ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン 作:すすすのすー
(竪琴の節 十八日)
俺は“漆黒のオーディン”、闇の呪術士だ。
ある者は俺をこう称した。
“狂気の天才”と……
そしてまたある者は、こう称した。
“もはや人ではない”と……
世界広しと言えど、俺ほどの術士はそうはいないはずだ……!
竪琴の節(5月)の最後に盗賊の討伐をするという課題が設定された。
ルミール村で討ち洩らした盗賊が、赤き谷ザナドというところに逃げ込んだらしい。
盗賊たちはせいぜい30~40人くらいかな? セイロス騎士団がメインで討伐して最後のとどめを生徒たちにさせるみたいだから、余裕で終わるだろう。
今日はその予行としてセイロス教団兵と演習がある。
先生は部隊を三つに分けて、森で東から来る敵を食い止める部隊、北で正面戦闘をする部隊、予備部隊とした。
ちなみに俺もルーナもラズワルドも予備部隊である。
先生は盗賊討伐を前に少しでも、実戦に近い演習をして不馴れな生徒を慣れさせたがっていたので、すでに実戦経験がある連中の多くは予備部隊にまわされた。
ちなみにクロードが森で迎撃する部隊10人、先生が正面の部隊10人、予備部隊8人はこの“漆黒のオーディン”が率いることになっていた。
「また留守番かー、退屈ねー」
「まあ、先生は盗賊討伐で僕らの出番はあるって言っていたし、今日のところは楽させてもらおうよ」
ルーナとラズワルドが退屈そうにしている。
一応、もうすぐ演習始まるんだぞ、シャキッとしろよ。
「この僕が予備部隊とは……実力を買ってくれているのはわかるが少々物足りないな」
「ぬおおお! オデの筋肉は戦いたがってるのに!!」
「…………」
予備部隊には学級模擬戦に参加していた、ローレンツ、ラファエル、マリアンヌもいた。
残りの二人も、実戦経験はすでにあり先生から合格扱いされていたので、今回の予備部隊は出番は最小限にするつもりだろう。
おっ、正面も森も戦闘が始まりだしたな。
正面はほぼ同数で戦っているようだ、ヒルダとレオニーを主力にし先生がしっかり指揮を執っている。
しかし、レオニーの動きがいいのはわかるが、ヒルダも結構強いな、普段ものぐさで面倒くさがりのくせに……斧を使わせたらラファエルを抑えてウチの学級で一番かもしれない、
森のほうはよく見えないが、時折魔法の光のようなものが見えている。
今のはリシテアの〈ドーラΔ〉かな、ここまで闇魔法の波動を感じる……ダークメイジでもないのに闇魔法を素の状態で使えるっていいなー! 今度、教えてもらおう。
クロードには、補佐としてイグナーツも付いているし、予備部隊以外の魔法が使えるやつはみんな森の部隊にいるから、うまく敵の攻撃を回避しつつ、着実に倒していっているだろう。
「……よしっ正面と森は片付いたみたいだ。回復しにいくぞー」
予備部隊の仕事である回復魔法の出番だ。
クロードの部隊には、白魔法使いがいるので先生の部隊に合流する。
「ねえー、あたし疲れちゃった、誰か交代しようよー」
ヒルダが予備部隊の連中に言ってるが、代わるわけがないだろう。
そもそも、一番活躍してたくせに……だから、疲れたのか?
「ヒルダはラファエルと代わっていいよ。レオニーは代わりたい?」
「えっ先生、いいの!? やったー、ありがとう!」
「わたしはいいよ……このまま戦う」
「じゃあ、ローレンツたちは予備部隊から、私の部隊へ合流」
「先生、僕たちはどうするの?」
「予備部隊はルーナ、ラズワルド、ヒルダで指揮は引き続きオーディンで」
「えー、あたしたちも戦いたいのにー」
「それは、また今度……オーディン、任せた」
結局、俺たち予備部隊の出番は無かった。
先生の部隊はあえて、最後に残った教団兵たちと同程度の人数で戦い、被害0人で倒した。
いくら新兵ばかりとはいえ、ほぼ同数の相手に被撃破判定0はかなりの快挙だ。
教団兵側の指揮官だったセイロス騎士は悔しがるどころか、尊敬の目を向けていたし、先生の実力が周知されてきたみたいで嬉しいな。
◆◆◆
(竪琴の節 三十一日)
課題当日、赤き谷ザナドに到着した。
赤き谷と呼ばれているわりに赤いものなんて何もない。
戦争でザナドに多くの血が流れ赤き谷と呼ばれるようになった、みたいな伝承があるのかもしれないな。
盗賊たちは予定通り谷の奥に追い詰められている様子だ。
騎士団は上手くやったようだな。
「西側に裏道があるって話だ。何なら西側と正面で、二手に分かれるか? 上手くすりゃあ、奥にいる敵を二方面から同時に攻撃できるかもしれないぜ」
「検討してみる」
「まあ、まずは橋を渡っちまわないと。細かい指示は頼んだぜ、先生」
──久しぶりの戦場だ、……血が騒ぐぜっ! 盗賊どもよ、この漆黒のオーディンに出会ってしまったことを後悔するがいい……
橋にはこちらを渡らせまいと盗賊たちが陣取っている。
ルーナ、ラズワルドを先頭に、先生、ヒルダ、レオニー、ローレンツ、ラファエルなど
後衛はクロードが指揮を執り、この俺“漆黒のオーディン”、イグナーツ、リシテア、マリアンヌなど弓と魔法が使えるグループが後衛の援護を行う。
戦闘が始まってから、一際目を引くのはルーナとラズワルドだ、対峙した敵を一太刀で斬り伏せる様はここからでもよく見える。
レオニーとラファエルも上手く戦ってるし、ローレンツ、ヒルダは味方をカバーしながら立ち回っている。
後衛の援護もあり橋は制圧できたな。
「ご、ごめんなさい……こうするしか……」
「主よ……赦したまえ……この者の魂を、救いたまえ」
イグナーツとマリアンヌは人命を奪ったことに、相当堪えてるみたいだな。
前衛にも、露骨に動きが悪くなっている生徒が数名いる……
……やっぱり、人を殺すのはたとえ敵が悪党でも辛いよな……俺はもう慣れてしまったけど。
あとで声を掛けとくか。
「隊を2つに分ける、正面の部隊はクロードが指揮を執って。西側から裏道を通る部隊は私が指揮を執る」
先生は裏道を作戦に組み込むようだな、俺とローレンツ、ヒルダ、イグナーツ、リシテアなど10名ほどで裏道を行くことになった。
裏道も敵は警戒していたらしい、ある程度まとまった数の盗賊がいるな。
「盗賊どもっ! この漆黒のオーディンが相手だ! 死にたいやつからかかってこい!」
ふふっ、怯んでやがるな。
突撃してきた斧使いの攻撃をかわし、剣で斬りつける。
続いて斬りかかろうとしてきた盗賊の後続には、魔法を叩き込む。
──来たぞっ……来た来た……俺の闇の力がっ、暴走するっ! ……感じるっ、魂の躍動を!
「喰らえっ! 必殺! アウェイキング・ヴァンダ──ー!!!!」
俺の攻撃魔法〈リザイア〉を受けた盗賊たちは糸の外れた操り人形のように倒れていく。
「闇の裁きだっ!」
裏道の盗賊は掃討した。
正面の連中も奮戦しているようだが、橋にかなりの戦力を投入しているらしく突破できていない。
「先生どうします? 突破するのを待ちますかね」
「いや、私たちで敵本陣を攻める。……戦いを終わらせよう」
先生に聞いてみるが、俺たちだけでやるらしい。
盗賊が意外と戦力が残っていたからな、本陣にもまだ数がいるかもしれない。
……いた、盗賊は遺跡の様な場所に布陣している30人くらいか……
「騎士団なんかじゃなくガキをぶつけてくるたあ、なめられたもんだな!」
ルミール村のときに見かけた、盗賊団の頭もいる。
「気を付けてください、回復床です!」
リシテアが注意を促す。
盗賊たちは回復床に布陣し最後の抵抗をするつもりのようだ。
「オーディン! リシテア!」
「わかってます! 死んで後悔なさい! てええい!」
「……魂が躍動するっ! ハァッー!」
リシテアの〈ドーラΔ〉と俺の〈リザイア〉で先制し、そのまま継続して魔法を撃ち込み続ける。
敵もまばらに矢を射返してくるが、弓兵は多くないのだろう。
魔法を撃たれ続けることに業を煮やし、盗賊たちが回復床から出てきたところを、先生や他の生徒たちで討ち取っていく。
だいぶ引き剥がし、残るは頭と数名を残すだけだな。
「クソ! クソオオオ!! ……てめえ、まさかこの間の傭兵か! てめえだけでも……ぶっ殺してやる!!」
先生と盗賊頭が対峙する。
先生が盗賊頭の斧を巧みに回避し、剣を一閃し盗賊頭は倒れた。
終わったようだな……最後に盗賊頭が「あんな奴の口車に、乗ったのが間違いだった」と言っていたのが気になるが、これで一段落だな。
◇◇◇
学校に帰り支度中、イグナーツに声をかける。
「よお、イグナーツ、調子はどうだ?」
「……オーディンくん……大丈夫ですよ、僕は……」
「あんまり、無理するなよ」
「……盗賊たちを、彼らを放っておいたら、もっと不幸になる人が増えていました。僕は騎士にならないといけないんです。こういう戦いはたくさんしなければならないので……」
だいぶ落ち込んでる様に見えたが、案外覚悟は決まってるんだな。
まあ、『士官』学校というから、平民出身者は騎士や傭兵になるつもりで入学した人がほとんどだからか。
でも、何か気分転換をさせてやりたいな。
……よしっ、閃いたぞ!
◆◆◆
(花冠の節 一日)
「よう、ラズワルド」
「なんだい? オーディン」
「暇だろ、ちょっと訓練に付き合えよ」
「君とは違って暇じゃないよ。僕はこれから女の子とおしゃべりに行かないといけないのさ」
学校に戻った次の日、講義が終わってラズワルドに声をかける。
「おいおい、俺はお前の頼みを聞いてやったのに、お前は断るのか?」
「うっ……でも、オーディンのほうから訓練に誘って来るなんて珍しいね。どういうつもりだい?」
「イグナーツとかマリアンヌとか……他の連中も誘いたいんだが……」
「……なるほどね。そういうことなら、協力するよ」
どうやら
俺一人で訓練に誘っても、来ないかもしれないので、人当たりの良いラズワルドと一緒に訓練に誘って回ることにした。
◇◇◇
「それで? 皆を集めて何をしようってんだ、オーディン先生よお?」
クロードが訓練所に集まってきた皆を代表して言う。
クロードはとくには落ち込んでる様子じゃなかったので、誘うつもりは無かったが、興味深そうについてきた。
他はイグナーツとか全員で10人くらいだな、マリアンヌは誘ったが来なかった。
「……フッ、俺の今日の課外授業のテーマはズバリ! 『訓練しながら、武器の名前や必殺技の名前を考えよう』だ!」
「ほう、なかなか斬新なテーマだ」
「……またそれか、君も飽きないね」
クロードは面白そうにしているが、ラズワルドは呆れ顔だ。
他のみんなも反応がよくないな。
「皆、自分の武器に名前はつけているか?」
「そんなことしてるのは、君だけだよ」
ラズワルドは黙ってろ!
全員、首を振って否定している。
「……あのぅ、そんなことして、何か意味があるのでしょうか」
イグナーツが聞いてきた。
いい質問だ。
「武器や防具は俺たち戦士の同志にして、最愛の相棒だ。奴らに名を与えてやることで、鉄塊である奴らは魂の炎を灯し、人が作りし道具から、神器へと進化をとげるのだ……!」
「……ほうほう、えらく大業な話になってきたな。その神器がどういう風に役に立つんだ?」
「武器に名付けることで、もっと愛着を持つようになるだろ、それに名前を武器に彫っておけば、他人のと間違えることもないしな!」
「おい、急に話が小さくなったぞ。物を大切にしましょう、自分の持ち物には名前を書きましょう的なノリか?」
「物語の英雄たちは、みんな伝説の武器を持っているだろ。自分が有名になったとき、持ってる武器が名もない剣とかじゃカッコ悪いだろ」
「……そうですかね?」
クロードやイグナーツは反応が悪かったが、何人か興味が有りそうにしているな。
よしっ、もう一押しだ!
「例えば……この俺の愛剣の名は、“魔剣アオスシュテルヴェン”……その真名は“完全なる滅び”……」
「また始まったよ、それただの鉄の剣でしょ」
「……フッ、剣を抜け“蒼穹のラズワルド”! その、“舞踏剣ミスティックソード”の切れ味を見せてみろ!」
「ちょっ、何言ってるんだ、恥ずかしいよっ!」
「ラ、ラズワルドくんも武器に名前をつけてたんですね……」
「こ、これは、その、前にオーディンの遊びに付き合ったときに……」
「……なるほどな、“蒼穹のラズワルド”も“漆黒のオーディン”の同類だったわけだ」
「やめてよ、クロード、恥ずかしいよぅ!」
クロードが、恥ずかしがってるラズワルドをからかっている。
だが他のみんなもやる気がでたのか、集まった生徒たちが前に出てきた。
「僕の剣の名前は“フォルクヴァング”だ」
「“フェンサリル”……この槍で、もっと強くなってみせますよっ!」
「この剣は“デュランダル”……僕たちの戦いはこれからだ!」
「わたしの“ソール・カティ”、この剣で勝負よ!」
「こいつは“アルマーズ”、いっちょ手合わせしてみるか?」
「俺の“ミストルティンティン”が視たいのか? キモチ良くしてやるよ」
よっしゃあああ!! みんなノリノリだな!!
……血が騒ぐぜ!!
「クククッ、随分熱心に見ておられますな」
「そ、そんなことないわ」
ノリの良い金鹿モブ生徒の皆さんは有名な方たちと関係は有りません
補足
冒頭部分
オーディン・ベルカ支援
魔剣アオスシュテルヴェン
オーディンが十三番目に手にした魔剣、真名は完全なる滅び
ただの鉄の剣
オーディン・エリーゼ支援
舞踏剣ミスティックソード
ラズワルドの舞剣(武器レベルD)
耐久35威力8命中80必殺0射程1重さ7
(装備中は速さ・魅力+3、守備・魔防-3)
ラズワルドの舞剣はFEifで登場、一部独自設定
オーディン・ラズワルド支援