ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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第70話『強者~炎』

 

 

 ルーナ視点

 

 

「戦士たちよ、己の力と技量を尽くしここに素晴らしい戦いを奉納せよ、フラルダリウス大剣闘祭の開幕をここに宣言する!」

 

 

 オーディンが偉そうに武闘大会の開催を宣言をしている。

 周りの『フォドラの夜明け』、フラルダリウス兵、ゴーティエ騎士団の兵士たちが歓声を上げて盛り上がっている。

 士官学校の武闘大会に比べたら大規模なものになりそうだけど……どうして、こんな大げさなことになっちゃったんだろう。

 

 

 

 

 

 イングリットを仲間に加えたあたしたちは、ガラテア伯爵領を出発すると次はフラルダリウス公爵領に向かった。

 フラルダリウス領は所領も大きく豊かな土地だが、最近は山賊の被害が増えているようだ。

 ガラテア領から直接ブレーダット領の王都フェルディアまで行くことも可能だったが、フラルダリウス領の様子を見るためにあたしたち『フォドラの夜明け』は回り道することになった。

 

 

「イングリット、久しぶり。それにメルセデス、ドロテア、フレン⋯いや~、かつての士官学校が誇る美女たちにまた会えて光栄だな~」

 

「シルヴァン、なぜ貴方がフラルダリウスで出迎えをやってるのよ⋯」

 

「⋯っていうか、なんでわたしとルーナの名前を呼ばないんだよ? わたしらは美女じゃないってことか!?」

 

「そうよ! あたしがかわいくないって言いたいわけ!?」

 

「やべっ⋯つい、意識から外れちまった。いや~そんなことはないぜ、レオニーもルーナも飛び切りの美女だったよ!」

 

「あはは、相変わらずだねシルヴァンは」

 

 

 なぜかフラルダリウスではナンパ男のシルヴァンに出迎えられた。

 ナンパ男と仲が良かったラズワルドや青獅子の生徒は喜んでいる様子だ。

 一応隣にはフラルダリウス公爵の息子であるフェリクスもいるが⋯

 

 

「俺はゴーティエ家からの援軍で派遣されたのさ。“破裂の槍”を持って駆けつけなきゃいけない程度に山賊が暴れててな」

 

「フン、ゴーティエにも山賊が増えた原因の責任があるだろう。以前、マイクランが率いた賊たちが合流したせいで山賊の規模が大きくなった」

 

「そういうわけで、俺とフェリクスはフラルダリウス領で山賊狩りの毎日ってわけさ」

 

 

 ナンパ男は正式にゴーティエ辺境伯爵領から派遣された援軍を率いてやってきたらしい。

 マイクランとは以前、“破裂の槍”を盗んで魔獣になって討伐されたナンパ男の兄だ。

 

 

「今は親父殿は帝国軍との戦争でアリアンロッドにいるから、フラルダリウスは叔父上が代理で治めている。昨日、賊どもを追い散らしたばかりだから、しばらく賊は出ないはずだ。あまり、もてなすことは出来んがゆっくりしていけ」

 

「いやいや、素直じゃないなあフェリクスは⋯『フォドラの夜明け』の皆さまが来てくれて助かります! くらい言っとけ」

 

「チッ⋯まあ、数が多いだけの弱い賊どもの相手で退屈していたのは事実だ……久しぶりに腕の良い連中と剣を合わせる機会ができて楽しみにはしていた」

 

 

 フェリクスも一応歓迎はしてくれているらしい。

 こいつもリシテアみたいに素直になりたくてもなれない……いわゆるツンデレみたいなところがあるから……男のツンデレなんて可愛くないけど。

 

『フォドラの夜明け』は山賊討伐の手伝いになるかと思っていたけど、フラルダリウス領は特に問題はないみたいだった。

 山賊が暴れ始めるまで、しばらくのんびりできそうね。

 

 

「あんたが賊相手にチンタラやってる間に、あたしたちは帝国軍の正規兵や同盟軍の傭兵相手に毎日やりあってたのよ。仕合で今の実力差を教えてあげるわ」

 

「ルーナの言う通りさ、わたしもフェリクスに勝つために槍を鍛えてきたんだ。ひと勝負願いたいね」

 

「あっ、ルーナとレオニーの後は僕もお手合わせお願いします。士官学校時代はフェリクスに一度も勝てませんでしたが……」

 

「おいおい、アッシュまでどうしちまったんだ……いや、王国らしい親睦の深め方といえばそうなんだが……」

 

「面白い、後で訓練所に来い。まとめて相手してやる」

 

 

 そういうわけで、フラルダリウスでの歓迎会がはじまったのだった。

 

 フラルダリウス領都の訓練所は広くて設備も充実していた。

 さすがは、王国一の精鋭と名高いフラルダリウス兵を抱えるだけはある。

 訓練所にはフラルダリウス兵以外にもナンパ男が率いてきたゴーティエ騎士団の姿もあった。

 ゴーティエ騎士団は王国一の機動力を有するらしく、皆優れた軍馬に乗っていた。

 すでに訓練所では『フォドラの夜明け』の兵士たちが、フラルダリウス兵やゴーティエ騎士団と交流をしている。

 

 あたしとレオニー、アッシュと三連戦を終えたフェリクスが流れた汗を拭きながら、こちらに向かってやってきた。

 

 

「皆、腕を上げたようだな……お前とレオニーはともかくアッシュに苦戦するとは思わなかった」

 

「あたしたちみんな実戦続きで鍛えられたからね……でも、アンタちょっと戦い方を変えたんじゃない?」

 

 

 士官学校時代は〈ソードマスター〉の剣術だったけど、あたしと訓練するうちに盾を使うことを重視した〈勇者〉に近い剣術も取り入れていた。

 今は両方使えるといえば聞こえが良いが、なんだかどっちつかずの印象になってしまっている。

 

 

「幼少から鍛えていた〈ソードマスター〉の剣術に、フラルダリウス流剣術の〈勇者〉の剣術を取り入れていたんだがな……最近、受け継いだ盾のせいで調子を落とした」

 

「盾ひとつで調子を落とすなんてあんたらしくないじゃない。使いにくい盾なら使わなきゃ良いし」

 

「俺もこんな重い盾など要らんとは言っていたのだがな……ついでに“モラルタの剣”もくれると言うからな。英雄の遺産の盾を受け継いだ後は叔父上や親戚連中から使えと喧しく言われるのだ」

 

 

 フェリクスが貰った盾とは英雄の遺産“アイギスの盾”というらしい。

 フラルダリウス公爵家に伝わる英雄の遺産で、高性能だが重たくて扱いにくい代物みたいだ。

 オーディンなら、英雄の遺産を興味津々で「見せてほしい」なんて言うだろうけどあたしは興味がない。

 興味があるのは、“モラルタの剣”の方だ……グラディウスを貰ったおかげですっかり槍使いになってしまったが、あたしは生粋の剣士なのだ。

 以前、フェリクスには市場で見つけたらしい“ゾルタンの剣”も自慢されたが、“モラルタの剣”はそれ以上に良い剣ね。

 しかし……“モラルタの剣”、“ゾルタンの剣”、そして“アイギスの盾”か……

 

 

「モラルタもゾルタンも幅広で重めの剣だから、“アイギスの盾”を使う時は軽い剣の方が良いんじゃない? あたしの予備の剣をあげるわ」

 

「なに……良いのか?」

 

 

 あたしの今使っている剣は前の世界で使っていた剣を基に、新しくフォドラで銀製武器として作ったものだ。

 聖騎士になったときにオーディンの“ミステルトィン”とラズワルドの "舞剣"も新調している。

 あたしの“鋭剣”はレイピアに近い形状で軽くて扱いやすく、重装備の兵士相手に有利なのが特徴だ。

 予備として同じ物を数本作って貰ったのであげても問題はない。

 

 

「ほう……軽いがしっかりしている、これは良い剣だ。受け取ろう」

 

「べ、別にあんたのためじゃないんだからね……」

 

「⋯これが、俺のためじゃないなら、誰のためなんだ」

 

「それも、そうね。⋯そういえば、オーディンのやつが〈ソードマスター〉と〈勇者〉とかの最上級職を考えてるらしいから、あんたもあいつに話を聞いてみたら?」

 

 

 照れ隠しに話を反らしてしまったが、オーディンが〈ソードマスター〉、〈勇者〉、〈ウォーリアー〉、〈ハルバーディア〉、〈スナイパー〉の最上級職版を考えているのは本当だ。

 すでにオーディンには〈グラップラー〉〈フォートレス〉の最上級職版である〈バーサーカー〉と〈ジェネラル〉を作った実績があるので、前の世界にあった兵種ではなくとも上位版を作れる可能性があるとしているらしい。

 

 まさかオーディンがフォドラの兵種を作っていくとは、前の世界から持ってきたチェンジプルフとマスタープルフを渡した時には予想できなかった。

 

 今度は、あたしのために〈ファルコンナイト〉より凄い飛行職でも作ってくれないかなあ⋯

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 ラズワルド視点

 

 

「最後まで舞台に残った者にはそのあらゆる願いを聞き届けることを、“漆黒のオーディン”の名において約束しよう」

 

 

 高見台からオーディンが偉そうに大会の説明をしている。

 “あらゆる願いを聞き届ける”なんて言ってるけど、ただの一般教団聖騎士であるオーディンにそんな資金と権力は無い。

 

 

 

 

 オーディンが新たに超特級職の〈ブレイブヒーロー〉、〈剣聖〉、〈槍聖〉、〈弓聖〉、〈アクスブレイブ〉と特殊職の〈歌姫〉という兵種を生み出した。

 

 僕が〈ブレイブヒーロー〉、フェリクスが〈剣聖〉、ルーナとレオニーが〈槍聖〉、イグナーツとアッシュが〈弓聖〉、ラファエルが〈アクスブレイブ〉の最上級覚醒試験に合格した。

 ちなみにシルヴァンも〈槍聖〉の試験に挑戦したけど、技能が足りず不合格だった。

 そして、それを見たイングリットは貴重な最上級覚醒試験パスを消費するのをためらって試験を受けるのをやめてしまった。

 

 

「〈歌姫〉は少し槍適正が有るから松の木の丸太でも振り回してみるか、ドロテア?」

 

「なんで急に丸太が出てくるの⋯そんなもの振り回せる歌姫がいるわけないでしょう、オーディンくん」

 

 

 〈歌姫〉ついては、よくわからないがオーディンが思いつきで作ったらしい⋯僕が〈踊り子〉じゃなくなると不便になるからといった理由らしいが⋯特殊職は思いつきで簡単に作れるものなのだろうか⋯

 

 

「ふふふ、まさか〈歌姫〉なんて兵種ができてしまうなんてねぇ⋯もしかして、私のためだけに作ってくれたのオーディンくん?」

 

「いや、〈踊り子〉なんて特殊職があるから、音楽を使った別種の再行動ユニットができないかなと思ってな⋯次は吟遊詩人の〈バード〉という特殊職も考えているんだが、うちの軍には適正があるやつはいなさそうだな⋯」

 

「はあ、女心のわかっていない返答ありがとう、オーディンくん。⋯ガルグ=マクに帰ったらマヌエラ先輩にも勧めてみようかしら」

 

 

 ドロテアは突然自分にぴったりの兵種になれて凄く嬉しいようだ。

 調子を試すように歌いながら歩いていった。

 

 

「しかし、剣闘祭ね⋯あたしたち『フォドラの夜明け』で最強を決める良い機会じゃないの!」

 

「フラルダリウスの兵たちもこの手の腕試しを好む連中は多い⋯もちろん俺も参加させてもらう」

 

 

 フラルダリウス大剣闘祭を始める発端となったルーナとフェリクスが話をしている。

 超特級職になった二人が腕試しをしたいからと色んな人間を巻き込んで武闘大会を開くことになったのだ。

 

 ルールは士官学校時代にやっていた武闘大会とほとんど変わらないが訓練用武器の種類の選択は自由だし、戦技の使用も許可されている。

 斧殺しのような相性特化のスキル持ちも多いだろうし、組み合わせ次第で負けてしまう可能性もある。

 

『フォドラの夜明け』には士官学校の生徒以外にも元ジェラルト傭兵団員やインデッハ剣戟隊、キッホル竜騎兵団員出身の達人も多いし、フラルダリウス兵やゴーティエ騎士団にも精鋭が多そうだ。

 

 

「それで、いきなりオーディンが相手なわけか……」

 

「フッ……『フォドラの夜明け』の団長“漆黒のオーディン”と副団長“蒼穹のラズワルド”が雌雄を決する、剣闘祭の最初の一戦にふさわしいだろ?」

 

「審判は俺がする。両者構えろ」

 

 

 審判はフェリクスがするようだ……士官学校時代の最初の武闘大会を思い出すなぁ……あの時はイエリッツァ先生が審判だったかな? 

 

 

「……では、始めッ!」

 

 

 始まりの合図とともに、ギャラリーから大きな歓声が上がる。

 これは、オーディンが相手とはいえ無様なところは見せられないね。

 

 

「蒼炎剣ブルーフレイムソードっ!!」

 

「……くっ!」

 

 

 オーディンは初手から戦技〈魔刃〉を使って、切り込んでくる。

 青い炎と魔法を纏わせた剣は訓練用の物とはいえ、当たればただではすまないだろう。

 ……当たればの話だけどね。

 

 

「蒼穹の舞ミスティックダンス!!」

 

「な、なにっ、その技は!?」

 

 

 〈剣の舞〉……踊り子になったことで習得した戦技だ。

 剣回避のスキルと相乗効果でほとんどの攻撃を回避し、強力な一撃を入れることができる僕の必殺技だ。

 

 

「ぐあぁっ!」

 

「勝者、ラズワルド」

 

「くそ……今までずっと……闘ってきた……のに、ここで終わり……かよ……」

 

 

 いや、ずっと闘ってきたとか言ってるけど、君は一回戦敗退だからね。

 オーディンは〈戦術師〉になって再び剣士としての実力を付け始めたので、勝てて良かった。

 

 

 

 オーディンを倒して勢いを付けた僕はそのままフラルダリウス大剣闘祭を勝ち抜き、初代優勝者の名誉を勝ち取ったのだった。

 

 

 

 ラズワルドが大剣闘祭を優勝し、〈ヴァンガード〉の資格を獲得しました。

 

 

 

 




あとがき

ヴァンガード(ラズワルド専用職)
兵種スキル
・剣の達人
・斧の達人
・歴戦の勘(戦闘時、必殺回避+15)
マスター時習得スキル
・力の吸収(自分から敵を倒すと、力+2(戦闘終了まで、最大+10))
・見切り(敵の戦闘に関係したスキルを全て無効化する)
FE暁の女神で登場した主人公(アイク)の最上級クラス。
FEif白夜王国/暗夜王国ではDCLの男性専用職として登場、「神将の紋章」を使用することでラズワルドもクラスチェンジ可能。
本作ではフラルダリウス大剣闘祭を優勝したラズワルドの専用職となった。

歌姫
兵種スキル
・歌う(味方を再行動させる)
・地形耐性
マスター時習得スキル
・特別な歌(歌うを使用した味方を、技・速さ・幸運+3(1ターン))
魔法が使える兵種。
FEif白夜王国/暗夜王国に登場する特殊職。
ドロテア専用職というわけではないが、女性専用職、歌が上手い等の条件がある。

ブレイブヒーロー
推奨技能レベル:剣A、槍斧格いずれかをB+
兵種スキル
・武器の達人
・待ち伏せ
・怒り
マスター時習得スキル
・太陽(奥義スキル)
・専用剣戦技〈太陽〉
FEif白夜王国/暗夜王国・FEエンゲージ等に登場する上級職。
風花雪月の勇者の最上級職版。ラズワルドがすぐにヴァンガードになったので、この兵種で活躍する人は少ない…

剣聖
推奨技能レベル:剣A+
兵種スキル
・剣の達人
・剣必殺+10
・剣回避+20
マスター時習得スキル
・斧殺し+
・流星(奥義スキル)
・専用剣戦技〈流星〉
FEif白夜王国/暗夜王国に登場する上級職。
剣特化最上級職、風花雪月のソードマスターの最上級職版。高い成長率に加え、兵種スキルに剣回避+20、マスター時に奥義スキルと専用剣戦技の二種類の流星と斧殺し+を覚えることができる。
フェリクスとカトリーヌが大喜び間違いなしの兵種。

槍聖
推奨技能レベル:槍A+
兵種スキル
・槍の達人
・槍必殺+10
・槍回避+20
マスター時習得スキル
・剣殺し+
・月光(奥義スキル)
・専用槍戦技〈月光〉
FEif白夜王国/暗夜王国に登場する上級職。
槍特化最上級職、オーディンが作り出したハルバーディアの最上級職版。

アクスブレイブ
推奨技能レベル:斧A+
兵種スキル
・斧の達人
・斧必殺+10
・斧回避+20
マスター時習得スキル
・槍殺し+
・カウンター
FE暁の女神に登場する戦士系の最上級職。
斧特化最上級職、風花雪月のウォーリアーの最上級職版。

弓聖
推奨技能レベル:弓A+
兵種スキル
・弓の達人
・弓必殺+10
・弓射程+2
マスター時習得スキル
・弓射程+2
・慧眼の構え
FEif白夜王国/暗夜王国に登場する上級職。
弓特化最上級職、風花雪月のスナイパーの最上級職版。


FEif白夜王国/暗夜王国に登場する婆沙羅や兵法者、アドベンチャラー、レヴナントナイト等も考えていましたが…オーディンがフォドラに作る汎用兵種は(たぶん)これが全ての予定です。
ルーナ専用職については少し先となります。

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