……この年になってまさか魔道士として更なる高みへと至れるとは」

 

「あたくしは理学が苦手だから〈グレモリィ〉になるのは諦めてたんだけどねぇ……こんな形で最上級職になれるなんて……」

 

「お二人とも、見事な合格だ……流石は、我らが勇壮なる大修道院の選ばれし導き手たちだな」

 

 

 〈賢者〉は前の世界では〈魔道士〉と〈シスター〉及び〈僧侶〉の上級職だった。

 この世界では〈ウォーロック〉と〈ビショップ〉の上位にあたる最上級職……いや、特級職を超えた超特級職となるだろう。

 二人の技能で考えると理学か信仰のどちらかがA+あれば、合格できそうだな。

 

 こうなってくると、〈ソーサラー〉、〈バーサーカー〉〈ジェネラル〉、〈魔戦士〉辺りはこの世界では超特級職で再現できそうだな……〈グリフォンナイト〉みたいにフォドラ大陸にいない生物に騎乗する職を再現するのは無理そうだけど。

 

 

「この〈賢者〉は最上級職でもなく特級職でもなく……超特級職! ……今、“漆黒のオーディン”の闇の頭脳の中がそういう閃きに至った」

 

「……まあ、オーディンが考えてんだから好きにすれば良いわ」

 

「兵種の研究は吾輩の専門とは外れるが、君の役に立てて嬉しいよオーディン君。吾輩としては君の言う〈ソーサラー〉という兵種にも興味がある。来週はそれの試験を受けてみたい」

 

「ハンネマン先生、最上級覚醒試験パスは貴重品ですよ、〈ソーサラー〉は別の人に受けてもらいます。……先生たちには〈賢者〉をマスターまで鍛えてもらって、習得スキルと成長率を調べてほしいんです」

 

「むむむ……スキルはともかく成長率か……君は他人の能力が数値で見えるのだったな。たしかに研究結果の蓄積は大事なことだ、吾輩もしばらく〈賢者〉として鍛えてみることにしよう」

 

 

 最上級覚醒試験パスは最上級試験パスを2個使って作成しているから、6000Gくらいの価値がある貴重品だ。

 軍資金をある程度使わせてもらっているが、無駄遣いは出来ない。

 

 

「ありがとうね、オーディン。あたくしも〈賢者〉をしばらく極めてみるわ……このヒゲと同じ兵種ってのは気に入らないけど⋯」

 

「なっ、マヌエラ君⋯君はいつも一言多いな!」

 

「余計な一言をいつも言ってるのは、あなたの方じゃない! そんなのだからずっと独り身なのよ!」

 

「その言葉はそっくりそのまま君に返すよ! だいたい君は⋯」

 

 

 まーた喧嘩が始まったよ。

 ハンネマン先生とマヌエラ先生はずっと喧嘩しているなぁ……喧嘩するほど仲が良いとは言うけどどうなんだろうな。

 長くなりそうだから、今のうちに抜け出そう……戦略的撤退! 

 

 

 ◇◇◇

 

 ハンネマン先生とマヌエラ先生の痴話喧嘩から逃げ出した俺は訓練所に足を運んだ。

 

 訓練所ではセスリーン神官隊やセイロス聖女隊の有志が〈ダークペガサス〉へのジョブチェンジのためにフレンが飛行術の講習を行っていた。

 

 

「さあ、皆さま方、何事も経験ですわよ! はい、そこっ! もっと、乙女心を躍動させて!」

 

 

 今訓練している部隊は『フォドラの夜明け』でそのままフレンが指揮することになっているので、フレンの講習も気合が入っている。

 ……俺は飛行の技能は全く成長していないので、邪魔にならないように隅で鍛錬するか。

 

 

「おっ、オーディン。丁度良いな、アタシの鍛錬に付き合いなよ」

 

「げぇっ……カトリーヌさんだ」

 

「……おいおい、同じ聖騎士仲間に『げぇっ』は無えだろ」

 

 

 隅に行ったら、カトリーヌさんに出会ってしまった。

 カトリーヌさんは、ベレス先生を除けば俺が唯一剣では全く勝てない相手だ。

 いや、最近は手合わせしてないので分からないが……能力(ステータス)的に厳しそうだな。

 

 

「なんなら、魔法有りでもいいぜ。それなら勝負になるだろ?」

 

「……逆に勝負にならないから嫌ですよ。カトリーヌさん手加減したら怒るでしょ?」 

 

「アァン? 魔法が有りぁアタシに勝てるとでも思ってんのか!?」

 

 

 勝てるんだけどなぁ……

 お互い、雷霆と封魔剣エクスブレードを持った上での魔法有りだと勝負はわからなくなるけど、それだとどちらかが大怪我する可能性がある。

 

 

「……“雷霆のカトリーヌ”、ここで戦うのは止めておこう。この“漆黒のオーディン”の封魔剣エクスブレードと貴様の雷霆が打ち合えばどちらかが死ぬことになる……」

 

「……フン、たいした自信だね。流石はその若さで聖騎士に選ばれるだけはある」

 

「レア様を助けに行けないからって俺に当たらないで下さいよ」

 

「……チッ」

 

 

 カトリーヌさんの機嫌が悪いのは、セテスさんを含めた教会の上層部全員からレア様を助けにいくのを止められているからだ。

 カトリーヌさんは俺がレア様救出作戦を考えたらなんとかなると思っているらしく、特に俺にだけ当たりが強い。

 

 レア様は俺の探知呪術で、現在アドラステア帝国の帝都アンヴァルに捕らえられているのが判っている。

 とはいえ、アンヴァルにたどり着くのは少数精鋭で隠密行動を行っても大変だし、絶対に取り返させないように警備も厳重にしているだろうから、救出できる可能性は極めて低いだろう。

 

 

「アンタが本気で作戦考えたらレア様を助けられるだろ」

 

「帝都アンヴァルに行ったこともないのに作戦なんて考えられるわけないですよ……そもそも、どんな精鋭部隊でも帝都にたどり着くまでに全滅します」

 

「……ままならないもんだよ……居場所がわかってるのに助けにいけないとは」

 

「帝都まで無事に運ばれているから……エーデルガルトは無用な殺しをする奴ではないですから、帝都でも無事でいることを信じましょう」

 

「アタシは教会に宣戦布告してレア様を捕まえて連れていったような奴を信じたくはないね」

 

 

 ……それを言われるとどうしようもない……実際のところレア様の命はエーデルガルトの匙加減一つで変わるだろう。

 なぜ殺さず生かしたまま捕らえているのか……なんらかの実験台にされているのか……あるいは、レア様は実はすでに殺されていて、人間とは身体の作りが違うから探知呪術では生きているように見えるだけとか⋯考えると怖くなってきた、今はこれについて悩むのは止めよう。

 

 

「できないことについて悩むのはやめましょう⋯俺も悩めないくらいの戦いを味わってみたくなった。手合わせだ、“雷霆のカトリーヌ”! ⋯あっ、使うのは潰した鉄の剣で」

 

「へえ、急にやる気になって⋯上等だ、魔法も使ってきなよ。叩き潰してやる」 

 

「俺は、数多の世界を越え今此処に現れる前は選ばれし希望の〈魔戦士〉だった男だ。剣と魔法の同時使用については年季が違うぞ!」

 

 

 ちなみに〈魔戦士〉になったことがあるだけで、前の世界での武器レベルはEのままだった……鍛えていたら、この世界で理学が不得意ではなかったかもしれない……

 

 

 

 ◇◇◇

 

 エーデルガルト視点

 

 

 漆黒のオーディンの呪術によるガルグ=マク大修道院の奪還はアドラステア帝国に大きな衝撃を齎し、帝国軍の軍事作戦にも影響が及んだ。

 ガルグ=マク大修道院にいた四人の軍団長のうち一人は掃討戦で討たれ、二人は呪術による操作で降伏後死亡、生き残った一人も動揺して戦える状態ではなくなった。

 四個軍団の兵力二万人は相当数が脱走しており……帝国北部に賊の発生が急激に増えたことから、脱走兵がそのまま賊になった可能性が高い。

 

 

「ヒューベルト……オーディンがなんの呪術を使ったのか新しい情報は無いの?」

 

「人を操る呪術という以外は全くありませんな……むしろ、ガルグ=マク大修道院に忍ばせたこちらの間者が次々と捕らえられて得られる情報が少なくなってきている始末ですよ」

 

 

 いつもの様に渋い顔で執務室にやってきたヒューベルトに問いかける。

 守っていた将兵は呪術による操作を受けていたという話だが、どういった呪術にかかったのか全くわからず、間者による情報収集も上手くいっていない状態だった。

 

 

「現在の大修道院は帝国のセイロス教徒や王国と同盟から戦火を嫌って流れてきた難民を受け入れて、こちらの間者を忍ばせ易い状況なのですがね……よほど優秀な防諜組織が結成されたのでしょう」

 

「私たちが大修道院にいた頃は、諜報もそれなりに動けていたはずなのに……」

 

「あくまで大修道院の中ではの話ですがね……ガルグ=マク外では問題なく情報収集できています。周辺の街は人口増加で多少治安が悪くなっているようですが、大きく乱れてはいないようですね……なんでも、コンスタンツェ=フォン=ヌーヴェルという魔道士が革新的な魔法を開発したそうで」

 

「コンスタンツェ……地下で出会った時に、もっと積極的に勧誘しておくべきだったわ」

 

 

 コンスタンツェ=フォン=ヌーヴェルが開発したのは『作物を急激に成長させる』という魔法のようだ。

 この魔法によってガルグ=マク周辺で一気に増えた難民の食料問題を解決してしまっている。

 後悔しても遅いが、ヌーヴェル家の復興を約束していれば彼女なら帝国側へ引き抜けていただろう。

 

 

「彼女の魔法の開発には“漆黒のオーディン”も携わっていたという情報もありますが……」

 

「……ガルグ=マクを奪い返して、難民で人口が増えることもオーディンは予想していたということ?」

 

「偶然というには全てあちらに都合が良すぎますからね……」

 

 

 有能なところがあるのは分かっていたが、黒鷲の学級(アドラークラッセ)にいたころは奇怪な発言ばかりで間が抜けたような部分も多かった……それすらも欺瞞だったということだろうか……

 

 オーディンがまるで未来を読んでいるかのように打ってきている手はもう一つある。

 

 

「あれが帝国の貴族を分断するための手だったなんて……」

 

「軍務卿と内務卿への“闇を蠢く者”の情報で、両者がアランデル公の排除を要求してくるとは……我らも忙しくしていた次期とはいえ予測が足りませんでしたな……」

 

 

 現在、私を支えてくれている軍務卿と内務卿が、私の派閥の中心人物である摂政アランデル公の排除を訴えてきている。

 原因はオーディンがカスパルとリンハルトに持たせた手紙だ。

 内容は”闇に蠢く者”の情報で、『人と成り代わる術』や『死者を屍の兵士として蘇らせる術』を使って世界を滅ぼそうとしていることが書かれていたらしい。

 私の伯父である摂政アランデル公が何者かと入れ替わっているのは、帝国の貴族社会では公然の秘密だ。

 それが、世界を滅ぼすという邪悪な目論見があることを知った軍務卿と内務卿は看過できなかったのであろう。

 

 

「教団側が我々を引き裂こうとしている偽情報とするには、アランデル公の悪行が過ぎましたからね……」

 

「いつかは排除するつもりだったわ……教団と王国と事を構えている今にやるべきではないわね」

 

「軍務卿も内務卿も現実が見えている方々です……だからこそ秘密裏に陛下にアランデル公の排除を訴えてきているのでしょう」

 

「わかっているわ。でも伯父様……いや、()()()は秘密裏に処理されてくれるような者ではないわ……そして、仕損じたら必ず害になる」

 

「お二方にはしばらく我慢してもらうしかありませんな……あるいは全面的に協力してもらうか……」

 

「どちらにせよ、今は軍務卿を西の前線から外せない……この事は置いておくしかないわ」

 

 

 “闇に蠢く者”……セイロス教会の敵として、手を組んだつもりが世界を滅ぼすことを目標とする全世界の敵だったとは誤算だった。

 手を組む時は必要悪と割り切っていたのに、今となっては邪魔でしかない。

 

 

「ヒューベルト、新しい教務卿の件も急がせて」

 

「ええ、もうじき帝都に着くようですから出迎えに参りますよ」

 

「貴方の出迎えなんて、あの()の驚く顔が目に浮かぶわ」

 

「ククッ……良い悲鳴を期待しましょう……」

 

 

 ヒューベルトはそう言い執務室を後にした。

 

 私も仕事を切り上げ、ある場所へ向かうことにする。

 

 

 そこは帝都アンヴァルの皇宮の地下にある牢。

 その人物は牢の中にはいるが、特に鎖で縛られてなどいない。

 私は鎖を使うことを好まないから。

 

 

「……エーデルガルト。また、来たのですね」

 

「何度でも来るわ……私は知るべきだから。……だから教えて、貴女の知ることを」

 




あとがき

〈超特級職〉最上級覚醒試験パス

賢者
推奨技能レベル:理信いずれかをA+
兵種スキル
・魔法の達人(魔法装備時、攻撃+3)
・黒魔法回数×2
・白魔法回数×2
マスター時習得スキル
・魔法の達人
・弓殺し+
魔法が使える兵種。

ソーサラー
推奨技能レベル:理A+
兵種スキル
・魔法の達人(魔法装備時、攻撃+3)
・黒魔法回数×2
・闇魔法回数×2
マスター時習得スキル
・復讐(奥義スキル)
・魔神の構え(敵から攻撃された時、魔力+6)
魔法が使える兵種。

バーサーカー
推奨技能レベル:格A+
兵種スキル
・格闘の達人
・素手格闘
・必殺+20
マスター時習得スキル
・魔殺し+
・鬼神の構え(敵から攻撃された時、力+6)

ジェネラル
推奨技能レベル:槍斧いずれかをA、重A+
兵種スキル
・武器の達人(武器装備時、攻撃+3)
・大盾
・守備隊形(戦闘中、自分も敵も追撃が発生しない)
マスター時習得スキル
・守備隊形
・金剛の構え(敵から攻撃された時、守備+6)

魔戦士
推奨技能レベル:剣斧いずれかをA、理B+
兵種スキル
・武器の達人(武器装備時、攻撃+3)
・居合一閃(自分から攻撃した時、攻撃+5)
・心頭滅却(戦闘後、自分が受けた能力減少を回復する)
マスター時習得スキル
・居合一閃
・心頭滅却
魔法が使える兵種。

FE覚醒に登場する兵種をオーディンがFE風花雪月最上級職版にカスタマイズしたもの。
最上級覚醒試験パスは最上級試験パスを2個使用し作成できる。

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