──感じたのは違和感だった。
拙いような微かな違和感だった。
どうして?よりも先になんで?が来る様な、微かな違和感。それは体感にして僅か数秒程度でその違和感を噛み締めながら──、
1人の青年は呆然と天井を見上げていた──。
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最初に映り込んできたのは見覚えのある景色だった。ベットと物置場所がある前世界のホテルの一室のような場所──。
──そこは間違えなく昨夜泊まった教会の一室だった。
「……なんで。」
そんな疑問が漏れる。訳が、分からなかった。先程まで広場の噴水にいた筈なのに何故教会にいるのだろうか。それに自分は──、
「ぅ゛……。」
途端に思い出し思わずその場に項垂れる。あんな化け物に出会ったというのに、何故生きているのだろうか。
それに──、と自分の左を見やる。跡形もなく消し飛んだ筈の左がしっかりと元通りに、傷一つなく復活していた。
そんな意味の分からない状況を打破しようと、
「とりあえず…情報収集と行きますか…。」
──現状の情報収集を始めることとする。
少なくとも自分は生きてこの世界にいるのだ。左の復活は治癒術の一種かもしれない。何よりここは自分が先程までいた教会だ。ならば当然彼女もいる筈だ、と勢いに身を任せドアを開ける。
ギィーと音がし、広々とした廊下が淡々と続いていた。
廊下を歩いていると一室に明かりが灯っていた。きっとここにいるのだろう、とノックをするとドア越しに返答が返ってきた。
「どうしたんですか?こんな時間に。」
「いや、どうしたも何も……その、大丈夫でした?」
「──はい?」
何の事だと言わんばかりに疑問視されてしまい思わずどう述べたらいいのか分からなくなり困惑する。
「いや、その…あの巨人どうなったのかなって。」
「───。」
「あ、や、もしかして忙しい感じ?」
「──あの。」
「?」
「──あの巨人って何ですか?」
「───。」
あの悲鳴や叫び声、建物の崩壊する音が聞こえてなかったのだろうか。──ならば何故自分はこの場にいるのだろうか。
「あの…俺を治療して運んでくれたのって。」
と聞いてみる。そんな質問に対しての彼女の返答は──、
「──治療も何もさっき部屋に尋ねて別れたばっかりじゃないですか。」
──訳が分からないといった疑問だった。
「───。」
「──何を仰ってるか分かりませんが早く寝にならないと明日のお祈りに遅れてしまいますよ、うちは少し早くにしますからね。」
と注意を促すように告げる。
そんな話の噛み合わない状況に対して微かに漏れた声は、
「──は?」
理解のできないといった疑問だった。
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「……さっぱり意味が分からん。」
そうボヤきながら先程の自室のベットにうつ伏せになっていた。全くといって会話が通じなかった。自分がした質問に対しては全て疑問視され、おまけに早く寝ろとすら言われてしまった。
そもそもこの状況でお祈りの話を持ってきた意味が分からないが、それよりも意味が分からない事が一つあった。
「さっき部屋を尋ねて別れたばっかり──。」
自分が彼女に会ったのは最初に教会に立ち寄った時と、
──部屋でお祈りを伝えに来た時。
まさかとは思うが、と自分で自分の事が疑心暗鬼になってゆく。ただ先程の話を聞いた限りこれは──、
「──昨日の夜を繰り返してる?のか?」
そんな、あまりにも納得のいかない結論だった──。
「ただ、もし繰り返してるのなら色々と辻褄は合うし何よりも──。」
と右下の四角いマークを押す。
途端、文字が浮かび上がる。
「──アビリティ、セーブ・ロード。これが関係してるとしか思えない……。」
上にアビリティと書いてあり下にはセーブとロードとしか書かれていない拙い文字を指先でなぞりながら考え込む。
「仮に自分がロードしたとしたらセーブ場所は、昨夜自分がセーブしたここからになる筈。ただ──。」
ずっと冗談交じりにこの能力を取り扱っていたのでいざとなりと幾つかの疑問点があった。
「セーブ・ロード出来る個数(回数)に限りはあるのか?それにこんな能力、汎用性高すぎないか……?何かしらのデメリットがある可能性だって。」
と、様々な憶測を立てる。
折角の唯一無二の力だ。他に何も与えられていない自分が使わない訳がない。それに──、
「これなら彼女の道を支えることだって──。」
この場にいない女性の姿を思い浮かべながら何かと理不尽なこの世界に価値を見に出していた──。
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この力に関して分かった事がある。
息を切らしながら先程までの結論を結び付けていた。まぁ、簡潔にまとめれば──、
「説明が無さすぎる!!」
この一言に尽きる。
アビリティ、セーブ・ロードとしか書かれていないのだ。何かと説明する事がある筈だろ…。とため息をつきながらゼェゼェと息を切らしていた。
──場所は教会を離れ中央広場の噴水へと向かっていた。無論、能力の活用の為である。繰り返してるという事は間違えなく明日の朝方にはあの化け物が必ず現れるのだ。
ならばその対策をしてしまえばいい。そう意気込みながら噴水の辺りを見渡し場所確認をする。
「確かあっちから悲鳴は聞こえてた筈だよな。なら、ここに戦力を集めてしまえば──。」
と策を練り始める。基本的に逃げるという選択肢は真っ先に捨てていた。折角こんな能力を手にしたのだ。自分の目的の為にも必要なのだから思う存分活用しようと試みる。
「とりあえずはこの街にいる人を避難させなくちゃいけない。そこが最大の問題だな…。巨人退治のほうはミアに報せたらどうにかなる筈だ。」
と、着々と問題を解決してゆく。ミアに物事を投げやるのは男として情けない話だが勇者と謳われている彼女なら適任な筈だ。ならば自分は自分のやれる事を──、と近くの街並みを見渡しながら小さくそう呟いていた。
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「──こんな夜中になんの用ですか?」
イラついた様に声を荒らげるのが分かった。眼前にいるのは狼の姿をした人、所謂亜人と言うやつだ。その迫力のある声に咄嗟に身をすくめながら小声で要件を伝えようとするも──、
「明日の朝方に巨人が現れるんです…。だから避難をお願いしま……」
「馬鹿にしてんのか!!」
と信じてもらえる事はなかった。
それでも避難をお願いしようと必死に伝えようとする。
「本当なんです……今すぐに。。」
「──あのなぁ、お前さんは知らないかも知れないが巨人ってんのは山奥の辺鄙な所に住んでいるのが基本だ。こんな整備もろくにされていない街に来る訳がないだろ…。」
「───。」
「分かったらとっとと出ていけ。これ以上喚くなら衛兵を呼ぶからな。」
と言われ追い出されてしまった。言われるがままに追い出され先程の噴水で1人佇む。
「くそ……来るってわかってるのに対処の一つすらままならないなんて。なんで伝わらないんだよ。」
愚痴を露わにしながら思わず項垂れる。
どうしようと悩んでいるとある事に気付く。
──問題発生だ。よくよく考えれば分かる事なのだが巨人の対処方法の一つ……
「彼女…ミアの場所が分からねぇ。」
そんな最大の問題に気付くのだった。
「せめて被害が出る前に彼女に巨人を対処してもらえたらどうにかなると思ったんだが…不味いな。」
現状は最悪だ。どうしようかと悩んでいるとこちらに歩いてくる衛兵を見つけた。どうやら先程避難を促した誰かがまじに通報したらしい……。
「まじかよ……」
呆れたかのように愚痴を零す。
そんな自分の姿に気付いたのか衛兵がこちらに向かって小走りに近付いてきた。
その事に対し、ここで時間を割いてる暇はないと咄嗟に思ったのか気付けば街並みに走り出していた──。
「何やってんだ、俺。」
走りながら自分の行動に疑問を浮かべる。しかし走り出してしまったのなら仕方がない。それに気付いたのか衛兵もこちらに向かって疾走してくる。
「やばいやばいやばい。とにかく撒かないと。」
と焦りを露わにしながら入り組んだ道をひたすらに進んでゆく。だいぶ距離が空いた筈だ。と振り返ってみるとだいぶ距離の空いた所にに衛兵がいた。とりあえずはなんとかなりそうだ。
に、しても──、
「なんで逃げ出したんだ……俺。」
そんな疑問を口にする。
時間を無駄にしたくないのは分かるが衛兵の姿を見た瞬間に逃げるべきだと本能が察していた。何故なのかは分からないが今は現状の打破が最善だ。
そう思い再び後ろを見やると──、
「そこの男を捕まえてください!」
──そう衛兵が叫んだのが分かった。
そんな声に反応する様に──、
「──承知した。」
──瞬間、短い返事と、全身を抑え込まれるかの様な衝撃が身体中に走った。
「──あ゛?」
──疑問だった。訳が分からない疑問。
分かってはいけない疑問。分かり用のない疑問。世界が反転し、息を切らしながらその場に悶え倒れる。
「なっ……あ゛…??」
「安心しろ峰打ちだ。力だって抑えてあるさ。」
そんな声が聞こえ、咄嗟に上を見上げる。
背丈の高く、真っ赤な髪が特徴な女性だった。鎧を纏い、剣を鞘に収めているその姿は疑いようもなく騎士だった。
「───。」
思いもよらない参入に倒れ込みながら息を整える。非常に不味い状況だ。後ろから衛兵も近付いてきておりことは一刻を争っていた。
「──これは。」
──使うべきなのではないか?
そんな疑問が全身を巡っていた。ここから捕まって色々と話し合っている間に巨人が訪れる事になってしまうだろう。
それに、この騎士の後ろにいるあの見覚えのある姿は──、
丁度、自分が探していた──、
そう意識するよりも前に手を四角いマークに翳す。途端、文字が浮かび上がる──。アビリティと上に書かれ、下にはセーブ・ロードだけのシンプルな文字を見つめロードを押そうと手を翳す──。
世界が変わり、自分は再び教会から。
──始まることはなかった。
「──な…んで。」
意味が、分からなかった。自分の見解が正しければまた教会に戻り世界をやり直せる筈なのだ。──その能力が、使えなかった。
「なんで、なんで、なんでッ。」
何故使えないのか考える暇もなく衛兵がすぐそこまで追いついてきた。やばいやばいやばい。
慌てながら必死に身体を動かしふらつきながらも細い路地道をひたすらに辿ってゆく。
「おい、まてッ!!」
そんな風に衛兵が声を荒らげる。今はそんな事に構っている暇なんてなかった。ひたすらに疑問が全身を巡りもがきながら道を進むのに精一杯だった。
「なんで、使えないんだ──。」
絶対的である筈の自身の力を使うことが出来ずにひたすらに青年は愕然としていた──。
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「くそッ、逃がしたか。」
舌打ちをするかのように先程の衛兵自身の不甲斐なさを悔やんでいた。
「大丈夫です。私が追います。」
とその男に先程の女性は告げる。
「そんな……エメ様に頼むなんて悪いです。。今回は自分の責任ですので──。」
「いえ、それなら私にも逃がしたという責任があります。丁度暇を持て余していますしね。」
「──泊まる宿がないってハッキリ言えばいいのに。」
──途端、そんな声が聞こえエメと呼ばれた女性は頬を赤める。
「そんな事いえませんよ……。宿すら泊まれずにどうしようとウロウロしていただけなんて…。」
と困り果てたかのようにこの現状を告発する。
全部言ってるから……とツッコまなかった自分を褒めて欲しいものだ──と、1人の女性が前に出てくる。
白と桃色を特徴とした服装に、肩までかかった薄桃色の髪の毛、加えて眩しいとすら言える美貌の持ち主だった。
「───。」
「──どうかしました?」
「いや、さっきの人…昼に会った人となんか似てるような気がして……。」
「あぁ、そういえば言ってましたね。私が買い出しにいってる最中に妙な男に出会ったって。」
「妙とまでは言ってないけどね……。まぁでも見間違えかな。」
と疑問を疎かにする。実際暗闇で少ししか確認出来なかったし、彼なら自分が渡したお金で宿を泊まっている筈だ。なんの心配はない、と可能性を切り捨てる。
「ともかく、私が身柄を確保してきます。ミア様はここで待っていてください。」
「……了解。」
またやった、と内心で呟くがもう遅い、流れるように衛兵の男性が──、
「──ミア様!?!?」
眼前にいる勇者の名前を挙げていた──。
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全身に汗を掻きながら青年はひたすらに走っていた。幾ら走ろうとも気が休まることはなく、気持ちが落ち着く事もなかった。脳内では繰り返し同じ疑問が回っていた。
──どうして、使えないのか。
何か使う為のきっかけ、トリガーが必要なのか、回数に制限があるのか、はたまたあるいは──、と思いつく限りの可能性を挙げてゆく。折角この世界で得た唯一の能力が唐突にガラクタの様に思えた。
「──とにかく、今はこの状況に専念だ。」
訳の分からない理由で逃げたし、結果として悶えるほどの苦しみを与えられた身体は万全と言うには程遠かった。腹からの痛みは尋常じゃなく今も少しでも意識してしまえば気絶してしまいそうな程の激痛だった。
一歩一歩を噛み締めるかのように必死に歩いていた。吐き気を抑えるかのように、壁に手を当てながら必死に──、
──途端、音がした。
この世界に来てから何かと音に絶望しているような気がする…とどうでもいい解釈を含め上を見上げる。
屋根に、人がいた。それも先程いきなり峰打ちをくらわしてきたあの理不尽な騎士が──。
「……ッそだろ。?」
もう追いついてきたというよりその超人的としか言えない身体能力にただただ愕然とする。今どき屋根をつたりながら追いつくなんて身体能力0の自分からしたらただの化け物としか思えなかった。
そのまま女性は自分を追い抜き、その場に飛び降りる。
「──大人しく連行を要請しよう。……何やったかは知らないけどな。」
と眼前の騎士が連行を求める。
それに負けじと青年も息を整えながら──、
「色々と理不尽すぎるだろッツ!この世界!!」
と愚痴にまみれた言葉を口にする。
「──?何を言っているか分からないがこちらの要件が呑み込めないのは分かった。なら、」
「───。」
「──強制的に連行するしかないな。」
そう呟いた途端、眼前の女性が瞬間的に消えたかのような錯覚に陥る。
「──安心しろ、気絶で済ませる。」
そんな声と同時に思いっきり全身を殴られたかのような感覚を味わう。
「──あ゛ぁあ゛あ゛ッ!?」
──痛みが全身に込み上げ、悲鳴をあげながら吐くのを必死に抑え込む。明らかに峰打ちなんてレベルじゃなかった。
眼前の女性が近付いてくる。やばいやばいやばいやばいやばいやばい。。。痛みに必死に抗いたがら焦りを露わにしてゆく。何故自分ばかりと自分を怨み──、
最後に青年は微かな希望を求めながら──、
──一つのマークを押すのだった。
繰り返しできる筈の能力……ロード。もし、もう一度世界をやり直すことが出来るなら──と、微かな期待と希望を胸にしながら──、
──意識が途絶えたのが分かった。
⚠︎ ⚠︎ ⚠︎ ⚠︎ ⚠︎ ⚠︎ ⚠︎ ⚠︎ ⚠︎ ⚠︎ ⚠︎ ⚠︎ ⚠︎ ⚠︎ ⚠︎ ⚠︎
「──なんだ…?」
感じていたのは違和感だった。
拙いような微かな違和感だった。
どうして?よりも先になんで?が来るかの様な微かな──、
──また、世界が終わるのかと、また、世界が消えてしまうのかと、嘆くように、悲しむように、蔑むように、その違和感を口にしていた──。
何故こんな気持ちになるのか、何故、こうならなければいけなかったのか、疑問を噛み締め、その疑問を踏み締めるかのように──、
再び一つの術式が発動した──。
──°¿¿✿¿♪⇢ フルフィルメント・ロード。
世界は形を崩し、また別の形へと──。