ファイアーエムブレム風花雪月 異伝 漆黒のオーディン 作:すすすのすー
俺は“漆黒のオーディン”、選ばれし闇の聖騎士団長だ。
そう、俺は正式にセイロス聖教会セイロス騎士団の団長となった。
教会の偉い人たち枢機卿の中では、大司教のレア様がいない中で騎士団長という重要な役職を決めるのは如何なものかと言ってる人たちと、この情勢で騎士団長を空位のままにしておくのは危険と言ってる人たちの間で議論していたらしいけど、セテスさんが俺の騎士団長就任を強く推した結果、最終的には満場一致で決まったらしい。
ちなみに、枢機卿の中にすら俺の個人の能力や人格を疑って騎士団長就任に反対する人はいなかったそうだ。
ガルグ=マク要塞奪還を達成できた実績はともかく、まだ聖騎士になったばかりだし……女神様の使命でこの世界に来たとはいえ俺はセイロス教徒ではない。
そういうのも考えて、俺で大丈夫かな? と正直思った。
まあ……そもそも、セイロス騎士団長はジェラルトさんみたいに騎士団長の仕事を突然放棄して二十年も教団から逃げていたくらい素行が悪い人でも再び就任できるくらいなので、実力さえあれば素行や性格は問題にしていないのかもしれない。
「アンタがセイロス騎士団の騎士団長なんて世も末ね……」
「オーディン、これを機に身の振り方を変えてみるべきと、僕は思うよ」
俺の騎士団長就任を一番疑問視していたのは、一番長い付き合いのルーナとラズワルドだ。
まあ、この二人はなんだかんだ言ってるが、同じ使命を持つ選ばれし戦士として、そして同じ聖騎士として、手伝ってくれるだろう。
セイロス教団の軍事面のトップになったことで面倒ごとが増えたので、セイロス騎士団の人事を整備した。
ずっと騎士団長代理の立場だったアロイスさんを正式にセイロス騎士団副団長に就任してもらい騎士団全体の管理、聖騎士のカトリーヌさんは『フォドラの夜明け』を除いた聖騎士部隊“
灰狼の学級も正式に騎士団に取り込み、ユーリスはアビス全体の管理者と密偵部隊“
ハンネマン先生とマヌエラ先生はセイロス騎士団ではないので俺の部下ではないけれど士官学校は閉鎖しているので、それぞれ魔法研究機関(ガルグ=マク大修道院には士官学校はあったが研究機関のような存在は無かった)と医療後方部隊の長となってもらった。
リシテアは自分に宿る紋章を消す研究をしながら、魔法研究機関でハンネマン先生の助手をしている。
ちなみに、俺が付けようとしていた新しい部隊や部門のカッコいい名前たちは、全員に却下されてしまった。
みんな……俺に気持ち良く仕事してもらいたいとは思わないのか……哀しいぞ、俺は……
そして、『フォドラの夜明け』の十人の部隊長は全員が聖騎士になっていた。
『フォドラの夜明け』結成当初は、聖騎士級の武具を持って(借りて)いたのは俺たち三人だけだった。
“漆黒のオーディン”の封魔剣エクスブレード。
“蒼穹のラズワルド”のオートクレール。
“紅蓮のルーナ”のグラディウス。
“壊刃の継承者”レオニーの尽きざるもの。
“野獣”ラファエルのウコンバサラの斧。
“勝利を描く”イグナーツのパルティア。
“正義の一矢”アッシュのタスラムの弓。
“慈愛の聖女”メルセデスのイコル文書とラファイルの宝珠。
“戦場の歌姫”ドロテアの風呼びの根源。
“純白のフレン“のアマルテアとカドゥケウスの杖。
他の部隊長たちも積み上げてきた功績やなぜか手に入った格式高い武器のおかげで聖騎士になることができた。
……レオニーだけ、聖騎士扱いの傭兵というよく分からない立場になったけど。
ちなみに『フォドラの夜明け』自体は30人の10部隊で300人の編成は変わっていないが、交代要員や予備戦力として100人程度は増えている。
増えた戦力の中にはレア様の従者だったツィリルとラファエルの妹マーヤやアッシュの上の弟たちも参加している。
5年の月日は長いな……小さかったマーヤやアッシュの弟たちが今では士官学校に入るような年齢に成長している。
この戦争が終わったら、ガルグ=マク大修道院の士官学校を再開してまた若者たちが学校生活を楽しめる場に戻ると良いな。
城壁はまだまだ崩れた所の修復は終わっていないが、ガルグ=マク大修道院は復興しつつある。
市場は戦争前より商人も客も増えて賑わっているし、巡礼者も近頃は多くなり周辺の街の経済も発展してきている。
何より千年祭に向けた準備でガルグ=マク大修道院全体が活気づいている気がする。
「それで? 同盟盟主、王国国王、帝国皇帝に宛てた千年祭への招待状はどうなってるんだい、オーディン」
「クロードとディミトリは参加するそうだ。エーデルガルトの方は……まだ手紙の返信は来ていないな……」
「帝国軍はまたガルグ=マク周辺で小規模だけど軍を集めているわね……最悪の場合、千年祭の妨害もありえるわ」
ラズワルドの問いかけに答えると、帝国側へ頻繁に偵察に出ているルーナが考えを言った。
ガルグ=マク周辺で動きを見せているのは帝国軍第一軍団長のランドルフ将軍だ。
エーデルガルトから抜擢された若手の軍団長らしく、軍功を立てたがっているという噂もあるし注意が必要だな。
アドラステア帝国には、俺がフェルディナント経由で送った手紙以外にも外交の使者を送ったが入国を拒否されてしまって送り返されている。
送った使者を斬られる程外交はこじれていないが、エーデルガルトの千年祭参加は難しそうだ。
ただ、帝国の情報の中には良い情報もある。
“闇に蠢く者たち”の主魁とされていたアランデル公とエーデルガルトは手を切ったそうだ。
エーデルガルトは帝国政府の重鎮だったアランデル公と決別し、伯父でもあるアランデル公の首に懸賞金を掛けてまで排除しようとしているらしい。
……少なくとも、エーデルガルトが闇に蠢く者たちと完全に同じ道を歩んでいるわけではない……それだけは少し安心した。
「まあ、エーデルガルトが来そうにないのは予想通りだったとして……クロードとディミトリが来てくれるのは朗報だね」
「あいつら、新盟主と新国王でしょ? 国を空けても大丈夫なの?」
「フッフッフッ……実はこの天才策士“漆黒のオーディン”に秘策がある!」
「秘策って、もしかして同盟軍と王国軍と協力して帝国に攻め入ろうって話じゃないわよね」
「なっ!? どうしてわかった!」
「そうなる可能性が高いってみんな噂しているよ……秘策でもなんでもないよね」
まさか俺の秘策がみんなにバレていたとは……みんなの成長を感じるぞ。
実際のところ、クロードとディミトリはそれぞれ軍を動かそうとしている。
レスター諸侯同盟は新盟主クロード率いるリーガン公爵軍を中心に、ローレンツ率いるグロスタール騎兵団と金鹿鋼騎隊、ヒルダ率いるゴネリル戦姫隊と金鹿飛竜隊、マリアンヌはエドマンド辺境兵と金鹿英弓隊を連れてきてくれて、リシテアも一度コーデリア伯爵領に戻りコーデリア魔道隊を率いて参陣する。
帝国方面はグロスタール伯爵が、東のパルミラ方面はこれまで通りゴネリル公爵家のホルスト卿が守備を担う。そして盟主不在の間は、“ダフネルの烈女”ジュディット侯が同盟全体を預かる。
ファーガス神聖王国はディミトリの元、フェリクス、シルヴァン、イングリットがそれぞれ領地から援軍を連れてきてくれるらしい。
王国はフラルダリウス公ロドリグ卿を中心にディミトリに忠誠を誓った王国貴族たちが守る布陣だ。
「準備は整いつつある。“漆黒のオーディン”の策は常に万全だ!」
「はいはい、頼りにしてるよセイロス騎士団団長様」
「まさか、5年前の約束通り金鹿全員集合することになるなんてねぇ……しかも、あたしたちが千年祭の準備までやってる」
ルーナの言う通り、まさか5年もこの世界にいるとは思わなかった。
5年前の約束の時は、とっくに元の世界に帰っているつもりだったのに……まあ、俺は元の世界には帰れなくなってしまったのだが……
「そういえば、約束の中心人物……肝心の先生も眠ったままだよね」
「案外起きるかもよ、ベレスは約束は守るタイプだから」
「ヨシッ! もしも千年祭までに先生が目を覚まさなかったら、千年祭の催し物として俺の禁断の呪術で先生を目覚めさせてみよう!」
「やめなさい!」
「なにが『ヨシッ!』だよ……全然よくないよ」
結局、その日も俺の禁断の秘策は誰一人として理解されなかった。
……まあ、それでも悪くない。
約束の日は、もうすぐそこまで来ているのだから。
あとがき
第二部 黒夜の章 完
次話より 第三部 黄光の章 スタートです。
しばらくお待ちください。
添付資料として
設定資料 ⑥フォドラ国外及びオーディンが開発した兵種設定
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=341977&uid=294404
設定資料⑦ 第二部終了時点での教会勢力キャラクターまとめ
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=342172&uid=294404