ドラゴンスレイヤー装備でゴブリンスレイヤーの世界に転移しました   作:土星土産

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友達に消費するだけではなく生産するオタクになれと言われて書きました。



プロローグ

───これはいったいどういうことだろう。気がつけば森に立っていた。周囲を囲む草木を見て思考に耽る。人間あまりに理解できない状況の中にいると頭がどうも働かない。先程から頭の中で同じ疑問が延々と繰り返されるが答えが出るはずもなく堂々巡りである。もうすでにこの状況で2時間ほど経過している。

昨日はもう何周もやりこんだダークソウルリマスターをプレイしていたはずだ。

ダークソウルのその重々しい雰囲気。

鎧や剣などその中世ヨーロッパ風の厳しい装備品。

敵のデザインやクトゥルフ神話的な世界観など

どれもが大好きだった。

 

昔からヒーローのような騎士に憧れていた彼はそのゲームにそれはそれはのめり込んだ。

 

信仰と筋力技量にステータスを振りまくった聖騎士をイメージしたビルドの自キャラを使い、彼がもっとも愛するボスキャラであるオーンスタインの鎧を着込み、騎士風ロールプレイ(といっても喋れるわけではないのでジャスチャーなどによるものではあるが)をしつつオンラインで他人のプレイを手助けしていた。途中から記憶がないので寝落ちでもしたのだろう。となるとこの現状は夢だと考えるのが妥当なのだが──

 

「リアルすぎるな....」

 

そう、地面の質感、虫の鳴き声、植物の香り、何をとってもリアルすぎる。痛みがあれば目がさめるかと思い槍先で少し指を切ってみると鈍い痛みと共に血が流れる。理解の外だ。こんな夢今まで一度だって見たことがない。そして何よりも今の自分の姿が問題だ。視線を草花から自分の体に移すとそこには太陽光を反射し黄金に光る、見たことがないほど精巧な鎧があった。

 

「これ....オーンスタインの鎧だよなあ....」

 

黄金に輝く美麗な鎧に獅子の顔をした兜。

昨日ゲームで使用していた竜狩りの鎧そのものである。

 

 

そしてなにより意味不明なのが奇跡が使えたこと。

思いつきで腰についていた太陽のタリスマンを手に持ちゲーム中スロットにセットしていた《大回復》の奇跡を念じてみると先程の指の怪我が一瞬で消え痛みもなくなっていた。ゲームの中の技が使えたのだ。

 

ゲームの仕様が反映されているのか?

そう思い、その後試しに槍を振ってみると、武器なんて持ったことがなかったのに達人のような槍さばきを行えた。体が覚えているというのに近いか。

 

筋力はそもそもこんな重そうな槍を軽々扱えている時点で常人の域ではないだろう。直前までやっていたゲームの世界に転移.....そんな馬鹿らしい考えがふと頭の中を過ぎる。あり得るはずがない、本来真っ先に一蹴すべき考えだ。それでも一度浮かんだ考えはなかなか消えてくれない。もしゲームキャラのステータスが反映されているとするならあの槍さばきは技量のステータスの高さによるものだろうか。もしも本当にダークソウルの世界だったらハードモードなんてレベルじゃない。不死のはびこる、何度も何度も死ぬことが当たり前の世界だ。

どこにも救いなんてない。

 

今の俺は肉体的には人外レベルだろうがまず生き残る自信がない。しかし永久にここにいるというわけにも行かないのも事実である。

 

「きゃあああああああああ‼︎」

 

そう考えつつも動けないでいると遠くから突然女の悲鳴が聞こえた。恐怖を孕んだその声を聞き、急がなくては手遅れになると、確信にも似た予感がする。だがそれでも先ほどの妄想から来る恐怖が消えてくれない。もしも助けに行っても勝ち目のない化け物がいたら?待っているのは確実な死だろう。

 

行かなくてはいけないと頭では結論が出ているのに動けない。

 

頭がうまく回らない。何度も同じことを考えてしまう。

 

こんな自分が嫌になる。

どうしようもなく弱い自分が。

俺は.......。

 

 

 

──その時、ふとかつての記憶が蘇る。

 

かつて自分が憧れ、そして諦めた夢。

 

弱きを助け強きをくじく、そんな理想のヒーローのような騎士に彼はなりたかった。誰もが一度は大きすぎる夢を描き、そして不可能だということに気づき、諦めて大人になる。

 

だがその彼の子供じみた夢は成長しても完全には消えることはなく、それはゲームの中に投影された。画面の向こう側では何にだってなれた。

想像の向こうでは騎士でいられた。

 

いつかは、現実という壁の前に、憧れは憧れのまま消えるはずだった。

 

そうして身の丈にあった生活をし一生を終えていたのだろう。

 

だが、こうして現実にはありえないことが起きている。

 

今、少なくともかつての自分ではありえなかった力がある。

 

そして助けを求める人がいる。

 

──ここで変われなければ未来永劫変わることなんてできない!

 

 

 

足の震えは無視しろ。

 

恐怖など抑えつけろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

──今こそ、憧れを現実にしろ。

 

 

 

 

 

 

パチン、と頭の中で何かが弾けた音がした。

 

 

 

先ほどまで感じていた恐怖はもうなかった。

 

 

 

一歩目を踏み出し、駆ける。

 

恐ろしい速さで景色が流れ、悲鳴のしていたあたりに到着する。

 

たどり着いた先は少し開けた空き地のような場所で、周辺にあるのは木々と少し奥に洞窟があるだけである。しかしそこは凄惨な景色が広がっていた。

投石によるものだろうか、おそらく一撃で頭部を破壊された死体や

矢が何本もささり苦悶の表情を浮かべ絶命している若者とおびただしい量の血。

正しく地獄といっていい状況が広がっていた。

そして目を引くのがもう一つの異形の死体だ。

一体なんだこれは?人ではない。全身の肌が緑で身長が低い........初めて見る化け物が腹を切られ死んでいた。やったのはおそらくそこで死んでいる若者だろう。

 

「これは.....まさかゴブリンか?」

 

いろんなファンタジー世界で登場する魔物の特徴を持った化け物。こんなものはダークソウルでも見たことがない。まさかこの世界はダークソウル の世界ですらないのか?

新たな疑問が生まれるが当然答えはない。

 

ふと思ったよりも冷静な自分に気づき驚く。本来なら泣きわめき胃の中のものをぶちまけるような状況だ。普段なら俺は絶対そうなると断言できる。現実感がなさすぎて感覚が麻痺しているだけか、この体だからか.....なんにせよこの状況ではそれもありがたい。

 

遅かったかと思ったが、死体の中に悲鳴の主であろう女がいないのに気づく。ここで戦闘があったことは間違いないだろう。あたりを見渡すと

血痕が点々と洞窟まで続いているのを見つける。

 

ゴブリンが相手だとするなら多くの創作物よろしく女をさらった可能性がある。まだ生きているかもしれない。彼らの骸をあとで弔うことを誓い血痕を追う。

 

「さあ蛇が出るか鬼が出るか」

 

彼は洞窟に足を踏み入れた。

 

 

**********

 

 

 

 

洞窟に入るとかなり暗かったがどうやらこの体は目も高性能らしく支障なくあたりを見通せた。どうやらいくつか道があるようだが血痕を頼りに先に進むと、ふいに前方で何かが飛んでくるのを感じ、次の瞬間には矢を()()()()()

 

「.......は?」

 

思わず間抜けな声が漏れる。

体が勝手に動いたと思ったら矢を掴んでいたのだ。怖すぎるだろう。

 

まだ状況が理解できずにいると次々と矢が飛んでくるがそれも体が勝手に動き槍で叩き落とす。自動迎撃システムでも搭載しているのだろうかこの体は。

 

よく見ると飛ばしているのはあの緑の化け物──ゴブリン達のようだがそれよりもその奥にある光景を認識し目を見開く。

 

奥に見えるのは洞窟の中でもひらけた場所。そこには一糸まとわぬ姿で転がされている女達がいた。腹に傷を負った黒髪の女性はすでに目から光が失われている。血痕がそこに続いているということは先ほどの悲鳴の主はこの女性だったのだろう。

間に合わなかった。そのことを認識し一瞬力が抜けそうになる。

だがダメだ。ここでへたるわけにはいかない。頭の隅でそう思考し、なんとか踏みとどまる。

 

次いで湧いてきたのは自分への怒り。

あの時悲鳴が聞こえてすぐに走っていれば間に合ったのではないか。そんな傲慢な怒り。だが悩んでいる時間などない。まだ生きている人がいる。ならば助けなくてはならない。

そのためにはあの化け物を殺さなくてはならない。

心が冷えていくのを感じる。

 

攻撃系の奇跡ではダメだ。彼女達まで巻き込んでしまう。

ならばこの槍を使おう。戦い方はわかる。

 

彼は奥に控えていたゴブリンの前まで一瞬で駆け、両手で持った槍を前方に突き刺す。

超人的な膂力をもってゴブリンはなすすべなく串刺しにされる。

 

仲間がやられたことに一瞬遅れて気づいたゴブリンも振り向く途中で背後から串刺しにされる。そのまま他のゴブリンの方向に投げ飛ばされ、それを避けようとゴブリン達の体勢が崩れる。そしてその隙を彼は見逃さない。

 

「GYAAAAAA!」

 

 

 

狭い洞窟内で長大な槍を振り回すなどどれだけの技術を必要とするのか。

だがこの体ならやれる。妙な確信があった。

思うがままに槍を振るう。

形容しがたい悲鳴と、肉が潰れる音とともに、ものの数十秒で

数匹のゴブリンが肉塊になる。

 

ありえない光景を目の当たりにした他のゴブリン達は逃げようと女達をおいて逃げた。いや、逃げてしまった。

彼は女達の存在から広範囲の攻撃を使えなかった。ゴブリン達は女達を盾にして逃げるべきだったのだ。だがゴブリン達には不幸なことに、そして女達や彼には幸運なことにそこまで頭が回るものが群れの中にはいなかった。

 

 

 

──これで躊躇なく攻撃ができる

 

女達を背にして彼は立つ。槍の先端に雷が走る。膨大な魔力が集められ、バチバチと音を立て次第にその光は強くなり、薄暗い洞窟を白く染める。

 

 

 

───その槍の名は〈竜狩りの槍〉。

 

神々の王に仕えし大英雄の魂から作られたまごうことなき神代の武器。

 

 

数多の不死の竜を屠ってきた雷の神器。

 

 

 

その一撃が、今放たれた。

 

 

 




オーバーキル!!

もっとギャグっぽい感じになるはずだったのに重くなった....
はよ原作キャラと絡ませたい

主人公の技などはいろいろゲームよりスケールがでかくなってます。
フレイバーテキストのスケールに合わせているイメージです。
主人公は使えないけどもし墓王の大剣舞とか使ったらヤバそうですね。

主人公のビルドは筋力30技量50 信仰が50でほかは持久力と体力にちょこちょこ降ってるイメージです。 作者自身は脳筋だったので筋力と信仰だけが50を超えてるのですが技量武器もかっこいいの多いんですよね。

完コス中に飛ばされたので主人公は盾がないです。所持していたはずのアイテムも出せなくなってるちょいハードモード。 頑張れ主人公。

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