ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン   作:すすすのすー

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第72話『遠征~炎』

 

 

 俺は“漆黒のオーディン”、強きも弱きも俺の願いで、仲間の誰もが勇者となる、選ばれし闇の呪術士だ。

 

 フラルダリウス領で大剣闘祭を楽しんだ俺たち『フォドラの夜明け』一行は、ついでにフラルダリウス領とゴーティエ領の領境に逃げ込んだ山賊たちを壊滅させた後にブレーダッド領の王都フェルディアへと向かった。

 フェリクスとシルヴァンも王都でディミトリに会いたいと、それぞれフラルダリウス兵とゴーティエ騎士団率いてついてきたので、結構人数も増えている。

 

 

「王都の城門のところが、えらく混雑してるな……こりゃ時間がかかりそうだ」

 

「珍しいわね……検問をするにしても、ここまで人が待たされているのは見たことがないわ」

 

「……チッ、こんなところで待たされるのは面倒だ。門まで行って様子をみてくるぞ、来い、シルヴァン、イングリット」

 

 

 王都に到着すると城下町に入る前の門が混雑しており、人だかりができていた。

 門の前には一般平民や商隊の馬車、貴族の馬車も一様に足止めされている様子だ。

 王都を何度も訪れているシルヴァン、イングリット、フェリクスの三人も見たことがない状況だったらしく、確認するためフェリクスが二人を引き連れて城門へと向かっていった。

 

 

「フェルディアで何か起こってるのかもね……」

 

「あたしの紅蓮隊とフレンの純白隊で空から入って見てみよっか?」

 

「自国の所属軍以外の飛行兵が城門を飛び越えて侵入するのは戦争行為になるからご法度だぜ……ディミトリなら許してくれるかもしれないけど、セイロス騎士団所属の俺たちがそんなことやらないほうが良い」

 

「ま! そんな難しい決まりがあるのですわね……」

 

 

 ラズワルドとルーナ、フレンと話し合う。

 決まりというか、軍事協定というか……セイロス騎士団は各国・各領の所属軍とは違った扱いなので、そういう活動が許される場合もあるんだが、あとでセテスさんとか教会の上層部に怒られそうだからやらないほうが良いだろう。

 

 

「アンは元気かしら~、久しぶりに会えるから楽しみだわ~」

 

「たしか、アネットさんとギルベルトさんは王都でディミトリくん……いえ、王子殿下のお手伝いをしてるんですよね?」

 

「ギルベルトさんって、今は違う名前だって聞いたけどなんて名前だっけ? ……なんにせよ、親子仲良く仕事してるのは良いことだと思うよ」

 

「そうよね、レオニーちゃん。アネットちゃんとギルベルトさんは性格は似てない二人だったけど、大修道院で仲良さそうにしてるのを見てると、家族のいない私からみたら羨ましかったわ」

 

「王都にはドゥドゥーもいるよ。みんな、デアドラのお土産は喜んでくれるかなあ」

 

「そういえば、ドゥドゥーくんもいたなぁ! ドゥドゥーくん、またデカくなってんのかなぁ?」

 

 

 王都に入る前に待ち時間ができたので『フォドラの夜明け』の部隊長たちは緩く雑談している。

 ギルベルトさんはセイロス騎士団の任を解かれて、ディミトリの元で補佐をしているという話はセテスさんが大修道院に戻ってきたときに聞いていた。

 

『フォドラの夜明け』のアッシュとメルセデスに、フェリクスたち三人も連れて来たので、青獅子の学級も王都フェルディアに勢ぞろいするな。

 

 のんびり雑談をしているうちに、フェリクスたちが戻ってきた。

 

 

「どうだった? 王都には入れそうか?」

 

「いいえ……どうやら現在、王国軍によって王都フェルディアが全面閉鎖されているらしくて」

 

「なんだ、シルヴァンがやらかして王都に出入り禁止になってるのかと思ったよ」

 

「ラズワルド、そんなわけあるかよ!」

 

「あんたたちの貴族の権限でも、入城許可が降りなかったの?」

 

「全面閉鎖命令は貴族であっても、素通りすることは出来ん。詳細を聞いても衛兵共は答えなかった」

 

 

 思ったよりも事態は良くなさそうだ。

 貴族のフェリクスたちが通れなかったから、セイロス騎士団としての権限を使っても入城許可は降りなさそうだな。

 

 

「あの猪がこのような妙な命令を出すはずがない。王都で良からぬことが起こってるに違いない、手荒な手を使っても中に入るぞ」

 

「しかし、私たちが王都の閉鎖命令を破って侵入しようとするのは如何なものでしょうか……」

 

「イングリット、こりゃ侵入っていうより、突入になるぜ……城門を抉じ開ける必要もある」

 

「城門突破? 『フォドラの夜明け』の得意分野だ……王都でまた『フォドラの夜明け』の伝説の一幕が開けるな……」

 

「はいはい、戦闘準備だね、僕たち地上部隊は門前にいる人たちを退避させてくるよ」

 

「飛行部隊で城壁の上を制圧したら、〈ワープ〉で城内に侵入した部隊で門を開けるって感じかしら……王国軍の兵士は本来の敵じゃなさそうってのが戦いにくいところね」

 

「非殺傷の白魔法や闇魔法を使いどころですわね! わたくしたち純白隊の出番ですわ!」

 

 

『フォドラの夜明け』とフラルダリウス兵、ゴーティエ騎士団が戦闘準備に入る。

 得意分野とかノリで言ってしまったが、実際のところ盗賊の小砦の城門突破したくらいしか経験はない……が飛行部隊と転移魔法を駆使すれば、そう難しいものでもない。

 

 

「なっ、奇襲……! 敵襲っ、敵襲だ!」

 

 

 素早く飛び立ったルーナの紅蓮隊とフレンの純白隊が城壁の上の王国軍に襲い掛かる。

 王都の王国軍は大慌てで迎撃しようとしているが、準備が間に合っていなかった。

 こちら側は城門前で慌ただしく準備していたが、まさか他領とはいえ友軍の王国軍と一緒にいたセイロス騎士団に襲い掛かられるとは思わなかったのだろう。

 

 ワープで城内に送った部隊が城門を開けて、難なく城門を突破することができた。

 

 ただ、城内には制圧しきれていない王都王国軍の部隊がまだ残っていた。

 

 

「俺はセイロス騎士団所属の『フォドラの夜明け』団長“漆黒のオーディン”、選ばれし闇の聖騎士だ! ……この“封魔剣エクスブレード”の証の光を目に焼き付けろ!!」

 

 

 そう言ってファルシオンを大きく天に掲げて、聖痕と反応させてピカピカ光らせる。

 王国軍の視線が一気に集まり、周囲からどよめきの声が生まれる。

 

 ……よしっ! 

 

 

「フェリクス、シルヴァン、イングリット! さあ、お前らも英雄の遺産を掲げて名乗るんだ!」

 

「はぁ!? なぜ俺が、そんな真似しなくてはならん!」

 

「そうだよ、流石に恥ずかしいぜ! こんな王都のど真ん中で堂々とオーディンみたいなことするのは」

 

「……なるほど」

 

 

 フェリクスとシルヴァンは文句を言っているが、すぐに意図に気づいたらしいイングリットが俺を真似て魔槍“ルーン”を天に掲げて……

 

 

「私はガラテア伯爵の長女イングリット=ブランドル=ガラテア! この槍はガラテア家に伝わる英雄の遺産、魔槍“ルーン”です!」

 

 

 ノリノリで自己紹介した。

 英雄の遺産の紋章の適合反応で放つ光は、ファルシオンの白っぽい輝きとは違ってどこか禍々しい赤い光だ。

 

 

「はあ、まあしょうがないか……俺はゴーティエ家嫡男のシルヴァン=ジョゼ=ゴーティエ。こいつはゴーティエ家に伝わる“破裂の槍”だ」

 

「チッ……フラルダリウスのフェリクスだ」

 

 

 そう言って二人がそれぞれ“破裂の槍”と“アイギスの盾”を掲げる。

 フェリクスは嫌々ながらも適合反応で英雄の遺産を光らせているので、正統な継承者と判断できるはずだ。

 

 王国では英雄の遺産は帝国や同盟より重要視されているものだ。

 紋章の適合反応の光を放つ三つの英雄の遺産を見た王都の王国軍の反応は劇的だった。

 全員が武器を収め、跪いている。

 

 王国軍の部隊長が出てきた。

 

 

「フェリクス様、シルヴァン様、イングリット様、ならびにセイロス騎士団の方々にお伝えします……現在王都所属の王国軍は宮廷魔道士コルネリアの指揮下にあります。彼女の命令で王都の全面閉鎖をしておりました」

 

「なぜ、そのような事態になっている」

 

「王子ディミトリ殿下がイーハ大公リュファス閣下の暗殺の容疑にかけられております。ディミトリ殿下が明日処刑されるまで誰であっても通すなという命令でした」

 

 

 ディミトリが処刑だと……! 

 ただの容疑で王子が処刑されるのは異常すぎる……コルネリアという奴の謀略だろう。

 

 

「そんな……殿下がっ!?」

 

「あの猪……ディミトリが処刑だと! そんなことが赦されるかっ!」

 

「早々と城門をブチ抜いて正解だったな……早いとこ殿下を助けないと」

 

 

 イングリット、フェリクス、シルヴァンたちも驚いている様子だ。

 

 

「我々王都所属の王国軍としても殿下の処刑は看過できる事態ではありませんでした。しかし、コルネリアは摂政派貴族のエリディア子爵、マテウス子爵、クレイマン子爵と共謀しており、上の意向には逆らえず……」

 

「その貴族たちは、今後も邪魔してくる可能性が高いと」

 

「はい……王宮では殿下の処刑に反対している方々もいると噂されていますが、権力のある方ではないようです」

 

「それは気になるが……今はディミトリの救出を急ぐべきだな」

 

「我々の部隊はあなた方に従います、どうか殿下をお助け下さい……」

 

 

 どうやらここの王国軍の指揮権は奪えたようだ。

 この王国軍の部隊には城門の確保と管理をさせることにした。

 王都への入城は今まで通り制限するが、出城は市民の安全を考えて許可を出した。

 

 

「よしっ、ディミトリを救出しにフェルディアの王宮へ向かうぞ! 摂政派貴族の手勢は明確に敵と見なす……この王都に蔓延る刺客を殲滅せよ!」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 ディミトリ視点

 

 

 

「……ドゥドゥー、急げ!」

 

「殿下、振り向かずに前へ! 我らのことはお気になさらず!」

 

 

 ドゥドゥーと近しい部下たちの手引きによって地下牢から出ることのできた俺は地下でコルネリアの手の者と数度戦いながらなんとか王都からの脱出を目指していた。

 全力の移動をしているがため、ドゥドゥーと他数名の重装兵が遅れ歩調に乱れが出ていた。

 

 

「逃がすな! 王子だけは必ず仕留めろ!」

 

「獣の王子め、死ね!」

 

「やらせるな! ディミトリ様を死守せよ!」

 

「どけっ!」

 

 

 預かった手槍を振り回し、斬りかかってきた敵兵三人をまとめてなぎ倒す。

 出会ったコルネリアの手下は殺意剥き出しで攻勢をかけてくる。

 地下牢からの脱出についてきた仲間たちは、俺を守るためにすでに何人か斃れてしまっている。

 

 ……!! 

 

 進軍が遅れているドゥドゥーたちのところに雷魔法による激しい閃光が見えた。

 迷うことなくすぐに引き返して、走り出す。

 

 

「ドゥドゥー!」

 

「馬鹿め……戻ってきよったか、死ね王子! <トロン>!!」

 

「邪魔だ!」

 

 

 敵の魔法使いの攻撃を受けながら強引に突き進み、手槍で胸の中心を貫く。

 ……敵兵は即死したが、手槍の柄が折れてしまい使いものにならなくなった。

 

 

「ドゥドゥー、大丈夫か……! おいっ!」

 

「ぐっ……殿下……」

 

 

 良かった……生きていた。

 ドゥドゥーと共について来ていた仲間の重装兵たちは魔法攻撃ですでに事切れてしまっている。

 

 

「ドゥドゥー、立てるか? 後ちょっとで地上だぞ⋯」

 

「殿下、俺を置いてお逃げください⋯」

 

「なにを言う、お前を置いて行けるか! 抱えてでも連れて行くぞ!」

 

「なりません……地上へ出たとて安全とは言えません……この傷、俺はもう足手まといです」

 

 

 ゆっくりと立ち上がりながらドゥドゥーが言う。

 顔に攻撃を受けてしまったのか、顔中が血だらけで傷だらけだ。

 重装鎧の下もボロボロで立つのもやっとだろう。

 せめて俺が回復魔法を使えれば……学生時代、魔法を学ぶ機会はあったのに避けて武芸の稽古ばかりしていた自分を戒めたい。

 

 少し前を進んでいた残りの仲間たちが声を上げた。

 

 

「ディミトリ様! また敵です、数が……ぐあっ!」

 

「王子は手負いのようだな……ここで仕留めろ!」

 

「押し通る!」

 

 

 斃れた仲間の鉄の斧を投げつけ、敵の鉄の槍を拾い突撃する。

 手負いのドゥドゥーが囲まれるのをさけるには、俺が前にでるしかない。

 

 槍で敵兵の喉笛を切り裂く、武器ごと腕を斬り飛ばす、突き刺した敵をそのまま持ち上げそれを敵兵に叩きつける。

 

 無我夢中で戦い、十人以上は倒しただろうか……生きているのは俺とドゥドゥーだけのようだ。

 俺を助けるために志願して来てくれた者たちは、ドゥドゥー以外みな死んでしまった。

 

 二人でボロボロの身体で足を引きずりながら、地上への出口を目指す。

 

 

「あらぁ、まだ生きてらしたのね殿下……やはり、生命力は獣並みね」

 

「コルネリア……」

 

 

 地上へ出るとコルネリアたちが待ち構えていた。

 彼女の周りにはエリディア子爵、マテウス子爵、クレイマン子爵ら摂政派貴族の姿もある。

 

 

「あの老いぼれと小娘は上手くやったものねぇ……殿下が逃げ出したって聞いた時は焦ってしまいましたわ」

 

「……ギュスタヴとアネットはどうした」

 

「魔法学院に逃げ込みましたわ、後で全員殺してやるからお気になさらず」

 

「……そうか」

 

 

 それを聞いて少し安心した。

 あの親子なら俺が死んでも上手く逃げられるだろう。

 

 

「そんなことより、自分の心配をしたらどうかしら?」

 

「……」

 

「だんまりですか……まあ、わたくし自らの手で王国を終わらせるのも悪くないわねえ」

 

 

 コルネリアが魔法陣を発動させ、魔力を溜め始めた。

 前へ出て俺を庇おうとするドゥドゥーを強引に手で制する……ドゥドゥーもそれを押しのけて前へ出る体力は残っていないようだ。

 

 

「くたばれ、王子……てめぇの、このくだらない王国と共に滅べ!」

 

 

 コルネリアの闇魔法が放たれる。

 

 死を前にしても思い浮かぶことはない、後ろのドゥドゥーが少しでも生きながらえてくれればよかった。

 

 耳を劈く轟音と共に強烈な闇に飲み込まれた。

 

 

 ──―

 

 ──

 

 ―

 

 ……はずだった。

 

 なぜ、俺はまだ生きている? 

 

 

 かすんでいた視界が鮮明になると、俺を庇うように三人の人間が立っていた。

 

 フェリクス。

 

 シルヴァン。

 

 イングリット。 

 

 懐かしさすら感じる後ろ姿……生まれたころからの付き合いの幼馴染たちだ。

 

 

 三人の中央で“アイギスの盾”で闇魔法を防いだフェリクスが振り向く。

 

 

「……猪っ!! 馬鹿か貴様は……何を木偶のように突っ立っている! まさか、諦めていたとは言うまいな!?」

 

 

 俺が見ているのは幻覚ではないようだ。

 いつも通りのフェリクスだった。

 

 

「お前たち、どうしてここに……?」

 

「そりゃあ、助けに来たに決まってるじゃないですか」

 

「遅れてすみません殿下……ドゥドゥーも……ひどいケガ! すぐに手当てをっ」

 

 

 俺の問いかけに答えた、シルヴァンもイングリットも幻覚ではない。

 少し真剣な顔つきのいつもの二人だ。

 

 

「〈ライブ〉……ごめんなさいね~ディミトリ。ドゥドゥーの方が重症だから先に回復させてあげないと」

 

「ドゥドゥー、調合薬を持ってきたよ……飲めるかい?」

 

 

 メルセデス、アッシュ……彼らはセイロス教団にいたはずだがなぜ此処に……? 

 

 

「殿下、ドゥドゥー……ごめんなさい。あたしがもっと上手く作戦を立てれたらこんなボロボロにならなくて済んだのに」

 

「……間に合ってよかった、私に言えるのはそれだけです、殿下」

 

 

 アネット、ギュスタヴ。

 二人が俺を救い出すために様々な手を打ってくれたのは、ドゥドゥーから聞いている。

 

 

 ふと、回復魔法が俺を包み込み体の傷を癒した。

 

 

「〈リカバー〉……今、聖なる闇の力で貴様の傷は消滅した!」

 

「……お前は……」

 

 

 金鹿の学級の友人。

 どこか別の世界を救った後に、この世界を救うためフォドラに現れた英雄だ。

 

 その英雄が青獅子の学級の仲間たちと()()()()()()と共に、ここにいる。

 

 

「さあ、反撃の時間だ! ディミトリ、ドゥドゥー、そしてダスカーの民たちよ……運命を共にっ!!」

 

 

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