悩むべき点は多々とある。疑わしい点も。それでも私は傍付きとして成さなければならないのだ。民を守る為、そして何より──、
──私は貴方にまだ名乗れてすらいないのだから。
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「──で、肝心の討伐なんだけど具体的に作戦みたいなのってあるの?」
そんな素朴な疑問を呟きながら真夜中の道端を灯りだけを頼りに歩いていた。正確には付いていってるだけなのだが。
「取り敢えずは戦力確保かな。幾ら強かったとしても三人だけで〝一つ目〟に挑むのは無謀だしね。」
──戦力確保、その提案は賛成だ。
数で叩いた方が楽だし策略が練りやすい。無論その案自体は二回目の繰り返し時に考えていたが信憑性が無いと判断してやめていた。
きっと住人の反応からして碌に相手してもらえないだろう。その分ミアなら安心な筈だ。勇者を謳われ、沢山の人から慕われてる所を実際に目撃もしたのだから。ただ、その策に少しだけ不安が募っていた。それは先程彼女が述べた──、
「あの……自分も戦うことになっている気がするのですが。」
──それは呆気なく為す術もなく殺されかけた自分が戦力に入っている事だった。
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少し歩くと大きな門といかにも、と言える豪華な屋敷が見えてきた。装飾品だけなら教会以上だろう。そんな豪邸に圧巻していると歩くやいなや、
「──こんな時間に何用ですか?」
門に着くなり2人の衛兵が先行こうとするミアを止めていた。警備担当だからなのだろうか、必然性に強面の人が選ばれているような気がした。
そんな2人に止められ真っ先に前に出たのは全身を鎧で纏っている赤髪が特徴なエメだ。
「急用だ、ネイメスは何処にいる。」
「エメ様!?何故ここに……。えと、ネイメスは今別国の命令でいません。それより帰ってきてるなら早く行ってくださいよ。」
「任務中でな。生憎この街も直ぐに出ようと思っていた所だ。で、ネイメスがいないとなると直ぐに出れる戦力はいるのか?」
「いえ、こんな辺鄙な街だから事が起こらないものと思われ近衛兵おろか白騎士団諸々いません。唯一戦力となれるのは直属していない騎士だけになりますが──。」
「それで構わない。中にいるのか?」
「えぇ、ご案内しますよ。」
そう言うと衛兵は門を開け中に案内を促す。一連の流れを見た限りだがどうやらエメもかなりの腕前らしい。緊急時の対応も手馴れた仕草で対処してゆく。
そんな風に頭の中で整理をしているとエメがミアにか細い声で耳打ちをしていた。
「──という事なのでミア様は先に巨人が出現する場所に向かっておいて下さい。」
会話の前方は聞こえなかったが多分安否を願うものだろう。そう思っているとエメはこちらを向きながら、
「もしもミア様に何かあってみろ。少なくとも首はないと思えよ。」
ギロリと睨みつけるように目を細めながら脅しをかけてきた。
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「──これで良し、と。」
そう呟きながら地面に術式と呼ばれる呪文のようなものを施してゆく。術が展開された地面はよく分からない紋章のようなものが施されているが、彼女曰く踏んだ瞬間に四肢が爆散する威力の爆発が起こるらしい。なんとも恐ろしい。
場所は街を囲う市門の外側。巨人が出現した際に見た場所の近くだった。つまりはここに罠をかけてダメージを与える策らしい。
術式を組むにはには思っている以上に集中しなければいけないらしいのだが気になり質問する。
「その、集中してる所悪いんだけど巨人が術式を避けることとかないの?」
こんなに時間を割いて組んでいるのにも関わらず巨人が避けてしまえば元も子も無いのではないかと思う。
「──それなら大丈夫よ。二つ目と違って一つ目は知能を持っていないの。知能もなしにただただひたすらに人を殺し、街を根絶やしにするその姿は文字通り異形の存在と呼ぶのが等しいわ。」
「───。」
知能のない、操り人形。ただ虐殺だけをする為だけのその存在に気付けば寒気がしていた。
気味の悪い嫌な後味を覚え、話題を変えようと
先程から気になっていた質問をする。
「そ、その、ミアはさ。術式とか組んでるしさ、やっぱ魔術系……が得意なのか?」
この世界に魔法という概念があるのかは分からないが少なくとも術式があるなら魔術のようなものはあるのだろう。そんな些細な質問の回答を待っていると少し間が空いた後、
「──魔術も多少は使えるけど私の場合は主に剣術が長けてるかな。アビリティやスキルも攻撃向きなのが大きいしね。」
「───。」
またしても沈黙が続いてしまうが今回のは寧ろ驚きを隠せをいう方が難しかった。それは即ち今さっき彼女が述べた、
──アビリティ、それにスキルという概念が他者にもあるという事だった。
アビリティに関してはなんとなく予想していた。この理不尽すぎる世界で自分だけがアビリティ、即ち特殊な能力を使える訳がないからだ。
ただ問題はもう1つの能力──、スキル。
RPG物の世界では誰もが憧れる超強力必殺技だ。炎を繰り出したり風邪を操ったり地面を割いたりとまさに憧れとも呼べる能力の集合体の愛称のようなものだ。
無論、そのスキルという単語に興味が惹かれない訳もなく──、
「そのスキルって誰でも使えたりするの!?」
食いつくようにスキルについて知ろうとし、
「え、えぇ……多分。」
急に盛り上がった青年の質問に引き気味になりながら答えたのだった。
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「また、やらかした……。」
近くのベンチに腰をかけながらはぁ、とため息をつく。また勝手に先走る悪い癖が出てしまったと先程の自分の行動を悔やむ。
あれから自分の失態に気付きいち早く言い訳を作りあの場を離れたのは自分なりによくやったとは思うがこの世界に来てから定期的にやらかしてしまう自分につくづくうんざりする。。
とにかく今は気持ちを落ち着けまた今度彼女に聞こうと試みる。
「──に、してもこんだけ並んだらやっぱり圧巻だよな。」
自分の中での話題を変えようと眼前の光景を見やりながらそう告げる。場所は市門の中側、つまりは街内だ。そこから門に向かって30近くの騎士が整列し歩いていた。
「エメの方は上手くやってくれたっぽいな。」
日が昇り始め辺りが明るくなってきたせいか、街の人達はなんだなんだと言わんばかりに騎士達の行き先を見やっていた。
そんな住人達を宥めるように衛兵達は奮闘していた。その中には自分を追いかけ回したあの衛兵もいて、住人達の困惑を抑えられずに慌てている姿が面白く思わず吹き出してしまう。
そんな姿を見ていると見覚えのある赤髪の騎士──、エメがこちらにやってきた。
「準備が出来次第討伐を開始するつもりだ。ミア様はどこに?」
「ミアなら術式を施しに門外にいるよ。それよりも騎士達の説得助かった、ありがとう。」
「ミア様だ、何度言ったら分かる。私を呼び捨てるなら構わないがミア様を呼び捨てにするのは礼がなってないぞ。さっきも言ったが殺されてもおかしくないほどだ。」
「そこまで大袈裟にならなくても……。」
「……とにかく誰がどこで聞いてるかも分からない。それこそ勇者様という存在を信仰している所だってある。そのためにも様ずけは身分を示す意味でも欠かせないものなんだよ。」
そんな風に言われ、仕方なく引き下がる。なんとなく人を様ずけや目上の敬称で呼べないのは昔からだった。
「──ところでなんだが今から武器や防具の備品を取りに行こうと思っていてな。ちょうど良かった、少し手伝ってくれないか?」
と、手伝いを要請される。特にする事もないので少しでも力になればと思い、
「別にいいけど……力ないよ?俺。」
とことん戦力になれない事を悟ったのであった。
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「──ここが武器庫だ。」
やけに年季の入った木造で作られた倉庫を見やる。倉庫自体がやけに小さく、備品を管理に足りるのか気になり質問をする。
「なぁ、ほんとにここって──。」
──そんな質問をしようとした瞬間、額に大きな衝撃を受けた。脳がかち割られるかのような痛みに悶絶し、その場に項垂れる。
あまりに咄嗟すぎて何が起きたかが分からなかった。ただ痛いという感覚が全身を縛り、全身に冷や汗をかいていた。
まさかあの巨人が現れてまた自分が殺されかけたのか、なんて考えていたがどうやら違うらしい。
──眼前に武器を構えたエメの姿があった。
睨むような、蔑むような目をしながら両手剣を構えこちらの様子を伺っていた。
──意味が、分からなかった。前回ならまだしも今回は峰打ちを食らわされる要因が分からなかった。
「な……ん、で。」
「───。」
「な、んで──。」
「───。」
押し問答のように言葉を繰り返す。訳が分からない。なんでこうならなきゃいけないのかその理由が分からなかった。それにあの目の理解も。そこまで睨まれるような事をした覚えはない筈だ。そんな状態のまま押し問答が続くと思われた瞬間、彼女が口を開いた。
「──今回の騒動、お前関係者だろ。」
「──は?」
関係者、とそう告げた彼女の真意が理解できずに疑問を口に乗せる。何があって自分が関係者なんて立場になるのか。まるで夢でも見ているかのようだった。
「惚けるな、ゴミ人徳者が。何を語るかと思いきやこの後に及んでまだ惚けるつもりか?」
「──何を根拠に……。」
「第一にお前は事に詳しすぎる。何の理由もなしに何故巨人の出現時間と出現場所を知っている?それにたまたま出会ったあの瞬間、私はお前が待ち伏せているようにも見えた。」
「───。」
そう、ありとあらゆる面で今回はガバガバな作だったのだ。ロード、つまりは繰り返しを信じて貰えないと考えている以上巨人出現の説明できる筈もなかった。
失態、完全に失態だ。
今回ばかりは自分が悪いとしか言いようがなかった。状況だけを見て、肝心の中身を省いていた。こればっかりは仕方がないとしか言えなかった。──が、
「──答えろ、お前は関係者だろ?何が目的だ?」
「ん、な訳がねぇだろ。なんで俺があんな歪な奴の仲間になるんだよ!!」
そうすんなりと自分が悪いなんて言える筈もなく反発をしてしまう。時間が経ったからか少しだけ痛みが和らぎ反抗を試みる。
「──っけ。」
勢いよくぶつかりドアを開ける。
折角戦力問題が上手くいったのだ。そう簡単に繰り返そうなんて思わなかった。もうすぐ巨人が現れる筈だからそれに合わせて無関係を証明しようと試みて勢いよくドアを開け──、
──外で30を近く騎士が包囲してる事に気付いた。
「──う、そ……だろ。」
「安心しろ、取り押さえだけだ。殺したりはしないさ。無論一つ目が本当に現れたなら話は別にだかな。」
それ、死刑宣告ではと思わず言いかけそうになる。繰り返している限りどんなに嫌でも確実に現れてしまうし……。
見やるとじりじりと騎士達が近寄り手足を拘束しようとして来ていた。非常に不味い展開だ。
手の自由が聞かないなら肝心の巻き戻し能力は使う事ができないのだから。
ただ、それとは別にもう1つ不安要素があった。二回目に起きた現象──、即ちループができない事態。原因は今の所分からないが今回も起こる可能性が0とは限らない。
そんな状況に言い訳をする様に、
「──ミ、ア……ミアには話したのか……?」
どんなに繰り返して、ミアに記憶がなかったとしても唯一自分優しくしてくれた彼女にだけは知られなくなかった。ただ、そんな希望は──、
「ミア様は端から疑っておられたよ。それでもお前の傍にいてくれた彼女の優しさに感謝するんだな。呼び捨ても、だ。お前は何度彼女に生かされてると思ってる。」
「───。」
どうして、期待していたのだろうか。
どうして、希望を込めていたのだろうか。
どうして、縋るように願っていたのだろうか。
期待も、希望も、願いも全てが絶望に変わってゆくような気がした。報われてなんていなかったのだ。全て自己満足の延長線だった。
──その現状が、これだった。
周りはこれを哀れと蔑むのか、情けないと嘆くのだろうか。否、浮かべていたのは軽蔑だった。滑稽だと、そう言われているような気がした。
絶望が募ってゆく。
その現状を打破しようとして、ではない。
その現状を一刻も早く抜け出したくて──、
逃げたい一心で青年はマークを押すのだった。
世界そのものを覆うようにして、世界そのものが消えゆくように──、
──四度目の術式が発動するのだった。
──°¿¿✿¿♪⇢ フルフィルメント・ロード。
消えゆく世界の中で絶望を浮かべながら、青年は五度目の世界を歩き出す──。