一通の手紙が届いた。
それは朝起きた時、体の上に微かな重みを感じたがためにベッドの上を見た時だった。
その、横長の一般的に世間が思い浮かべるような形をしている、一見なんの変哲もないその手紙は、送り主のありとあらゆる痕跡を消し去ってあるという異常性を孕んでいた。まるで手紙が自身で自信を書き、送ったのだと主張してるかのようだった。
そしてその中身もまた奇妙で、信憑性に乏しいものだった。
拝啓
世を隠れ忍ぶ神秘の担い手の皆さん
此度は聖杯戦争の開催が決定し、その参加者の一人として貴方様が御抽選なされたことをお祝い申し上げます。
おめでとうございます。
そうして始まる手紙の文面は礼儀正しい礼儀知らずと形容するかのようなものだった。私はこの時点で、手紙そのものの異常性を鑑みても、ある程度の胡散臭を感じていた。そして決定的だったのは、
この儀式は日本の東京にて行いたいと存じ差し上げます。
その一言だった。
東京という、神秘が薄まりつつあるこの時代において、先進国の、さらにその首都で聖杯戦争を開催すると、これは言うのだ。さらにいえば
追加で加えるなら、魔術協会で私などを遥かに上回る専門家が各地の霊脈の監視を行なっている。本当に聖杯戦争が起きるのならば彼らが事前に兆候を察知し、近場の魔術師である私に何かしらの連絡がある筈だ。
いや、そうか、これはきっと魔術協会の陰湿ないたずらに違いない。
奴らは三流の私を貶している、嘲笑っているのだ。
そう思い、手紙の存在を忘れるべく、中身をこれ以上読むことなく有象無象が横たわっている机の上に放り投げ、その日のルーティンを始めるのだった。
しかし、次の日の同じく目覚めの時、この考えは否定せざるを得ない状況が起きたのだった。
すなわち令呪の発現。
気づいたのは右手の甲に昨日とはまた別の違和感を感じ、寝ぼけたまま右手を顔の上にゆっくりと揺らした時だった。
驚きと共に起き上がり、その勢いのまま足に頭をぶつけたのは内緒の話だ。
見ただけでわかった、本物の令呪であった。それは英霊を使役するための道具にして資格、聖杯戦争の参加者が必ず所有するものであった。
私たちの悲願が、魔術師としての念願が遂に叶う。
興奮で魔術回路が回り始め、その勢いのまま、私は二度寝したのだった。
こうして私はこの不思議な聖杯戦争の参加者となったのだ。
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