ドラゴンスレイヤー装備でゴブリンスレイヤーの世界に転移しました 作:土星土産
感想がこんなに嬉しいものだと知りませんでした。
本当にありがとうございます。
朝日を体に浴び、目を覚ます。
寝ている間に汗を随分掻いたようで体に張り付く服が気持ち悪い。
あまり良い目覚めとは言えないだろう。
今日は随分と懐かしい夢を見た。最近ではあまり見なくなっていたもう随分と昔の記憶。
北の大迷宮に挑むよりもさらに前。
神殿に引きこもる原因となった冒険。
少しでも困っている人たちの力になれれば、
そんな思いで冒険者になった。
だがその初めての冒険で私は失敗した。
最下級のモンスターであるゴブリンに私は負け、目の光すら失った。
私があそこにとらわれてどれくらいの日数が経っていたのかはわからない。
いつ終わるともしれない拷問のような時間は私の精神を削り取っていった。
ゴブリン達は泣き叫ぶ私を何度も陵辱した。
思い出すのも忌まわしい記憶.....。
だがそんな物語にもヒーローが存在する。
あの日私は彼に出会った。
♦︎
その日もゴブリン達がまた女の子を連れてきた。
その子はすでに負傷していて遠目からでもそう長くはないように思えた。
そんな状態でありながらゴブリン達は気にした様子もなく腰を振っている。
もうなんども見た光景だがそれでも慣れることなどない。
神に祈りを捧げる。そして願う。誰でもいい、
誰かこの地獄から救ってくれ、と...
そしてその願いは果たされた。
美しく、強大な雷の光が視界いっぱいに広がる。
眩い雷光が解き放たれ、断末魔をあげる暇もなく小鬼達が絶命する。
あの醜いゴブリン達はなすすべなく蹂躙された。
あの日私は彼に何を見たのだろう。
救世主、それも正しいだろう。
彼は間違いなく英雄であり救世主だった。
だがそれだけではない。
そうだ、私はあの日からずっと──
「クシュン!」
自分のくしゃみで思考が打ち切られる。どうやら思考に没頭していたようだ。
汗で濡れた服を着たままでは風邪を引いてしまう。
着替えるとしよう。
先ほどまでの暗い雰囲気はもうない。
「竜狩りの騎士様....」
何せ今日は彼と会える日なのだから。
*************
どうも竜狩りの騎士です。
なんかこれ自分で名乗るの恥ずかしいな。
本当の名前思い出せなくなったからしょうがないけど。
なにそれ怖い。
こっちの世界に来てから10年以上経ったし流石にもう夢かどうかなんて疑ってない。
俺は異世界に転移した。
しかも転移した直後はわかってなかったんだけど最初に助け出した女の子がね.....剣の乙女様(少女)でした。
何でだよ!!
ダークソウル の世界じゃなくてゴブスレの世界ってっ!
関係ないじゃん。
ゴブスレとかアニメ見たくらいだし原作知識なんてないようなもんだ。
ほぼ何も知らないよ!
ていうかそもそも原作通りに進んでないんじゃないか。
だってデーモンやばいのいたし。
あれダークソウル の世界の住民でしょ。混沌属性だからいいの?
あと一番やばかったのがあの「黒竜」が攻めてきたとき。
ダークソウルのボスキャラなんて大体トラウマ製造機だしその時は流石に死ぬかと思った。
多分10回やったら9回は確実に死んでた。
勝てたのは本当に奇跡だね。
1人じゃまず瞬殺されてた。何だよあの化け物。ゲームでもやばかったけどさ。
仲間の存在のありがたさに泣きそうになったよ。
ゲームじゃ基本ソロだったし。
まあ最近はみんな忙しいみたいでなんかソロばっかな気がするけど.......
俺嫌われてないよね?
ゲームとの違いといえば
アイテムとかたくさん所持してたはずなんだけどほとんどは念じてみても出せそうになかった。あれば色々と有用なアイテム多かったのに残念だ。
基本的に武具は全滅。最初から装備してた竜狩り装備一式とタリスマンだけ。
指輪だけは袋に入っててなんとか取り出せたけど。
プレイヤーの心強い味方の盾もないってどういうことなの......
消費系アイテムはもう全滅でした。篝火ないし要するにエスト瓶もない!
ルナティックモードかな?
回復は奇跡か、もしくは仲間に頼ってる状態です。仲間ってあったけえなあ。
そもそも篝火がないから死んだらどうなるのかも予想がつかないんだよね。
だから復活はないものと考えて生きてる。
死に覚えなんてできるわけがない。怖いし。
あとふつうに喋ると対人でテンパるからゲームみたいな騎士ロールプレイしてたら習慣付いて
ふつうに喋れなくなった。
この体謎すぎるよ......まあ割と助かってるからいいけど。
まあそんなこんなでいま俺は冒険者序列2位の金等級として生きてる。
一瞬だけ騎士団にも居たんだけど。
一番上の白金等級は伝説の勇者らしいので実質最上級といっていいだろう。
ただね.....その伝説の勇者の子見たんだけどね。あれやばいわ。
勝てないわ。なんだあの火力。最初なんか手ほどきとか言って王様の命令で先生やらされたけど一瞬で追い抜かれていったよ。
すごい娘もいるねほんと。世界は広い。
とかなんとか色々言ってるうちに目的地に到着。
王都の一角にあるオサレなカフェ。そこで俺は今日大事な仲間である
剣の乙女ちゃんと会う約束をしている。
木の扉を開け店に入ると奥の席にすでに彼女が座っているのを見つける。
待たせるわけにもいかないので早足でそこまで行く。
「すまない。待たせたな」
「いいえ、わたくしが少し早めにきてしまっただけですわ。どうぞお座りになってください」
謝意を述べ席に座る。
「貴公とこうして落ち着いて話すのも久しぶりか」
「あら、私は何度かお誘いしましたのに貴方は王都に帰ってきたと思ったらすぐどこかへ出てしまうのですもの」
「それは........すまなかった」
「ふふ.....冗談ですわ。 貴方が人々のために身を削って戦っていることを知らない者はいませんから...。貴方の献身を疑うものなどこの国にはいないでしょう。でも........覚えておいてください。たまには立ち止まって休むことも大事ですわ」
「ああ.....ありがとう。よく覚えておこう」
久しぶりの会話で内心テンションだだあがりだ。舌がよく回る。え?お前全然喋ってねえだろって?
失礼な。これでも喋ってる方だ。ていうか最近はソロ行動が多くてそもそもあんま言葉を口にしてないわ。切ない.......。
しかし、 “献身” か.........
俺はそんな言葉を使われるような出来た人間じゃない。
今でもあの日助けられなかった女の子の顔が忘れられない。
全てを救えるなんて思い上がってはいないけど
力を持ってこの世界にきたのには意味があるはずだと思いたかった。
誰かを助けたいと思った。だから頑張れた。
だがこの10年どれだけの命が手からこぼれ落ちただろう。罪悪感を振り払うために槍を振るう。戦いを続けるのは何も考えなくて済むからだ。
俺は───
........といかんいかん思考が暗くなってる。俺の悪い癖だ。
乙女ちゃんのおっぱいでも見て癒されよう。
──しかし本当に凶悪なおっぱいだ。これはすごい。
フルフェイスの兜をかぶっていてよかったと心から思う。
ガン見してもバレないからね!
「────ですか?」
おっと おっぱいを見すぎて上の空になっていた。
バレるとまずいのでつい反射的に返事をしてしまった。
「......ああ」
「.............やはり貴方は変わりませんね。」
どうやらおっぱいを見ていたのはばれなかったようでなにより。
まあバレてるのかもしれないけど。
...........しかし“休むことも大事”か、たまには王都でゆっくりしてみるのも良いかもな、なん考えてみる。
そして次の日、ギルドから俺の辺境出張が言い渡された。
あれぇ?
*************オマケ*************
「貴公とこうして落ち着いて話すのも久しぶりか」
なんて彼が口にする。低くて落ち着いた声だ。
この声を聞くと安心する。
しかし久しぶりなのは彼が、強い魔物が出たと知らせが入るとすぐ討伐に向かってしまうからだ。そう思ってつい意地悪を言ってしまった。
彼は自分が戦うことで助かる人が居るなら、じっとしていることなんてできない人だ。それを私は知っている。何より私はそんな彼に助けられたのだから。
しかしそんな彼を見ているとどうしても不安になってしまうのだ。
彼はまごうことなき英雄だ。それはその力だけでなく精神のあり方も。
故にどうしても自分を、他人より下に置いてしまっている。
瀕死の怪我を負ったことだって一度や二度じゃない。
彼が居なくなるのが怖い。本当はずっとそばにいてほしい。
しかしそれを口にしてしまっては彼を悩ませるだけだとわかっている。
だからたまには休んで欲しいとしか言えなかった。
わかっている。そんなことを言っても彼は立ち止まらないと。
「もう知っていると思いますが辺境に強大なデーモンが出現したとの報告がありました 」
彼のことだ、すでに情報を手にしているはず。
そして彼は戦いに行くでしょう。それもいつものように一人で。
かつては何度も共に戦ったが彼は一人でなんでも出来てしまう人だ。
本当に私たちが彼に必要なのか、不安になる。
金等級はそれぞれが忙しく
最近の彼は魔物の討伐に一人で臨むことがほとんどだ。
それはしょうがないことなのかもしれない。
生半可な実力では彼の足を引っ張るだけになってしまう。
そして彼は仲間を見捨てることなどできない以上それは致命的だ。
だから彼は一人で全てを背負う。
私は王都を離れるわけにはいかない。
だけど、それでも彼がもしも、助力を願うなら
私は全てを放ってでも付いて行ってしまう。付いて行きたくなってしまう。
「今回も一人で向かうのですか?」
答えのわかっている質問をする。
「......ああ」
そうだ。彼はそういう人なのだ。初めから分かっていたこと。
決して私に負担をかけることは言わない。言ってくれない。
「.............やはり貴方は変わりませんね」
全てを彼が背負う必要などないのだと言いたい。
誰よりも幸せになってほしいと思う。
しかしそういう人だからこそ
──私はあの日からずっと、どうしようもなく想い焦がれているのだ。
乙女さんまじ乙女
ギルドや方々に話を通しておいてくれるくらい
有能さんです。